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23話 話し合い

 昨日の晩、私は疲れすぎて、自室に帰り着いた瞬間、泥のように眠った。

 すると、いつもより早く寝すぎたためか、夜が明ける前に目が覚めた。


――昨日はウィルに送り届けてもらって、ウィルがポーラに一通り説明したのを聞いてから、眠ったのよね。

 なんだか、半分現実じゃないみたいな気分だわ。

 少し気分転換に、リビングまで行ってみようかしら。


 そう思い、夜が明ける前のリビングまで行くと、明かりがついていた。

 もう少し近づくと、お父様とお母さまの話し声が聞こえてきた。


――どうしてこんな時間なのに、2人とも起きているのかしら?


 そう疑問に思った私は、2人に話しかけた。


「お父様、お母様、こんな時間から起きてどうなされたのですか?」


 すると2人は私の存在に気付き、驚いた様子でこちらを見た。

 そして、お父様が口を開いた。


「リディこそ、こんな時間に起きてどうしたんだ?」

「昨日少し早く眠りすぎたので、早くに目が覚めてしまいました。なので、気分転換にリビングに来てみたんです」


 私がそう答えると、お母様が反応した。


「そうだったのね。昨日のリディアは帰ってきて、少しポーラとウィル卿の3人で話をしてから、すぐに自室に籠ったから心配だったの」


――お父様にも、お母様にも心配をかけていたのね。


「はい、色々な出来事が起こったので、少し疲れていて早くに眠りました」

「そうだったのか。その……もうこうなったら単刀直入に聞くが、それはロジェリオ卿のせいか?」


――なんだ……。もう、お父様とお母さまは知っているのね。


「はい、そうです」

「そうか……。お父様とお母様はリディアが不安に思っているときに、気付いてあげられなくてすまない。そんな噂が出ていることに、全く気が付いていなかったんだよ」

「気付かなくても無理はありませんわ。私も最近気付きましたし、お父様とお母様には何も悪い点なんてありません。それにしても、お父様とお母様はどのようにして噂について知ったのですか? ポーラから聞きました?」


 すると、お父様とお母様は目を合わせた後、2人揃って私の方に向き直った。

 そして、お父様が口を開いた。


「ポーラから、知っていることは全て聞かせてもらったよ。もちろん、ウィル卿との話の内容もね。昨日リディアが眠っている間に、ライブリー家から明日謝罪と話し合いをしに来たいという手紙が届いたんだ。それで、何か知ってそうなポーラから話を聞くことになって、ロジェリオ卿とのことで悩んでいることを知ったんだ」


――ライブリー家から謝罪と話し合い?


「昨日届いたということは、今日ライブリー家の方々が、謝罪と話し合いをしに来るのですか?」

「一応来てもらうことにはなっているが、リディアが嫌なら止めてもらうこともできるよ」

「謝罪されても、すぐに気持ちの切り替えができません……。なので、許せるのかはその時にならないと分かりません。ですが、いつまでも逃げるわけにはいきませんし、一度お会いしてみます」


――今回の謝罪を聞いて、話し合いを進めた上で、状況によっては今の私たちの婚約の在り方についても考え直さないといけないわね。


「リディアが会ってみるというのなら、会ってみたらいい。許せないと思えば、無理に許さなくてもいい。今日はどうか自分の気持ちを我慢して抱え込まずに、私たちを頼って欲しいんだ」

「そうよ、リディア。全部お父様の言う通り。あなたは1人なんかじゃないわ」


――お父様、お母様、ありがとう。

 私は今日の話し合いで、今までの溜っていた心の(おり)を吐き出すわ。


「ありがとう、お父様! お母様!」


 こうして、お父様とお母様と話をしていると朝が来て、いつものように3人で朝食を摂った。

 そうしてしばらくすると、我がベルレアン家にライブリー家の面々が訪ねてきた。



 そして今、皆で応接間にいる。

 静寂に包まれた空気を切り裂くように、ロジェが口を開いた。


「リディ、僕がきちんとした対応を取らなかったばかりに、あんな噂を流れさせてしまって、リディのことを傷つけた。……ごめん」


――ロジェ……やっと自分のことについて、客観的に見ることが出来たのね。

 もう少し早くにそうしてくれていたら、こんなことにはならなかったのに……。


「ロジェ、もう少し早くに気が付いてもらいたかったわ」

「うん、本当にリディの言う通りだよ。本当にごめんね」


 ロジェに浮気心があったわけでないことは分かっている。

 それに、察してもらうことばかりを期待するんじゃなくて、私も私で早くロジェに噂についての不満を、勇気を出してぶつけていればよかったとも思う。


 だからこそ、こんなにも真摯に謝っているロジェを見ると、少々居た堪れない気持ちになってくる。

 そのことが表情にも表れていたのだろう。対面に座るジュリアナ夫人が私の顔を見ると、それは申し訳なさそうに口を開いた。


「リディちゃん。うちの愚息がリディちゃんのことを傷つけたと聞いて、本当に申し訳なくて、胸が張り裂けそうだったわ。本当にごめんなさい」


 そう言うと、ジュリアナ夫人は私に向かい頭を下げた。


「ジュリアナ夫人っ、どうかお顔をあげてください」

「リディちゃんのことを思うと、申し訳なさ過ぎて、まともに顔を見ることもできないわ。もう少し私がロジェのことを気にかけておくべきだったわ」


――いや、今まで女問題を抱えることもなく、20を超えた息子の恋愛事情を気にかけないといけないなんて、ゆめゆめ考えないでしょう。

 決して、ジュリアナ夫人が悪いわけではないわ。

 本当は気付いた時点で、自分たちで解決すべき問題だったのよ。


「いえ、ジュリアナ夫人がそこまでするような話ではないのです。私たちがきちんと早めに話し合っておけばよかったのです。ですが、こんな事態になってしまったので、この際今から、今後の在り方についての話し合いをしたいと思っています。ロジェ、それで良いかしら?」

「ああ、もちろんだよ」


 こうして、家族を交えた2人のこれからについての話し合いが始まった。

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