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22話 母の叱責 〈ロジェリオ視点〉

今回も、ロジェリオ視点です。

 エイミーと一緒にリディのプレゼントを見に行ったところで、リディとウィルに遭遇した。

 そして、ウィルがリディをベルレアン家に送りに行ったため、僕はエイミーと取り残された。


「ロジェ様――」

「エイミー、せっかく付いてきてもらっておいて、本当に申し訳ないけれど、今日はここで解散にしてもらってもいいかい?」


 そう言うと、エイミーはハッとした顔をした。


「はい、もちろんです。それでは」

「ああ、ごめんね」


 そう言って、今日はエイミーと別れた。


 僕はズキンズキンと脈を打つように痛む頬を押さえ、今までのことを振り返った。


――そんな噂が出ているなんて、まさに青天の霹靂(へきれき)だ。

 しかもリディはそのことを知っていたのか……。

 ただの妹のように気にかけていただけだったが、距離感が間違っていたみたいだな。

 リディには申し訳も立たない。


 それなら殴られても仕方がないと思い、頬から手を離した。

 そして、とぼとぼと歩き出し、辻馬車を拾い考え事をしながら、ゆっくりとライブリー家まで帰った。


「おかえりなさいませ、ロジェリオさ……ま。え!? ロジェリオ様、本日は非番でしたよね!? どうしたんですかその傷は! 誰にやられたんですか!?」


 ライブリー家の執事長は、僕を出迎えるや否や、驚きのあまり質問攻めをしてきた。


「この傷なら気にしなくてもいいよ」

「気にしないわけにはいきません! こんなにも目立つ怪我をして、何を言うんですか!」


 その執事長の声に驚いたのか、母上が玄関まで出迎えに来た。


「どうかしたの? そんなに驚いた声を出して。ってロジェ!? あなたその顔……何があったの!?」


――そりゃ、息子がこんな顔して帰ってきたら驚くよな。

 いったいどこから話をしようか……。


 そう思い戸惑っていると、リディを送り届けたウィルが帰ってきた。


「ああ、ウィル。おかえりなさい。あのね、ロジェが誰かに顔に怪我を負わされたみたいなの!」


 母上は帰ってきたウィルに、僕の怪我のことをすぐさま告げた。


「ああ、僕が殴ったんです。兄様ちゃんと説明してないの?」

「ウィルがロジェを殴ったですって!? それに、説明って何の話よ!」


 母上は完全に憤怒の表情を浮かべている。


「母上、僕は兄様のことで話したいことがあります。今から3人でお話しできませんか?」


 母上に怒鳴られても冷静なままのウィルは、そのまま3人での話し合いにもっていった。



「それで、いったい何があったの? ウィルはロジェのことを、理由もなく殴るような子ではないでしょ」

「はいそうです。理由があって殴りました」


 僕はここまで怒ったウィルを見ることが、初めてだった。

 母上も同じく、こんなにも怒ったウィルを見るのは初めてだったのだろう。

 怒りよりも戸惑いの表情の方が強くなっていた。


「その理由はいったい何なの?」


 すると、ウィルはチラリと僕の方を見た後、母上に向き直って言った。


「母上は、最近王女宮の貴族を中心に流れている、お兄様の噂について知っていますか?」


「ロジェの噂? 知らないわ。それはいったいどんな噂なの?」

「兄様が、王女宮の侍女と恋仲だという噂です」


 それを聞いた瞬間、母上は鬼のような形相で僕を睨んだ。


「ロジェ! どういうことか説明しなさい!」


 母上にそう言われ、僕はウィルから聞いたことや、今日の出来事を詳らかに全て話した。


「つまり、あなたはその侍女のことを妹のような存在と思っているだけで、実際に恋仲ではないのね」

「ええ、もちろんです! 僕にはリディという婚約者がいますから」

「……そう、そのことはきちんと理解しているのね。それなのに、なぜこんなにも噂が広まったのかしら? リディちゃんのことを傷つけるなんて、あなたは許されると思っているの!?」


 母上は憤然とした面持ちで、僕に怒鳴ってきた。


――今まで全く気付いていなかったが、本当にリディには悪いことをしてしまっていた。

 どうやって償うべきなんだ……。


「……僕のしたことは、簡単に許されることではないでしょう。明日、ベルレアン家に赴いて、リディに心からの謝罪を伝えに行きます」

「ロジェ、1つ言っておくけどね、謝罪だなんて甘えだわ! 謝ることはもちろん大事だけれど、婚約を継続する意志がリディちゃんにまだあるとするのなら、謝られたらリディちゃんは許さないといけなくなるじゃない」


――リディと婚約解消する可能性もあるのか……! 

 僕はどうしてエイミーと恋仲と誤解されるような行動をとってしまったんだろう。

 いつから間違えていたんだ?


 僕が色々と考えているなか、ウィルが口を開いた。


「母上、僕は先程リディ様をベルレアン家まで送ってきました。そして、今日の事の顛末をリディ様の専属侍女のポーラさんに伝えました。恐らく、今日のことはベルレアン侯爵と夫人の耳にも入っていると思います」

「ウィル、あなたは良くやったわ。リディちゃんのことを、ちゃんとフォローしてくれてありがとう。私も明日一緒にベルレアン家に謝罪に行くわ。ああ、こうなると分かっていたら、婚約100日の記念のプレゼントを買うことを勧めるだけじゃなくて、一緒に買いに行くべきだったわ!」


 母上はウィルに優し気に話しかけた後、僕に振り返り鬼のような形相で言った。


「いいこと? 許してもらおうなんて魂胆で謝罪に行くのなら、私はあなたのことを決して許しません! 今までの出来事をリディちゃん自らが、心の底から許せると思ってからが再スタートになるの! そのことをきちんと肝に銘じておきなさい!」


「はい、母上。お手を煩わせて、大変申し訳ありません」

「私に謝るんじゃなくて、リディちゃんにきちんと謝りなさい! これでもし、リディちゃんと婚約破棄になったら、あなたは廃嫡よ!!!!!!」


――廃嫡だって……!?


 僕は今まで生きていた中で、一度も想像したことのない「廃嫡」の言葉が母上の口から出てきたことで、ことの重大さを再確認した。


 そして、次の日になり、僕と、お父様、母上、ウィルの4人でベルレアン家に謝罪しに行った。


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