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2話 縮まる距離

 一緒にアーネスト様を見送りに行った帰りの馬車で、ロジェ様は私に告げた。


「アーネストに言われて決心したんだ。僕は騎士になる。騎士になって領地や国を守れるような人間になりたい。立派で強い騎士になって、リディやいつか帰ってくるアーネストの頼れる存在になりたいんだ!」


 その言葉と共に、決意に満ちた熱いまなざしを向けられ、私の決意も固まった。


「私も慈善活動に取り組んで、国を支えてくれる人の助けになりたい! 貧困や孤児という理由だけで才能の芽を潰したくないわ。私も頼ってばかりじゃなくて、頼られる存在になるわ!」


 いざ言葉にすると、アーネスト様と約束した記憶が蘇ってくる。

 気を緩めたら泣きそうだ。


「よし! よく言ったリディ! さすがは僕の幼馴染だ! 僕らは、アーネストが帰ってきたとき、みんなやアーネストが頼れる存在になるっていう、共通目標ができたな!」


 そう言いながら、突然ロジェ様は私の頭をわしゃわしゃと撫でた。


「もう! ロジェ様はすぐに意地悪するんだから!」

「だってリディ泣きそうな顔してただろ? これで涙は引っ込んだよね!」


――やっぱり気付いていたのね。

 零れそうな涙を隠すように顔を背け、ちらりとロジェ様を見た。

 すると、ロジェ様は今にも泣きそうな顔をして笑っていた。


「アーネストには、リディを泣かせないと約束したばかりなのに、泣くなよ?」

「ロジェ様こそ泣かないでね。みんなの頼れる強い騎士になるんでしょ!」

「僕は泣いてないよ!」


 「泣いてない」と強がるロジェ様を見て、私より年上のアーネスト様と同い年とは思えず、かわいいと思ってしまう。

 そんなロジェ様を見ていると、涙は引っ込んで、代わりに笑みが零れた。


 ロジェ様は泣きそうになった顔を見られまいと、私の背中側に回り、撫でてぐしゃぐしゃにした私の髪を直してくれた。


「ロジェ様、ありがとう。励まそうとしてくれたんでしょ?」


「そうだよ。僕はアーネストみたいに励ますことは出来ないから……。だから、僕は僕なりのやり方で……と、それはいいとして、リディ」


 何か言いかけていたようだが、ロジェ様はいきなり私の名前を呼んだ。


「急にどうしたの? ロジェ様」


 振り返ってロジェ様の顔を見ると、良いことを思いついた子どものような顔で、こちらを見ていた。


「今日から僕らは共通目標ができ、頼り頼られる関係になったというわけだ! そうだろ、リディ?」

「え、ええ、そうね?」


 ロジェ様の唐突な質問に、私は不思議に思いながら返事をした。


「それで、お願いがあるんだけど……」


――お願いって何かしら? ロジェ様の考えることは想像がつかないわ……。


「どんなお願いかしら?」

「年齢は僕の方が上だけど、今日から僕のことは様を付けずに、ロジェと呼んでもらいたいんだ」


 予想外のお願いに、私は戸惑った。


「今更どうしてそんなお願いを?」

「母上たちの仲が良いから、僕らは生まれた時からずっと会っていただろう? なのに、僕より年齢が1つ下という理由だけで、同じ侯爵家なのに様付けを続けるリディに、何だか距離を感じていたんだ」


――え?! ロジェ様はそんなことを考えていたの? 私は様付けに慣れているから、全く気付かなかったわ!


「ロジェ様ったら、そんな風に思っていたの?」

「ああ、そうだよ。それに今日から同じ目標を持つ仲間になったんだから、今日を機にそう呼んでくれるようになったら嬉しいよ」

「分かった。ロジェのお願いだもの! 今日からそう呼ぶわ」


 少し気恥ずかしくなり、顔を背けロジェの顔を覗き見ると、彼は私に向かって、パァーッという効果音が出そうなほどの、満面の笑みを浮かべていた。


「ありがとう! リディ! 今日のことで、よりリディと距離が近づいた気がするよ」

「そんなことで良かったら、もっと早く言ってくれたら良かったのに」


 何てことないように言ったものの、私はとても緊張していた。


――あぁ~! ロジェ様から様を取るだけなのに、とっても緊張したわ!

気恥ずかしいけれど、一度言ってしまえばもう吹っ切れたかも!

今までも、敬語は使ってなかったから、ハードルが低くなってたのかしら? 

こういうのは慣れよ!慣れ!


 私が心の中で百面相をしていると、彼は続けた。


「ずっと勇気が出なかったんだ。僕は基本的に信頼を置いた仲間以外に、愛称呼びや、呼び捨てにされるのが嫌いだ。逆に、呼んでほしいと思った相手に、愛称呼びや、呼び捨てを拒まれるのは怖い」


 私のことをそれだけ信頼してくれているのね。何だか照れるわ。


「だけど、今なら言える気がしたんだ。リディが呼んでくれて嬉しいよ。アーネストがいなくなって寂しいけれど、共通目標でリディとも距離が近付いたし、何とかこの寂しさも乗り越えられそうだ!」


――こんなにも喜んでくれるなら良かったわ。

 何だか、ロジェの言う通り、私も距離が近づいた気がする!


「私も、ロジェと距離が近付いた気がするわ! アーネスト様に自信をもって会えるように、お互い頑張りましょうね!」

「ああ! お互い励まし合って、頑張ろうな!」


 ロジェを見ると、晴れやかな表情をしていた。

 もしかしたら、私はこの日からロジェのことを好きになり始めていたのかもしれない。



 見送りの日からしばらく経ち、アーネスト様が隣国に着いたという連絡がきた。

 そして、意外なことにアーネスト様と文通ができることが分かった。

 そのため、私とロジェはアーネスト様と文通で交流を取り始めた。


 私が14歳、アーネスト様とロジェが15歳の年の出来事だった。


しばらく、リディアとロジェリオのターンが続きます!

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