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18話 かわいい護衛とプレゼント選び

「あら! ウィルじゃない。久しぶりね」


 後ろから名前を呼ばれ振り返ると、ロジェの弟のウィルがいた。

 どうやら訓練後のようで、仲間たちに何か言ってからこちらに走ってきた。


「お久しぶりです!」

「訓練お疲れ様!」

「ありがとう、リディ様! リディ様はどうしてここに?」

「パトリシア様とお茶会をしていたの」

「そうだったんだ。今から帰り? それなら僕が護衛として送るよ!」


 突然のウィルの申し出に私は戸惑った。


――ん~、今からアーネスト様のプレゼントを買いに行く予定だから、断ろうかしら。


「ウィルはライブリー家の人だから言うけれど、アーネスト殿下が帰ってくることになったの。それで、今からアーネスト様のプレゼントを買いに行くつもりなの。だから、今日は一人で帰るわね。わざわざありがとう」


 すると、ウィルは目をキラキラさせながら言った。


「アーネスト様が帰ってくるの!? 僕もプレゼント買いに行きたい! リディ様、一緒に行ってくれない? 街こそ僕が護衛するよ!」


――こんなにも付いてきたそうな顔をしているのに、置いていくのは酷だわ。


「じゃあ、一緒に行く?」

「やった~! 行く行く!」


 とても喜んだ様子で護衛兼プレゼント選びの相方として、私とウィルは街まで向かった。


「リディ様は何を買うの?」


――何にしようかしら。もうアーネスト様は21歳だし、少し大人なものを買おうかしら!


「私は、ネクタイとカフスボタンと、あともし良いものがあれば、コロンを買おうと思ってるの!」

「それいいね! じゃあ僕は、リディ様が選んだものに合いそうな、ブローチチェーンを買うよ!」


「良いわね! きっと良いプレゼントが見つけられる気がするわ」

「僕もだよ!」


 そう言って、ウィルと2人でプレゼントを探し始めた。


「アーネスト様は黒髪に綺麗な紫の目をしているでしょう? だから、カフスボタンや、ブローチチェーンはゴールドよりもシルバーが似合うと思うの」

「僕も全く同じことを思ってたよ!」


――良かった。良いものが早く選べそうね。


「あ! リディ様見て! このコロン自分で好きな匂いと瓶を選べるんだって」

「あら! 良いものを見つけてくれたのね、ウィル。じゃあ、一緒に選びましょう!」

「うん!」


 こうして、ウィルと一緒にプレゼントを選び大満足の買い物ができた。

 コロンの匂いは、偶然にも私が一番好きな花の香りになった。



「良かったよ! リディ様とこうして偶然会えて」

「私もウィルと久しぶりに会えたから良かったわ」

「それなら良かった! あのね、リディ様……ちょっと話したいことがあるから、あそこのベンチに座って話しをしてくれないかな? 真剣な話なんだ」


――ウィルが改まって、真剣な話って何かしら?


 ウィルの急な申し出に驚きながらも、私は了承してベンチに座った。


「あのね、リディ様。僕が話したいことっていうのはね、兄様と王女宮の侍女の噂のことについてなんだ」


――ああ……ウィルは知っていたのね。


「多分リディ様はその噂のこと知っていると思うから、そのことについて僕から謝っておこうと思って……。ごめんね、リディ様」


 ウィルは申し訳なさそうな顔をしながら、私にそう話してきた。


――多分、ウィルはこの話をするために私の買い物についてきたのね。


「これはウィルが悪いんじゃないわ。だからウィルは謝らないで、ね?」

「でも……少なくともあの噂で、リディ様が傷ついたことは間違いないよね? 直接傷つけたのは僕じゃなくても、つい最近その噂を知って、弟として謝りたかったんだ。こんなの自己満足だよね」


――ウィルの方は、ロジェと違って心の機微に敏感なのね。


「自己満足だとしても、ウィルが本気で私の気持ちを慮ってくれているってことは十分伝わってるわ。本当にウィルは優しい子なのね。ただね、あなたが私を傷つけたわけじゃない。これだけはどうか理解しておいてほしいの」


 そう言って、私はウィルの肩を軽くポンポンと叩いた。

 すると、ウィルはウルウルさせた目で、こちらを見ながら言った。


「兄様は本当に鈍感人間で、自分の噂についても全く気が付いていないんだ。それに、お父様とお母様はまだこの噂について知らないみたいんだ」


――恐らくそうだと思ったわ。

 もしこの噂について知っていたら、ライブリー卿はまだしも、ジュリアナ夫人が黙っているわけがないもの。

 このことをジュリアナ夫人が知ってしまったら、いくら自分の息子とはいえ、何をしでかすか本気で分からないから、ジュリアナ様の耳に入れてはいけないわ。

 ウィルは一人で抱え込んでいたのね。

 私が早くロジェに言わないと……!


 ウィルの気持ちを考えると、私まで涙が出てきそうになる。

 そして、ロジェの能天気さに少しイライラする。


「僕も噂の真相は知らないけれど、もし本当に王女宮の侍女と恋仲だったり、恋仲と誤解されるようなことをしたりしていたら、僕が兄様をぶん殴ってやる。それで、お母様にも言ってやるって決めたんだ」


――ウィルは2人が会話をしているのを見たことがないのね。

 ある意味見たことがなくて良かったのかもしれない。

 ウィルがそんな場面に遭遇する前に、必ずロジェにきちんと噂の話と、自分の気持ちについて伝えよう。


「ありがとうね、ウィル。でも、殴ってはだめよ」

「僕はリディ様がお義理姉様(ねえさま)になるのが嬉しすぎて、婚約が決まった日からずっと結婚する日を楽しみに待っているんだよ?」

「ウィルは婚約手続きの日にも、同じようなことを言ってくれたわね。ありがとう」

「だから、兄様の噂が本当なら、殴られるくらいの罰を受けて当たり前だよ! でも、リディ様がそういうなら、殴るのは我慢してみる」

「そうね、それが良いわ。じゃあ、頼りにしてるわね!」

「うん! じゃあそろそろ帰ろうか」

「ええ、そうしましょう」


 そう言って、ウィルと一緒に馬車を停めている場所に向かって歩き出した。


「そう言えば、ここのジュエリーショップにお母様がリディ様と一緒に行きたいって言っていたから、良ければ一緒に来てあげてよ」

「それは嬉しいわ! ぜひお誘いしなくちゃね」


 そう言ってウィルと共に、ジュエリーショップに目を向けていると、店の出口から思わぬ人達が出てきた。



――どうしてロジェと、エイミー嬢が一緒にジュエリーショップから出てくるの……!?


リディアを呼び止めたのは、ウィルでした。

ちなみに、ウィルは15歳で騎士見習いをしています。

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