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Bloody Bride [鮮血の花嫁] -とある女勇者の憂鬱-  作者: 遠矢九十九(トオヤツクモ)
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第十七話:魔界への道

洞窟自体が何らかの魔力を発生しているのか、それとも魔王の力によるものなのか、洞窟の内部は地底奥深くにも関わらず全体が薄っすらと発光しており、足元を見失うことも無かった。


すでにどのぐらい地下に降りただろうか。


いや、本当に地下に向かっているのかもわからない。


途中から何か時間や空間や肉体の感覚が不明瞭になり、物理的・精神的にひどく曖昧な空間を漂っているようだった。


しかしキャミルにとってはそんな境界線上の謎の事象など、それこそ曖昧で上の空で、先を歩みながらも幾度も振り返ったり手を差し伸べたり声を掛けたりと、魔王アロゥは常にその妻となるキャミルを気にかけていたが、それすらも全く現実味も無く何も聞こえてはいなかった。


え……と……まおう……って……、あの魔王……?

何かの聞き間違いとか、そういう地名とか、アロゥじゃなくてマオウという名前なんだとか、そういう意味じゃないのかしら……。

だって魔王って言ったら、禍々しい闇の力を操って、モンスターを使ったりして人間の世界を滅ぼすとか支配するとか、そういうののラスボスでしょ……?

全然そんな感じじゃないじゃない……。

いや、そんな感じじゃなく見せてるだけなのかもしれないけど、それにしたってねぇ……ちょっと無理があるでしょ……。

だいたいなんで魔王が一人で勇者のふりなんかしてふらふら地上を彷徨って、しかもあたしと一緒に旅なんかしちゃって、あげくの果てに、あたしを……あたしなんかを……つ……つ、つ、つ……妻に……だなんてさぁ……!!

わけわかんないわよねぇ、ほんとにねぇ!!

何の意味があんのよ、魔王があたしみたいなの妻になんかしちゃってさぁ!

無い無い無い、無いって、やっぱ魔王なんかじゃないんだって!


「ねぇー!有り得ないわよねぇー!」


「?どうかなさいましたか?キャミル」


思わず声が漏れてしまい、アロゥが振り返る。


「い、いや……何でも……って……すごい扉ね……」


「はい……この扉をくぐればその先は魔界……。

闇の力が充満し、人間界には存在し得ない異形の魔獣があまたひしめき、通常の人間ならば即座にその身も心も侵食され元の姿を維持することすらかなわない、地上とは全く異なる世界……。

そして……」


漆黒の巨大な一枚岩に魔獣の彫刻がなされた大扉を見上げる。


「そして私はその魔界を統べる唯一絶対の存在、すなわち魔王……」


うぅ……やっぱり魔王なのは本当なのか……。


がっくりと膝を付きうなだれるキャミルだったが、その肩にそっと温かい手が乗せられ、


「大丈夫ですよ、キャミル。

私と長らく行動を共にしている間にあなたには私の魔気が移っていますから、魔界の空気に触れても地上と何ら変わりはありません。

……それとも……やはり私の妻になるのが……受け入れ難いのでは……」


心配そうにアロゥがその顔を覗き込む。


「申し訳ございません……。

本当はお嫌なところを私が強引にここまで連れてきてしまったのでしょうか?

もしそうならば……致し方ありませんが……」


肩を握る手に力がこもり、まさか殺される!?とキャミルは体をこわばらせたが、


「……本当に心苦しいことですが……、あなたを再び地上へとお帰しして、私はもう二度とあなたの前に姿を表わすことは無いでしょう……。

キャミル……。

もう一度改めて問います、いえ、お願いを致します。

私と共に扉の向こうへと入り、私、魔王アロゥの妻として、魔界へと来てくれませんか」


不安げな表情でアロゥがキャミルの目を見詰めた。



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