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Bloody Bride [鮮血の花嫁] -とある女勇者の憂鬱-  作者: 遠矢九十九(トオヤツクモ)
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第十話:新しい出会い、再び

鉤爪は風切り音と共にキャミルの首を斜めに切り裂き地面へと叩き落とした……、と観念し、ぎゅっと目を閉じたが、数秒経っても首どころか、体のどこにも何の攻撃も到達しなかった。


恐る恐る目を開けると、鉤爪はキャミルの首元寸前で止まり、厚い氷に包まれ小刻みに震えていた。


「!?」


何が起きたかわからず見上げると、全身を凍り付かせ静止している大ネズミが急激に収縮し始め、一瞬にして手のひらに収まるほどの球体となり、やがてその重圧に耐えきれなくなったかのようにはじけて砕け散った。


その破片が空中に吸収されるように消滅していく。


これは……!?


体を蝕んでいく毒に必死に抗いながらも、状況を確認しようと立上がりかけた所に、


「大丈夫ですか、お嬢さん!?」


男の声が耳に響いた。


「こんな真夜中にそのような軽装で……命知らずにも程があります!!

もう少しだけ耐えて下さい!

今、回復魔法を!!」


その言葉が終わるより早く、大地から無数の光の粒が立ち上りキャミルの傷口へとなだれ込み包み込むと、傷はあっという間に跡形もなく治癒し、全身の痺れも嘘のように消えていった。


これは……回復なのに召喚系魔法……?

しかもこれだけの治癒と解毒を同時に……。

さっきの攻撃も異属性の複合魔法だし……。


「あ……ありがとうござ……」


意識も完全に回復し、目の前の出来事に思惑を巡らせながもとにかく礼を言って立ち上がろうとしたキャミルを、温かな腕が優しく支え、はっと、その腕の主を見やった。


「若いお嬢さんがこんな時間にどうしてこのような場所に……!

さ、急ぎ街へとお送り致しましょう!」


怒ったような心から心配しているような、賢く意志の強そうな黒い瞳に、キャミルは思わず見とれて声を失ってしまった。


キャミルより少し歳上だろうか、緩いウェーブの長い金髪に薄く口髭を生やした男は、キャミルの身体に他にも異常が無いか確かめながら、


「出で立ちから察するに冒険者のようですが……。

それにしても女性一人でこんな時間に、無謀にも程がありますよ……!

……立てますか?」


「は……はい……あの……でも……」


「?どうかなさいましたか?

まだどこか具合でも……?」


「い、いえ、体の方はおかげさまで完全回復してるんですけど、その……街は……、行っても泊まれるとこ……無いですから……」


男の腕からそっと抜け出しながら、恥ずかしげに答えるキャミルに、男は不思議そうに、


「ザッカリアの方では無いのですか……?

しかし来訪者だとしても、今の時期、ザッカリアは特に観光も無く宿も閑散期だと……。

……何か事情が……?」


立ち入ったことを聞いて申し訳ないか、といった面持ちで尋ねた。


「……ちょ……っと、ね……、色々あって今……一文無しなんです、あたし……。

あ、でも別にあたし勇者だし、けっこう歴も長いし、野宿とか普通だし、大丈夫なんですよ!

ほんと、大丈夫なんです!

ご心配なさらなくても一人でも一晩ぐらい全然問題ありませんから!!

とにかくケライト辺りまで戻れば問題ありませんから!

本当にありがとうございました!!」


頭を下げて背を向け足早に去ろうとしたキャミルだったが、その片腕がつかまれて力強く引き戻され、勢いで足がもつれよろめいて、再び男の元へと倒れ込んだ。


「何も大丈夫などではありません!

あなたのような美しい女性が真夜中の森で一人きりの野営など、たとえあなたが勇者で、その程度のことは勇者の世界では常識なのだとしても、私には許すことなどできません!

明日の朝まで私がお守り致しましょう!」


「え……」


どちらかと言えば華奢で中性的で、たくましさより美しさの方が際立つその男の腕の中に二度までも包まれ、真剣な眼差しで真っ直ぐに見詰められたキャミルは、思わず頬を染め立ちすくみ、言葉を発することも身動きすることも忘れてしまっていた。



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