空想
ハハ、今日は特別な日だ。
欲望の赴くままに女子高生をレイプして絞殺した日だから。
昔俺はインドア派で体力が無く、30歳の頃にはちょっと広い道路を走って横断しただけで息が切れ座り込む程だった。
50歳の頃に失業して自棄になり通り魔殺人でも行おうかと思ったが、刃物を振り回して人を刺そうとしても小中学校の女の子にさえ取り押さえられそうで断念。
当ても無く街を歩き回っていたとき、赤信号に変わる寸前の横断歩道を渡っていたら左折してきたトラックに轢かれた。
虫の息だがまだ息があった俺は病院に担ぎ込まれそこで息を引き取る。
そのとき死んだ俺の魂はその病院の産婦人科で死産で生まれる筈だった赤子の身体に入り込み、転生する事に成功した。
転生する事が出来た俺は前世の轍を踏まないように身体を鍛える。
そして先程街で目を付けた女子高生を路地の奥に引きずり込みレイプ、事件の発覚が遅れるように絞殺してマンホールに死体を遺棄。
身体を鍛えていたお陰で、女子高生を取り押さえ路地の奥に引きずり込むのも絞殺するのも簡単だったし、マンホールの蓋を指1本で開ける事も出来た。
捕まって死刑にされるまで前世で出来なかった犯罪をガンガン欲望のままに行おう。
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
夜の病棟を見回っていた新人看護師が突然病室の中から響き渡った笑い声に身をすくませる。
「ヒィ!
先輩、何なのですかあの気味の悪い笑い声は?」
新人看護師は共に病棟を見回っていた先輩看護師に声わ掛けた。
「ああ、あの患者さんね。
暫くの辛抱だから我慢しなさい」
「暫くの辛抱ってどういう事ですか?」
「あの患者さんは、重度の糖尿病で壊疸になり手足を切断。
目も失明して盲目になっていて、唯一の楽しみは空想する事だけ。
糖尿病との合併症による心筋梗塞で此処に運び込まれたのだけど、主治医の先生の話では、次に発作が起きたら助からないって話だからよ」
「それを聞いたら可哀想に思いますね」
「そうかしら。
あの気持ち悪い笑い声から察するに、まともな空想をしているとはおもえないわ」