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翠心のエルンスティア  作者: 緋吹 楓
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第一話 樹海にて

 本格的に始まります。

 はっけよーいのこったって感じです。

 太陽が落ちて辺りが暗闇に包まれた頃、仕事で疲れた俺はある場所に向かっていた。

 富士の樹海。くだらないオカルト話の絶えない森だ。

 夢の中で此処に来ると永遠に出られなくなるとか、自殺した人間の血が雨になって降るだとか、歩いてる人間を追ってみたらそこには朽ちた人骨しかなかったとか、そんなありきたりなバーゲンセール。

 オカルトなんてものは怖くもなんともない。まがい物でしかない。

 本当に人間が恐れるものの根幹は闇だからだ。誰だって闇には近づきたくはない。だが好奇心はある。だから人間は火を熾して闇を照らす。


 オカルトとはくだらないというのが俺の考えだ。

 だがそのオカルト話が亡くなった母さんの遺言だとしたら?しかも今までそういったモノを語ることがなかった人が息を引き取る直前にひっそりと託してきたものだったら?

 現代社会には不釣り合いな古地図とブローチを手渡されたとしたら?

 興味が湧いてしまうのは仕方ないだろう。



 2ヶ月前に他界した母さんとの思い出を耽けていると目的の場所に着いた。

 今は観光地として人気が出てきているから駐車場くらいはいくらでもある。

 真夜中に来る人間なんてそういないから(むしろいてたまるものか)乗ってきた軽自動車をササッと停めることができた。

 エンジンを切りヘッドライドを消灯すると本当に何もかも見えなくなる。替わりに車内のライトを付けたので問題はないが。


 手元にあるブローチを見る。

 中央にはくすんだ碧色みどりいろの宝玉が埋め込まれていて、それを囲む金属部品には謎の模様が刻まれている。

 今思うと、母さんはどこへ行くにもこれを持ち歩いていた気がする。その時はもう少し綺麗だったような……。

 管理方法が悪かったのだろうか、後悔はするがもう後の祭りだ。

 胸ポケットにギチギチと詰め込んだ。



 古地図を開く。

 所々字が掠れて読めないが、樹海のどの方角に行けばよいかくらいは判別できる。

 最終地点に何があるかなんて書いていない。

 大きな赤字で誰にも見られるなと、それだけが目に焼き付いた。


 そのふたつをリュックに入れる。他の荷物も最終チェックだ。

 ペットボトル、ライター、非常食、懐中電灯、コンパス(ちゃんと合ってる)、絆創膏、タオル。そのくらいだろうか。

 大したサバイバル知識もない癖に仕事が終わった後のノリでやってきてしまったのだ。


(こりゃ骨になって見つかっても文句は言えないな)


 まだ服と靴は仕事着じゃないだけマシだ。

 口を少しだけ歪ませながら車内のライトを切り、外へ出る。



 外は涼しい風が吹いていて、虫達の大合唱があちらこちらから奏でられていた。

 懐中電灯の先にも虫がブンブン飛んできていて、得意じゃない俺にとっては避けたいものだった。

 しかし、わざわざここまで来たのだ。多少は我慢して先へ進んでやろうではないか。


 地図とスマホのコンパス(こっちの方が見やすい)と照らし合わせながら歩いていく。

 今の所カンタンに舗装された遊歩道を歩けているので楽に感じる。

 これだけで目的地にたどり着けるかと聞かれたらそうではないだろう。

 誰にも見られたくないのに苦労もせずに行けるようにするはずがない。



 少し道を外れるとジャクジャクジャクと泡立つ水分を含んだ土が目立ち始める。この辺りは日光が通りにいのだろうか。

 積もった落ち葉も風通しが悪いことを示している。

 普段なら避けて通りたい場所だが、今日だけは別だ。

 記された道を外れたらどうなるか分かったもんじゃない。


 

 だが、その選択は間違いだったのかもしれない。

 前方を照らすライトと行き先が記されている古地図に夢中になっていた俺をあるものが襲った。

 踏み出した右足が落ち葉を踏みしめようとした、その瞬間。

 

 不意に足元の感触が無くなり──

 ガサッ。ガサガサッ。

 ガサガサガサガサ!!


(うげ!)


 自然の落とし穴に盛大に引っかかってしまう。

 幸い大した深さではなかったから足を挫くこともなかった。運が悪ければここから動けなくなっていただろう。

 そうなった時のことを想像すると……


(次からは足元に気をつけようか)


 そう思わずにはいられなかった。



 落とし穴から何とか脱出しほっと息をついたのも束の間、向かう先の方向に謎の碧色の光がぼんやりと遠くに見えた。

 何だろうか、他に人がいるならば避けなければいけない。

 だが、俺はその光を懐かしく感じていた。

 そう、この色はブローチが太陽の光を浴びて光った時とおなじ――


 その事を思い出して気がついた。自分の胸ポケットから、いや、ブローチから同じ色の光が出ていることに。

 胸ポケットから取り出してみて分かった。

 俺はこの光に導かれている。惹かれている。



 光を放っていたモノ、それは大きな切り株だった。

 なぜ樹海の中にひとつだけ切り株があるのかは知ったこっちゃないが、碧色の光が切り株の中から吹き出しているのは確かだ。

 その切り株には年輪などなく、覗き込んだ先には光の――なんと言えばいいのだろうか、そう、道だ。光る道のようなものが続いている。


 これは何なのだろうか。まるでファンタジーだ。

 もしかして母さんはこれを見せたかったのだろうか。オカルト話を信じなかった俺へ教えたかったのだろうか。

 世界には不思議なことがまだまだたくさんあると。

 いいだろう、俄然興味が湧いてきた。切り株を覗いてやろうじゃないか。

 もしかしたらこの先がどこかへ繋がっていたりするのだろうか、ブラジルかな?

 

 更に奥を覗き込もうとする。お、何かが見える?

 更に奥を、更に更に更に更に!


 

 上半身を乗り出し、見えそうな何かを捉えたその時だった。

 

 左手に持っていたブローチが手のひらから滑って。

 

 それをつかもうと更に身を乗り出した自分がいて。

 

 何とか摑み取りチャラっと音を立てたブローチが。

 

 俺を切り株の中へと引きずり込んだ。

 どうも緋吹 楓です。

 読んでいただきありがとうございました。


 あー落ちちゃいましたねー。

 一度でいいから落としたかったんですよねー、異世界行きの穴。

 僕が大好きだった絵本の方の不思議の国のアリスがそんな風だったもんで。

 

 まだ主人公の名前は本編には出ていませんが(あらすじ、おい)ちゃんとした日本名です。

 次あたりに教えてくれるんじゃないでしょうか。

 

 それはそうと、僕はとっっても気紛れな人間なんで書ける時と書けない時の差がものすごく大きいんですよねー。

 週刊とかで書ける人って物凄くヤバい人だと思うんですが僕だけなんですかね?

 

 おっと、今日はこのくらいにしましょうか。

 

 次回もよろしくおねがいします。

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