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パーティ募集と新たな仲間?

 ――――結局、クエストは無事失敗となった。


 そもそも俺とイーリスだけの二人パーティで勝てるはずがないのだ。


 草原から冒険者ギルドに舞い戻った俺達はギルドカードを更新する金もなかったが、とりあえず昼食を取ることにした。


「イーリス聞いてくれ」


「はひ? ははひはひふはは……話は聞くから言ってください」


 イーリスは目の前に置かれたグリーンリザードのステーキを頬張りながらそんなことを言った。なんだか気が抜けそうになったが、俺はそれを堪えて可能な限り真面目な表情を取り繕う。


「パーティメンバーを増やそうと思うんだ」


「……集まるんですかね? こんなパーティに。あーでも私は! 私は有能で数少ない歌姫ディーヴァですけどね!」


 正直、集まる気がしない。確かにイーリスは普通に考えれば強いのだが、何か根本的に道を誤っている。


 もしもこんなパーティに好き好んで来るような人がいたとするならば、何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。なぜなら、俺達が間違っているからだ。


だが二人パーティではどう考えても無茶だ。このままでは危険度1のモナ蟹とかいう中高生が作ったクソコラみたいなモンスターにも勝てない。


「とりあえず募集文だけ書いてみたっていいだろ。なんて書こうかなぁ……」


「あ、私書きたいです!」


 イーリスにだけは任せたら駄目な気がする。隙あらば恐ろしい宗教の歌を歌い、隙あらば人を信者扱いしようとするこの駄目な奴に任せたら大変なことになる気がする。最悪色々あって死刑にでもなるんじゃなかろうか。


「イーリス……悪いが今回は俺が」


「今日は血の日曜日になりそうですね。……重苦しい日だ。カイトが私を頭のなかで愚弄し、陵辱したために、深刻な暴動が起こった。私の信者達は抜刀しなければならず、多くのカイトが殺され、負傷した。何とも重苦しく、心の痛む出来事だった……」


 なんだその過去形な脅しは。虫ノ心身などというわけのわからないスキルを持ってしまってる以上、斬られるときは本当に斬られかねない。


「分かった。お前が書いていい。あと事実を婉曲するような真似は止めるんだ。俺はロ……ごほんごほん! 俺はお前はタイプじゃない」


 恥ずかしげもなく陵辱などと口走る馬鹿に性的思考を抱くほど俺は無差別的ではない。もっとヨミちゃんみたいに女の子して欲しいところだ。


「今ロリっていいましたか?」


「言ってない。なんだ? 自覚でもあるのか?」


「まさか! そんなことあるはずないです。とにかく! 私が書きますから!」


 そんなこんなでイーリスが募集文を書くことになり、俺は一般労働者としてその日を過ごすことにした。


 翌日になった。時刻は朝。こけこっこーと鶏らしき生物が鳴く頃、俺はだらだらとテーブルに寄りかかり、パーティメンバーとなる人が来ないか待ち続けた。


 イーリスはというと、イケメン君を勧誘しているようだった。だが彼は既にパーティを作っている。結果は失敗であった。


「来ないですね……。あ、でもイケメン君が2000Gくれましたよ」


「脅したの間違いじゃなきゃいいけどな。というかこんなパーティに来る奴やっぱいないだろ。それに募集文が怪しすぎる。ブラック企業の求人広告みたいになってるじゃねえか」


 俺は掲示板を一瞥した。その掲示板はパーティ募集専用の掲示板で、俺達以外にもパーティ募集をしている輩はいたが、彼らはついさきほど仲良くモナ蟹を狩りに行ってしまった。


 パーティ募集掲示板にはイーリスが書いた怪しさ満天の募集文が残るのみである。



 ――――

 学歴不問! 年齢不問! 業務経験不問!未経験者歓迎!!


 人物重視で頑張った分だけ報われます! 少数精鋭で、パーティ離脱率は脅威の0%! 


 若いメンバーが多く、アットホームでクリーンで笑顔の絶えないパーティです!


 実力次第ですぐにレベルアップもできます!


 仲間皆が家族で、休みの日も楽しいイベントが沢山!


 やる気さえあれば誰でも出来ます!


 ノルマはありませんが各自、目標を立ててもらい、優しい先輩が丁寧に教えてくれます!


 

 応募者全員と必ずお会いします。書類選考無し。少しでも気になった方はすぐに8番テーブルへ!

 ――――



 なんだろう。どうすればここまで怪しい言葉を詰め込むことができるのかと思わず関心してしまうレベルで怪しい。もはや恐ろしくもある。


「なぁイーリス。今からでも募集文変えないか? 少数精鋭とか物は言いようってレベルじゃねえだろ」


「なんでです? どれも素晴らしい言葉じゃないですか」


「いや……もう凄いよ。お前」


 俺が諦めてそんな言葉を掛けると、イーリスがドヤ顔をしてもっと褒めてと訴える……そんなときであった。


「――――パーティの募集文を見てこちらに参りました。場所はこちらでよろしかったでしょうか?」


 どこを見ているかも分からない虚ろな蒼い瞳。雪のように白く綺麗な髪が肩より少し下ぐらいまで伸びていた。


 俺達に声を掛けたのは、フリルの付いたメイド服、中央に赤い宝石がはめ込まれた金の十字の杖に、聖書を手に持った少女だった。


 まるで人形のような顔に……なぜか隙間の空いた関節。隙間からはおぼろげな白い光が零れている。それになにより、頭には輝かしい金のぜんまいが突き刺さっていた。




「ワタシの名は3TIAスリーティーアイエー。ティアと呼んでください。職業は高位司教アークビジョップです。治癒系のジョブであるアコライトの最高位職でございます」

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