キツネの彼女
「でもまぁ、俺がケモナーで助かったな。」
手に持ったカッターナイフを下げると、狐耳の女性は力なく壁にもたれ掛かった。
そこから僅かな沈黙ののち、観念したかのように女性が口を開いた。
「私、あなたがケモナーなのを知っててこっちに呼び寄せたんだよ。」
女性は部屋の隅にまとめてあった服を着ながらそう話す。
俺も脱いだ覚えのないジャージが枕元にまとめてあるのを見つけ、着ながら受け答えする。
「そういや、自己紹介、まだでしたね。 私は今野友紀(こんのゆき)。コンでいいです。見ての通り、キツネです。」
「おとしは?」
「初対面の女性に年齢を聞くのってすごく失礼なことだと思いません?」
「質問を質問で返すな。」
「…じゅうななです。」
「もう一度。」
「27ですっ!」
至ることがいっぺんに起きたせいで彼女の顔すらもちゃんと見ぬままだったが
顔を赤くしたコンとやら、かわいいな。
純粋な疑問をぶつける。
「コンはなんでキツネになったんだ?」
「この世界の女性たちは一番好きな動物に変身できるんです。人によってはヒトが好きでヒトになっている人もいるけど。」
「へぇ、じゃあこういうのは効くのか?」
おもむろにコンに近づき、尻尾をむんずと掴んだ。
「あっ…だめ…しっぽ……」
突然に発情期になったかのように息を荒げ、嬌声を上げ、コンはその場にへたりこんだ。
本当にこういう所作を見ると体の中がゾクゾクと湧いてくる。
顔をさっきよりも赤くしたコンは恍惚な表情を浮かべながらこう訴える。
「リクくん…行動早すぎだよ…。」
「ごめんごめん、キツネの尻尾は性感帯だって聞くから。」
「突然性感帯弄るなんて…とんだ変態さんなんだね…。」
「夜這いしているやつが言うことじゃないと思うけど。」
「じゃあ今ので差し引きゼロ…だね。」
息が整ってきたところで、そういえば、と尋ねる。
「さっき『リク』って言ってたよね。なんで俺の名前を?」
「名前もわからないのは不便だから寝てる間に色々調べさせてもらったんだよね。」
コンは続ける。
「リク…21歳で変態、ケモナーで人の女性にはあまり興味なし。サイコパス。」
「余計なお世話すぎる…。」




