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布団の攻防

今俺は危機的状態に置かれている。


耳と…ケモミミと、尻尾が生えた、ちょっと奥ゆかしい感じの女性に、両手と、胴体をホールドされている。

ここまでは頭が追いついたのだが、全てが顕になっているのに対して、脳が考えることをやめていた。


脳が考えていないと言葉もなかなか出てこない。

「えっ、あ、あの」と口から自然に漏れ出す。


「まぁまぁ、気にしないで?すぐに終わるから。」

言葉に呼応するように、全裸の女性は柔らかい笑みを浮かべながら返してきた。


俺が男であることを彼女がしっかりと確認したところで、人生最大のピンチであることを悟った。

火事場の馬鹿力とはこのことを言うのであろう。両手を押さえつけられていたとは思えない力で彼女を大きく突き放す。

壁まで吹っ飛んだ女性は短い悲鳴を上げた後、慣れた口調で話し始める。

「何すんのよ。せっかくのお楽しみを!」

「お前こそ一体なんなんだ!?夜な夜な人様の前に!」

力の入ったまま返す。


「うるさいなー、やりたかったんだからいいでしょー」

なぜ呆れられているのか分からないうちに体に違和感を感じた。

普段から寝るときにはジャージ姿のはずが、かの女性と同じ姿格好をしていたのであった。


ひとまず状況を確認しようと部屋の明かりをつける。

全裸の男女。片方は獣耳尻尾。手をよく見ると肉球まで付いている。今この状態を傍から見たら夜這いか逢引きの後に見えるだろう。

そしてあの耳と尻尾は…イヌ科…おそらくキツネの類だ。

「なぜキツネ娘が俺に?」

冷静に考えようとして、口から自然と疑問が漏れた。


「よくぞ聞いてくれました!」

意気揚々すぎる返しだ。


そこで狐耳の女性が教えてくれたのはこんな感じだ。

『ここは女性だけがケモ化した世界である』

『女性は動物状態と人状態を好きに変えることができる』

『男女で交わるとお互いの魔力が強くなる』

『魔物や蛮族が跳梁跋扈しているのを救ってもらうためにこっちの世界に呼び込んだ』

『こちらの世界で死ぬと元の世界で目が覚める』

寝起きからのインパクトに加えてこの情報が頭に入ってくるとクラクラしてくる。

一つ一つ丁寧に説明してもらったのは覚えているが、もう頭に入らない。

「つまりは、ヤバいやつを、こう、斬ったり焼いたりすればいいってこと?」

「そうです!」

目がキラキラしている。


「そうか、じゃあ」

たまたま手元にあったカッターナイフを女性に突きつける。


「や、やめてください!?なにすんのよ!」

悲鳴が上がるのを無視して女性を見つめる。ついには引く息の声が部屋にこだまするのみとなった。

この情景、ちょっとクセになりそう。

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