第4話 旅立ち
シーファさんを襲っていた悪漢たちを近くの木に縛りつけると、
僕たちはすこし離れたところに腰を落ち着ける。
「そう言えば、シーファさんはどこか目的地があるんですか?」
「えぇ、一応迷宮都市を目指しています。あそこの迷宮なら、一人でも生活できる程度には稼げますから」
そうか。エルフであるシーファさんはなかなかパーティーとか組めないんだろうなぁ。
「迷宮ってどんなところなんですか?」
「一言で言うとちょっと危ない迷路って感じですね。毎日中の構造が変わるうえに、モンスターが闊歩しているので腕試しには持ってこいな場所と言えます」
「なるほど」
聞いた感じダンジョンみたいな感じか。日替わりで構造が変わるって言うのもなかなか面白いな。
とは言ったものの、今いる場所も分からんのだし、まずは森から出るところからだなぁ。
果たして生きているうちにたどり着けるのだろうか。
「あ、あの...」
そんな感じで黄昏ている僕を覗きこんでくるシーファさん。なんか色々と近いですよ。
「助けていただいたうえに心苦しいのですが、3つほどお願いしてもよろしいでしょうか?」
「なんでしょう?」
「えっと、まず私をシーファと呼び捨てにしていただけませんか?私もリュウ、と呼ぶので...」
おぉっと?いきなりフラグおったてちゃいますか?
というかさっきまで警戒心バリバリだったのにどうしたんだ。
あれか、知らない人はこれでもかって警戒するけど、一度気を許したらどこまででも許しちゃうタイプか。なんてこったい。
「いやそれは全然問題ないですけど...」
「ならよかったです。あ、私のこれは癖みたいなものですから気を悪くしないでくださいね。家族にもこんな感じですから」
「はぁ...じゃ、じゃあシーファ。あと二つは?」
呼び捨てに対してちょっとだけ照れたらしいシーファ。頬がちょっとだけ赤くなってる。可愛い。
「えっとですね、リュウに迷宮都市までついてきてほしいのです」
「迷宮都市に?」
「えぇ。正直私はあなたほど信用できる人を人種問わず見つける自信がありません。先の動きをみても相当の手練れのようですし...すいません。私のわがままばかり押し付けてしまって...」
「いいよ。一緒にいこう」
「そうですよね...難しいことはわかってました。今のことは忘れて...って、えぇ!?」
「善はいそげだし、適当な武器をあのバカどもから獲って早速出発だな」
「え、ちょっ、まっ」
「食料はアイテムボックスに入ってるし、ちょくちょく魔物狩りながらいけば問題ないかな」
「いやっ、ホントに良いんですか?」
「僕も迷宮都市に行ってみたいと思ってたし、連れてってくれるなら願ってもないことだよ」
その相方が美人なんてもうこれ以上の条件もないしね。
きっと実りのある旅になるに違いない。
「んで、最後のお願いは?」
「私とパーティーを組んで「いいよ」...即決なんですね...結構気合いいれて頼んだのに...」
そんなこんなで僕たちは出会って30分ほどで相棒になるのであった。
「ところで先ほど、アイテムボックスって聞こえたのですが...」
「あぁこれね」
とりあえずトーマを一個出してみる。
「まるでさっき収穫したばかりのような瑞々しさ...我ながらとんでもない人を味方につけてしまいましたね...」
「使えるものはなんとやらってね。まぁだから僕の方は準備も特に要らないし、すぐにでも出発できるよ」
「そうですんね...彼らももうすぐ目を覚ますでしょうし、その前に出発しましょうか」
「次によるところは決まってるの?」
「決まっています。まずは商業都市であるトロワズに向かいます。迷宮都市や王都ほどではないしろ、ギルドの規模も大きいですから、冒険者としての稼ぎ口も多いですから」
「ギルドか...」
魔物の討伐から町中の警備、はたまたペットの散歩まで何でもござれの依頼仲介所、それがギルドである。
ギルドに冒険者登録を行えば、だれでも依頼を受けることができ、この世界の収入源の1つだ
ランクが上がれば国から直接指名の依頼が入ったり、下手するとそこら辺の貴族より偉くなれるらしい。
「迷宮行くならどのみち冒険者登録はせにゃならんし、全面的に賛成だよ」
「では早速行くとしましょう。まずは森を抜けるのに3日。そのあとは道なりに進んで1週間ってところですね」
「意外と遠いんだなぁ」
「馬車があればもう少しスムーズに行けるんですけどね。トロワズで稼げたら、馬車買うのもいいかもしれませんね」
「なんか夢が広がるなぁ」
「フフッ、そうですね」
こうして、出会ったばかりの二人の旅が始まるのであった。
ようやっとスタート地点から動き出しましたね
出来るだけストレスフリーな感じで進めていきたいですな