第2話 第一歩
「とりあえず状況を整理しよう」
異世界に飛ばされたのは確定として、
まずは目の前におあつらえ向きにおかれたマニュアルだな。
ひとまず1ページめくってみようかね。
【異世界にようこそ!このマニュアルは、あなたがこの世界で生活する上で最低限必要な知識や常識を学ぶことのできるテキストになっております!】
もしかして、さっき持ち込めるものの欄に『異世界に知識』って書いたお陰でこのマニュアルゲットできたってことなのかな。とにもかくにも、これでいきなり常識の違いなんかで混乱することはなくなるかな。
続きを読んでいこう。
【まずはこの世界の基本的な知識をお教えします。】
そんな書き出しから羅列された知識をまとめるとこんな感じだ。
・この世界には名前はないが、雰囲気は中世ヨーロッパに酷似しているらしい。
・1日は地球と同じ24時間で、一年は365日。
・王国が3つ、共和国と帝国が1つずつ、そして無数の小国に別れているらしい。
・エルフや猫人属、犬人属などの亜人種族も存在している。
・奴隷が法律で認められている。
・通貨に関しては、日本円に換算すると
石貨:1円
銅貨:100円
銀貨:1000円
金貨:10000円
大金貨:十万円
白金貨:100万円
王金貨:千万円
となり、1円はこちらでは1クロークというらしい。が、基本的に取引では「銅貨何枚」みたいな感じで値段が決められているので、よほど大規模な取引でない限りは、単位を使うことはないらしい。
あと、一番大事なの項目が
・亜人種族は迫害されており、かなりの数が人身売買の被害にあっている。
ってことだ。この世界の亜人は、日本人の一般的なイメージと大差ない容姿や能力みたいだけど、絶対数も人族と比べて少ないから、どんなに魔法や身体能力が優れていても抵抗は難しいようだ。
さてさて、次のページはっと。
【次はあなた自身の能力についてです!】
キタキタ!これが知りたかったのよ。
どうやら自分の能力を確認するためには、自分がどんな力を持っているのかを問いかければ良いらしい。
...よくわからん。え
「まぁ...えっと...僕ってどんな能力をもってるのかな...?」
うおっと。そんな言葉を口にした瞬間、視界のすみによくあるゲームのステータス画面みたいなのが出てきたぞ。どれどれ...
名前:ミナセ=リュウ
年齢:18
職業:魔法剣士
筋力:S
敏捷性:A
魔力:S
知力:B
精神力:C
魅力:B
運:D
魔法適正
火:△
水:×
土:×
風:○
氷:×
雷:◎
光:◎
闇:×
スキル
・剣術Lv.極 ・体術Lv.3 ・武器エンチャント雷 ・武器エンチャント光 ・身体エンチャント雷 身体エンチャント光 ・魔力消費軽減Lv.極 ・交渉術Lv.極 ・料理Lv.3 ・気配察知Lv.3 ・異次元収納Lv.極
マニュアルによると、ステータスに関してはCもあれば一流、一芸に秀でる亜人を含めてもBあれば早々負けることはないらしい。
スキルについては、レベルが1~5あり、最終的に極までいくそうだ。
こちらは、基本的にスキル持ち自体がこの世界では稀少らしく、1つ持っているだけで、相当な職につけるらしい。
どうやら自分で入力した内容を反映してるみたい。
ステータスもスキルもなかなかのチートっぷりだし、おおかた満足できる中身だな。
自炊してたこともあって、料理スキルがあるのもなかなかよい。
運が低いのはご愛敬だな。
ところでだ。一番疑問に思ってたことについての回答はあるのかな。
とりあえずマニュアルのページを捲っていく。
内容は、ここでの美味しい食べ物や、日本食を再現するために必要な食材とレシピ。
定住するときにオススメな街など他愛のない話だった。
が、最後のページに見逃せないことが書いてあった。
【あなたのこの世界での目的は、世界を滅ぼさんとする邪神の撃破です!】
...は?
【邪神を撃破した暁には、こちらの世界に残るか、日本に帰るかを選んでいただきます!】
なるほどね。邪神を倒さないと日本へ帰れないうえに、かといってこっちの世界もいずれ滅びる...
ってもうそれ選択しないじゃん?
...邪神をどうするかはひとまず置いといてさ。
いくらステータスがすごくったって、餓死したら意味無いわけで、
確か食料とお金も要求してたはず...もしかするともしかしなくても『異次元収納』とやらのなかに入ってたりするのかな。
スキルの発動は確か、心のなかで名前を唱えれば良いんだったっけか。
...おぉ、これまたゲームのステータスみたいになかに収納されてるものが視界の端に表示されてる。
どうやら目線がカーソルの役割を果たすらしく、取り出そうと考えながら目線を合わせると
「わっと」
実際に手元に物が現れるという仕組みみたい。便利だなこれ。
ちなみに今取り出したのはトマトに似たなにかだ。名前は『トーマ』っていうらしいけど、味はどっちかというとイチゴっぽい感じだった。
トーマをかじりながら異次元収納に入ってるものを確認すると、
一人なら一月は持ちそうな食料と100万クロークが入っていた。
料理スキルもあるし、節約すれば当分の生活には困らなさそう。
自分で要求しといてなんだけど、至れり尽くせりだな。どんだけ邪神倒してほしいんだよ。
あとは現在地だな。
といっても、マニュアルにも地図は乗ってないし...
そういや、こういうときに使えそうなスキルが...あったあった。
『気配察知』
気配察知のスキルを発動すると、瞬時に周囲の地形とそこにいる動物の気配を感じとることができた。
「ん?んん?」
たくさんの動物たちの気配のなかに4つ、人の気配がある。
ただ、雰囲気がよろしくない。全員殺気だっているけど、どうやら3人が1人を取り囲んでいるみたいだ。
よし、きめた。
まずは人助けから始めよう。別に助けた相手が美人だったら良いなーとか欠片も思ってないですよ。
そうなったら行動だ。結構距離離れてるみたいだし、自分の桁違いのステータスを試すチャンスでもある。
そうして僕は、異世界での第一歩を踏み出したのだ。
次回は早速テンプレ展開です。
理想としては、適度にピンチにもなりながら、結局みんなハッピーになるような、
気楽に読める作品にしたい(願望)