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勇者の息子はゴロゴロしたい  作者: やすらぎ
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『『わはははは』』と笑い出した狐にポカンとする。


『気に入った。気に入ったぞ』

『そういうのも悪くない』

『『我ら稲荷はリヒト・カンザキを契約者とする』』


ピカッと2匹の狐は輝き、気がつくと狐は消えていた。


「良くやったぞ。リヒト。成功だ」

「よっしゃ!」


嬉しく、思わずガッツポーズ。


「もしかしてジェロも喋るのか?」

「喋らないぞ。もちろんお前の稲荷もだ。術を唱えると自動で翻訳の魔法陣が出てくるんだ。言葉が通じないと契約は難しいからな」


確かに。稲荷の質問が分からなければ絶対に契約はできなかった。上手くできてるな。


「それと次、呼び出すときは名前を呼ぶんだが、一度呼んだ名前は当たり前だが変えることはできない。しっかりと考えるんだぞ。それよりも稲荷か。懐かしいな」

「元の世界?」

「ああ。向こうの世界の神様のお使い様だ」

「2匹増えると賑やかになるな。楽しみだ」

「そうだな。また、今度みんなで顔を出しに来てくれ。稲荷達の紹介も含めてな」



世間話をしながら街へ戻り大通りで父さんとは別れた。家に帰ると2人はまだ帰って来ていないので稲荷を呼んで少し遊んだ。

最初に帰って来たのは買い物に行っていたノルで、たくさんの荷物を抱えていた。聞くところによると2日分程買ってきたようだ。


「リヒト、寂しがってるから」


そう言いながら冷蔵庫に食材を詰めに行った。寂しがってるとかそんなことないから!否定しようにも肝心のノルは向こうに行ってしまったので仕方ない。

次に帰ってきたのはもちろんレイだ。仕事場で賄いご飯が出るのだが断り、その代わり給料を上げて欲しいと言うことができたのはレイだからだろう。毎日昼前に帰ってくる。

3人揃ったことで今日の話をしようと思う。


「今日から新しく家族が増えることになったから仲良くしろよ!『ナミ』『ナギ』」


ポンっと小さな音がなり、2匹が「コーン」と回転しながら出てきた。名前は2人が帰ってくる前に考えた。日本っぽい名前にしようと父さんに聞いたところ「太郎とか花子はダメだろうから…そういえばイザナミとイザナギっていう…あれは神様なのか?まあ、よく分からんがそんな名前があったな。誰の名前かはわからんが…」とか言っていたのをもじって「ナミ」と「ナギ」にした。


「この狐達は俺の使い魔だ。可愛いだろ?2匹合わせて『稲荷』って言うんだ。黒がナミで白がナギだ」

「使い魔ですか!召喚魔法、成功したんですね。凄く可愛らしいですね」

「すごい。かわいい」


ナギとナミは2人の視線に気がつき、ナギは首を傾げナミは俺の後ろに隠れた。ナミは人見知りのようだ。


「ナギ、ナミ。背が高い方がレイ。低い方がノルだ。この2人も家族だからよろしくな」

「もう少しちゃんとした説明はなかったのですか!」


家族と聞いて安心したのかナギはレイの足元へ駆けて行った。人見知りのナミは恐る恐るではあるが俺の後ろから様子を伺っているようだ。


「レイは昼からまた仕事だよな?」

「ええ、そうですよ」

「ちょっとお金もらっていいか?市場に行ってこいつらの食べるものを買おうと思うんだけど」

「それならいいですよ」


お金を貰いノルと2匹とお買い物。今回は珍しくノルも行くらしい。レイは仕事があるのでゆっくりしてもらうとする。大通りに出ると人がいっぱいなので2匹を抱える。


「よし、ナミ、ナギ食べれるのはどれだ?教えてくれ」


俺の言葉に反応しキョロキョロと見回す。


「「コン」」

「ん?どれだ?」


ナギは右、ナミは左に顔が向いている。

まかさ食べるものが違うのか。


「じゃあまず右から行こうか」


右にあるのは果物屋さんだ。色とりどりの果物が並ぶ中、ナギが選んだのは桃だ。また高いのを…。とりあえず桃3個と柿3個購入した。柿は桃の次に反応があったものだ。

気を取り直して左に行く。左は魚屋さんのようだ。全体的に反応はしているがタコやうなぎ、貝には反応してない。とりあえず適当に3匹購入。生物なまもの多いな…

ついでに肉屋にも行く。狐って肉食だろ?案の定反応はあった。鶏肉か、お手頃だわ。

鶏肉は沢山使うので1キロほど買った。


「よし。こんなもんでいいだろ」

「布屋行く」

「布屋?まあ、時間もあるし行くか」


いざ出発したのはいいがまたこれは難しい。迷子になった?いや、違う。布屋には着いたが問題なのは客層だ。おばちゃんや若い女性、小さな子供。全て女だ。もちろん店主も女。こんな所に入るには少し勇気が必要だ。


「入りにくっ!ノル、ここで何買うつもりなんだ」

「布に決まってる。ナギとナミ、首輪必要。攻撃されてもおかしくない」

「ぐっ、確かに…」


野生動物なら追い出され、魔物なら攻撃される。白と黒の狐なんか確実に魔物扱いだ。


「ノル、ここで2匹見とけ。チャチャっと買って帰ってくるからな」

「ふぁいと」


頭の中で色だけ決めとりあえず中へ。


「いやっしゃいませ。私はナーデ。男性なんか珍しい!ようこそ私のお店に」


茶色い長い髪を頭の上で一つに束ねてる元気で明るい感じの定員さんだ。私のお店と言ってるから店長だろうか。


「俺はリヒトだ。黒い布と白い布がほしいんだけど」

「黒と白ね。了解。私の店に男性が入ってくるのは初めてよ。オープンしたのは2週間前だけどね」

「そうなんだ。それは光栄だな」

「そうね。布はどれくらい必要?」

「狐の首に巻こうと思っているんですけど。これくらいを一周できるくらいのを」


手で円を作り再現する。


「首輪にするのね。プラス料金がかかっちゃうけど留め具とか加工できるわよ」


留め具か…いいかもしれないな。布を首に巻くよりは安心できる。


「お願いします」

「おっけー。お値段はこのくらいになります」


ナーデは持っていたメモにサラサラとペンを走らせた。布にしては高いが今日の食事代よりは余裕で安いな。


「サイズを測りたいんだけど…」


少し細々と申し訳なさそうな言い方。連れてこないとダメか…

少し待ってもらい店を出てノルから2匹をうけとり店内へ。


「うわっ、可愛い!お名前はなんていうの?」

「白がナギ、黒がナミです」

「ナギちゃんとナミちゃんだね。私はナーデ。よろしくね。ちょっとごめんね。失礼します」


測りをナギとナミの首に回すが思った以上に細いんだな。測りがふわふわの毛に埋まってる。後でもふもふしよ。

測り終え、代金を払い店を出る。完成は3日程だ。楽しみだ。

することがなくなったということでとりあえず帰宅。腐っちまうからな。

家に帰ったらご飯の用意をしてごーろごろ。サイコー!ご飯はみんなが揃ってから。これ常識。



それから何の変哲のない日々。てか、料理当番最高じゃね。カレー作れば2日は何もしなくていい。カレーじゃなくても家を出る必要がない。一日中横になってもふもふして素晴らしい。まあ、それと同時に罪悪感も。ノルは置いといてレイがちょっと。週3ではあるが立派な労働。休んでもいいと言っても「いえ、大丈夫です」としか答えない。ちょっと怪しい。


「ノル、ちょっと大通り行こ。レイの働きぶりを見てやる」

「それよりも、布屋さん」


しまった!すっかり忘れていた。あの日から1週間ほど。なかなかヤバイな。あんなに楽しみにしていたのにマジリヒトクオリティ。寝たら忘れるポンコツ脳だ。能天気ともいう。


「ノル、ダッシュで行くぞ」

「ん、先行ってて」

「了解だ」


ナギとナミは後で呼ぶとしてとりあえずダッシュだ。俺の脚力舐めんな。………大通りだから走れねえけど。気持ち早めに突き進む。


「やっと着いた。あ」


店の定員さんと目があった。


「すいませーん。引き取り日は5日前なんですけどー」


結構怒ってらっしゃるようだ。


「ごめん。少し忙しくて…な?」

「仕事?」

「……まあ」

「ふーん」


このタイミングでしてないとは言いづらい。


「まっいっか。これが頼まれてた品よ」


デザインは任せっきりだったがこれはナギやナミによく似合いそうだ。

前に来る部分の方が布が大きく、首に巻くと三角になるようだ。留め具はシンプルな銀色で押し込むとカチャッとはまる。とても便利だ。

シンプルイズベストなデザインだ。でもなんか足りないな…そうだ!


「ちょっと針と糸借りていか?金は払うかな」

「ええ、いいわよ」


借りた糸は黒と白。客が俺以外にいないので奥の作業台を借りる。と言っても机と椅子しかないみたいだが。


「何をするの?」

「いやちょっとな」


失敗したら嫌なので曖昧に。

チクチクチク。…よし完成!

20分ほどで完成した。


「え、可愛い!」

「だろ。誰のものかわかるようにな」


白に布には黒い狐、黒い布には白い狐。それぞれ持ち主をモチーフにした刺繍だ。


「上手ね。刺繍」

「まあ、趣味みたいなもんだ。ナミ!ナギ!」


いきなり現れるナギとナミにキルトは一瞬驚くも使い魔だということは知っているのですぐに元に戻った。


「ナギ、ナミ俺からのプレゼントだ。これからもよろしくな」

「「コン!」」


2匹につけてあげるととても嬉しそうに走り回る。和むわ。


「物を壊すなよ。で、使用料だが…」

「そんなものいいわ。それよりも私にも刺繍を教えて!」

「え、教えるって言っても…これは経験だと思うんだけど…」

「いいの!コツとかでいいの。もちろんお金も払うわ!」

「えー、いいけど…」

「約束よ!明日の夕方から教えてもらえる?あ、仕事があったのよね。いつ頃ならいける?」

「あーいつでもいいかな」

「そう?じゃあ明日の夕方から!よろしくね、リヒト」

「こちらこそ、よろしく」


握手を交わし店を出る。

あー、これは仕事じゃない。そう!これは同じ趣味の仲間と趣味に没頭する感じだ。そう、これは趣味。暇つぶしの延長戦。


あー、明日の夕方か。楽しみのようなそうじゃ無いような。とりあえず今日はゴロゴロして明日のことは明日の俺に任せよう!


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