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アフタヌーンティーで報告会。後編。

 健康診断の結果が、一か月近く経つのにまだ届かない……。

 重篤な病の片鱗とかが書かれていたら怖いなぁ。

 ただ単に混雑しているだけなんでしょうけどね。

 


 よほど気に入ったのだろうリングシューのお代わりを食べたトリアは、口の周りについてしまった粉砂糖をぺろんと舐めて綺麗にしてから口を開く。


「まずコンラド以外の男は、股間から食われたよ」


「おぅ!」


 反射的に声を上げたチコは、わかりやすく股間を両手で隠している。

 コミカルなポーズに思わず噴き出してしまった。

 一見何の反応もなかったテオは、私の笑い声を聞いて大きく身震いしていた。

 やはりテオも恐ろしかったらしい。

 男性にとってはそれだけのことなのだ。

 性器の損失は、悍ましく絶望的に違いない。


「女は乳房から。食べ応えがないって、文句を言われてたねー」


 彼女は乳なかったもんね。

 しかも痩せちゃったから、Aカップぐらいだったんじゃないかな。


 ダナが自分の乳房を揉んでいる。

 エステファニアがそれを咎めた。

 私の前では駄目でしょうと、小さく呟かれる。

 二人が軽く頭を下げるので、気にしないでと手を振った。

 貧乳の友人がよく同じ所作をしていたので、気持ちは理解できる。


「そういえば……マンイーターって、餌の養殖はしないの?」


 男性を性器から喰らうと聞いて、ふと思い至った考えを述べる。

 私の言葉は酷く残酷だったらしい。

 全員が真っ青になり、大きく息を呑んだ。


「ああ、適当に男女を番わせて、孕ませた子供同士をまた番わせて……ってやつね。昔から模索しているんだけど、今のところ成功に至ってない感じかな。マンイーターの優秀な魔法を使っても、精神を正常な状態に保てないんだって。孕ませるまでは辿り着けても、出産にまでは至れた例がないんだ。夢のまた夢みたいよ?」


 マンイーターは森の奥深くに生息していると聞く。

 それぐらい人里離れた場所であれば、養殖も可能ではないのか?

 マンイーターと距離を取った場所で飼えば、そこまでのストレスは感じない気がする。

 良い意味で生き汚いみたいだしね、こっちの人たち。

 特に獣人。


 あとはあれだね。

 村ぐらいまで大きくしたら、定期的に人がいなくなっても、事故とか災害扱いされて、許容されるんじゃないかなぁ。


 私はそんな考えをトリアに話す。

 皆は震える手でワインを呷った。

 スライムたちは甲斐甲斐しくワインのお代わりを注いでいる。

 トリアはしばし思案してから返答した。


「うーん。そこまでやっちゃうと、マンイーターが増え過ぎちゃう気がするよ。人族にとってはよろしくないと思うけど?」


「人族にとってはか……人族って、この世界にどれぐらいいるの?」


「えーと?」


「御主人様のような純粋な人族は一億ほどと言われております……獣人は十億以上おりますので、マンイーターが増えすぎますと、必然獣人の襲われる確率が高くなるのではないかと愚考いたします……」


 意外と少ないのかな、人族。

 獣の孕みやすさを考えると無難な数字なのだろう。

 それ以外の種族もいるだろうしね。

 

「全体的にマンイーターって、少ない種族なんじゃない?」


「そうだねぇ。繁殖力も低いし、駆逐対象の筆頭ではあるよ。一時期は絶滅しかけたりもしたっけ」


 トリアが感慨深げに頷いている。

 長いときを生きるトリアとしては、必要以上に干渉したところで、利は少ないので時間の無駄。

 結局バランスが取れた形に落ち着くといったところか。

 まぁ神様が監視してる世界だしね。

 滅びはしないのなら、特に肩入れする必要もないかな。

 お世話になるなら、多少のお節介もありかなぁと思ったんだけどね。


「了解! 種族として絶滅しかけたりしない限りは、そこまでの干渉はしないことにするわ」


「……別に無理はしなくてもいいのねー。アイリーンはアイリーンの好きなようにするのがいいのねー」


 スライムたちの最優先はそれ。

 トリアもたぶんこちら寄り。

 獣人たちの瞳は怯えているが、最終的には私の判断に従う……信頼の色が見えた。


「うん。必要以上に干渉しないは、私の信条だからねぇ。んーと……食べ物が特殊ってだけで、そこまで虐げられているんだったら、ちょっと頑張ろうかなぁ……と思っただけで。そういえば、マンイーターは罪人を引き渡す取り引きだけでも、凄く嬉しそうだったっけ」


「無理をすれば遠出もできるだろうし。統率している個体は老獪だから、僕たちとの取り引きが破綻しても、群れが滅びたりはしないと思うよ」


「だよね……話がそれちゃった。リリーお勧めのホットティーを淹れてくれる? でもってトリア、話の続きをお願いできる?」


「了解なのねー。ではとっておきのホットティーを出すのねー」


 リリーがすすすっとカップを出してくれた。

 飲もうとすれば、触手に止められる。


「飲む直前に、こちらを一垂らし……」


 小型のポーション瓶のような入れ物から、ぽたりと鮮やかな青い雫が一つ転がり落ちた。

 雫が紅茶に触れた瞬間、ぶわりと香りが広がった。

 ミント系のすっとする香りだ。


「も、もしかしてそちらは! あの幻の花蜜ではないのでしょうか?」


「たぶん当たっているのねー。月光花げっこうかの蜜なのねー」


「さては希少なのね?」


 エステファニアの震える声に、リリーの自慢げな様子から見て取れる。


「甘さと爽快感が人気の蜜なのねー。栽培に成功したら一攫千金を狙える花の一つなのねー」


 これはきっと栽培に成功したな? と思いつつ、そこには触れないでおく。


 カップを覗き込めば青さは紅茶に溶けてしまったようだが、甘さと爽快感は鼻を擽った。


「ん!」


 甘い物が嫌いな人でも飲めるな、というのが一番の感想。

 それなりに甘いけれど、爽快感が強くて、そこまで甘く感じないと錯覚してしまうのだ。

 疲れているときに飲めばきっと、それは顕著なのだろう。


「美味しくて、すっきりするね。希少なら皆にも淹れてあげて。美味しさを共有したいの」


「了解なのねー」


 リリーが素早く淹れれば、皆興味津々にカップを傾けている。

 それぞれが違う感嘆の声を上げているが、全てに好意的な色が宿っていた。

 そのうちの一人のトリアは、ほうっと大きな息を満足げにつき、堪能してから話を続ける。


「現在は性器や乳房の他は、爪先程度しか食べていない状態だね。あとはなるべく精神が崩壊しないように、幻覚を見せつつ、少し太らせてから、長く楽しむみたい」


「太らせる?」


「そそ。事情があって太れない者が縋る『肉増実にくましのみ』を大量に食べさせて、限界まで太らせるんだよ。マンイーターの太らせるさじ加減って、感心するくらい上手なんだよね」


 ダイエットに苦労する人の話は聞くが、その逆はほとんど聞かない。

 特に女性は変な恨みを買ったりするので、話が表に上がってこないんだって、聞いたりもした。

 向こうでも友人と知人の間くらいにいた関係性の中で、男性女性一人ずつ太れない体質の人がいたっけ。

 理由はそれぞれ違ったけどね。

 男性が遺伝で、女性は体質って言ってたな。

 私が美味しそうに結構な量を食べるのを見て、楽しくなった&羨ましくなったって理由で話しかけられたのよね。

 二人とも良質な人間性の持ち主で、もっと親しくなりたい人たちだったんだけど、距離的に離れていたから難しかった。

 今のように転移魔法があれば簡単だから、あの人たちがこちらにいたらいいのになぁと思う。


「へぇ。知人に太れない体質の人がいたから、食べさせてあげたいわね」


「必要ならマンイーターからもらってくるよ。肉増の実はマンイーターの生息地に多くなるからね。美味しいって話だから、アイリーンも食べてみたらいいよ。一個二個なら劇的に太ったりしないから」


「ありがとう。美味しいなら食べてみたいわ!」


 こっちの私は太らない体質だからね。

 楽しく食べられそうだ。


「付け加えておくと、マンイーターたちに許可は得てるから、死ぬまでの途中経過とか見れるよ? エステファニアも見に行きたかったら声をかけてくれればいいから」


 エステファニアを名指しにして声をかけたのは、一応元夫と息子がいるからだろう。

 

「お言葉は有り難くちょうだいいたしますわ。ですがもう、彼らは私の過去なので。二度とはお会いするつもりはございません……ただ、死亡したときにはその旨だけ伝えていただけると嬉しゅうございます」


「なるほどね。了解! 死亡時には報告を入れるよ。皆も、そんな感じ?」


 虎親子に恨み辛みが一番深いのはエステファニアに違いないが、他の皆も嫌な思いはしている。

 狐家族の頭が悪い方向に回った分、純朴な狸親子や犬一家が被った害も少なくはなかっただろう。

 会いたいといえば、勿論会わせるつもりでいるし、他の要望もできる限り聞き届けたいと考えている。


「お気遣いいただきましてありがとう存じます。手前たち一同。エステファニアさんと同じ扱いでお願いいたします」


 テオの声に、犬夫婦も頭を下げた。


「じゃあ、報告会はこれで終了かなー。子供たちにも同じ物を食べさせてあるけど、家族で食べたいなら、何か持っていく?」


「そうね。夕食後のデザートになりそうな物を持っていくといいわ」


 トリアと私の提案を聞いた皆の顔に、笑顔が戻る。

 和気藹々と持って帰るデザートを選んだ皆を、同じ笑顔で見送った私も、かなりすっきりとした気分で自宅へと戻った。





 月光花 げっこうか

 満月時に花開く。

 蜜の採取は、十二時から二時までしかできない。

 掌サイズの青い花。

 香りは甘い。

 爽快感が強いので、虫には嫌われている。

 栽培不可と言われているので、希少価値は高い。


 月光花の花

 香水の材料になる。

 調香師のみ作れる。

 大量の花を消費するので作れるのは極少量。

 ゆえに希少価値が高い。

 微量な魅惑の効果有。

 +綺麗な水


 月光花の葉

 化粧水の材料になる。

 調香師もしくは薬師が作れる。

 大量の葉を消費するので作れるのは極少量。

 ゆえに希少価値が高い。

 一回の使用でも、肌がもちつるぷるになる。

 +綺麗な水、ぷるぷる草、もちもちの実、つややかな花


 月光花の茎

 肌荒れ改善薬の材料になる。

 薬師のみ作れる。

 大量の茎を消費するので作れるのは極少量。

 ゆえに希少価値が高い。

 作る工程が面倒。

 +綺麗な水、キズナオール草、ぷるぷる草、月光花の根


 月光花の根

 肌荒れ改善薬の材料になる。

 薬師のみ作れる。

 大量の茎を消費するので作れるのは極少量。

 ゆえに希少価値が高い。

 作る工程が面倒。

 +綺麗な水、キズナオール草、ぷるぷる草、月光花の茎

 

 月光花の蜜

 甘く爽快感のある蜜。

 大変美味。

 さらっとしている。

 採取に手間がかかる。

 そのままを舐めるとしばらく眠れなくなるので要注意。

 +飲み物に入れて摂取するのが効果的。


 月光花の種

 本来であれば栽培不可。

 トリアの力を借りれば、スライムたちが栽培できる。

 というか、絶賛栽培中。

 +綺麗な水



 肉増実 にくましのみ

 マンイーターの生息地になる木の実。

 椰子の実大サイズ。

 生で食べてもいいが、焼くと肉の香りがする。

 一個を生で三日、焼いて四日と一週間かけて食べるのが無難。

 一週間かけて食べきると、一キロ増える例が一番多いが、そこまで増えない場合もそれ以上増える場合もある。

 すくすくと育った木の天辺に、実だけがなる。

 ゆえに、実以外の部分に使用用途はない。

 強いて言えば樹木部分が薪として使える程度。






 喜多愛笑 キタアイ


 状態 若干興奮気味 new!   


 料理人 LV 4 


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)  


 

 体調がよくなってきたので、予約できる福袋を探さないと!

 情報を入手する頃には、完売御礼が続いて凹み気味です。


 次回は、穀物ダンジョンに行きたいなぁ……。(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。

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