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アフタヌーンティーで報告会。中編。

 ほしい福袋が瞬殺してしまう悪夢……。

 迷った挙げ句、まだ在庫があった紅茶の福袋をぽちっとしました。

 有名スコーンブランドが福袋出していたのは知らなかったなぁ。

 ら、来年頑張ろう……。

 


 こほんと咳払いするトリアの、口の端にはスコーンのかすがついている。

 近くにいたモルフォが触手を伸ばして綺麗にしていた。

 うん。

 眼福の仲良し。


「では、報告を始めるよ。まずは、驚きの開眼で己の罪を自覚した上に贖罪の意思を持てた、狐息子から」


 そう。

 最後の最後。

 マンイーターの巣への放逐が決まってしまった段階で、狐息子だけが覚醒したのだ。

 だから生きての贖いを提示した。

 瀬戸際での覚醒は物語の中でこそ、そこそこの例はあるが、現実では大変珍しい。

 

『御主人様の御慈悲には額ずいて、御礼申し上げます。大変有り難き御慈悲にございますが、我が身には余るものでございます。どうぞ、当初の予定通りの処罰をお願い申し上げます』


 地面に額を押し付けて懇願。

 子供が、自らの死を望む。

 因果が巡ってきた結果だったとしても、心が痛んだ。

 

 たぶん狐息子は思い至ってしまったのだ。

 果てしない贖いに、自分が耐えられぬ可能性を。

再び己が、罪を認識できぬ愚か者に成り下がるくらいなら、最後ぐらいは潔くと。

 死を選んだのだ。


 村長権限で生きた贖いを命ずることもできた。

 できたが、私は。

 狐息子の願いを聞き届けた。


 どうしてあのとき許したのだと、責められる苦痛に耐えたくなかったから。


 向こうの世界でさんざん経験してきた悪夢だ。

 一度許し、二度許し、三度までも許し。

 その許しが徒となり、許した相手が道を完全に踏み外してしまう末路を。

 そして、私を心底恨み、憎悪する悲劇を。


 正直今回は、許した末路が吉と出る可能性は低くなかった。

 でも私が決めた一線を、狐息子は越えてしまった……。


 私は狐息子よりも、己の安寧を選んだ。

 選択を否定する者は、この場にいない。

 今、私はとてもとても恵まれた環境にいる。

だからここまで譲歩できたのだろう。


「ペネロペの薬はさすがの効果だったよ。狐息子は全く痛みを感じていなかったみたい。しかもずうっと嬉しそうに笑っていたからさ。彼が望む幸福を夢見ていられるんじゃないかな……絶命するまでね」


「あの……トリア様」


「ん?」


「彼は……コンラドは、まだ、その……生きて、いるのでしょうか?」


「うん。生きてるよ。マンイーターは追い込まれた状況でなければ、時間をかけて捕食するからね……コンラドは三日程度で食べ尽くすらしいけどさ」


 死んでから名前を知った。

 知った以上、きちんと心に刻んでおこう。

改心もしたしね。


「他の奴らは、時間をかけて食べるって言ってたけどね」


「う。虎息子は一か月、狐夫人は半年、虎親と狐夫は一年かけるって言ってたのよ」


「餌の肉付きがイマヒトツ悪いから、太らせながら食べるとも言っていたのねー」


「え! そんな話してたっけ?」


「孕んだマンイーターたちがひそひそしていたのねー。トリアには聞こえなかったのかもねー」


「う。トリアは見るのに集中していたから、私たちは聞くのに集中していたのよ」


「あ、そうだったんだ。ありがとう! じゃあ続いて虎息子に……行く前に、上段の皿にてをつけておきたいかな?」


 糖分はこれから先の陰惨な報告後がいいのでは? と思ったが、コンラドの報告には本来想定していなかった厳しさがあったのかもしれない。


「問答無用のミルクティーは空になったから、次はリクエストを聞くのねー。シンプルなホットティー、イエローベリーティーあたりがお勧めなのねー」


「う。これからの話的にお酒もいいのよ? 両方でもいいのよ?」


 サイの言葉にチコがすかさず挙手をする。


「一杯いただけますかね?」


「チコ! すみません。チコの分は気持ち少なめでお願いします」


「了解なのねー。さっぱりするイエローベリーティーも一緒にお出しするのねー」


「ありがてぇ!」


 強くなくても飲むのが好きらしいチコが破顔する。

 ダナはやれやれと大げさに肩を竦めた。

 エステファニアはイエローベリーティーを、テオはストレートティーとブラウンワインを希望する。

 私は迷ってストレートティーとピンクワインを頼んだ。


「……こんな高級なもん初めて食うのに……懐かしい気がする」


チコがちびっとブラウンワインを飲んでから、チェリー(さくらんぼ)のクラフティを口にして呟いた。

 

 納得の感想だ。

 甘めの生地にチェリーの甘酸っぱさは、ベストの組み合わせだろう。

 向こうでは梨や桃、オレンジのクラフティも食べた。

 どれも美味しいのだが、王道はさくらんぼだと思う。

 

「あら? こっちのチェリーは種がないのかしら?」


「あるものも、ないものもあるのねー。ないものは高級種なのねー」


「う。珍しく品種改良がされている方が、野生種より美味しい果物なのよ」


 野生種より美味しい品種改良種。

 向こうでは当たり前だけど、こちらでは初めてな気がする。

「恐らくインドゥライン公爵領のチェリーだと思われますわ。彼の地が一番美味しいチェリーを作りますのよ」


 エステファニアが貴族らしい知識を披露してくれた。

 遠くないのなら一度訪れて、チェリー狩りをしてみたい。

 できるのかしら?


「しかしこちらは……味もさることながら、見た目がすばらしいですわ!」


「イートフラワー(エディブルフラワー)のババロアなのねー。上層はゼリーだけど下層はモー乳のババロアなのねー」


 二層からなるイートフラワーのババロアは、女性なら誰しも感嘆する美しさだった。

 下層は白いモー乳プリン。

 上層は透明のゼリーの中、色とりどりの花々が閉じ込められているのだ。

 

「イートフラワーは王家の管轄でございますわね。栽培も販売も制限されておりますのに……大丈夫でございましょうか」


「これは全く新しい種類のイートフラワーなのねー。王家が管轄というのなら、売り込むまでなのねー」


 おお、またスライム収納内のチート畑がやらかしていらっしゃる。


「まぁ、そうなんですのね。失礼いたしましたわ……言われてみれば確かに、初めて拝見するものばかりですわね。この青の花の……鮮やかなこと……」


 エステファニアは食べるよりも美しさに見惚れている。


「デザートですので……仄かな酸味や甘み……苦みなどを感じますね。香りは……幾多の香りがするのですが、不思議と邪魔にならない……きっと考え抜かれた組み合わせなんでしょうなぁ」


 テオの言葉に、リリーとサイが胸? をはっている。

 どうやらそこが拘りのポイントだったらしい。

 あえて、ゼリー部分を花ごといただく。

 私が食べた場所は、仄かな甘味と酸味が混じっていて、いかにもデザートゼリーといった味だった。

 ババロア部分は濃厚なモー乳のババロアで、一緒に食べると濃厚さは薄れる分、飽きの来ない味になる。

 花の香りは……やわらかくしたマグノリアが一番近いかもしれない。


「ムースも美味しかったですが、こちらも美味しいですね。このさくさく、私でも作れるでしょうか?」


 ダナはバナーナのパイに手をつけて、料理人心を擽られているらしい。

 何しろこのパイ部分、本当にさっくさくなのだ。


「料理上手なダナなら余裕なのねー。バッチリ教えるのねー。ミートパイとか、皆喜ぶと思うのね。お肉のパイなのねー」


「お肉のパイ! それなら夕食にでも喜ばれそうですね」


 ああ、そう。

 ミートパイ!

 あれも美味しいよねー。

 一瞬口の中のパイが、ミート味に変化した気がして首を振る。

 パイ生地、バナーナ、カスタードクリーム、バナーナ、パイ生地と重ねられた、がっつりバナーナのパイだというのに、ミート味はないだろう。


「マロンなど、焼いて食べたことしかなかったよ。あれはあれでスリルがあって美味しいけどさ」


 たき火の中に栗を入れて焼く方式と同じなのだろうか。

 アルミホイルに入れて焼けば安心だけど、そのまま入れると飛び出してきたりするよね。

 皮に一部切り目を入れておくといいんだっけかな?

 こちらでは、そうやって焼いているのだろう。

 飛んでくる方向を予測して避けるとか、危険な真似はしていないよね。


 ホールで作ったモンブランは切り分けて載っていたので、そのまま自分の皿へ移動させた。

 中にアーモンドクリームが入っているのが由緒正しきモンブランだが、こちらは生クリームがたっぷり入っているモンブランだった。

 大好きな店で売っていたモンブランは、更にタルト生地が超絶甘いメレンゲでできていたのを思い出す。

 

 甘さ強めでクリーミーなマロンクリームと甘さのない生クリームにタルト生地。

 これもまた至高の組み合わせである! と頷きながら、口の端についたクリームをぺろりと舐めた。


 そして、最後にリングシュー。

 シューリングという人もいたけど、正確なのはどっちなんだろう?

 ミニリングシューだったので、がぶっと齧りついた。

 口の周りに粉砂糖がついて間抜けな顔になったけど気にしない。

 クリーム系が多いよなーと思っていたら、こちらは紅茶のクリームだった。

 しかもかなりもっちりしている。

 そして美味しい。

 紅茶好きが、紅茶を使った菓子を好きだとは限らないけれど、これを食べた人はきっと好きになる。

 そんな味だった。


 甘さは溜まってしまったすさみ成分をリセットしてくれる効果があるよねーと、しみじみしたところで、トリアが再び話を始める。

 今度は本格的な猟奇描写が繰り出されるだろう。

 私はピンクワインのお代わりを所望する。

 皆もそれぞれお酒を求めてトリアの話に備えた。





 チェリー(さくらんぼ)のクラフティ

 ランクSS

 簡単にできるので比較的名の知れたデザート。

 ただし使う材料で味はかなり変わる。

 一般家庭では、ランクAが限界。

 インドゥライン公爵領のチェリーでも最高品質を使えば最高ランクに。

 病気回復促進効果大

 食欲不振改善効果大

 美肌効果大



 イートフラワー(エディブルフラワー)のババロア

 ランクSSS

 モー乳ババロアの上にイートフラワーのゼリーが載っている、二層構造。

 チートなスライムによるオリジナルイートフラワーを使用しているので、最奥ランク。

 王族と取り引きをしたら、イートフラワーだけで三代は食べていける成果となる。

 リリーの高笑いはスルー一択すべし。

 アレルギー改善効果大

 更年期症状緩和効果大

 肝臓保護効果大


 

バナーナのパイ

 ランクSS

 パイ生地、バナーナ、カスタードクリーム、バナーナ、パイ生地と重ねられた正方形のミニサイズパイ。

 パイ生地がさっくさく。

 生クリームやバニラアイスなどを別添えにすると最奥ランクに。

 便秘&下痢改善効果大

 疲労回復効果大



 マロンのタルト

 ランクSSS

 中に生クリームが入っている変わり種タルト。

 鉄板のアーモンドクリームでも、最高ランク。

 使われているマロンはエルフが管理している特級品。

 リリーがエルフに交渉して手に入れた模様。

 老化防止効果大

 高血圧予防効果大

 貧血予防効果大



 リングシュー

 ランクSSS

粉砂糖がたっぷりかかっている。

 中身はもっちりした紅茶クリーム。

 鉄板の生クリームでも、最高ランク。

 崩れやすいので食べにくいが、その点も上品とされる。

 鎮静効果大

脂肪吸収抑制効果大

 血糖値上昇抑制効果大





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 心身ともに良好  


 料理人 LV 4 


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)  



 ……完売していても、追加販売がないかなぁと期待してしまう今日この頃。

 人気福袋だと時々あるんですよね、追加販売。

 洋服福袋が買えないとなると、食品福袋に走ってしまうのは駄目な傾向だと自覚しています。


 次回は、アフタヌーンティーで報告会 後編(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。

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