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朝昼兼用カッペリーニ。

 今まで、どうしてこんな良作が書籍化されないのかしら? と首を傾げていた作品が書籍化する模様!

 書き下ろし特典もあるので、版元の通販を利用しようと予約しに行きました。

 送料無料にしたくて購入を迷っていた別作品の購入を検討中……。

 


 サイが並べてくれた食材を前に、手順を考える。


「う。何をすればいいのよ?」


「じゃあ、ベーコンとキャノベツのコンソメスープをよろしく」


「う。了解なのよ!」


 皆にも振る舞いたいのか、サイのスライム収納から大きな麺茹深鍋が取り出される。

 大量に作るらしい。

 私もカッペリーニを茹でるように同じ物を出してもらった。


「う。彩りを考えてジンニンも入れるのよ?」


 提案には当然大きく頷いておけば、サイは御機嫌に食材を切り始めた。


「さて、と」


 私は冷製カッペリーニの味付けに思いを馳せながら、食材を切る。

 ニッキーズは山型、スーナも同じ、トメトは迷って角切りに。

 丸形も崩れなければ見た目は綺麗なんだけど、結局途中で崩れるから採用するなら後載せなのだ。

 一緒に炒めるのには向かない。


 すりおろしたニンニクとオリーブオイルをフライパンに放ちながら、香りが出るまで炒める。

 食材にホワイトロックソルトを加えて味の調整を試みつつ、ニッキーズとスーナを入れた。

 適当に掻き混ぜて、満遍なく食材を炒める。

 トメトは軽く火が通る程度で問題ないから後入れだ。


「う。カルパッチョの食材も切っておくのよ。愛には味付けをお願いするのよ」


「了解です。料理長!」


「う。料理長は何時でも愛なのよ?」


 スープが煮込むだけになったようで、サイはカルパッチョの下準備も引き受けてくれた。

 包丁使いの上手いサイならではの、手際の良さだ。


 トメトを入れて軽く炒めてから火を止める。

 粗熱が取れたら適温まで冷やす予定にして、フライパンごと離れた場所に置いた。


 皿の上へ綺麗にスライスされたスズキサンが並べられるのを眺めながら、調味料を手にする。

 私のカルパッチョレシピは、基本オリーブオイル、イエローベリー、ホワイトロックソルト、胡椒で仕上げていた。

 オリーブオイル大さじ一、イエローベリーの果汁小さじ一。

 胡椒は一振り、ホワイトロックソルトは二振り。

 一般的なレシピよりオリーブオイル少なめかもしれない。

 大体は他の料理にもオリーブオイルが使われているので、あえて少なめにすることが多いのだ。


 小さいボウルに入れた調味料をよくよく混ぜる。

 ホワイトロックソルトが微妙に形を残しているかな? 程度で切り上げた。


 サイがドヤ顔で綺麗に盛り付けたスズキサンの上、更に飾られた野菜に目を細めて、ボウルの中身を満遍なく回しかけた。


「まぁ、綺麗! そして、美味しそう!」


「う。どちらも料理には重要要素なのよ。飲み物は何か用意するのよ?」


「パスタ……すたぱ? にあう飲み物って、何なのかしらねぇ。向こうだとアイスティーが多かった気がするけど」


「う。時間的にはランチだからワインでもいいのよ?」


「あー、そっか。イタリアの人なら間違いなくその選択なのかもね」


 今までパスタはランチタイムに食べることが多かった。

 だから、お酒は選択肢の外にあったのだ。


「じゃあ、ワインと一緒にいただいちゃおっかな」


「う。さっぱりした冷製カッペリーニには辛口のホワイトワインか、濃厚なブラウンワインをお勧めするのよ」


「ブラウンワインか……いつもは違うワインを頼んじゃうから、この機会に飲んでみようかしら?」


「う。いいのよ。最高級のブラウンワインをお出しするのよ」


「はははは。お手柔らかにお願いしますデス」


 冷やすべき物を適度に冷やしながら盛り付けていく。

 サイはブラウンワインの手配をしてくれた。


「ん! 新作の気配がするの!」


「オリーブオイルとニンニクの香りは至高だと思いますわ」


「食欲の出る香りなのです」


「おそようなのねー。皆もちょうど昼ご飯にしているところなのねー」


 食卓が調う頃合いに他のスライムたちが戻ってきた。


「ははは。おそようでごめんね。向こうは何を食べている感じ?」


「ん! パンと取れたて野菜たっぷりのスープなの」


「あら、それで足りるの?」


「今まで三食食べるなんて、夢のまた夢の生活をしていましたもの。十分ですわ。パンも食べ放題ですのよ?」


「肉とか魚分は?」


「それは夜に食材提供の予定なのです。夜にはポークの肉を出す予定と話したら、皆のやる気も上がったのです」


「甘やかしすぎは厳禁なのねー。心配していた『つけあがり』は見えなかったのねー」


 スライムたちの過保護は今に始まったことではない。

 ここは大人しく静観するべきなのだろう。


「見せつけ小屋の住人は?」


 その言葉を口にした途端。

 揃ってスライムたちの眉? が顰められた。


「ん! 能なしばかりで、嫌になっちゃうの……」


「未だに一匹の魚も釣れていませんのよ!」


「虎親子の集中力が切れて、一定間隔で川の中へ入って暴れるせいなのです」


「狐家族は川の水で身繕いをしたけど、虎親子はそれすらしないから、酷い悪臭で魚が近寄ってこなかったのねー。上位種の悪臭は危険と認識されるのねー」


 あれほど魚が豊富な川を前にして一匹も釣れないのが不思議だったが、理由を聞いて納得した。


「ん。皮肉にも川の中で暴れたせいで、悪臭が落ち着いたから、我慢すれば午後には魚が釣れるかも、なの」


「狐家族が虎親子と距離を置ければ、釣れそうですわ」


「皆はそれができると思うのです?」


「釣った魚を横取りして貪り喰らう子虎の様子しか、想像できないのねー」


 リリーの発言に、揃って頷くスライム一同。

 私もその意見に賛同だ。

 釣った魚を食べて良い権利などないのだと、子虎は思っていないだろう。

 もしかすると、親虎も思っていなそうだ。


「ん。ペネロペは朝の分も昼の分も、会心のキノコ料理を用意していたから残念がっていたの」


「そうですわねぇ。趣味が大半とはいえ、ペネロペの苦労も報われないとおかしいですわ」


「魚が釣れなくても、頑張りを見せた者にのみ与えるという手もあるのです?」


「そのあたりはまぁ、結果を見て考えてもいいのね?」


「意にそぐわない相手をどうにかしようと考えるのも、消耗するわね……さぁ、美味しくできた昼食をいただきましょうか!」


「……あら? 愛は朝昼兼用なのではなくて?」


 意地悪げなローズの言葉は、さらっとスルーしておく。

 

「いただきまーす!」


 私の声にスライムたちも揃って、同じ言葉を使う。


「う! スープの味はどうなのよ?」


 味付けまで自分で行ったサイが、皆に感想を問うている。


「美味しいですわ! この厚切りベーコンの食べ応えが至高でございましょう?」


「彩りもいいと思うのねー。向こうの具沢山スープを見ていたから、ネギタマを入れてもよかったかもと思うのねー」 


「う。なるほどなのよ。参考にさせてもらうのよ」


 厚切りベーコンにざく切りキャノベツと、拍子木切りのジンニン。

 コンソメは少し弱いけど、ベーコンの味があるからむしろ薄めが正解だろう。

 毎日食べても飽きが来ない味付けは、なかなかできないと思う。

 香り付けと食感も考えた刻みネギシロのトッピングもありかなぁ。

 

「……ネギシロ。う。さすがは愛なのよ。今後は薬味も考慮するのよ」


「これでも十分美味しいと思うけど?」


「う。毎日飲めるという感想は嬉しいのよ。でも愛と一緒に模索するのも楽しいのよ」


 またしても可愛い発言をしてくれるサイを、高速で撫ぜておく。


 食事中なのです。

 私を撫ぜてもよろしくてよ?


 サクラとローズの眼差しには小さく頷いて、二人にも一撫ぜした。


「ん! スズキサンのカルパッチョが美味しいの」


「う。イエローベリーのさっぱり感が好みなのよ」


 褒められた。

 誰に褒められても嬉しいが、やはり魚関係に強いサイに褒められると喜びは二倍だ。


「カッペリーニも美味しいのです。評価ランクがイマヒトツなのが悔しくて仕方ないのです。布教、するのです!」


 すたぱもどきによる、各種すたぱは存在するのだが、専用包丁を使える者が少ないのと、量こそが全て! みたいな世界なので、極細麺の評価が低かったようだ。

 サクラが珍しく語気も荒く、フォークを握り締めている。


「細麺は品が良い、見た目も良い、ダイエットにも良い……その切り口で、王女や高位貴族夫人たちに薦めるのがいいのねー。やはり教会を使うべきなのねー」


 サクラの怒りに反応したリリーが、例によって悪巧みを始めてしまった。

 アランバルリを通して、教会には公式に足を運んでおくべきだろう。

 少なくともリリーは今後もやらかす気満々なのだから。


「それはさておき。肝心の、お味はどうなのよ?」


「勿論美味しいのです! オリーブオイルと相性の良いお野菜が、細麺のカッペリーニによくよく絡んで、つるんと口の中に入ったと思ったら、ふわっとニンニクの香りが鼻を優しく擽るのです」


「むー。いいところの感想をサクラに取られてしまったのねー。ここのレシピにプラスお肉やお魚を入れたら、男性にも人気になると思うのねー」


 美味しかったのなら、何よりだ。

 確かにこのカッペリーニをベースに、肉や魚を追加投入しても美味しさは損なわれないどころか倍増するかもしれない。

 皮がぱりっとする感じに焼いたクックルーや、アンチョビのような、塩気の強い魚を追加したら、合う気がする。


「う。ブラウンワインの味はどうなのよ?」


「そうねぇ。苦みと渋みが強いと聞いていたけど、そこまででもなかったわ。思ったより飲みやすくて驚き。ただ、アルコール度は普通のワインより強い気がするのよ。この時間に飲むと罪悪感があるわねー」


「う。さすがの感想なのよ。このブラウンワインはSSSランクなのよ。ローズが愛のために頑張って改良したのよ」


「そうだったんだ! ありがとうね、ローズ。すごく好みだわ!」


「ふ。庇護するものとして、当然のお勤めですのよ?」


 ツンデレごちそうさまです! と心の中で、叫びながら私は、ローズに向かってブラウンワインの入ったグラスを掲げてみせた。





 トメト、ニッキーズ、スーナの冷製カッペリーニ

 ランクS

 スライムたちは納得していない評価。

 広まりさえすれば最高ランクの評価が出るらしい……。

 暑いときに出せば、食欲のない人も美味しく食べられる点でも、高評価が狙える予感。

 冷感効果大

 美容効果大

 肌荒れ改善効果大


 ベーコンとキャノベツのコンソメスープ

 ランクSSS

 ベーコンが使用されると基本最高評価。

 シンプルで美味しい。

 毎日食べても飽きが来ない食べやすい味。

 +ネギタマレシピもオススメ。

 ストレス緩和効果大

 疲労回復効果大

 痛み止め効果大


 スズキサンのカルパッチョ レッド&イエローパプリカ、グリーンスパラー載せ

 ランクSSS

 味付けの良さ、彩りの良さで最高ランク。

 魚を生で食べる習慣はほとんどないが、これを出されたら大半の人が魚好きになること請け合いの一品。

 口内病予防効果大

 骨強化効果大

 暗視効果大


 ブラウンワイン

 ランクSSS

 ローズが頑張って作り上げた最高傑作。

 流通しているブラウンワインの最高峰でSランク。

 酒好きなら、100%籠絡できる予感がするらしい。

 困ったときの贈答用に。

 




 喜多愛笑 キタアイ


 状態 心身ともに良好  


 料理人 LV 4 


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)  



 

 目医者に行くついでに、いろいろな用事を済ませようとメモに書いていたにもかかわらず、忘れてしまった用事がありました。

 別日に振り替えられる用事で良かったです。

 とほほ。


 次回は、勘違いをする奴隷たち。(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 次回も引き続き宜しくお願いいたします。

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