スライムたちに心配された。
何時になったらデトックスウォーターを、デトストックウォーターと間違えないようになるんだろう。
そもそもデトストックって言葉はないんですよね……。
盗賊退治完了の宴は好評のうちに幕を閉じた。
屑以外の皆は穏やかに談笑しながら与えられた家へと戻っていく。
エステファニアはなんと!
アランバルリと一緒に、帰宅した。
アルマとテオがそんな二人を寂しそうに見送ったが、最後にはお互い顔を見合わせて、満足げに笑って家へ入っていった。
隔離部屋は、そのまま放置。
屑たちが目覚めたところで、悪臭の酷さに再び眠りにつけるかどうかは甚だ疑問だ。
ペネロペの、食事提供のときにはキノコ料理を堪能させるために消臭だけすればいいのですよ! という主張に、大きく頷いて賛同しておく。
隙を見て細やかな掃除をしてくれるルンとピュアのお蔭で、何時も綺麗な自宅へと足を踏み入れる。
寝る前にお酒を抜いておこうと、風呂魔法のミストサウナを発動した。
細やかな霧が全身を包み込む心地良さに目を細める。
勿論スライムたちも一緒に体験中だ。
目をうっすらと開ければ、思い思いにミストサウナを堪能するスライムたちが映り込む。
うん、可愛い。
サウナの我慢大会的な汗の流し方も乙だとは思うが、酒を飲んだあとは特に負担の少ないミストサウナが好ましい。
肌が潤うのもポイントが高いと思う。
エステファニアとダナも喜びそうだ。
もっと信頼関係が築けたら一緒に入るのもいいだろう。
何となく酒が抜けきったのを感じたので、ミストサウナを止める。
温風機能を発動させて、全身に風をあてた。
サクラが甲斐甲斐しく髪の毛を梳いて温風を通してくれたので、いい感じに乾く。
温風で肌がかさついたりはしないようで、もちぷる肌が嬉しい。
バスタオルを使う必要もなく、サイが差し出してくれた水を飲む。
いろいろなフルーツの香りがした。
どうやらフルーツ満載のデトックスウォーターのようだ。
炭酸入りも美味しそうだよねーと思いつつ、モルフォが用意してくれたシルコットンの下着とルームワンピースを着る。
寝室はホワーンラビットの毛皮を隙間なく敷いてあるので、素足でも大丈夫なのだ。
「うーん。一仕事終えた感じ!」
「盛りだくさんだったからねー。愛はしっかり休んだ方がいいのねー」
「そうですわねぇ。できれば数日一人で家に籠もることをお勧めしますわ。良い意味でも悪い意味でも……獣人たちは『人』に近いですもの」
ローズの言葉に苦笑する。
言われて自分が随分消耗していると自覚した。
他人と濃厚接触したとき特有の疲れだ。
「ん。愛が籠もれば、必然的に皆や屑たちの心理状態も変化すると思うの」
「う。大丈夫だと思うけど、皆がつけあがる可能性も捨て切れていないし、屑が暴走してしまう可能性も高いのよ?」
皆がつけあがるとは思わない。
獣人だけでなく、トリアやカロリーナ、ペネロペとてあり得ないだろう。
「愛は優しいのです。思慮深いのです。だからこそ、疑ってもいいのです。屑どもへの報復を見た皆は、穏やか過ぎるのです。子供たちで、すらも……」
ああ、なるほど。
本人たちが意識せぬうちに、屑を厭うあまり、道を踏み外してしまう気配があると、そう言いたいのか。
「皆が堕落したとしても、愛に仇なす確率は低いのねー。でも、堕落した皆を見て愛が悲しむ確率は高そうなのねー」
「私たちは、それが、とてもとても、心配なのですわ……」
デトックスウォーターの中に入っている氷が溶けたのか、かろんと涼しげな音を立てた。
私は少しの間、カップを揺らして氷がぶつかる音を楽しむ。
スライムたちは私の言葉を静かに待った。
「安心して。その点の覚悟は完了しているから。それもひっくるめて私は皆を抱えるわ」
正直、今まで散々辛酸を舐めてきたのだ。
多少の堕落はむしろ許されてしかるべきとすら思う。
死ぬギリギリまで追い詰められたのだ。
屑どもを彼女たちの手で、もっと、もっと、もっとっ!
追い詰めてもいいだろうと。
「ん。愛が強いのはわかっているの。でも心配してしまう私たちを許してほしいの」
「う。できればやっぱり頼っても欲しいのよ?」
可愛いだけでなく、どこまでも優しいスライムたち。
この子らがいる限り、私は堕落も絶望もしないだろう。
これからいろいろと待ち構えている難事をも乗り越えられると、信じられるので。
この程度なら余裕で抱え込めるのだ。
「ふふふ。今ですら十分過ぎるほど頼っているのに?」
「まだまだ足りないのねー。愛は私たちにもっと依存すればいいのねー」
「私たちは愛がいないと生きていけないのです。依存しすぎているのです。だから余計な遠慮は無用なのです」
少しでも卑下してみせれば、否定してくれる。
スライムたちは私が死ぬ最後の瞬間まで、私の望みを叶え続けてくれるのだろう。
「ありがとう……これからも、頼らせてもらうから。皆も遠慮なく、私を頼ってね」
カップを置いてベッドの上へ横たわる私の、体の上へスライムたちがぽんぽんと順序よく飛んでくる。
ぽよぷよと肌の上で弾むスライムたちの体温は、何時だって心地良い。
泥酔した状態から不快感だけを抜き取ったような心地に浸る間もなく、深い眠りが一気に私を飲み込んだ。
寝過ぎたとき特有の気怠さを覚えながら、ゆっくりと体を起こす。
ベッドの上で大きく伸びをしても、スライムたちが体から落ちてくる気配はなかった。
既に起床済みなのだろう。
「あー、ふぁ! よく寝たわ~」
しぱしぱと瞬きしていると、サイがベッドへ乗ってきた。
「う! お寝坊さんなのよ?」
「うん。寝過ぎで体が軋んでいる感じがするよ! 今、何時ぐらいなの?」
「う。そろそろお昼ぐらいなのよ」
「おお。朝食を食べそびれた!」
「う。食いしん坊さんなのよ? 朝昼兼用の御飯はすぐに準備できるのよ。何か希望はあるのよ?」
昨日しっかり食べたから、朝食抜きでもそこまでおなかが空いているわけでもないんだけど……。
「あーそういえば、パスタって食べてないなぁ」
「う! 生きのいい『すたぱもどき』の養殖はばっちりなのよ」
「へぇ。すたぱもどきっていうんだ?」
「愛が好きなカッペリーニもできるし、マカロニやラザニアなんかも、すたぱもどきからできるのよ」
「おぉ、すばらしい!」
そしたら冷製パスタをカッペリーニで作るかなぁ。
トメトのみでもいいんだけど……せっかくだから、ニッキーズとスーナも入れようか。
そうするとスープはコンソメ系がいいよね。
うん。
ベーコンにキャノベツでシンプルに仕上げよう。
昼食っていわれると、肉か魚も使いたくなるよね。
あーでも、ベーコンが入っているから、サラダの方がいいかしら?
「う! 魚を使ったサラダにするっていうのも、ありなのよ」
「なるほど……あぁ、カルパッチョにしようかな」
「う。重すぎなくていいと思うのよ」
シーニンもいいけど、スズキサンがよさそう。
合わせる野菜はパプリカがいいんだけど……。
「う。レッドパプリカ、イエローパプリカ、オレンジパプリカ、グリーンパプリカがあるのよ。グリーンパプリカは所謂ピーマンなのよ」
よしよし。
そうしたらレッドとイエローをみじん切りにすると綺麗よね。
グリーンスパラーも茹でて薄切りで載せるのもよさそう。
「そうしたら……トメト、ニッキーズ、スーナの冷製カッペリーニ、ベーコンとキャノベツのコンソメスープ、スズキサンのカルパッチョ レッド&イエローパプリカ、グリーンスパラー載せでいこうと思います! お手伝いよろしくねー」
「う。了解なのよ! 愛は本当に料理が好きなのよ?」
「ふふふ。そうね。サイが作ってくれた御飯をいただいても良かったんだけどね。少人数御飯だと思ったら、作らなきゃっ! て思っちゃったんだー」
「う。新しいメニューが増えるのは大歓迎なのよ」
簡易キッチンを展開するそばで、サイが必要な食材を並べてくれる。
私はエプロンをすると、専用包丁を握り締めた。
「そういえば、皆はどうしてるの?」
「う。屑たち以外は皆仲良く朝食を食べて、働きに出ているのよ。采配はリリーとトリアがやっているのよ」
「ああ、あの二人に任せれば安心ね」
「う。屑どもには釣りをやらせているのよ」
「え! 釣り?」
あまりにも簡単な仕事に思わず声が大きくなる。
「う。釣り。じっとしているのが苦手な虎親子は発狂寸前なのよ。狐家族もそれに釣られて集中できないから、未だ一匹も釣れないのよ」
正直村の中に流れる川は、子供が竿を投げても釣れるレベルに、魚がたくさん生息している。
それなのに釣れないのはどういうことなのか。
「う。釣れないと食事を出さないといったから、頑張っているのよ。でも焦りが酷くて結局、まだ釣れていないのよ。サクラ予想では今日一日で、狐親子が釣れるかどうかなのよ」
サクラ予想はまず当たるだろう。
するってーと、虎親子は丸一日食事抜きが決定のようだ。
狐親子がまずい食事を彼らに分け与えるかどうかは、微妙なところだと思う。
すたぱもどき
希少種 亜種
最高の環境で分裂増殖したので、最高品質のまま生息する亜種となった。
カッペリーニ、フェデリーニ、スパゲッティーニ、スパゲッティー、リングイネ、マカロニ、ラザニア、フェットチーネができる。
専用包丁を使うと、各種すたぱになる。
茹でるのが一般的。
+オリーブ、トメト、ニンニク
パプリカ
レッド、イエロー、オレンジ、グリーン(ピーマン)の四種類。
一つの苗に四種類の実ができる。
どの色ができるかはランダム。
掌サイズが一般的。
若いと苦いので完熟後の収穫がお勧め。
野生パプリカの実
料理の材料になる。
完熟なら生がお勧め。
若いなら火を通すべし。
+オリーブオイル
野生パプリカの花
サバイバル料理の材料になる。
処理に失敗すると不味い。
この世界では使い物にならない素材として捨てられている。
+湯通ししてそのままで。
野生パプリカの葉
料理の材料になる。
枯れる直前が美味しい。
火を通すべし。
+みりん、薄口醤油
野生パプリカの種
栽培できる。
+綺麗な水
ベーコン
燻製機でスライムたちの手によって作られた加工肉。
抜かりなくロースベーコン、ショルダーベーコンも作られている。
安全安心の無添加。
+フェットチーネ、ネギタマ、チーズ、生クリーム、クックルーの卵
デトックスウォーター
ランクSSS
イエローベリー、オレンジベリー、レッドベリー、パープルベリー、グリーンベリーのベリー尽くし。
とても飲みやすく、見栄えもいい。
残り物フルーツが使い切れるレシピとして、人気が出ること間違いなし。
美肌効果大
腸内改善効果大
むくみ改善効果大
喜多愛笑 キタアイ
状態 心身ともに良好
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
昨日見た夢が、呪いと思っていたそれは、お地蔵さんのお礼参りだった! というものだったんですが、目覚めた瞬間、詳細を忘れちゃったんですよね。
文章に起こせば、そのままホラーカテゴリに短編としてあげられそうだったので、悔しいです。
ほぼ毎日夢を見るので、完璧に覚えていられたらいいのにと思います、ネタ的に。
次回は、朝昼兼用カッペリーニ。(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
次回も引き続き宜しくお願いいたします。