盗賊退治完了の宴。……ます! 後編。
サイダーかんを知って、作りたくなりました。
サイダーを買ってきたのですが、作る前に飲み干しそうで困っています。
早く作らねば……。
子供たちがゼリーに釘付けの間。
大人たちが手を伸ばしたのは、ムース三種類だった。
「……これはまた……レッドベリーのムースと、同じデザートとは思えません!」
アランバルリがヨーグルトムースを口にして、大きく頷いている。
声のトーンからして感動している模様。
そういえば、アランバルリも甘い物が好きな男性だった。
「ヨーグルトムースはメインの食材が果物じゃないから、他の二種類とも感じが違うわね。ちなみに制作者はカロリーナよ」
「気に入っていただけたなら恐縮ですわ~」
カロリーナがにっこりと穏やかな微笑を浮かべながら、制作者の喜びを伝える。
ラミア種とは思えない癒やし系だ。
性格もそうなんだけど、巨乳も癒やしだよね。
……そういえば、アランバルリってカロリーナの巨乳に興味を見せないなぁ。
は!
もしかして貧乳萌の人かしら。
エステファニアもどちらかといえば巨乳だから、もしそうだったら、悲劇的……いやいや私は何を考えているんだ?
恋愛脳とはほど遠い性質だと自覚しているが、自分の庇護下に置いた人には幸せになってほしいと必要以上に手を貸してしまう、困った性分なのもまた自覚している。
「……やはり女性たるもの、料理だけでなく菓子作りにも勤しむべきでしょうか?」
「勤しむべき、とは思わないけど。学びたいなら一緒に料理するといいんじゃない?」
「まぁまぁ~! 私など、人様に教えるなんてまだまだですわ~」
「カロリーナさんさえよろしければ、是非学ばせてくださいませ!」
「あ! 私も子供らに食べさせたいので、御主人様の許可がいただけるようでしたら、学びたいと思います……私はこの、ブラックベリームースが好みですね。このちょっとすっぱい感じが残っているところが、たまりません!」
ダナが実に母親らしい発言をしながら会話に入ってくる。
大所帯になったので、料理人は多い方がいいだろう。
村の運営が落ち着けば、スライムたちを連れてダンジョン攻略の旅とかにも出たいしね。
留守を守ってくれる人たちには、美味しい食事を堪能してほしいからさ。
「私はバナーナのムースが一番好ましいですわ。懐かしい感じがいたしますの」
「子供が好きそうな味でもありますよね……ほら! ゼリーばっかり食べてないで! こっちのムースも食べるといいよ。凄く美味しいんだから!」
ダナが子供たちを呼び寄せる。
アルマも一緒にやってきた。
スプーンで口の中へ、一口ずつ入れてあげている。
三人が幸せそうに食べるのを、ダナはその三人よりも幸せそうな顔で見つめていた。
こうして、自分の手で。
満足のいくまで食べさせたかったのだろう。
「……私も、あんなふうに。自分の子供を愛したかった、ですわ」
「これから愛せばいいのではないでしょうか? エステファニア殿はお若く美しい。新しい伴侶やその子に、御自分が考えておられる愛情を注がれればよろしいかと思います」
ぽつりと零れたエステファニアの細やかな願いを、アランバルリが拾う。
二人の間にほんのりと甘い空気が流れた気がした。
ブラックベリー(カシス)ムース
ランクSSS
ゼラチンが使われているので最高ランク。
サイの解体により不純物が丁寧に取り除かれているので、ピューレの状態でも最高ランクで取り引きされること請け合い。
酸味と甘味のバランスが秀逸。
ホワイトラムが仄かに香る大人の味。
肩こり改善効果大
冷え性改善効果大
眼精疲労改善効果大
ヨーグルトムース
ランクSSS
ゼラチンが使われているので最高ランク。
さっぱりとした優しい風味。
子供に人気。
ムースの上に飾り物を置くと映えるのでお勧め。
虫歯予防効果大
高血圧改善効果大
整腸作用効果大
バナーナ(バナナ)ムース
ランクSSS
ゼラチンが使われているので最高ランク。
完熟バナーナを使用しているので、砂糖控えめでも十分な甘さを感じる一品。
子供に人気。
ドライバナーナを飾ると食感も楽しくなること請け合い。
免疫力上昇効果大
集中力上昇効果大
便秘・下痢改善効果大
「野菜がこんなに甘いって、子供の頃からわかってたら、俺。野菜好きになっていたかも!」
「これは御主人様だからこそ、出せる味なのでは?」
「こちらのプレーンと食べ比べると、野菜の甘さがよくわかるよ!」
「おお、トリア殿。恐縮です」
チコがボカッチャとモイサツマのスコーンで、野菜の甘みを実感しているようだ。
プレーンと食べ比べると、実に良くその甘さが理解できる。
さすがはトリアだ。
何しろプレーンもボカッチャとモイサツマのスコーンも、砂糖を全く使用していないのだから。
「あとはこの、さくっとした食感もいいですよね」
「ああ、何かこう。美味い音って感じがしないか、さくっ! て」
「へぇ、チコって結構詩人なんだねぇ」
食において食感は重要だと、個人的には思っている。
さくっというのが美味しい音だと言われれば、なるほどと頷いてしまう。
「いやー照れますよ、トリア殿」
「あと手前たちには食べ応えも重要ですよね。これ、腹持ち良さそうです」
「それな! 重要だよな!」
シンプルなスコーンたちは男性陣にも好評らしい。
おやつタイムだけでなく、朝食に出すのもありかなぁ。
プレーンスコーン
ランクS
シンプルだけに極めるのが難しい。
数をこなして最高ランクを目指そう!
さくっとした食感。
しっとりタイプも作ってみるといいかも?
朝食にもあう。
美肌効果有
ボカッチャとモイサツマスコーン
ランクSS
ボカッチャやモイサツマが嫌いな人でも食べられる美味しさ。
野菜嫌いの子供には特にお勧め。
安価におなかが膨れるお得感満載スコーン。
ボカッチャやモイサツマの食感に工夫をすれば最高ランクになるかも?
むくみ改善効果大
老化防止効果大
「じゅわわー」
「じゅわわわわー」
「じゅ、わ、わーわー」
バターケーキを口に入れた子供たちが何やら盛り上がっている。
恐らく口の中にバターがじゅわりと滲み出る感覚が面白かったのだろう。
「カロリーの鬼だとしても、美味しいよね……」
「カロリーって、何ですか、御主人様?」
「生き物が生きるのに必要不可欠なもの。ただし取りすぎると太ってしまう恐ろしいもの……かな」
「鬼、は?」
「本来は種族の一つだけど、この場合は凄く多いってところかな」
「……たくさんたべると、ほかのたべものよりもふとってしまうのかなぁ?」
「うん。アルマ正解!」
「乙女の敵ですね……こんなに美味しいのに!」
「俺には関係ねー。好きなだけ食うぜ!」
「わたしも、たべちゃう!」
「うううう……私も!」
ドラもバターケーキの誘惑には勝てないようだ。
まぁ、乙女の敵だけど、頑張れ!
美味しいに負けたところで、まだまだ痩せている子供たちは、働き者だ。
しばらくはむしろ負け続けを推奨したい。
バターケーキ
ランクSS
バターをたっぷり使ったハイカロリーなケーキ。
滲み出るバターに背徳感を覚える女性は多いだろう。
シンプルなレシピなので、これもまた数を作れば最高ランクに到達できそうだ。
バターケーキの生地をベースにすれば、無限のレシピが展開できる。
胃病予防効果大
肌荒れ改善効果大
「るっるるー」
「みっみみー」
ルンとピュアがロールケーキを堪能しているようだ。
しかしこの二人?
二体?
いつも一緒だよね。
仲良きことは美しきかな……。
「るふ?」
「みふふ?」
「生クリーム以外のロールケーキねぇ。あるよ。食べてみたい?」
「るふふ!」
「みふー」
ルンは是非とも挑戦したいが、ピュアはこれ以上のロールケーキはないから、特に食べたいと思わないそうだ。
随分と気に入ったらしい。
「るふ?」
「生クリームにあうフルーツを一緒に巻くのが多いよ。フルーツロールケーキっていうんだ。あとはチョコレートロールケーキとか、抹茶ロールケーキあたりもメジャーかなぁ? でも基本はこの生クリームのみのロールケーキだね」
「るふふ!」
「……みふ」
全部食べたいとルンは言う。
ピュアもそんなに種類があるなら挑戦するのも吝かではないようだ。
似たような嗜好だと思っていた二人だが、随分と違う嗜好を持っているらしい。
常に一緒にいるのに、それが原因で仲違いしないのは、正直凄いと思ってしまった。
生クリームたっぷりロールケーキ
ランクSS
生クリーム好きにはたまらないロールケーキ。
甘さは控えめで乳臭い生クリームが好きな人にとっては最高ランク。
生クリームは軽めと重めの中間で、食べ応えはあるが胃もたれはしないようだ。
生クリームを控えた物をベースにして、様々なロールケーキ派生レシピが存在する。
美肌効果大
アンチエイジング効果大
生クリームを口の周りに、たっぷりつけたままのペネロペが近寄ってくる。
「村長様! むぐ!」
何やら話しかけようとするペネロペの背後から伸びたカロリーナの手が、丁寧に生クリームを拭っていく。
主人に対して失礼とでも思ったのかもしれない。
その甲斐甲斐しさと、ペネロペの照れくさそうな表情は、なかなかの萌えポイントだった。
「……ありがとう、カロリーナ。村長様、食事はどれも美味しくいただきましたのよ。ありがとうございましたですよ」
「ペネロペのキノコスープも凄く美味しかったわよ。これからももっといろいろなキノコの食べ方を教えてくれると嬉しいわ」
「村長様の方が御存じのような気がして、仕方ないのですよ……でも、不肖ペネロペ! 頑張るのですよ」
「それで、何か用だった?」
「はい。そろそろ屑どもに餌をと思ったのですよ?」
「あ! 忘れてた!」
そういえば食後あたりに、絶望しそうなキノコ料理を与えると決めていたんだっけ。
「村長様でも忘れることがあるのですよ? それだけどうでもいいってことですよ?」
「せっかく作ってくれたのに、ごめんね。じゃあ、よろしくお願いしようかなぁ。ローズ! ペネロペを護りながらよろしく!」
「ほほほほ。屑どもへの餌やりですわね? ペネロペとともに励みますわ!」
ペネロペの肩に乗ったローズが、その身の安全を確保する。
屑ども全員が襲ってきたところで、二人には精神的な傷すらつけられないだろう。
「ふっ! ふっ! ふ! ペネロペ特選、キノコ料理。篤と御堪能するのですよ!」
床の上へ煙が立ち上っている皿が置かれる。
見るからに危険そうだ。
そんな危険な料理にも関わらず、トレントたちが全員を拘束しなければならないほど、屑どもは料理を求めている。
「へぇ? すっごくいい匂いがするんだってさ!」
トリアがトレントからの情報を教えてくれた。
どうやら煙の出ている料理からは、得も言われぬ美味しそうな香りが漂っているらしい。
ちなみに隔離スペースは音も匂いも遮断している。
残念ながら、美味しい香りを嗅ぐことはできなかった。
「ふふふ。その美味しい香りには幻覚作用があるので、危険なのですよ。屑どもにはあの料理が、至高の料理に見えてしまうのですよ」
「それはそれは! 反応が楽しみですねぇ」
飲み物の入ったカップや、デザートが盛られた皿を手に、様子を見ようと皆が集まってきた。
安全圏にいるのでまだ払拭し切れていない恐怖よりも、好奇心が勝るようだ。
テオの言葉に皆が頷いている。
まず、皿の中身を一気に飲んだ子虎が悶絶した。
口からは緑色の泡を吹いている。
目は見事なまでに白目を剥いていた。
その様子を目にしたはずの親虎も、手を止めることなく中身を飲み干し、こちらは途方に暮れた顔をしながら、脱糞している。
エステファニアが、せっかくのレッドアップルティーの香りが損なわれるようですわ……と眉根を顰めた。
狐親子は虎親子に毒味をさせようと目論んでいたのだろう。
二人の様子を見ていた。
見ていたというのに、皿に手をつけた。
これも幻覚の作用なのかもしれない。
まず子狐が、あり得ない高さまで飛び上がった。
口の動きで水を求めているとわかる。
想像を絶する辛さに体が反射を起こしたのだろうか。
目は血走っており、まさしく狂気の様相だった。
子供たちに見せるのは、教育上よろしくないかもと様子を窺うも、親たちはむしろしっかり見るように言い聞かせていた。
罪人の末路を知っておくべきだと判断したのかもしれない。
そんな子狐を労るそぶりすら見せずに、狐夫人が皿の中身を口にする。
顔を歪めた夫人はしかし、スープの中身をゆっくりと咀嚼していた。
歪んだ表情は涙目となり、さらには鼻水まで垂れ流す滂沱へと変化していった。
あまりのまずさに食べたくないはずなのに、手が、口が勝手に動く、といった状況に見えた。
嘔吐こうとするも叶わず、慈悲を請う眼差しをこちら側へ向けるも、返される冷ややかな眼差しに、とうとう絶望の色がその瞳に宿った。
狐夫は何故か皿の中身を頭からかぶった。
本人の意思でないのは、驚愕した表情からも窺い知れた。
狐夫の奇行は続き、今度は全身を濡らしたスープを舐め始める。
腕や足はさて置き、体をねじ曲げて股間や、どうあがいても届かない場所へまで舌を這わそうとする姿は、まさしく醜悪だった。
舌が爛れ、体のあちこちが痛みに悲鳴を上げるのか、表情は苦悶に満ちているというのに、狐夫もまた。
体に残っているスープを一滴たりとも残すまいと、全身を懸命に舐め続けた。
「もしかして、全員の味や効能が異なるのですか?」
「いい質問なのですよ! その通りなのですよ。基本本人が一番望まない効能がでるのですよ。香りは最高だけれど、基本味は二度と食べたくないという形容しがたい味なのですよ」
「香りが慈悲なのでしょうか?」
「ふふふ。そうかもしれないのですよ。でもむしろ続く絶望をそうと思わせないための、まやかしなのかもしれないのですよ」
男性陣はやはり強い。
ペネロペに質問を始めた。
「あのまま放置して、死なないのでしょうか?」
そのまま死ねばいいのにという、願いを秘めやかに隠しながら問うてきたエステファニアに、ペネロペは怪しく笑って言った。
「勿論! 死ねるわけ、ないのですよ? まだまだ特別キノコ料理はあるのですよ」
死なないとわかったエステファニアは、ペネロペの返答を聞いて、ペネロペに勝るとも劣らぬ怪しい微笑を浮かべた。
喜多愛笑 キタアイ
状態 心身ともに良好
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
髪の毛を切りました。
すっきり。
今までは年一回しか行かなかったのですが、白髪染めに挑戦してみたい気も……。
次回は、スライムたちに心配された。(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
次回も引き続き宜しくお願いいたします。