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盗賊退治完了の宴……の前に。

 今年の節分は2月2日だと聞いてびっくり。

 そんなこともあるんですね。

 貴重な体験だ! と既に福豆をたっぷり購入済みです。

 盗賊退治完了の宴……の前に。


 猿夫人は独房へ、屑奴隷たちは家族単位で牢屋へ収容。

 他の奴隷たちは与えた家へと一旦帰宅させた。

 ただしエステファニアは狸親子と一緒の家へ帰ったようだ。

 アルマに誘われて、一人思案に暮れていたエステファニアは、迷った末に宴までの時間を二人と一緒に過ごすと決めたようだ。


 そして私はといえば、スライムたち+カロリーナ&トリアで自宅のダイニングにいる。

 カロリーナがナオール花茶のホットを淹れてくれた。

 ちっとも飽きが来ない味なのだが、スライムたちはニードルビーを使っての味変化に余念がないようだ。

 私が拠点ができたらやってみたいなぁと思っていた、ニードルビーの養蜂も既にやっているらしい。

 ニードルビーたちは一定の蜜を提供すれば、外敵ゼロの上に餌が豊富な生活に満足しており、日々芳醇な蜂蜜を用意してくれると報告してもらった。

 さらにはニードルビーの中にも研究気質な個体がいるらしく、様々な花の蜜を採取してどんな味になるのかを検証しているとのことだった。


 花がやわらかな梔子の香りに似ているので、飲んだときの芳香に変化を感じる例は少ない。

 ただ味に如実な変化が現れるのだから不思議だ。

 今回はオレンジベリーニードルビー蜜を採用していると説明される。

 いつもより酸味が感じられて、飲んだあとのさっぱり度が上がっている気がした。


「祝! 盗賊退治完了宴! ……の前に。屑奴隷たちをどうするのか決めておきたいのよね」


「あー、一応猿夫人以外は成果を見せたから即時排除は迷うんだね?」


「そうそう。良い人たちのトラウマを考えると、即時排除に踏み切ってもいいかなぁと、考えたりもするんだけどさ」


「特に虎親子は最悪なのねー。愛を性的対象に見るとか許せないのねー」


「性的対象だけならまだしも、いたしながら食べるとかしでかしかねないのが、あの屑どもですわ」


 わーぉ、どんなエログロだろう。

 そっち系の耐性はあるけど、自分がされそうになったら、躊躇なく命止魔法を放つね。

 即死させるにはレベル10まで育てないと駄目だけど、この際上げておこうかしら?


「猿夫人と一緒にアランバルリ殿に引き取らせるのです?」


 アランバルリは応接間に通している。

 今はカロリーナがナオール花茶を届けに行く傍ら、相手をしてもらっていた。

 ある程度の方向性が決まるまでは、身内だけで話をしようと思っての流れだ。


「うーん。それが無難な気もするんだけどね。他の人たちに復讐の機会があってもいいかなって思うのよねー」


 肉祭りの最中で、あくまでも私の意向を尊重した上でだが、復讐の機会があるなら果たしたいといった意見もちらほら聞けたのだ。

 人の手に任せた復讐では、溜飲が下がりきらない。

 自分の手で完璧に果たすには、己の身が危ない。

 しかし主人の意向であれば、身も守れ矜持も取り戻せる……そんな気がするのだ。


「う! それならやっぱり、売るのは猿夫人だけにするのよ!」


「ん! 残りの屑奴隷は復讐の対象として残すの!」


「……よし! じゃ、そんな方向で!」


「自らの手で復讐するまでもない屑と、皆の意見が一致したら売却すればいいのねー」


「だね。それまでは気合いを入れて監視しないと……」


 トリアの髪の毛が、葉が風に吹かれたようにざわめく。

 海中や空中でもない限り、エルダートレントの監視から逃れるのは不可能だ。


「アランバルリを呼んでくるのです!」


 サクラが可愛らしく跳ねながらアランバルリを呼びに行く。

 カロリーナも一緒にやってきた。

 話し合った内容を簡潔に説明すると、アランバルリは大きく頷く。

 

「確かに承りました。買い取っていただいた金額の最低でも倍の支払いがなされるよう、交渉いたします」


「……僕が一筆認めるよ。エルダートレントからの抗議文も一緒なら君の所の会頭も、少しは考えるよね?」


「ええ。ただでさえ少ない髪が、禿げ上がるほどに考えることでしょう!」


 満面の笑みを浮かべたアランバルリに、周囲は同情を色濃くしつつも優しく見つめる。

 これを機にして、アランバルリが商会からの退職を余儀なくされるのならば、それはそれで私たちが抱え込むまでだ。

 むしろ歓迎する。


「盗賊退治の宴にはアランバルリも参加するといいよ。一晩泊まってゆっくりしてから立つといい」


「ありがとう存じます! こちらの食事は大変美味しいので光栄です」


「宴かぁ……屑以外は、フルコースにしようか」


「え! 絵本でしか見たことないかも!」


 目を輝かせるトリアには特に食べさせたい。

 異世界初めてのフルコースを、盗賊たちにしか披露できていないのが不満だったのだ。

 あのときのメニューとは全く違う別物を用意しようと心に誓う。


「スライムたちの誰が僕と一緒に来てくれる? 僕は猿夫人の所に行くよ!」


「う! 一緒にいくのよ!」


「じゃ、僕はサイと一緒に行ってくるよ。あ! 奴は完全拘束で食事をさせない方向でいこうね? 狸親子が美味しそうに食べる様子を見せつけてやらないと!」


「ではカロリーナ。一緒に屑奴隷どもの所に行くのねー。屑どもに食べさせてやるのは、ペネロペ特選の失敗作なのねー。そちらも選別するのねー


 猿夫人と差をつけるようだ。

 全く食事を与えられないよりは、まずくても食事が与えられるだけましという判断だろう。

 しかしペネロペがほくそ笑む失敗作は、食べたくなかったと後悔する味な気がしてならない。


「それじゃあ、誰かペネロペと先に行って、美味しくない系の調理をお願いできるかしら? ついでに集会所でのテーブルセッティングもお願いしたいわ」


「そちらは私が承りましょう。トレントさんたちにもお手伝いいただくつもりですの。勿論隔離区域も安全対策完璧で仕上げておきますわ!」


 トリアはサイとともに猿夫人の元へ。

 リリーはカロリーナとともに屑奴隷たちの元へ。

 ローズはペネロペとトレントたちを伴って、まずい料理製作と会場セッティングをしてくれるようだ。


 私は簡易キッチンの展開する場所を、共同料理場にした。

 かまど&コンロの数は多いと時間短縮になるからね。

 さて、準備を……と手を洗っている最中に、ふと料理の前にやっておきたい一件を思い出した。


「アランバルリ! ちょっといいかしら?」


 アランバルリを泊める家は、ルンとピュアが絶賛掃除中だ。

 一緒に集会所へ来ていたアランバルリを呼び寄せる。

 

「なんでございましょう?」


 手伝いに呼ばれたと考えたのか手を洗ったアランバルリは、エプロンをぴしっとつけた。


「えーと。手伝いに呼んだんじゃないんだけど、せっかくなんで話のあとで下ごしらえを手伝ってもらえるかな?」


「喜んで!」


「猿と虎の二組を離縁させたいのよ」


「なるほど! なれば早いに越したことはございません。最終的には教会を通しての完全絶縁といたしましょう。まずは離縁証明を作成いたしましょうか」


「双方合意ではなくても大丈夫なのよね?」


「はい。主人の一存で決められます。ただし今回のように片方に離縁されるべき理由が明確にある場合は、その理由と離縁を望む側の署名があると、より効果的とされておりますよ」


「ではそのように手配しましょう」


 アランバルリが鞄の中から書類を取り出す。

 羊皮紙っぽい書類は実に重要な契約書に見える。

 丁寧な説明を受けながら何か所かにサインをした。

 見守るモルフォとサクラが沈黙しているので、書類に不備はないようだ。


 ノック音が聞こえたので、モルフォが扉を開けに行く。

 扉の外には小型のトレントが一体と、その背後にテオとエステファニアに手を引かれたアルマの姿があった。


「寛いでいたところに、ごめんなさいね? 宴の準備はまだ完成していないんだけど、話があって呼んだのよ」


「ごしゅじんさまのごはんはおいしいので、いつまででもまちます!」


 アルマがびしっと可愛らしいもふもふの手を挙げて言ってのけた。

 そうじゃない感は大きかったが、幼さと愛らしさの前には勝てないから仕方ない。


「ふふふ。これからアランバルリにも手伝ってもらって準備をするから、頑張って待っていてね。フルコースを考えているの」


「ふるこーす?」


「きっとエステファニアが知っているから、教えてもらうといいわ」


「はい!」


 良い返事をするアルマの頭を一撫でしておく。

 すっかりふわっふわになった毛が掌に心地良い。


「それでは本題ね。貴方方をひとまず主人の権限で離縁させたいの。最終的には教会を通しての完全絶縁をさせたいのだけれど……」


「か、完全絶縁にはどれぐらいかかりますでしょうか!」


「明日こちらを立った足で、まずは教会に向かい処理をいたしますので、長くとも一週間後には手配が完了できるかと思われます。完全絶縁の証明は、急ぎオスクロに持たせてもよろしいのですが……」


「いいえ! そこまで手配いただかなくとも大丈夫でございます。御主人様、話に割り込んでしまって大変申し訳ありません」


 己の行動を恥じて俯くエステファニアだが、それだけ長い時間切実に縁切りを望んでいたと理解できるので、責めるなんて間違ってもしない。


「気にしないでいいわ。それだけ離縁したかったのでしょう?」


「はい。正直、今は夢見心地でございます……」


 眦に浮かぶ涙は驚きと喜びの涙。

 そんな涙であれば、これから先何度でも浮かべてほしいものだ。


「アルマとテオも異存はない?」


「……あのひとと、はなれられるのですか?」


「嫌かしら?」


「わたしはうれしいけど! おとうさん、は?」


「はい。長く望んできました……御主人様、感謝いたします。本当に、心よりただ、感謝いたします」


 深々と私に頭を下げたあとで、寂しい目でアルマの頭を撫でるのは、今まで我慢させてしまった申し訳なさからだろう。

 それでも善良な二人の未来は明るいのだ、元気をだしてほしい。

 私が責任を持って明るくしてみせるから。


「それでは、お二方、空白の三か所にサインくださいませ。アルマちゃんは、お名前かけるかな?」


「エステファニアさんが、おしえてくれたから! かけます、おなまえ!」


「うん。すごいね。じゃあ、ここに書いてくれるかな」


 アランバルリに指示された場所に書かれたアルマの名前は、実に元気いっぱいといったものだ。

 うん、読めればいい。


「間違いなく手配いたしますので、御安心くださいね」


「屑どもには、この話をしてないんだよね。自分たちの口から言う? それとも私が言おうか?」


 一瞬顔をこわばらせる三人に、宴の席には奴らも参加させるが、三人に害なす可能性は皆無な安全対策をすると告げておく。


「おとうさん、いおうよ。さよならって、いおう。にどとあわないって、いおうよ!」


 三人の中でもしかしたら、アルマが一番強いのかもしれない。

 テオはアルマの言葉にしっかり頷いた。


「御主人様、自分とアルマは自らの口で完全絶縁を伝えます」


「つたえます!」


「私は……」


「もしよろしければ、自分が背後に立ちましょうか? 護衛代わりにでも」


 アランバルリがエステファニアにそんな申し出をした。

 別に私が一緒に行ってもよかったのだが、ふと案外この二人はお似合いなのかも? と珍しい思考が頭の片隅を掠めたので黙っておいた。


「……お手数おかけしてもよろしゅうございますか?」


 色違いの潤みを帯びた美しい瞳で見上げられたアランバルリは、初めて見る表情と声で、よろこんで! と答えていた。





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 若干興奮中 new!  


 料理人 LV 4 


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)  

 

 設定を再確認する度に、資料をしっかり更新しておかないと駄目だった! ……と撃沈しています。

 今年は面倒でもきちんと更新していく方針です。

 ……方針なのです。


 次回は、盗賊退治完了の宴、の準備。前編。(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 次回も引き続き宜しくお願いいたします。 

 

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