労働力にすらならないからさ!
元旦から投稿したら、今年一年きちんと投稿し続けられるんじゃないかと思った次第ですよ。
本年もよろしくお願いいたします!
戦いの火蓋は親虎の咆哮で切って落とされた。
「がおおおおおおおおおおーっ!」
まさしく虎の咆哮!
と思わず身を乗り出した立派な牽制に、十名ほどの盗賊が硬直する。
残りは驚きはしたものの、そのまま突進を止めない。
親虎が舌打ちしたようだ。
思うよりも足止めできなかったのだろう。
子虎が無謀にも猿夫人の髪の毛を引っ掴んで、突進する盗賊に向かわせようとするも、猿夫人は拒絶。
代わりに硬直している盗賊に突っ込んでいった。
しかも転ぶふりして子虎を、盗賊に投げやる非道をやってのける。
子虎はあっけにとられた顔をしていた。
その表情は実に子供っぽかった。
猿夫人は一部引き千切られた髪の毛を、場違いにも手ぐしで流しながら荒い呼吸を整えている。
瞳に燃えている憎悪は、確実に子虎へ向けられていた。
怒りの声を上げかけた子虎だったが、自分が咄嗟にしがみついた盗賊が動き出そうとする前に、その視界を奪う。
鋭い爪先が盗賊の目を左から右へと引っ掻いたのだ。
虐げることに慣れた者が、実は虐げられることには人一倍慣れていないという、真しやかな噂のように、盗賊は絶叫を上げた。
目を庇おうとする盗賊の頭を思いっきり押さえつけた子虎は、腕の力だけで近くにいた盗賊に躍りかかる。
空中で既に視界を奪うべく、絶妙な体勢を維持している辺りに、親虎の歪んだ鍛錬の結果が出ていた。
親虎は向かってきた盗賊たち相手に無双をしている。
想定していたよりも随分と強い。
隻腕などものともしない力業での戦闘には思う所があったらしく、アランバルリがモロコシ茶を一気飲みしてむせっていた。
一人の首を捻り切り、一人の腹を蹴り飛ばして血を吐き出させたと思ったら、次の動きで一人の首の骨を蹴りで折り、一人の頭を掴み潰していた。
「あぁ……せっかくの毛皮が……」
「さすがの感想だねぇ、アイリーン。奴らが死んだら毛皮は綺麗にして防寒具にでもしておく?」
風呂を許さなかったので、薄汚れたままの白虎はそれでも純白が美しかったのだ。
手入れすれば毛並みもよくなるだろうけれど、どうにも、彼らに優しい気持ちはもてない。
今もただ、毛皮が勿体ないと思っただけなのだ。
「良い子たちが気に病むだろうから、別行動でもしない限りはやらないかなぁ」
「あーそうだね。まぁ、防寒着にしても敷物にしても、もっと向いた毛皮はあるからさ。死んだらさくっと、サイに解体してもらって、アランバルリ殿に高額買い取りしてもらう感じで」
「そうだね、それがいいかな。そのときはよろしくね?」
「はい。親子ともに高額買い取りさせていただきます」
深く頭を下げるアランバルリに、ローズがお代わりの飲み物を聞いている。
迷っていると、糖分も必要なのですわ! こちらをお飲みなさい! とオレンジベリージュースを手渡されていた。
「ありがとうございます、ローズ殿」
礼を言うアランバルリの目が、オレンジベリージュースを一口飲んで、かっ! と見開かれた。
美味しかったらしい。
ローズもそんなアランバルリを満足げに見ている。
「へぇ。投擲の腕は悪くないみたいだよ?」
トリアが指さす方向を見れば、子狐が頑張って視界を奪っている。
安全な距離を取りつつ、片目を執拗に狙っては小石を投げているのだ。
投げやすい丸い小石ではなく、どこが当たっても怪我をしそうな形の小石を選んでいるところが、なかなかに凄まじい。
「連携もできているようですね」
一体どんな生き方をしてきたというのか。
口だけの詐欺師ではなかったのかもしれない。
子狐に視界を奪われて狂乱する盗賊めがけて、狐夫婦の槍が突き刺される。
しかも必ず二人で、極力死角を狙って攻撃しているのだ。
大した実践も積めていないらしかった盗賊は、そんな連携の取れた攻撃になすすべもなく倒れていく。
「あらあら。一番のお馬鹿さんは、あいつですのね?」
ローズがそっとお代わりのオレンジベリージュースを手渡してくれながら、目線を流す。
釣られて見やれば、猿夫人が逃げようとしていた。
「えぇ? 何を考えてるの?」
「御自慢の美貌で、盗賊どもを服従させようとか、お花畑思考をこじらせちゃったんじゃないのかしら……」
何と、猿夫人は服を脱いで乳房をもろだしにしながら、親虎と戦う盗賊たちに向かって走って行ったのだ。
本人を知らぬ者から見れば、十分狂気的な行動だろう。
親虎は呆れた眼差しを向けたが、盗賊は哀れむ眼差しと情欲の眼差しを向けた。
これまた驚くべきことに、猿夫人に歩みよろうとする盗賊までいたのだ。
その瞳からは、ただただ猿夫人への情欲しか見いだせなかったので、あぁこいつもまた脳内桃色のお馬鹿なのだな、と納得したのだが。
親虎も対峙する盗賊が一人減ったと判断したのか、そちらは放置して残っている盗賊に挑んでいく。
「ん? あちらは終わったみたい」
ふと雄叫びが聞こえたので、目線を動かせば、地面に座り込んだ子虎が両腕を上げて勝利の咆哮を上げていたのだ。
半分は死んでおり、半分は生きているものの、今後の生活も一人ではできない程度の怪我を負わされているようだった。
「なんで、こっちに走ってくるわけ? 普通、親虎を助けに行かない? もしくは、猿夫人を止めに行かない?」
トリアの質問は最もだったが、何やら相談をした狐親子のうち、狐息子がこちらへ向かって走ってきた。
「御主人様に申し上げます」
「……何?」
「盗賊は絶命させた方がよろしゅうございますでしょうか?」
「生かしておく必要があるの?」
「い、生かしたまま奴隷として売却すれば、多少なりとも金銭になりましょう」
「面倒だし、殺してくれる?」
「倒した褒美として、奴隷売却した代金を私どもに!」
「それが、褒美でいいのなら、そうしてもいいわよ」
欠損は治さないけど、いいのね? という音にしなかった言葉は、ちゃんと聞こえたようだ。
「……殺して、まいります」
「ありがとう。ちゃんと肥料として有効活用させてもらうわ。盗賊も使えない奴隷も。末路は同じなの。ねぇ、トリア」
「そうそう。労働力にすらならないなら、生かすだけ無駄だもの」
高い場所から見下されたままの言葉に、狐息子は顔色を変えた。
このままいけば、自分たちも死んだ盗賊と同じ道を辿るしかないと、理解できたようだ。
頭を下げて足早に家族の元へ戻っていく。
息を切らせて私たちの言葉を家族に話せば、狐夫婦は息子同様に顔色を変えた。
喜んでいた子虎が、ここにきて未だ親虎が戦っているのに気がついて、顔色を変えている狐親子に移動手段になるように命じ始めた。
全員揃って嫌そうな顔をした狐家族だったが、夫が足を買って出たようだ。
髪の毛を引っ張り、思う通りに進ませようとするその小さな頭を、夫人が容赦なく叩く。
また、足に逃げられたいのか! と言えば、猿夫人の暴挙を思い出したらしい子虎は、不承不承態度を改めた。
そして後始末をしっかりしないと欠損は治してもらえないと告げたようで、子虎が私たちの方を凝視する。
本当にそんな酷い仕打ちをするのか! と責め立てる眼差しには、アランバルリまでもが、何を当たり前のことを言っているんだ? という、酷薄な眼差しで返しておく。
狐夫婦は生きていた盗賊のとどめを丁寧に刺したあとで、親虎の方へと全員で向かった。
逸る子虎を肩から降ろした狐夫は、文句を言う子虎を窘める。
曰く、力量差がある場合、助太刀は邪魔にしかなり得ないと。
また、父の勇姿を見守るのも、子の勤めであるとも。
強いと思い込んでいる子虎は邪魔者扱いされるのには、不服だったようだが、父の勇姿を見守るという表現は気に入ったようだ。
邪魔にはならない、けれど戦闘がよく見える位置で、うるさいほどに父を応援しながら見守っている。
狐家族は全員で、猿夫人と盗賊を追った。
畑を踏みにじって逃げようとしたので、トレントたちの怒りを買い、畑の傍に二人揃って転がされていたので、捕縛も後始末も簡単だったようだ。
どこに仕込んでいたのか縄で手早く腕を括られてしまった猿夫人が、意味不明の言葉を喚く。
『教育に悪いから、その無駄にでかい胸をさっさとしまいなさいよ!』
狐夫人が縄を引っ張りながら、猿夫人の顔を覗き込んで声にならない声で、必死に宣うのには失笑してしまった。
夫と子が、剥き出しの豊かな乳房を凝視しているのに腹が立ったのだろう。
「って言ってもねぇ? 腕を縛ったまんまじゃ、直せないと思うんだけど……」
「だよねー。あ、ほら!」
夫が夫人の言葉の無理を指摘し、でれでれとしながら服を直してやっている。
乳房をひと揉みどころか、愛撫のようにしっかりと揉んだのを見た子が、父さん、狡いよ! と文句を言っていた。
猿夫人はそんな失礼な親子の言葉も届いていないような無表情無言を貫いていたが、狐夫人は夫と子供の頭に思い切り拳骨を落としていた。
喜多愛笑 キタアイ
状態 若干興奮気味
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
治癒魔法 LV10
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
ストックがなくなってしまったので、頑張って作っておかないと。
今年はせめて昨年より健康に過ごしたいものです。
次回は、覚悟はできてたんじゃないの? (仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
次回も引き続き宜しくお願いいたします。