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盗賊は……いらなかったんだけどね。

 暖房をつけると目が乾燥して辛いので、厚着で調節しています。

 足をまるっとブランケットでくるんでいるので、ちょとした移動も面倒な気がしますね。

 


 ペネロペも満足し、食後のお茶とおしゃべりを堪能しているいいところで。

 トリアが深い溜め息を吐いた。


「はぁ……アランバルリ殿はしみじみ不憫だったんだねぇ。僕たちを敵に回す判断を下した者が商会会頭とか!」


「……申し訳ありません。会頭が、何を、しでかしたのでございましょう?」


「最初に言っておくよ。君は悪くない。悪いのは僕の大切なアイリーンの価値を見誤った愚かな会頭だ」


「盗賊の気配がするのねー。会頭がホルツリッヒ村の情報を売ったのねー」


「しかも中途半端な情報ときたらもう……馬鹿愚かとしか言いようがないよねぇ?」


 音もなく囲いし者が元の位置に戻っている。

 トレントたちは畑を含む広い敷地を守るべく、いい感じに散っていった。

 ルンとピュアはペネロペを誘ってキノコ専用樹木小屋へと移動した。

 カロリーナはサイを連れて正面門に向かうらしい。

 モルフォは奴隷たちを連れて集会場へと籠もるようだ。

 

「せっかくだから、あいつら、使ってみようか?」


 思案していたトリアがにやりと笑う。

 子供たちには見せたくない類いの、ラスボスが勇者と対峙したときに見せる笑顔だ。


「……私も御一緒しても?」


 苦虫を噛みつぶした顔をしたアランバルリが、トリアではなく私に問うてくる。


「どうする気?」


 私はアランバルリの安全確保を考えて、トリアに詳しい話をするように促した。


「屑どもに盗賊退治をさせようかなって、思うんだよねー」


 トリアの笑みが深くなる。

 ラスボスを超えた笑顔……裏ボスの笑顔? だ。


「死んだらそれはそれでいいし。生き残ったら、まぁ、贖罪の機会をくれてやってもいいかなぁって」


 屑たちの更生など全く信じていない表情。

 もしかしたらそんな屑を選んでしまった、選ばざるを得なかったアランバルリの罪悪感を軽減させたいのかもしれない。


「虎親子はあの状態でも戦力となりましょう。狐親子も己の身ぐらいは守れるかと。猿夫人はさて……盾にもなるかどうか」


「なるほどねぇ。でもあーゆー女ほど生き汚いから、案外生き残るんじゃないかな。欠損とか、増えそうだけどさ」


 なかなかに残虐なトリアの意見。

 屑どもはきっと、盗賊を撃退しろと命令したところで、逃げの一手だろうが。

 その辺りはどう考えているのか。

 エルダートレントともなれば、絶対に逃がさない自信がある気もする。


「盗賊撃退したら欠損を治療するって言えば、逃げないか」


「あーそこまでしなくても逃がさない方法はいくらでもあるよ?」


「うーん。私性格悪いからさぁ。欠損完治させたらあいつらは調子に乗るかなって」


「うわぁ……もしかして完治させた上で潰す感じ?」


「そそ。ほら良い子組は、たぶん本人たちでも気がつけない、厄介な情が巣くっていると思うから」


 たぶん、あのエステファニアでさえも。

 欠損状態で死ぬところを目の当たりにしてしまったら、尾を引いてしまうだろう。

 自分たちだけ解放されていいのかと。


「欠損完治なんてさせないって言っていたのを、条件付きでもひっくり返したら、屑も希望を抱けるでしょう?」


 私と同じように。

 否、それ以上の満たされた生活が送れるに違いないと。


「で。また心を折るわけだ。いいねぇ、えげつなくて!」


 トリアは笑った。

 アランバルリは頷いた。

 リリー、サクラ、ローズも触手で大きな○を描く。

 全員賛同してくれるようだ。


 良い子には希望を。

 改心しない悪い子には絶望を。


「……カロリーナを含めて、警戒している皆には屑どもを贄にするって連絡したよー」


「ありがと。それじゃあ、屑どもをいい感じに引きずり出しちゃってくれる?」


「りょーかいっ!」


 トリアの足元から太くて長い根っこが、ずるるんと伸びたと思ったら、見せつけ小屋の中にいた屑全員の足首を掴んで引っ張り出した。

 思い思いの悲鳴を上げていたので、さくっと人外による精神汚染を発動。

 静かになったので、先ほど決めた内容を告げる。


「今、この村に盗賊が向かっています。その盗賊を貴様らだけで殲滅させられたら、欠損を治癒します。死んだら終わりですが、死にさえしなければ健全な体に戻れるでしょう。精々頑張ってくださいね」


 狐夫が何かを言いかけたが、トリアの根っこは屑どもを容赦なく、盗賊たちが侵攻してくるだろう位置に投げ捨てた。

 ……と、トリアが教えてくれる。


「何を言おうとしたのかな?」


「恐らくは交渉をしたかったのだと思います」


「あとは完治の確約? そんなもの取らせるわけないのにね」


 門を守りに行ったカロリーナとサイが戻ってきた。


「念の為に私たちは門を守っていましょうか?」


「大丈夫だと思うよ。トレントたちが監視をしてくれてるし。カロリーナとサイは奴隷たちとまったりしておいでよ」


「アイリーンはどうしますの~?」


「トリアの中継を聞きながら、アランバルリと一緒に経過観察? あ、リリーたちはどうする?」


「私だけ残りますわ」


 無敵の迎撃が自慢のローズが胸を張る。


「じゃあ私たちはペネロペの所に行って、トリアの代わりにキノコ研究でもしているのねー」


「はい。屑に与えるペネロペ特製キノコの選別もしたいのです!」


 トリアの羨ましそうな眼差しに触手を振ったリリーとサクラは、仲良く肩? を並べながらキノコ専用樹木小屋へと向かっていった。


「じゃあ、僕たちは特等席で観戦するとしようか! はい、乗ってー」


「おぉ!」


 アランバルリが感嘆の声を上げる。

 私はぽかーんと大口を開けて見上げてしまった。

 トリアが実にエルダートレントらしい巨木へと変じたのだ。

 普通のトレントたちと違うところは、どことなーくきらびやかな雰囲気を纏っており、仄かに柑橘系の美味しそうな香りがする点だろうか。


 伸ばされた枝に跨がれば、片方の肩に私、反対側の肩にアランバルリを乗せてくれる。

 のっしのっしと歩くペースは遅いが、歩幅が半端ないので、あっという間に安全が確保された最前線へとついた。


 ちょうど、盗賊と屑たちが激突するところだったのだ。


「……よく承知しましたね、猿夫人が」


「自慢のお綺麗な顔が治癒されるなら、仕方ないかーって思ったんじゃない? 納得したって表情でもないし」


 何と猿夫人が子虎を肩車していたのだ。

 足が不自由な子虎の足代わりになるという、苦肉の策を取ったらしい。

 子虎も思うように動かない新たな足に悪態を吐いているが、それでも地面を這いずって移動するよりはましだと考えているらしく、二人ともそんなに不満を抱えて大丈夫なのか? と思う不機嫌顔で敵と対峙している。


 親虎は一人で一番前に仁王立ちをして、盗賊たちを待ち構えていた。

 どれほど自信があるのだろう。

 既に勝利を確信したどや顔だ。


 狐親子は親虎と子虎を肩車した猿夫人の背後に隠れている。

 それでも一応戦う気はあるらしく、何時の間に準備したのだろう、親は先端を尖らせた木の棒を、子は小石を握っていた。

 親は槍のように、子は投擲武器として扱うようだ。

 素手で戦わないのは己の力量を理解しているといったところか。


 盗賊たちに向けて危険察知のスキルを使う。

 レベル6の危険察知発動の結果、盗賊は全員生きのいい状態だと知れる。

 数は二十人ほど。

 盗賊としては小さめのグループだろうか?


「……今回の襲撃はあくまでも様子見。先頭を走る盗賊は見た顔です。失敗が多い小者ですから、完全に捨て駒ですね」


「うわー。馬鹿だねぇ、君の所の会頭。一度でも襲撃したら二度と真っ当な取り引きをしようなんて思わないとか、気がつけないのかなぁ?」


 トリアが呆れた声を出した。

 全く以て同意する。


「恐らくは私を盾にして上手く逃げられると思っているのでしょう……今までがそうだったように」


 冷ややかな声で囁くアランバルリの頭を、トリアの枝が優しく撫でた。


「まぁ、それも今回で終わりだからさ。元気出しなよ。ね、アイリーン?」


「……そうね。教会にでも頼んで私の専属商人にでもなってもらいましょうか」


「光栄です! 励みます!」


「専属商人になっての最初の商談は、メンディサバル商会から慰謝料をふんだくってもらうことになりそうだね」


 王都でもそこそこ名前の知れている商会を潰せば、突っかかってくる阿呆は減るだろう。

 危機察知能力が低い馬鹿は増えるかもしれないが、大切な者を守るためにも、ある程度名前を知らしめる方がよさそうだ。

 自分たちが引きこもって好きなことをするためには、表に出て私たちの代わりに交渉してくれるアランバルリの安全確保は必須事項なのだから。


「大して武器も持っていなさそうだしねぇ。欠損までは無理かな?」


「火事場の何とやらって格言もあるし。隠し球を持っているかもしれないし」


「そう、ですね。案外と良い勝負になりそうなのでは?」


「トリアの上にいる以上、私たちの安全は確保されていますので、気楽に観戦いたしましょう。さぁ、何をお飲みになりますの? やはりアイスティー系がよろしいかしら?」


 ローズが観戦時に必須の飲み物の提案をしてくれたので、私はオレンジベリージュースを所望した。

 ちなみにトリアも同じもので、アランバルリはひげモロコシ茶のアイスを頼んでいた。






 喜多愛笑 キタアイ


 状態 若干興奮気味 new! 


 料理人 LV 4 


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)

 



  

 あっちこっちで福袋の予約が始まっています。

 今年はまだ何一つ予約していないので、落ち着かない感じです。

 候補はあったのですが、全部完売御礼なんですよねー。

 追加希望は出していますが、難しそうですし。

 まぁ頑張って探そうっと。


 次回は、労働力にすらならないからさ! (仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 次回も引き続き宜しくお願いいたします。 

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