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うん、キノコ祭りだ!

 ぐっと寒くなってきましたね。

 皆様も体調管理には気をつけてくださいませ。

 特に女性は、くれぐれもトイレを我慢したりしないように……。

 完治したと思った膀胱炎が再発したりしますからね……。


 


 ペネロペの歓待はスライムが率先して行っているので、それ以外の者はペネロペが並べてくれたキノコを堪能する。

 まだタケシクンしか食べられていない。

 

「それにしてもこのキノコは、美味しゅうございますね」


 エステファニアがオッドアイをきらめかせて微笑む。

 心身の不調が解消されたエステファニアの美しさは、纏う気品もあって王族にでも嫁げるレベルではないかとしみじみする。

 口の端からちょろっと零れた、タケシクンの汁を舐める所作すら典雅なのだ。

 

「うん。凄く美味しいよね。私は格別キノコが好きってわけじゃなかったけど、このキノコを食べると、まずキノコ嫌いの人たちに薦めたくなっちゃうわ」


「……御主人様は、この美味しいキノコをあれらにも食べさせたいとお考えでしょうか?」


 エステファニアを縛っていた夫と子供は、その種族を考えてもキノコが嫌いな気がする。

 私の発言に、屑を思い出させてしまったのなら申し訳ない。


「ははは。ないない。私は一度敵認定したら、簡単には覆さないよ! 時間をおいて言い分を聞く心積もりはあるけどね」


「言い分、でございますか」


「屑には屑の正義があるって話。まぁ、屑の正義を真っ向から受け入れられるほど私も荒んではいないから、安心するといいよ。エステファニアはもしかして、奴らにペネロペの賞賛されるべき研究成果を食べさせたいの?」


「いいえ! あれらには、勿体ない! そう申し上げてもよろしいでしょうか?」


「ふふふ。いいよ。あの屑どもに食べ物も制限されていたんでしょう? だったら同じように貴女が制限された期間は最低でも、同じように制限するといい」


 食べ物を与えないという罰もある。

 だが死なせずに、長く苦痛を味わわせるには、生命維持ができる最低限の食事は必要だ。

 まぁ最悪死んでしまったとしても、生き返らせる術を得たから、餓死を繰り返させるっていう罰もあるんだけどね。


「しかし、この村でいただく物はなんでも美味しゅうございますので、食事を絡めた罰を考えますと、与えないという罰が最適なのではないかと、思案してしまう次第でございます……」


「うーん。どうだろうねぇ。屑は屑でしかないから、この美味しいキノコを食べさせても、肉を食わせろ、くそまずいキノコなんざ食わせやがって! って、なる気もするのよ。思い込みで美味しい物を美味しく食べられないっていう、ね?」


「おっしゃるとおりでございますね……美味しい物を、まずいと唾棄されるのも、誠に業腹ではございませんか?」


「皆で作っているから愛情もあるしねぇ。そうなってくると、スライムたちが狩ってきたモンスターをそのまま与えるとか、いいかもね」


 うちはサイがいるので、獲物は全て最良の状態で解体される上に、無駄も一切なく調理される。

 だが屑たちはそうもいかないだろう。

 腹はそれなりに満たされるかもしれないが、それは今まで質のよろしくない奴隷に与えられた食事よりも、まずくなるはずだ。

 今までは優しい奴隷たちを使って、どうにか最低限の快適を確保できていた屑ども。

 屑しかいなくても、それは行われるだろう。

 さて、その中で誰が一番虐げられる存在になるか。

 制裁を辛うじて免れた者が上手く先導すれば、最悪の中の最良を見いだせる可能性はゼロではないが、まず難しそうだ。


「御主人様っ! リリー殿が御主人様に是非食べていただきたいとおっしゃるので、お持ちしました!」


「おもちしました!」


 狸親子が思案する私たちに新しいキノコ料理を持ってきてくれる。

 キノコ料理とはいっても、匂いから察するに醤油やバターがかかっているだけの、実にシンプルなものだとは思うのだが。


「まぁ! すばらしく良い香りですわ~!」


「リンギエの醤油がけ、キノエダッケのバター炒め……とリリー殿がおっしゃっておられました!」


「どっちもたべたけど、すっごくおいしかったです!」


 目を輝かせる狸親子に促されるまま、エステファニアがまずはリンギエの醤油がけを口にする。


「! なんて香ばしいのかしら。より味に深みが出ている気がしますわ……。先ほどもいただきましたけれど、お魚につけていただいてもよろしゅうございますか?」


「ええ、遠慮しないで食べるといいわ。ただし! 体に悪いからかけすぎには注意してね」


「はい、御主人様!」


 さすがは猫獣人。

 焼き魚に醤油という、シンプルな至高の組み合わせを食べる機会を逃さないようだ。。

 軽やかなスキップで鉄板に向かっていく。

 見ればサイが皿の上に醤油がけしたスケットダラを持って、スタンバイしていた。


「エステファニアさん、うれしそう!」


「そうだね。本当に嬉しそうで、楽しそうだ。良かったね」


「うん! あ! ごしゅじんさまも、めしあがってください!」


 キノエダッケのバター炒めを差し出される。

 これも巨大なというか、長いキノエダッケはパスタ並みのサイズだった。

 ちゅるるっと麺を食べるようにいただく。


「おー! この食べ応えは見事だよね」


 何時ものサイズよりバターがよくよく絡む。

 噛み締めるたびに口の中に広がる、キノコの芳醇な味とバターの濃厚さは、なかなかに食べ応えがあった。


「生でも美味しいキノコですが、手を加えても美味しいものですね」


「トリアさんとペネロペさんが、たくさんたべながら、あたらしいりょうりをつくってました!」


「あらあら。他の食材を食べに行ったはずなのに、結局キノコに行き着くのね、ペネロペさんは」


「……御主人様は、そのぅ……あやつらにも、こんな美味しい料理を与えるおつもりなのでしょうか?」


 エステファニアと同じような質問をしてきた。

 夫と子供があちら側へ分けられたエステファニアと、妻が分けられたテオはとても近しい立場だ。

 

「貴方は、それを望むのかしら?」


「ご、ごしゅじんさまのごいこうに、したがいます! しかし、いけんをゆるされるのならば! あたえてほしくありません!」


「こ、これっ!」


 アルマが一瞬返事に躊躇ったテオよりも先に、意見を述べた。

 私を見つめる真摯な瞳に闇はない。

 ただ正しく罰してほしいという、懇願の色が宿っていた。


「さっきエステファニアとも話してみたら、スライムたちに狩ってもらったモンスターを、そのまま与えるといいかも? という結論に達したのよね」


 狸親子は、それは想像していなかった! といった表情で見つめ合っている。

 その長くはない時間で、屑どもがモンスターを美味しく食べる術を持たないと理解したのだろう。

 仲良く頷いた。


「村長様! 美味しい食事をありがとうございました!」


 ペネロペが会ったときよりも、さらにつるるるぷるるん度を増した姿で近寄ってきた。

 手には皿があり、山盛りのジシメとタケヒラノンガーリックソテーが載っていた。

 キノコはニンニクとも相性がいいよねー。


「こちらこそ、美味しいキノコをたくさん提供してくれてありがとう。皆とても喜んでいるのよ?」


「はい! 皆さん口を極めて褒めてくださって、本当に私は幸せなのですよ! ……自分が長い間迷走していたのだと、気付かせてもらえたのですよ……」


 一人で長く研究をし続けていれば、迷走もするだろう。

 それでもペネロペは、心折れずに自分の求める理想を追いかけ続けてきたのだ。

 誰が否定しても私は彼女が一流のキノコ研究者だと褒め称える。

 

「これからは自分を美味しくする研究も、勿論今まで以上に進めてまいりますが、村民の皆に美味しく食べてもらえるようなキノコの研究にも、勤しんでまいる所存ですよ」


「……トリアは長生きだし、キノコ好きだし。肩肘張らずに気長に頑張ってくれたら嬉しいよ」


 エルダートレントまでとはいかずとも、長生きをしているのだろう彼女。

 私自身そこそこ長く生きる予感はあれど、自分より長く生きている存在が、自分の近くで研究を手伝ってくれる自覚ができたなら、きっと。

 今までよりは気楽な努力で、望む成果が得られるに違いない。


「それはそうと、村長様」


「うん?」


「あの小屋に隔離されている屑たちに与える餌ですけれど、もしよろしければ私が山と生み出してしまった失敗作も、加えてくださると有り難いと思うのですよ」


「聞いたの?」


「はい。優しい奴隷の方たちは、復讐など望まぬかもしれませんが、私自身酷いと思ってしまったのですよ。なので協力したいなぁと」


「貴女の失敗作かぁ……いろいろと面白い物がありそうね?」


「スライムさんたちが喜んでくれましたと伝えれば、わかってもらえるとのことでしたよ?」


 私が考えている以上に、ペネロペが望まずとも生み出してしまった失敗作は、ある意味優秀らしい。


「では、早速選定してもらいたいわ……皆の意見も聞いて、ね」


「了解しましたのですよ!」


 ぴしっと敬礼をしたペネロペは、いつの間にか平らげてしまった空の皿を持ちながら、そろそろ終わりそうな供宴に戻っていく。


 醤油とバターとニンニクの香りは、どれもなかなかに凄いなぁと思いつつ、見せつけ小屋の様子を窺う。


 全員絶望から立ち直り、表向きは協力して、私たちからまずは満足のいく食事を奪おうと計画を立てているのだと知って、屑の続く地獄に肩を竦めておいた。


「フォルス様。見せつけ小屋の輩は、今後いかがされるおつもりでしょうか? メンディサバル商会で引き取りましょうか? ……フォルス様や皆様方への無礼の肩代わりを、どこまでできるかはわかりませんが、誠意を持ってあの輩に贖わせる心積もりでおりますが」


 奴隷は勿論、村民たちとも穏やかに語らい、食事を楽しんでいたアランバルリは、私の目線に気がついたらしく、話しかけてきた。

 身の程を弁えない奴隷の躾など、アランバルリにとっては難しくもないのだろう。

 また私の信頼をこれ以上損ないたくないと考える、アランバルリの信条は理解もできた。

 彼に引き渡して、屑どもに地獄を……という、暗い考えを持ちはしたけれど、声には出さずにおく。


「真っ当な子たちが、もう少し屑どもに無関心になるまでは、小屋の中へ入れておくつもりよ。最終的には売却も考えてはいるけれど……」


「フォルス様の御意志を尊重いたします。引き取りが必要になった場合は、何時でも申しつけてくださいませ」


「うん。わかった。ありがとうね。そうと決めたときには必ず、アランバルリにお願いするから」


 アランバルリよりも直接メンディサバル商会会頭に責任を取らせたいので、その点も考慮したいのだ。

 あまり関わりたくないが、アランバルリを独立させるには一度、顔見せはしておかねばとも考えている。

 どのみち、今ではない。

 奴隷たちの様子を見て、最終決断を下すつもりだ。


 私の言葉に大きく頷くアランバルリに、山盛りのジシメとタケヒラノンガーリックソテーのお裾分けをしておいた。



 


*ペネロペのキノコを使った料理は、基本SSSランク。

ただしペネロペ本人が作ると、Sランクになってしまうので注意。


 リンギエの醤油がけ

 醤油をかけすぎると評価が下がるので要注意。

 リリーの絶妙な焼き加減&醤油加減により高ランク。

 カロリーが低く食べ応えがある。

 便秘解消効果有。

 美肌効果有。

 痩身効果有。

 

 キノエダッケのバター炒め

 バターを使いすぎると評価が下がるので要注意。

 長いキノエダッケにソースがよく絡むので、バター以外の調味料を使っても美味。

 ソース次第ではダイエットパスタの代用品としても、人気料理になること間違いなし。

 便秘解消効果有。

 疲労回復効果有。

 痩身効果有。


 ジシメとタケヒラノンガーリックソテー

 にんにくを使いすぎると評価が下がるので要注意。

 消臭効果のあるものを一緒に食べることが推奨されている。

 また、食後に消臭効果のあるものを飲んだり食べたりしてもよし。

 血液浄化効果有。

 むくみ改善効果有。

 骨健常効果有。





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 心身ともに良好  


 料理人 LV 4 


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)

 行きつけのスーパーにシュトレンが売ってました。

 ハーフサイズなので買ったしまった。

 毎年手作りしていたんですけど、たまには買ってみるのもいいかなぁ……と。


 次回は、盗賊は……いらなかったんだけどね。(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 次回も引き続き宜しくお願いいたします。 

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