表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/198

キノコ娘がやってきた。

 や、やっと出せましたキノコ娘!

 キノコを育ててから、出してみたくて仕方なかったんですよね。

 キノコ娘大賞に応募したかったなぁ……。

 


 全身真っ白で、つるつるぷるんとしている。

 瞳は綺麗な真紅なので、アルビノ美少女を連想させた。


「ず! ず! ずっ!」


 薄幸の美少女的な風貌にも関わらず、随分と興奮していらっしゃる御様子。

 ほんのりと全身が赤くなった。

 ワンピースを着ているように見えるけれど、そこもキノコ部分で可食できるのだろうか?

 擬人化したキノコ娘を食べる対象に見てしまえる、自分の食欲には思わず呆れてしまう。


「ず、狡いですよ! いくらエルダートレント様だからといっても、ケタケタを笑わずに美味しくいただけるように品種改良されるなんて! す、すばらしすぎて狡いのですよ!」


 涙目でトリアを睨むキノコ娘の主張に、キノコを堪能していた面々は揃って首を傾げる。


「わ、私がどれほど品種改良に勤しんでも、美味しいキノコになれないですのに! 何時か旦那様に美味しく食べていただく夢なんて、永遠に叶わないのですよ!」


 突っ込みたい点は数多ある。

 一番気になるのは、キノコ娘は伴侶に対して、キノコとして美味しく食べてほしいという願望を抱いているところだろうか。


「……君は誰なんだい? 僕たちの楽しい時間を邪魔しないでくれないかな?」


 いきなり出てきて、思いっきり泣きながら敵意を向けられたら腹も立つというもの。

 トリアの威圧は、真っ直ぐキノコ娘に向けられたけれど、奴隷たちは自分が叱責されているかのように一瞬で背筋を伸ばした。


「ひっ! ひっ! も、申し訳ありませんでした! 楽しい時間を邪魔してしまったこと、深くお詫び申し上げるのですよ。気が遠くなる時間研究し続けても、全く得られなかった成果を目の当たりにして、動転してしまったのですよ!」


 しゃくり上げながらもキノコ娘は、地べたに座り込んで土下座をする。


「私はヤコウタケの亜種、ペネロペという名前ですよ。不法侵入に始まる幾つもの犯罪は、村の規定に則って罰してくださればいいのですよ。大変申し訳ありませんでした!」


 謝罪したせいなのか、幾らか興奮が収まってきたらしい。

 罪をまるっと認めた上で、きちんと謝罪をしてくれた。


 そもそも村への害意はないと判断して、ここまでの侵入が許されている。

 村長の立場として考えても、断罪するつもりはなかった。

 むしろ、おなかが空いているなら、是非参加してほしいと思っている。

 善良な第三者は貴重なのだ。

 しかも、キノコ娘!  

 たぶん、研究気質!

 極めつけは亜種!

 村の住人として、キノコの育成に勤しんでもらえたら凄く嬉しい。


「村長である私の代わりに怒ってくれてありがとう、トリア。ちゃんと謝罪をしてくれたし、罰まで受けると言ってくれたから、この辺で許してあげて?」


「……そうは、言うけどねぇ、アイリーン」


「そもそもトレントや囲いし者たちだって、害意はないって判断したんだし。トリアだって、そうでしょ? まぁ、盲目的な研究者ってーのは、悪意ある犯罪者よりときとして厄介だけど。彼女はその手の輩とは一線を画していそうだし。胸襟を開けば、誰よりもトリアと話があうと思うよ。キノコ愛を語り合う仲間、欲しいんじゃないの?」


「うう……」


 トリアもわかっているのだ。

 ただ奴隷や私たちの楽しい時間を邪魔されたのが、どうにも悔しいだけで。


「……もしよろしければ、私の研究成果を召し上がってほしいのですよ。私が望んだ形ではありませんでしたが、美味しくなったキノコも幾つかあるのですよ……」


 ペネロペがワンピースの裾をぺらりとめくる。

 ガン見してしまったのは内緒だ。

 スライム収納と似た機能を持っているのか、ペネロペは幾つかのキノコをそっとテーブルの上へと置いた。


「うわ! ナニこのタケシクン、でかっ! っていうか、全部巨大だよ!」


 そう。

 並べられたキノコは、美味しいサイズや基本サイズとされている物よりも、数倍は大きかったのだ。

 味がそのままなら、大人数が美味しく食べられる。

 ペネロペが望まなかったとしても、十分な研究成果だと評価されるだろう。


「うっそ! 巨大化しているにも拘わらず、すっごく美味しいよ、アイリーンも食べてみなよ!」


 トリアは並べられたキノコのうちタケシクンに齧りついた。

 ちなみに美味しいとされているタケシクンのサイズは、拳大サイズ。

 トリアに差し出されたタケシクンのサイズは、大玉のスイカサイズだった。

 両手で持って齧りつく。

 向こうだったらキノコの生かじりなんて絶対にしないけれど、トリアのオススメなら迷いはしなかった。


「本当だ! すっごく美味しい!」


 新鮮なマッシュルームの食感は、サラダにあうだろう。

 色も緑なので入っていても違和感がない。

 しかし味は噛み締めるほど、椎茸の独特な風味が出てくるのだから驚きだ。

 これならドレッシングいらずのサラダとして、毎日美味しくいただける気がする。

 キノコサラダが大好きな者でも、満足いく味に違いない。


「な、生でこの味なら、焼いたら! 煮たら! どうなるのかしら!」


 トリアが早速食べやすいサイズに分けたタケシクンを、鉄板の上へ載せている。

 リリーがいそいそと鍋に入れたタケシクンの上に、みりん、薄口醤油、茶砂糖を投入して火にかけた。

 鉄板煮物レシピを既に入手していたらしい。

 

 鉄板鉄板と頷いていると、喜びの声が聞こえてきた。


「こ、こんなに美味しくて食べ応えがあるタケシクンがあったら、私たちもキノコ嫌いにはなりませんでしたよ!」


「どころか、あなた! キノコ好きになれる気がするわ!」


「うん。僕、このキノコなら毎日食べたいな!」


「……焼いたのと煮たのも食べてみたいな?」


 犬一家が美味しそうにキノコを食べて語っている。

 嫌いな物を好きにさせる、ペネロペの作るキノコのすさまじさよ……。

 これこそが評価されるべき、研究結果だろうに。


「十分美味しいのです! 何が不満なのです?」


 生の巨大タケシクンをそのまま体内に取り込んだサクラが、消化をしながらペネロペに問う。

 

「……ここに出したのは、ぎりぎり人様に出せる基準の物なのですよ。ですが研究時間を考えるとあまりにも少ないのですよ。あとはあれですよ。一番やりたい自分の改良が全く上手くいかない点が、絶望的に不満なのですよ……」


 肩を竦める美少女。

 不満だと言いつつも、本人納得の美味キノコを次から次へと出して、皆に振る舞ってくれる。

 皆が美味しそうに食べる様子には、満足そうだ。


「一般的にヤコウタケは、毒性はないけど、食べない方がいいキノコだもんねぇ」


「はい。食べた人は、水っぽいだけでキノコの味が全くしないと、口を揃えて言うのですよ……」


「砂漠とかにあったら重宝しそうだけどね、水っぽいキノコ」


「それが村長様。水っぽいのと、水分たっぷりはまた別物なのですよ……あとは我が儘を言っていいなら水としてではなく、キノコとして美味しく食べてほしいのですよ……」


 キノコのモンスターは、基本的に仲間を増やすことを望むらしい。

 意思のあるキノコは希少で、当然キノコ娘も希少。

 世間様の認識では、モンスターとは区別されているとは、トリア談。

 キノコ娘は特に容貌が愛らしいので、キノコではなく人間扱いされる。

 またキノコ娘は揃って、美味しく食べられたがるのだそうだ。

 食べるの意味を勘違いして、種族を超えた恋人同士になっても破局するケースが多いというのも特徴とのこと。


「じゃあ、あれかなぁ。水っぽさはそのままで、味に拘る方向でいいんじゃない?」


「そうですか? でも水っぽいまま、味を濃くするのは難しいのですよ……」


「汁気たっぷりのキノコは人気だから、方向性は間違っていないと思うけど?」


「だよねー。まぁ、私も協力するから村で一緒にキノコ育成に勤しめばいいんじゃない? 他人からの助言で、いきなり進展するかもしれないし。いいよね、アイリーン」


「勿論。囲いし者やトレントたちに排除されないだけでも、歓迎するよ! 是非ホルツリッヒ村の村民になってほしいな」


「有り難いお誘い恐縮なのですよ。では遠慮なく村民にならせていただきますので……皆様、よろしくお願いいたします!」


 深々と頭を下げるペネロペに皆が歓声を上げて喜んだ。


「そういえば、キノコ娘の主食ってキノコなの?」


「そうなのですよ。たとえ毒性があってもキノコであれば、食べられるのですよ」


「ふーん。でも他の物も食べられるんでしょう?」


「はい。今まで機会に恵まれませんでしたので、ほとんど食べてきておりませんが、大丈夫だと思いますよ」


「じゃあ、食べるとよろしいのですわ、肉を!」


「う! 魚も美味しいのよ?」


「キノコ以外の野菜も食すと、きっとキノコの味にも変化が出せるのです」


 ローズが肉を、サイが魚を、サクラがキノコ以外の野菜を薦める。


「おぉ! ありがとうございます。それでは遠慮なくいただきますよ!」


 目の前に置かれた皿から、まずは肉を摘まむ。

 

「……おぉ……これが肉……なんて、濃厚な!」


 肉の美味しさに開眼した! とばかりに大きく目が見開かれる。

 続いて、魚、野菜を食べて、すっかり無言のまま、黙々と更に山と積まれた料理を食べていく。

 その見事な食べっぷりに、一度は戦線離脱した者も再びBBQに挑んでいった。


「美味しい物をいただくと……それだけで私も美味しくなったような気がいたしますよ……」


 満たされた表情で頬を染めるペネロペの髪の毛を、本人には決して気がつかれぬように、トリアがちょっぴり囓ってみた。


『ちょっと、キノコの旨味が強くなっているみたいだけど……今それを言ったら大変なことになるよね、たぶん』


 トリアにひっそりと囁かれたので、その情報は村の生活に慣れた頃、そういえば食べた物って、ペネロペの味に影響あるのかなーみたいな切り出し方で話そうと、相談し合った。






 喜多愛笑 キタアイ


 状態 心身ともに良好  


 料理人 LV 4 


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10

     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)

 


 さくっと検索した結果。

 ヤコウタケはつるぺたが多かった……。

 しかも白より緑基調だった……。

 光るといい感じの薄いグリーンに見えるからなぁ。

 育ってきたら、薄いグリーンのドレスに進化させようかな?

 多くしすぎないようにしないとなぁと思いつつ、レギュラーキャラが増えていきます。


 次回は、うん、キノコ祭りだ! (仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 次回も引き続き宜しくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ