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よし、肉祭りだ!

 肉祭り……私も肉バルとか肉フェスに行きたいなぁ。

 でも体重がなぁ。

 せめて禁断の壁を破らないと……。

 昨日友人が送ってくれた新米は、土鍋で炊いて美味しくいただく予定なんですけどね。


 

「初めてお風呂に入ったの! 凄く気持ち良かったの! ありがとうございます、御主人様!」


 首にタオルを巻いた子狸が駆け寄ってきた。

 全身から喜びが満ち溢れている。

 驚くべきことにエステファニアが走ってきて、子狸の髪の毛を拭き始めた。

 もしかすると髪を乾かしている途中だったのかもしれない。


「アルマちゃん。駄目ですよ。御主人様の御前に出るには、きちんとした格好をしなければいけません」


「へへへ。ごめんなさい、エステファニアさん。髪の毛を乾かしてくれて、ありがとうございます」


「エステファニアさん、申し訳ない。自分が上手くできぬもので……あ! 御主人様、ありがとうございました。数えるほどしか入ったことがありませんが、どこよりもすばらしい風呂でした!」


「ええ、本当に。御主人様には女としての尊厳どころか、獣人としての尊厳までをも取り戻していただきました。この御恩は終生忘れませぬ。また御恩は主人様の望むように返していきとうございます」


 それぞれが喜びの声を伝えてくれる中で、犬獣人の親子が辛抱強くお礼待ちの列を作っているのが、何とも愛くるしい。

 もふりたい気持ちをどうにか抑え込みながら、犬獣人の喜びの声も聞いた。

 そのときに、遅くなりまして申し訳ありませんとの言葉のあとで、一家の名前も教えてくれる。

 父はチコ、母はダナ、息子はゴヨ、娘はドラとのことだった。

 全員、もともとが綺麗好きなのかもしれない。

 水風呂は勿論、そこそこ熱めの風呂も楽しめたようだ。


「お風呂の中でお湯かけごっこをしてたら、カロリーナさんに『めっ!』ってされちゃいました」


「おなかをひんやりした尻尾できゅっと、巻かれたんです!」


 カロリーナに風呂の作法を窘められたようだが、双子には御褒美だったのかもしれない。

 報告する尻尾が大きく振られている。

 カロリーナを見やれば、可愛くて仕方ないという眼差しを向けていた。

 他種族と接触が少なかったカロリーナが、愛でられる対象を見つけられたのなら、それもまた僥倖だろう。


「アイリーン? 綺麗になったら、御飯なのねー?」


「そうだねぇ。皆は、何が食べたい? 遠慮せずに正直なところを……」


「「「肉っ! 肉が食べたいですっ!」」」


 双子、アルマが両手を挙げながら主張してくれた。


「わ、私どもも、肉を、いただきたいです……あと、骨もできれば……」


 チコが躊躇いがちに発言した。 

 ダナも隣で頷いている。

 夫婦の何とも犬らしい主張に、一人ほっこりとしてしまう。


「許されるなら鶏の皮を……その、魚も食べてみたいです」


 おぉ、狸獣人は魚もいけるらしい。

 肉もいいが魚もいいと。

 でもまぁ、うちの子たちも肉好きだからなぁ。

 どうしても肉よりになっちゃうんだよね。


「私は、その……魚であれば、何でも美味しくいただけます。ほ、骨だけでも十分でございます」


 エステファニアはやはり魚が好物のようだ。

 テオと気が合うかもしれない。

 そして魚党が増殖してくれて地味に嬉かった。

 魚と醤油のマリアージュを教えましょうとも!

 

「じゃあ、基本は肉祭りで、野菜や魚も使う感じ……となると」


「「「「B.B.Q! B.B.Q!」」」」


 スライムたちがコールを始めた。


「「B.B.Q! B.B.Q!」」 


 カロリーナとトリアも乗り出した。


「「「「「「「……! ……!」」」」」」


 トレントたちに続き、囲いし者までもが無言でBBQを求めだした。

 そういえば、囲いし者たちも次のBBQパーティーにする予定だった。


「よし! じゃあ、肉祭り開催! B.B.Qをしますよ」


 わー、とも、おーとも聞こえる歓声。

 無言のトレントや囲いし者たちからも歓喜が伝わってきた。


「では、私。何時でもBBQができるように準備していた、肉と肉のタレをお出ししますわ」


「BBQ対策はばっちりなのです。私も切りそろえた野菜を出すのです。キノコもたっぷり出すので、トリアは安心するといいのです」


「ありがとー! 今回も全種類網羅するよー」


「う! 肉もいいけど、魚もいいのよっ。エステファニアと狸獣人……」


「あ! 失礼いたしました。自分、テオと申します!」


「う! テオも満足させる魚を披露するのよっ!」


「ん! シモヤのひげ取りは完璧なのよ」


 そしてモルフォが山盛りのシモヤを取り出した。

 結構食べている気がするのだが、もやし……シモヤが真っ黒なのには、未だ違和感が拭いきれない。

 味も食感も好きなんだけどね。


「じゃあ、焼くねー」


 まずは焼く時間がかかるクックルーの肉を並べていく。

 ささみ、もも、むね、皮、手羽先、手羽元。

 全て日本酒に軽く漬けてあるとのこと。

 ささみは軽く焼いて、イエローベリーの果汁をかけてさっぱりと。

 皮はかりかりに焼いて、ぱらっとブルーもしくはピンク岩塩を振りかけて。

 ももはローズ特製味噌だれを、手羽先はローズ特製焼き肉だれを絡めると良さそうだ。

 むねと手羽元は、焼き肉だれと岩塩の二択を可能とした。


「しゅ、しゅごいの! クックルーのお肉だけで、こんなにたくさんあるのっ!」


「どれも美味しそうな匂いがする……御主人様っ! まだ、食べちゃ駄目ですか? まだですか!」


 双子の勢いが凄い。

 ちなみにアルマも二人に囲まれて無言で焼ける肉を凝視している。 


「クックルーはまだ、待ってねー。すぐ食べられる、モーモーのお肉を焼くのねー」


「ほほほほ。今回は肉の女神ことローズが、黒モーモーを提供いたしますわ!」


 いつの間にか肉の女神に昇華していたらしいローズが、次から次へとモーモーの肉を並べていく。

 そういえば、私も黒モーモーを食べるのは初めてだった。

 レア種のモーモー肉ですら大変美味だった。

 肉特化の黒モーモーはどれほど美味なのだろう。


「く、黒モーモー! す、すげぇ!」


「犬獣人、憧れの最高肉っ!」


「は、初めて見ました! いぃ匂いですぅっ!」


 双子のよだれが止まらない。

 アルマも同様だ。

 鉄板の前でお皿を持って肉が焼ける過程を凝視している。


「まずは肩ロースですわ! 初めてならば、何もつけずにお召し上がりなさいませ!」


 一枚ずつ皿に載せられた肉を凝視した三人は、続いて私を見上げた。

 三人とも同じ目の輝きをしている。


「……これから食事は『いただきます』の挨拶をしたら、許可を取らずとも好きに食べていいわ……いただきます!」


「「「いただきます!」」」


 三人が私に続いて食前の挨拶をした次の瞬間には、黒モーモーの肩ロースは三人の口の中へと飲み込まれていた。

 食べるというよりは、啜り込んだという勢いだった。


 目を輝かせたまま、三人はその場でじたばたと意味不明の踊りを踊る。

 わかるよー。

 美味しい物を食べたときって、無言で踊っちゃうよねー。


 三人の様子に満足したローズが、わんこ蕎麦に近い速さで肉のお代わりをよそっている。

 美味しい!

 最高!

 夢みたい!

 ……夢じゃないよね?

 と喜びの声を上げながら、三人は延々と肉を食べ続けているようだ。

 縮こまってしまった胃に負担をかけたくないのだが、おなかを壊すほどに美味しい物を食べたという記憶があってもいいかと考えた私は、ローズも子供たちも止めなかった。


「これは黒モーモーのタン。つまりは舌なのです。美味しいから、食べてみるといいのです」


 こちらでは捨てられてしまう部位をサクラに薦められた大人勢は、手を出しかねているようだ。

 舌を食べるのは、他の部位を食べるより抵抗があるのだろう。

 切り取られた塊を一度でも見たことがあるなら尚更だ。

 あれってなかなかにグロテスクだからね。

 ではまぁ、私が手本でも……と思ったら、エステファニアが手を出した。

 おそるおそる口の中に入れる。

 美しいオッドアイが、綺麗に瞬いた。

 

「お、美味しゅうございますわ!」


「はい。タンはとても美味しい部位なのです。味もさることながら食感がいいのです。軽くホワイトソルトをかけて、イエローベリーの果汁を搾るもよし、ネギシロの千切りをたっぷり巻いても美味しいのです」


 ホワイトソルトのイエローベリーはチコに、ネギシロの千切り巻きはダナに渡される。

 エステファニアの美味しそうな声を聞いていた二人は躊躇わなかった。


「う、うまい!」


「味も食感もこんなにいいなんて! す、捨てられていた食材なら率先して食べれば良かったです!」


 その気持ちわかるわー。

 凄く損した気分になるよね。


「御主人様の手にかかったら、どれほど使えない素材でも、最高級の素材になる気がいたしますわ」


 至福の溜め息を吐きながら、サクラオススメのタンを存分に与えられたエステファニアがそんなことを言う。

 私は苦笑したが、スライムたちはさもあらん! と自慢げだ。


「ん! 焼いた骨は日持ちするから、今は肉を食べるのっ!」


「う! このリブロースはローズ特製肉ダレが最高なのよっ!」


 テオがサイとモルフォの二人がかりで餌付けされている。

 子供思いの彼が特に、食が足りていないと判断したのだろうか。

 テオは二人の猛攻に耐えながら、リブロースを口にする。

 かっ! っと目が見開かれた。


「うーまーいー!」


 どこかで見たアニメのように、目からビームのようなものが発せられた気がしないでもない。


「な、なんて美味しいんだ! こんなにやわらかく味わい深い肉なんて食べたことがない!

 味付けなんて一切なくても、肉が美味しいのだと、改めて認識できた次第です!」


 熱く語るテオに、サイとモルフォも満足したようだ。

 せっせと様々な肉をテオに与え始めた。





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 若干浮かれ気味 new!!  


 料理人 LV 4 


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)


 今年の肉フェスは中止になってしまいましたが、来年には開催されるといいですね。

 その頃までには禁断の壁を破ってさらに、痩せる予定……は未定……。


 次回は、魚の美味しさも知るといい。(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 次回も引き続き宜しくお願いいたします。

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