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獣人奴隷たち。中編。

 凄く面白そうなゲームを見つけてしまい、購入したくてたまりません。

 でも購入したら最後、しばらくはどっぷり浸かって仕舞うと思うんですよね。

 連載のストックは地味にできているのですが、新作が進まなくて困ります。

 

 ちなみに完全調合で欠損薬も作れたのだけれど、インパクト勝負で魔法の方がいいと思うのねー、とリリーにアドバイスされたので、奴隷の欠損は魔法で癒やすことにした。


「欠損を完治させる魔法が使えるようになる。当然レベル10まで使えるようになる。欠損だけでなく蘇生とかできたら最高! って、蘇生はさすがに無理かなぁ……」


 と声に出した結果。


『治癒魔法(新魔法)を会得しました。治癒魔法のレベルは10です』


 何故か新魔法を会得してしまった。

 スライムたちには、毎度のことだしーと頷かれ、トリアやカロリーナには大いに驚かれた。


 治癒魔法(新魔法)

 愛の希望により生み出された治癒特化の魔法。

 蘇生薬はレシピ上存在するが、入手困難材料を使用するため作れた例はない。

 また、蘇生できる魔法は物語の中にしか存在しない。

 欠損完治の魔法は存在するが、それ以外の魔法が一切使えないという縛りがあるので、教会で厳重に管理されている。

 見目の良い奴隷などに無理矢理会得させ、王族に売りつけるという暗黙の犯罪も絶賛跋扈中。


 レベル1 軽度の怪我完治。

 レベル2 軽度の病完治。

 レベル3 凍傷・火傷の完治。

 レベル4 骨折の完治。

 レベル5 完全解毒。

 レベル6 重篤な怪我の完治。

 レベル7 重篤な病の完治。

 レベル8 欠損の完治。

 レベル9 不治の病完治。

 レベル10 完全蘇生。


*サクラの鑑定で診断してから使用すると、万が一の間違いがない。


 詳細がばれたら一生監禁ものの魔法だろうとは、誰に言われるでもなく自覚した。

 まぁ、他にもそんな魔法だのスキルだのを持っているから今更なのだが。


 サクラ鑑定の結果、犬一家診断は、耳と尻尾の欠損及び軽度の精神疾患だった。

 レベル2とレベル8を使用のこと、と追記もある。


 本来ならレベル2を使ったあとで、レベル8を使うのだろうが、今回は特別だ。


 大きく開いた掌から魔法が放たれる。

 きらきらっと金粉が舞ったようなエフェクトがかかった。

 犬一家は、ぽかーんと口を開けていた。

 他の奴隷もほぼ同じ反応。

 猫獣人だけは、大きく目を見開いている。

 

「はい。これで欠損完治よ」


 私の言葉を聞き、犬一家は耳のあった場所や、尻尾のあった場所を確認している。

 まず、子供の、続いて伴侶の、そして自分の体を見て、触って。

 歓喜の声を上げた。


「次は私の耳を治癒しなさい! 当然よねっ!」


 たたっと走り出して私の前で胸を張る猿獣人。

 あまりの暴挙に誰も止められなかったのは仕方ないが、腹立たしい。

 何が腹立たしいって、治癒途中で割り込まれるのに、一番腹が立つ。

 割り込み駄目。

 絶対駄目!


「当然とかないわー。命令とかないわー。割り込み許すまじ! 他の誰を治癒しても、アンタのは治さないからさぁ。身の程を知れよ?」


 侮蔑しきった私の口調に、奴隷どころかスライムたちまでもが絶句する。

 すかさず治癒魔法のレベル2を放って、犬一家の軽度の精神疾患も完治させておいた。


「つーか、黙れ。口きくな。大人しく病んでろ」


 学習能力皆無の猿獣人に向けて、人外による精神汚染スキルを使った。


「がっ!」


 猿獣人は、いろいろなものをだだ漏らしながら昏倒する。

 起きてもしばらくは虚脱状態にあるだろう。

 むしろずっと虚脱していればいい。

 

「あー、そういえば牢屋的なものって作ってなかったわね……」

 

 鬱陶しい犯罪者は隔離するに限る!と腰に手を当てながら鼻を鳴らすと。


「うーん。じゃあ、見せつけ小屋と牢屋を作っておくわ」


 トリアが何やら素敵な提案をしてくれた。


「見せつけ小屋?」


「うん。真っ当な奴隷や村民たちが幸せな生活をするのを、見せつけるためだけの小屋ね。勿論、中から外は見えるけど、外から中は意識しないと見えない仕様だよ。どんなに騒いでも中の声は外に漏れないから、そこも安心してね!」


 問題のある奴らに凝視されるのはいただけないが、それを見られる側に認識させず、さらにはそれが奴らにとって最悪の罰になるというのなら、実行も吝かではない。


「昼間はそうやって見せつけて、夜は由緒正しき牢屋に入れるからさ。管理は拷問好きのトレントに任せるから、その点も安心してね」


 由緒正しき牢屋というのがどんなものなのか。

 拷問好きとはいい趣味をしていらっしゃるとか、突っ込みどころは多かったが、飲み込んでおく。


「え? え? どうして自分たちまで!」


 トレントたちも勘違い奴隷に対して激しく憤っていたらしく、見せつけ小屋は三秒とかからずにできあがった。

 そして、容赦なく枝でつまみ上げて、ぽいぽいぽいと中へ入れてしまったのだ。

 猿獣人、虎獣人親子、狐一家の順番だった。

 抗議の声を上げたのは、狐獣人だ。

 しかも家族揃って抗議をしてくる。

 自分勝手極まりない陰湿な思考がどこまでも質が悪いのだと、彼らは一生気付かないのだろう。


「さ。これで安心して、皆を治癒できるわ……次は、貴女ね。いらっしゃい」


 私は邪魔者を排除して満足できたので、子狸に向かって手招きをする。

 子狸は狸獣人を見上げた。

 許可を得ようとしているのだ。

 狸獣人は大きく子狸に頷いた。

 そして、私に向かって土下座をしながら言った。


「娘をどうぞ、よろしくお願いいたします、偉大なる御主人様」


 私の治癒魔法を見て、良質な主人と見定めたのだろう。

 真っ直ぐに私の目を見つめるまん丸の瞳には、崇拝の色が濃い。

 教祖になるつもりはないんだけどなぁ、と思いつつ、足元に傅いた子狸の鑑定をお願いする。


 重篤な精神疾患と重篤な怪我。

 レベル6、7を使用とのこと。

 という診断結果だった。

 瞳を見れば明らかな精神疾患なのは知れたが、怪我までは看破できなかった。

 日常的な虐待で内臓が著しく傷ついていたらしい。

 あと数日治癒が遅かったら、死に至っていたようなのです! とサクラがわざわざ教えてくれたのは、実母に虐待される子狸が不憫だったからかもしれない。


 ほぼ同時に魔法を放った。

 キラキラエフェクトに目を細めつつ、子狸を見つめる。

 何が起こったのかわからない、そんな感じのきょとんとした子狸の瞳からは、闇が完全に払拭されていた。


「おとうさん! どこもいたくないの! おとうさん! かなしいきもちが、なくなっちゃった!」


 どれほど父親を思っていたのだろう。

 早速自分の様子を報告している。


「本当か! 良かった! 良かった! やっぱりどこか酷い怪我をしていたんだなぁ……そうか、悲しい気持ちもなくなったのか……良かった……良かった……本当に、なんてありがたい……」


 狸獣人も走り寄ってきた子狸をしっかりと抱き締めながら、嗚咽を堪えている。

 そんな父親を嬉しそうに見上げた子狸は、何を思いだしたのか! はっ! と我に返り、父親の手をぎゅっと握り締めながら、私を見上げた。


「いだいなるごしゅじんさま! ありがとうございます! わたしはすっかりげんきになりました! これからは、いだいなるごしゅじんさまに、ふんこつさいしん、おつかえするしょぞんでございます!」


 年の割に、随分と大仰な感謝の言葉があった。

 きっと狸獣人が教えていたのだろう。

 万が一にも、自分を助けてくれる者が現れたときには、忠節を尽くすようにと。

 

「本当にありがとうございます、偉大なる御主人様の神のごとき御業により、不遇の娘が幸福な娘に生まれ変わりました! 子も守れぬ愚かな父親にまで至福を与えていただき、感謝の極みでございます。今後は親子共々忠心を捧げたい所存ではございますれば、お許しいただけますでしょうか? また、妻と母と呼ぶのも悍ましいアレの不敬は、どうしたら贖えますでしょうか?」


 子狸の体がびくっと大きく震える。

 狸獣人は子狸を優しく抱き締めて宥めながらも、伏したままの姿勢を崩さない。


「人の奥様や母親を悪し様に言いたくないけれど、アレは駄目でしょう。貴方方が贖う必要もないわ」


 狸獣人を診断してもらえば、治癒魔法を使うほどに病んではいないようだった。

 風呂に食事に睡眠を与えれば健康になるだろう。

 先ほど感じた彼の精神的な不安定さは、娘を守り切れずに病ませてしまったのが原因であったらしい。

 娘が元気になって、あっという間に精神が回復したのだ。

 もともとが強く健常な精神の持ち主だったということだろうか。

 それだけ娘のために生きてきたのかもしれない。


「お優しいお言葉ではございますが!」


「まぁ、その辺は後ほど猫獣人さんの治癒をしてから、ゆっくりと話しましょう」


「っ! 手前どものことばかりで、大変申し訳もございません。エステファニア殿、大変失礼いたしました」


「……お子様が完治して大変よろしゅうございました。偉大なる御主人様、大いなるお慈悲をありがとう存じます。ですが、そのお慈悲を私めにお与えになるのは、どうか……」


 猫獣人は治癒をやんわりと拒絶する。

 エステファニアとは綺麗な名前だ。

 高貴な名前ほど、長いという印象がある。

 あの傍若無人ではあるが、希少かもしれない白虎に見初められるのなら、それなりに高位にあったのではないのかと、勝手に推測したのだが。

 この言葉使いは間違いなくそうなのだろう。

 治ったところで、再び虐げられる。

 虐げる彼らから逃れたとて、帰る場所もない。

 そんな状況が、彼女から現状打破の希望を奪うのだ。


「心配しないでもいいわ。奴隷夫婦をその主が離婚させるくらい、わけないのでしょう?」


「外聞が悪い場合もございますが、エステファニア夫人の場合であれば、むしろ推奨されるかと思われますね」


 アランバルリに問えば、そんな返答があった。

 表では綺麗事が並べられていても、所詮は奴隷。

 最終的には主人が生殺与奪の権利を持つのだ。


「長年に亘って貴女を虐げてきた輩には、それ相応の罰が与えられます。腹を痛めた子であっても、愛せずにむしろ憎悪を向けたとて、貴女を責めはしません。それだけのことをされてきたのですから」


「っ!」


「私が何らかの事情で貴女を手放すことはあっても、生涯。貴女を苦しめた輩が二度と、貴女を苦しめぬように手配もしましょう。また、貴女が安心して生涯を過ごせる場所も確保しましょう。私は、私を主と心からの敬意を込めて呼ぶ者たちを決して不幸にはさせないわ」


「御主人様……」


「まずは、貴女の心と体を癒やしましょうね。目に見える欠損だけが問題ではないのよ。奴隷たちの中では、貴女が一番重篤だわ」


 サクラによる鑑定結果は酷かった。

 火傷、骨折、重篤な精神疾患、不治の病までをも負っていたのだ。

 使う魔法もレベル3、4、7、9の四つ。

 子狸同様に、死の迎えが近日にまで迫っていた。


 今までで一番派手なエフェクトがかかる。

 猫獣人……エステファニアの瞳から、段階を踏んで虚無が薄れていった。


「御主人様……」


「うん?」


「私、本当に、本当に、病んでいたのですね?」


「そうだよ。自分が病んでいると認識できない最悪のレベルで病んでた。でももう、大丈夫でしょう?」


 心身が健常になれば、生きる気力も沸く。

 短くはない間一緒にいただろう、善良な他の奴隷たちが心配そうに見守っているのも。 彼女にとっての脅威が見せつけ小屋に押し込まれ気配を遮断されているのも。

 功を奏したのだろう。


 エステファニアの瞳から流れた美しい涙はきっと、今後の人生に希望を抱いてもいいのだという、控えめな歓喜の涙だったに違いない。





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 心身ともに良好  


 料理人 LV 4 


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用

     治癒魔法 LV10 new!! 


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)

 肩に湿布、足にサポータを巻いていますが、今日こそは筋トレするんだ!

 とフラグを立てておきますね……。


 次回は、獣人奴隷たち。後編(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 次回も引き続き宜しくお願いいたします。

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