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一か月後、商人がやってきた。後編

 二度目の涙管チューブを入れる手術はいい感じに落ち着いた模様。

 気がついたら涙が出なくなっていたのです!

 一回目からこうだったら良かったのになぁと思わないでもないのですが、こればっかりは致し方ないですね。

 チューブ抜いてもこのままだったら完璧なんですけどね。

 


 アランバルリが恭しく箱を差し出してきたので受け取る。

 箱からは白檀によく似た高貴な香りがした。

 

「これは……」


 箱の中身はロザリオ。

 しかも純金のロザリオだ。

 繊細なチェーンは長く、純金とゴールデンルチルクォーツで繋がっている。

 私のように異世界転移もしくは転生した、神父さんやカソリック教徒の方がいらしたのだろうか?

 十字架部分にキリストは張り付けられていない。

 これならば宗教色のない高価な宝飾品にも見えそうだ。


「ゴールドのロザリオは王族関係者と、教会に多大な貢献をした者に与えられる、大変栄誉あるロザリオです」


 大丈夫かと安直に考えていたが、一瞬でひっくり返る。

 思わず嫌そうな表情をしてしまえば、アランバルリがくすっと笑う。


「国外でも同じ効果を持つロザリオです。貴族どころか王族でも丁重な対応を求められる神からの授かり物なのですよ」


「え、神様から?」


「はい。神より教会へ下されるのです。かの方も大変驚かれておりましたが、喜んでもおられました。教会の力が必要なときは何時でも直接相談に応じるので、遠慮なく訪ねてきてほしいとの仰せでございます」


 神様から直接とは驚きだ。

 高位な神様が、スライムから話を聞いたのを察知して与えてくれたのかもしれない。

 拒否はできないだろう。

 有り難く受け取っておく。

 死蔵するつもりはないが、常に身につけている必要性は感じない。

 よく使うアイテムバッグにでも入れておくのが無難だろうか。

 さすがにスライムたちに預けるのも、どうかと思うし。


「……あくまでもかの方の御希望ですので、無理に会う必要はありませんから! 御安心ください」


「ふふふ。ありがとう。神様からいただいたものです。大切に使わせていただきますね」


 教会に絡む王族から、執拗な印象は受けなかった。

 ただただ純粋に、神の寵愛を受けたに等しい私を大切にしたかったのだろう。

 機会があれば会ってもいいと思う。

 ローズもサクラも反応しないのが、何より彼に二心がない証拠だ。

 

「尚、こちらの箱には悪心を抱きし何者をも近づけない香を焚きしめております。結界のような効果もございますので、存分に御活用ください」


 おぉ!

 そんな効果があるなら、どこかに泊まる機会があれば、結界代わりにするのもいいかもしれない。

 村にいる限りトリアやトレントたちがいるし、家にいれば囲いし者もいる。


 そういえば囲いし者は、家の高さまである柵だった。

 向こう側が見える塀もしくは壁といった感じだろうか。

 開かれた掌サイズの目は切れ長で格好良かった。

 声もイケボで、囲いし者総攻め! と心の中で叫んでしまったほどだ。

 擬人化して襲ってきた盗賊たちを、鬼畜蹂躙……と一瞬で練り上げた妄想は、誰にも悟らせなかったが、ローズがわかったような顔で頷いていたのは少々心配だ。

 給与の話をしたら、外御飯のときにでも、一緒に手作り御飯を食べさせてほしいという、細やかなものでいいとのことだった。

 それを聞いた私たちは、最初はゴージャスBBQだね! と頷き合ったものだ。


「教会から与えられる謝礼でロザリオ以上のものはないのですが、希望する教会販売の品物は全て無料で手配するとのことでした」


「……それって教会がレシピを持っているものは該当するの?」


「はい。在庫が限られた希少品も該当いたします。また教会ならではの手に入りやすい素材に関しても、無料手配するとのことです」


 破格だ。

 横流しだけで、左うちわの生活ができる。

 自分の中のルールに触れるので、絶対にやらないけど。


「サバイバル料理を中心に、今後もレシピ提供をするとお伝えくださいね。あぁ、教会なら知育玩具的なものもいいのかな?」


「知育玩具、でございますか?」


「一度教会に行って、どんなもので遊ぶのか、勉強するのかを見てからじゃないと、何を提供していいかわからないんだよね、正直なところ……」


 ぱっと思いつくのは、積み木とかことわざカルタあたりだった。 

 知育玩具でなくとも、獣人たち用に考えた娯楽提供でもいいかもしれない。

 獣人たちには教えるつもりのないあやとりも、教会の子たちが遊ぶのには良さそうだ。

 何しろ紐一本を用意すればいいのだから、懐にも優しい。

 遊び方を図解した紙と一緒に、教会で作った紐を販売するのもいい気がしてくる。


 私は先ほどスライムたちがやっていたあやとりの紐を出してもらって、基本中の基本である『ほうき』を作って見せた。

 アランバルリがあんぐりと口を開けている傍で、サクラとローズがイラスト入りの解説を仕上げてしまう。


「でも、これならすぐに提供できるわよ?」


「すばらしいです!」


「紐を孤児たちが作って、この解説と抱き合わせで売るっていうのもありじゃない?」


「な、何種類くらいあるのでしょうか?」


「私が知っているのは十くらいだけど。これ、一人じゃなくて二人とか、それ以上でもできるのよ。そうなってくると、それこそ無限であるんじゃないかしら?」


「無限ですか……」


 途方に暮れてしまったアランバルリの復活は遅くなかった。

 

「では、商談中に一人でできるものを五つ、複数人でできるものを五つ提供いただけるでしょうか?」


「任せていただきましょう!」


「可能なのです」


 サクラとローズが触手挙手してくれたので、お任せする。

 先ほどかなり難しいものを作っていたからね。

 合計十個の厳選ぐらい簡単だろう。


「教会へはこれでいいとして……他に何か提供してほしいモノはある?」


「幾つか考えては参りましたが……その前にこちらをお渡しいたしますね」


「うわー。精米された米だ! おぉ、玄米と白米があるんだね?」


 種籾、稲と並べられ、さらには精米されている玄米と白米が並べられた。

 これなら今すぐにでも食べられる!


「焼いては食えず、煮ても味がせず、貧民がかさ増しのために入れるぐらいで、あとは家畜の餌にされているのですが……」


「勿体ないわぁ。お米は炊いて食べるのよ!」


「炊く、でございますか……」


「トリアたちに増やしてもらってから、披露するわ。まずは味見をしてみないとね。あ、雀人の勧誘はどんな感じ?」


「打診はすんでおります。数か月以内には、技術者がこちらを訪れるそうです」


「おぉ! 有り難い。私の知らないお米の食べ方とかあったら、教えてほしいわ」


「雀人秘伝のレシピというものがあるようですので、直接交渉していただければ……」


「うん。そうします。本当にありがとう!」


 早くトリアに相談して、お米増産計画に着手したいところだが。

 商談はまだ続いている。


「あ、そうだ。餅米って持ってきてくれた? あと穀物ダンジョンに大豆ってある?」


「ええ持参しております。ご入り用ですか?」


「わー、ありがとう! 穀物ダンジョンではまだまだ欲しい物があるから、次に来るときでも一覧にしてもらっていいかなぁ?」


「帰宅後すぐに用意しておきます。闇梟の手配が完了しましたら、即座にお送りしますね」


「ああ、そうすれば、次回来てもらうときに現物持ってきてもらいやすいもんね。わかりました。頑張って捕獲調教してきてもらいます」


 魅惑の穀物ダンジョン。

 自分で踏破もしてみたいが、今は村の整備が先だろう。

 でも、ダンジョン攻略と聞いただけで心躍ってしまう。

 戦闘狂ではないはずなんだけどねぇ……。


「あとアランバルリに相談したかったことは……あぁ、のみ取りシャンプーの開発かぁ」


「のみ取りシャンプー、でございますか?」


「えーと? 獣人たちの体毛についてしまった小さな虫を駆除できるシャンプー……販売されてる?」


「いいえ、されておりません。獣人も駆除には苦労してると聞きますね。もしそんな便利なシャンプーがあったら、王族や貴族がこぞって購入するでしょう」

 

おぉ。

 獣人にも爵位は存在するらしい。

 きっと獣人しかいない国なんかもあるのだろう。

 世界地図があるのなら、早々に入手しておきたい。


「そっか。じゃあ作ってみるのもありかなぁ。モニターには奴隷たちになってもらえばいいし」


「もにたー……もしかして奴隷たちに使ってみて、様子を窺うということでしょうか」


「そのつもりなんだけど……まずい?」


「実験されたと怒り狂うか、高価な品を奴隷に使うなんて愚かな! と馬鹿にするか、どちらかの未来しか見えないかと」


「奴隷、全員?」


「いいえ! さすがに半数以上は、フォルス様を崇めるかと思いますが……」


「そう……まぁ、メンディサバル商会会頭に貸しを作れるならば、いいとしましょう」


「せっかく手前に信を置いてくださったのに、申し訳もございません……」


「ああ、貴方を責めるつもりはないのよ。ごめんなさい。称号のせいだと理解しているから安心してね?」


 アランバルリが商会のトップ相手に、無茶をしたなんて簡単に推測できる。

 末永く付き合いたいから、あまり無茶はしないでほしいけれど。

 独立させるつもりもあるので、いざとなったら私が交渉してアランバルリの身柄を引き受けてもいいのだ。


「励みます」


「無茶はしないでほしいところなんだけどなぁ……」


私の苦笑に似た苦笑を、アランバルリも返してくる。

 そこは譲れない一点なのかもしれない。


 私はローズが出してくれた、ニードルビーの蜜がたっぷり溶け込んだハーブティーを嗜みつつ、その後もアランバルリとの商談を続けた。


 私が望んだのは、穀物ダンジョンドロップアイテム及び採取物一覧。

 できる限り詳細な世界地図とジャクロット国の地図。

 それぞれの国でのタブー一覧。

 珍しい食材。

 希少な素材。

 

 望まれたのは、あやとり紐の作り方などの、あやとりに関する情報。

 トリアたちが丹精込めて育てている、各種野菜。

 サイが薦めたシルコットンの布。

 死蔵していても……と、見本を見せたキズナオール傷薬 オリジナル瓶入り 飲み薬タイプ他、市場混乱必須のお薬系アイテム。


 望まれはしなかったが、必ず王位継承第三位の教会高位者に渡すようにと、手作り巾着の中に入れた詐欺師の罪石を託しておいた。





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 心身ともに良好  


 料理人 LV 4 


 職業スキル 召喚師範 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)



 キーボードが時々暴走して、勝手に文字を打ってくれます。

 残念ながら、ネタになるような勝手さではないのです。

 以前使っていたキーボードと差し替えよう……。


 次回は、獣人奴隷たち。前編(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 次回も引き続き宜しくお願いいたします。

 

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