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一か月後、商人がやってきた。前編

 外遊びを検索したら、知らない遊びが色々出でてきて楽しかったです。

 今のお子様たちも、この手の遊びをやるんだろうか?

 お金かからなくて面白そうな遊びが多いので、学校などで採用してほしいですね。

 

 住人が増える準備を過剰なほどに整えたあとは、ひたすら食糧の備蓄。

 異世界もの鉄板の娯楽として、オセロとトランプは一応作っておいた。

 どちらも異世界素材で作っているので、その点も安心だ。

 獣人だと体を動かす系が好きなのかも? とも思ったので、縄跳び、ゴム跳びならぬスライム紐飛び、胴縄、缶馬ならぬ石馬、缶蹴りならぬ石蹴りなどの外遊びも、提案する心積もりがある。

 大人はさて置き、子供には遊びの時間が必要だろう。


「……娯楽に関しては、しばらく教えちゃ駄目なのねー」


「皆、本当に獣人を警戒しているよねー」


 私はパープルベリーティーを飲んでぼんやりしていたが、スライムたちはあやとりに興じている。

 見たことない、不思議な形が完成されていて空恐ろしい。

 提供予定の娯楽にあやとりがないのは、上手く形を完成させられず逆ギレする可能性が高いからだそうだ。


「警戒しすぎるということはないのです。それが獣人に対する一般的な認識なのです」


「んっ! 種族にもかなり左右されるのっ!」


「うっ! 勿論個体差も加味してのことなのよっ?」


「どんな獣人が来るかしらねぇ……」


「繁殖力が強いから、犬と猫の獣人はいるんじゃないかしらねー。人との相性が比較的良いとされている狸と狐の獣人もいそうなのねー」


「強さに拘りが強すぎる、狼、虎、熊は避けたいところですわねぇ」


「んっ! どうしてか己の能力関係なしに、主人と同じ待遇を求めがちな猿獣人も嫌なのっ!」


「あれま。皆いろいろと思う所があったのねぇ……避けたい獣人だけでも、言っておいた方がよかったんじゃない?」


 細かすぎる指定は厄介だが、全部お任せというのも、それはそれで大変だと思うのだ。


「うっ! でもカロリーナのような特殊個体もいるのよっ? 愛の引きの良さなら、一緒に暮らしても差し支えのない獣人が来るかも……と考えたのよっ!」


「なるほどねぇ」


 特殊個体は恐らく、群れでのし上がるか排除されるかの、どちらかだと思う。

 排除された個体の方が、恐らく私たちにはあっているだろう。

 カロリーナがそうであったように。


「おーい! 商人が来たみたいだよ!」


 過度な期待はしないようにしないとねぇ、と自分を戒めつつ腰を上げる。

 

「今、カロリーナとトレントたちが入り口で一旦止めてるから、ゆっくり来てね」


「トリアの目から見て、どうなのねー?」


「うーん。正直、奴隷に関しては微妙。僕の力に気がつけない獣人とか、たかが知れてる感じ?」


「幼児の姿に騙されているとか?」


「よく利くはずの鼻があるのに?」


 残念ながらトリアの第一印象はあまりよろしくなかったようだ。


「それなら、愛はローズとサクラを連れて商人と交渉部屋で語らうのねー。取り敢えず、トリアにエルダートレントだって正体を明かしてもらって、思いっきりマウントかけておくのねー」


「僕も賛成。いきなり愛を村長と言っても、侮る未来しか見られないからねぇ……」


肩を竦めるトリアに頷いて、奴隷たちへのマウント? もしくは躾的なものをお願いした。

 焦りもせずに交渉小屋へ足を踏み入れる。

 トリアの案内によるのか、既にアランバルリが中にいた。


「事前通達ができずに、申し訳ありません!」


 腰掛けもせずに待っていたアランバルリに、直角のお辞儀をされる。


「事前通達って、こういった場合はどんな方法を使うの?」


「訓練された鳥を手配するか、鳥系の獣人にお願いするのが普通です」


 不憫属性のアランバルリは、相変わらずの嫌がらせにでもあったのだろう。

 評価が下がればいい、叱責されればいいといった、妬みからの愚かな行為が、店や自分の価値を下げるのだと、どうしてわからないのか。

 飽きもせずにアランバルリを邪険にする犯罪者に、一度は問うてみたい。


「うちは警備が他の村に比べて格段に厳しいから大丈夫よ。今のところ、貴方以外の商人は勿論、人間を招き入れてはいないから」


 アランバルリが帰途について数日してから、強欲な商人が何人か押しかけてきたと、トリアを経由してトレントたちから報告を受けている。

 一箇所しかない入り口以外からの、村への侵入は不可だ。

 トレントたちが根っこの結界を張っている。

 無理に入ろうとすると、根っこで締め上げられるのだ。

 火を付けて逃れようとすれば、さくっと首を飛ばされる。

 商人たちの首も一つ残らず飛ばしたと聞かされた。

 遺体から情報を読み取ったトリア曰く、商人の皮を被った犯罪者! とのことだったので、遺体は作物の肥料になってもらったのだ。

 異世界が怖いとは思わない。

 どころか、私にはあっている世界かな? とすら思う。


「悪意がなければ、入り口以外から侵入しようとしても、入り口に誘導するだけなんだけどね」


「……大変恐縮ではございますが、不法侵入をはかろうとした愚か者は、メンディサバル商会の者でございましたでしょうか?」


「メンディサバル商会は、職業が詐欺師でも雇うのかしら?」


「月に一度ステータス確認をして、犯罪者だと発覚しましたら、商会から放逐した上で罪に相応しい罰を受けさせております」


「ちょうどタイミングが悪かったのかしらね?」


「高額ではありますが、教会にお布施を払えば職業の一時的な書き換えもできると噂されております。ですが少なくとも王都の教会では無理でしょう。あの方がおられますので……」


「既に相応しい罰を与えたので、その点の心配は不要です。ただ今後同じことをしでかす愚か者がいると困るので、トリアが教えてくれた名前を伝えておくわね」


 登録書を参考にしてトリアとトレントたちに作ってもらった紙を一枚渡す。

 そこには、トリアが読み取った犯罪とその名前が記されている。

 アランバルリの顔が酷薄に歪んだ。

 よほどの辛酸を舐めさせられた相手なのだろう。


「……ありがとうございます。また後日メンディサバル商会会頭と相談の上で、お詫びの品をお持ちしたいと思います。何かご要望はございますでしょうか?」


「詫びとしてほしいものはないかな? ただ今後の犯罪撲滅には腐心してください」


「はい。確かにその旨お伝えいたします」


 現実、撲滅は無理だろう。

 ただ何もしないよりはましなはず。

 私の一言が牽制になったなら、それで満足だ。


「そうそう。奴隷たちを選んだ基準を教えてもらえるかしら?」


「家族の中に欠損者がいること。希少種でないことの二点です」


 欠損者はこちらの指定だが、希少種に関してはそうでない。

 できれば希少種が良かったと思うも、扱いの難しさから初心者向けではないと判断されたのだろう。


「トリアが問題ありの奴隷たちだと、判断したようなのだけれど?」


「……会頭の言葉を借りるのであれば『欠損は本来の資質を歪めたのだろう』と」


 欠損を治せば、性格も治るって?

 そういったケースもあるだろうが、今回は難しそうだ。

 簡単であるならば、トリアは難色を示さなかったはずだ。


「では会頭に、これも伝えておいてくださいね『欠損完治程度で腐った性根は変わらない』

と」


「はい。手前にできることがございましたら、遠慮なく申しつけてください」


 基本返品不可とされているらしい奴隷だが、会頭自らの判断が悲劇を招くとしたら、その地位に賭けてでも返品は受けるだろう。

 まぁ、単純な返品などするつもりは毛頭ないのだけれど。


「あー。そうしたら私とアランバルリの間でのみ、連絡できる手段を手配してもらえるかな?」


「それなら、アイリーン。闇梟やみふくろうを捕まえて調教すればいいと思いますわ」


「闇梟?」


「とにかく気配を感じさせないモンスターなのです。夜には高速で飛び、昼は普通の速さで飛ぶのです。最速と謳われる疾風隼しっぷうはやぶさに速さでは及びませんが、確実に届けるという点においては、闇梟に勝るモンスターはいないのです」


「お、お言葉を挟むようで恐縮ですが、闇梟の調教は大変難しく、専門調教師でも八割は失敗してしまいます。手前が隼族の獣人に依頼を……」


「安心するといいですわ、商人! 私たちが調教しますから。無能と違って成功率は十割ですのよ?」


 アランバルリが絶句している。

 ローズが豪語するからには、さして手間もかけずに手配ができるのだろう。

 私にできることはといえば。


「じゃあ、名前はオスクロね」


 そう、名付けぐらいだ。

 

「調教が完了したら、アランバルリの元へ飛ばしますわ。名乗れるように調教……」


「当然可能ですわよ?」


「……してくれるらしいので。自己紹介させますね」


「ありがとうございます。お手数おかけしますが、よろしくお願いいたします」


 驚きから変化した表情は興味津々だった。

 それだけ優秀で珍しい連絡係なのだ。

 姿を見られなければ、奪われる心配もしなくてすむ。

 私との秘密裏なやり取りが可能ならば、安心度も安全度もあがるだろう。


「では、奴隷に関してはそれでいいわ。あとは直接見ないと最終的な判断もできないことだし」


「了解いたしました。それではジャポニカ種の種籾と稲。少量ではございますが精米された米も入手できましたので、そちらをお渡しいたしましょうか。それとも教会からレシピのお礼をお渡しいたしましょうか?」


 精米された米と聞いた瞬間、テンションがマックスまで上がった。

 紅潮した頬を見たアランバルリも、何故か同じように赤面する。

 しかしここは、村長としての正しい態度を貫こうと、心を鬼にして言葉を紡ぐ。


「では、教会のお礼を見せていただきますね?」


「はい! こちらになります」


 言葉もしくは書面での礼が精々だと思っていたので、吝嗇家でもないのかしら? と王位継承権第三位を持つ高貴な者に対して、不敬以外の何物でもない感情を抱きつつも、表面上は好奇心を大いに刺激されている擬態をする。

 アランバルリが何かを取り出す様子を、注意深く見守った。





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 心身ともに良好  


 料理人 LV 4 


 職業スキル 召喚師範


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)




 ホラー企画の方も着々と進めています。

 現時点では、五章校正です。

 一章目6000文字超えました……。

 前後編にした方がいいか迷います。

 

 次回は、一か月後、商人がやってきた。後編(仮)の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 次回も引き続き宜しくお願いいたします

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