夢の妖精召喚アイテム!
書き上げてから思いました。
これって妖精召喚アイテムなのかしら? と。
ま、まぁ妖精さんがやってくるのは間違いないからいいよ……ね?
この手のアイテムやシステムは千差万別だから、あってもいいはず!
目覚めのナオール花茶をホットでいただく。
朝食はスライムたちが作ってくれるというのでお任せした。
ストックが大量にあるはずなので、すぐ出してもらえる気もするのだが、私の腹具合を的確に推測できる皆は、基本できたてを食べさせたいのだと思う。
ぎゅむうっと全力で抱き締めたくなる可愛い子たちだ!
昨日聴けた『私が異世界へ来るに至った理由』の疲れがまだ残っているので、朝食ができるまで妄想でもして、のんびり過ごしてもいいのだが、私にはやりたいことがあった。
召喚士のみが作れるという、妖精召喚アイテムの製作だ。
本来なら召喚士の職業を得るために、苦節何年という修練を重ねるのだろうが、私の場合は至って簡単に取得できるのが有り難い。
サクラに出してもらったスカイビーンの皮を一対、テーブルの上へ置く。
内側のふわふわっとした綿毛のような感触を指先で堪能してから、厨二病を発症させた。
「可愛らしい妖精たちが、ほっと一息つけるような癒やし効果抜群の休憩所になるのです!
一人じゃ寂しいから、何人かが休める大きさになれば嬉しいのです。妖精たちが好む食べ物や飲み物なんかも常備されていれば、完璧な休憩所になると思うのですよ!」
掌サイズのスカイビーンズの実を三個ほど孕んでいるサヤは、五十センチ程度の大きさだ。
綺麗な黄緑色のサヤにきらきらと光る粉のようなものが降り注ぐ。
実が収まるくぼみに、小さなテーブルと椅子が出現した。
続いて反対側のくぼみには、寝具一式揃った状態でベッドが設置される。
ミニチュアの家具は、とても可愛らしい。
全てが輝きを纏った黄緑色をしている。
見るからに聖域といった雰囲気が漂っていた。
『職業スキル 召喚士を会得しました。召喚士のレベルは10です』
『スキルレベルが上限に達したので、上位スキル 召喚師を会得しました。上位スキル 召喚師スキルのレベルは10です』
『スキルレベルが上限に達したので、最上位スキル 召喚師範を会得しました。召喚師範スキルのレベルは10です』
料理人とは違って一気に最高レベルまで上がってしまった!
職業ではなく、職業スキルだからかもしれない。
しかも召喚士ではなく、召喚師範……。
もしかして妖精の休憩所を作るには、召喚師範でなくてはいけないのだろうか?
「……職業って、こんな簡単に最高レベルに達するものなの?」
「職業スキルだからなのねー。愛だからなのねー。例によって例のごとく特別仕様なのねー。愛は人外にとても愛されているのねー」
もそっと詳しく語るのねー、とリリーが説明してくれたのは下記の通り。
職業は基本一つしかつけないようだ。
転職したい場合は、神殿で転職願を出さないといけないらしい。
二つ以上の職業を得たい場合は、職業レベルを10に上げた上で、これも神殿での許可が必要とのこと。
例外として、今ついている職業より才能ある職業の資質が開花した場合、職業スキルが自動的に付与されるらしい。
当然だが今回の私のように、二つ目の職業所望! と祈っただけでは、職業スキルは得られないのだ。
私に資質があったのではなく、妖精たちが望んでくれたからこそ、こんなにも簡単に取得できたのだと思う。
妖精さんを含め人外に愛されるのは吝かでないのだが、そこに『神』と呼ばれる存在が入っていないようにと、必死に祈っておいた。
召喚師範の職業スキルを得て数秒後。
念願のアイテムを作成できたようだ。
妖精たちの休憩所
幻のアイテムにつき、ランクがつけられない希少品。
数少ない召喚師範の中でも、妖精たちに愛されている者にしか完成させられない。
休憩した妖精たちから、祝福や貴重なアイテムがもらえる。
アイテムバッグなどの中に入っていると、妖精の訪れがないので、結界が張られた家に設置しておくのがオススメ。
尚、妖精たちが好む食べ物や飲み物は、その都度与えてください。
「あ! いらっしゃい」
サクラにアイテムの説明を見せてもらっている最中に、早速妖精が訪れてくれた。
黄緑色のまるっとした妖精だった。
可愛らしくスカートの裾を持って、ぺっこりとお辞儀をしてくれる。
「……スカイビーンの妖精なのです。素敵な休憩所に大喜びなのです」
小さな可愛らしい口が動いているのは見えるけれど、発せられているはずの声が私には聞こえないようだ。
残念に思うも、説明してくれるサクラがいるだけ有り難い。
「貴方が初めてきてくれた妖精さんなの。すっごく嬉しいわ!」
私が話しかけるとまるっとした体が、一瞬だけきゅうっと引き締まった。
多分驚いたのだろう。
どうやら妖精には私の言葉は聞こえており、理解もしてくれているらしい。
「とても光栄なのです。お礼に生涯スカイビーンが絶対に空にならない祝福と、休憩所を訪れた妖精がくれたアイテムを仕舞っておくための、アイテムボックスを贈ってくれるそうなのです」
「えぇ! そんなにもらっちゃっていいものなの?」
祝福は地味に嬉しいが、アイテムボックスはどう軽く見積もっても過ぎたものだろう。
等価交換になっていないと、いろいろな問題が生じてしまう気がする。
「……自分のような下級妖精が初めての訪れで申し訳ないから、せめてものお礼とのことなのです」
「いやいや、下級とか関係ないし。こんなに可愛い妖精さんに会えて、光栄だし。初めて妖精を認識できて、ひたすら嬉しいだけだし!」
喜びを伝えようと、妖精が好きそうなフルーツを並べる。
どれでも好きなものを食べてほしい、なんだったら全部食べてほしい。
食べきれないならお持ち帰りを、是非してほしい!
鼻息も荒く告げれば、スカイビーンの妖精はその場でくるくる回って、目を回してしまうくらい喜んでくれた。
遠慮はいらないから! と重ねて言えば、笑顔全開のままでレッドベリーに齧りついてゆく。
口の周りどころか体全体がレッドベリーの果汁だらけになってしまったが、愛らしさは微塵も損なわれなかった。
けぷっと満足度の高そうなゲップをしたスカイビーンの妖精が、どうぞどうぞ! と言葉がわからなくてもわかる所作で、小さな黄緑色の宝箱を置いてくれる。
掌サイズの可愛らしい、鍵穴に当たる部分に小さなスカイビーンの実がついた宝箱は、時間停止、無限収納、整理整頓機能が付いた、大変ハイスペックなアイテムボックスのようだ。
「素敵な祝福とアイテムを本当にありがとう! 貴方のように可愛くて優しい妖精さんに出会えて、とても光栄です。良かったら今後も遠慮せずに遊びに来てくださいね。お友達もたくさん連れて来てくれると嬉しいです!」
スカイビーンの妖精は満面の笑みで大きく頷くと、見ているだけで和める愛らしいお辞儀をして、その姿を消す。
フルーツは全部持って帰ってくれたようで一安心だ。
「妖精との初めての逢瀬が双方大満足に終わって良かったのです!」
「まぁ、愛なら当然の結果だと思うのねー」
「ん? もしかして物別れな場合もあったとか?」
「むしろそっちの方が多いのねー」
「せっかく伝説的なアイテム製作に成功しても、その後の妖精とのやり取りで残念な結果に終わってしまうことも含めて、妖精の休憩所が幻のアイテムと囁かれる所以なのです」
「そ、そうなんだ」
ラノベでよく出てくる悪徳商人のように、初めて出会えた妖精にあり得ない要求をしたりするのかもしれない。
どう考えても無理だろうに、目先の利益に心を奪われてしまうのだろうか。
そこに至るまでの苦労に見合った利益を求めてしまう気持ちも、多少わかるけれど……。
何にせよ、私はそういった輩と同じ轍を踏まないようにするだけだ。
「そうだ! 妖精さんたちをお迎えする料理とか何処にしまっておけばいいかなぁ?」
説明にあったようにその都度準備してもいいのだけど、手が離せないときに来て歓待できない場合もあるかもしれない。
ぶっちゃけ私がいなくても、勝手に休憩所を使って、のんびりと寛いでほしいのだ。
「スカイビーンの妖精が設置してくれたアイテムボックスの中に、入れておけばいいのです。整理整頓機能も付いているから、妖精たちも自分の好きなものを取り出せるのです」
「もしかしたら悪戯が過ぎる妖精が来て、無茶をするかもしれないけど……この休憩所は妖精たちにも有名な観光地的なものになると予測できるから、安心してそのシステムを導入するといいのねー」
「なるほどねー。じゃあ安心して、存分に入れておくとしますか!」
握り拳を作る私の傍でスライムたちが、触手拳を振り上げて賛同してくれた。
あーでもない! こーでもない! と徹底的に相談して、妖精たちが好む食べ物や飲み物をしこたま入れておく。
「これで妖精たちも愛の手料理の虜……すばらしい商売になる予感がするのねー」
例によって黒い微笑とともに囁かれたリリーの不穏な発言は、いつものことよね! とスルースキルを発動させておいた。
喜多愛笑 キタアイ
状態 心身ともに良好 new!!
料理人 LV 4
職業スキル 召喚師範 new!!
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
そういえば妖精と精霊って、どういう違いがあるの? と検索した結果。
目からうろこでした。
妖精とは、人型の精霊……なんですって。
精霊は基本実体が見えない存在しないものなんですって!
まぁ、でも最近は人型じゃない妖精も、人型の実体化した精霊もよく見かけるから、あくまでもそういう前提ですが! っていう認識になるのかもしれません。
次回は、朝食はホットサンド。(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
次回も引き続き宜しくお願いいたします。