ポークのハンバーグ 後編
メニューを考えていたら、リアルでも作りたくなって作りました。
改変して、明太子のミルクスープを!
牛乳、コンソメ、明太子、じゃがいも、新タマネギを投入して、弱火ででくつくつと。
美味しかったのでリピートしたい所存です。
ハンバーグの焼き加減については……フライパンに薄くオリーブオイルを引いて中火で三分、ひっくり返して三分。
蓋をして弱火で三分、ひっくり返して三分、も一つひっくり返して三分。
強火にしてレッドワインを入れて、フランベ後に蓋をして蒸し焼き。
竹串で火の通りを確認して、完成……で落ち着いている。
ふっくらジューシーに仕上がるので、お勧めの焼き方なのだ。
一緒に食べたいからだろう。
皆私の様子を見ながら、少し遅れてフライパンを振るい始める。
コンロが足りないので代表者であるカロリーナが、大きなフライパン二つで全員分を焼いていた。
なかなか堂に入っている。
他の子たちは配膳の準備。
食欲をそそる香りにトレントたちも食べたくなったようだ。
カロリーナが焼き終えたあとのコンロに陣取って、大きな体を丸めて一生懸命ハンバーグを焼き始める。
可愛い。
トレント萌えも会得した気がする。
自分たちのことは気にしないで、食べ始めてほしいと言われた。
火加減を失敗したのだろう焦げた匂いがするのを心配するも、トリアに背中を押されて家の中へと入る。
完成した自宅で最初に食べる夕食なのだ。
なんとなく緊張する。
リリーがスライム収納からレッドワインを出してくれた。
そのついでにケチャップと濃い口醤油も出してもらう。
「そういえばこっちではお酒って、毎日飲むもの?」
「村民はふだんからミードを飲んでいたよ。暑いときにはそのまま、寒いときにはホットにしていたね。それぞれの家庭独自で薬草を調合したハーブミードは体調不良時に、高級スパイスを使ったものはお祝い時に飲んでいたかな?」
「へぇ、ワインはなかったんだ?」
「貧しい村だったからね。基本的に産地でもなければ村で飲むのは難しいのかも。お酒はミードで満足して、他の生活必需品を優先していたと思うよ?」
「ハーブミードとか興味あるけど……」
「うーん。僕も飲ませてもらったことはあるけど、配合比はわからないなぁ……あとで知っているトレントがいないか、聞いてみるよ」
「ありがとう。お酒造りはやるとしてもまだまだ先の話だから、焦らなくていいからね」
向こうで飲んだミードはあっさりしていて、それこそ毎日飲んでも飽きの来ない味だった。
村の特産品を考える頃になったら、酒造りに挑戦しても良さそうだが、アルコールはなかなかの確率でトラブルを呼ぶ。
現時点では知識を蓄えておくぐらいが無難だろう。
「では! 諸々の施設完成を祝って、かんぱーい!」
レッドワインが入ったカップを持って乾杯をする。
陶器製のカップがいい音を立てた。
全員が律儀に乾杯し合っているのが可愛らしい。
ちゃんとルンとピュアも参加している。
「るっ!」
「みっ!」
ルンとピュアが、真っ先にハンバーグを飲み込んで驚きの声を上げている。
二人ともケチャップ味を選んだようだ。
「るるるっ!」
「みっ! みみー!」
酸味と甘みが絶妙なケチャップと、ハンバーグの中からじゅわりと滲み出る肉汁が最高のハーモニーらしい。
どこぞかのグルメリポーターのようなコメントだ。
「僕の揚げたフライドイモジャガは最高だよね!」
「う! よく仕上がっているのよっ! 外はかりっと中はほくほく! フライドイモジャガの王様と崇めてもいいくらいなのよっ!」
トリアが幸せそうに咀嚼する横で、一緒に作っていたサイも飛び跳ねながらトリアを賛美している。
外かり中ほくなフライドイモジャガは、塩加減も好ましかったので、私もそっと拍手を送っておいた。
「んっ! ジンニンのグラッセもまろやかにできたの! 甘みはちょうどいいの?」
「ちょうどいいよ。しかもモルフォがよく鍋を転がしてくれたから、満遍なく味がついているし、照りもよく出てるしね」
味もさることながら、グラッセはいかに照りを綺麗に出すかを求められる一品だ。
モルフォが作ってくれたジンニンのグラッセはきっと、王族専属料理人が頭を下げて教えを請うレベルだろう。
「グリーンビーンのバター炒めは、照りも出てよくできたと思うのです。愛はどう思うのです?」
「絶妙のバター加減だったよ。しかもこのグリーンビーン、軽く下ゆでがしてあるでしょ? 指示しなくても完璧な手順で作ってくれるなんて、本当にサクラは料理上手よね」
味も好みに仕上がっていたが、食感もまた良かったのだ。
ほんのりと焦げ目がついているので、グリーンビーンの硬さがほどよく残っている。
冷凍食品でもないのに、しんなりとしてしまったインゲンを食べてしまった切なさを思い出して首を振り、もう一度サクラが作ってくれた美味しいグリーンビーンのバター炒めを口に運んで大きく頷いた。
「スカイビーンのゆで加減も私にかかれば完璧ですわ。カッテージチーズと塩胡椒も非の打ち所がない配分……ですわよね?」
ですわよね、のところだけ僅かに自信なさげなのが、由緒正しいツンデレだろう。
「うん。自分で作っても完璧なゆで加減には、たまにしか到達できないから。やっぱり天才ローズ様には勝てませんな! あ、あと大量の挽き肉作りありがとうね」
「皆の喜ぶ顔が見られるなら、あの程度の苦労は瑣末なことですわよ。もっとストックを作っておきますわね。愛の頭の中にはポークの挽き肉を使った料理が無限に存在するのでしょう?」
「無限とまではいかないけど、まだまだあるよ。ローズ的には物足りなさは感じないの?」
「いわゆる塊肉に齧りつくのも大好きですわ。でもそれと同じくらいに、このハンバーグも大変美味だと思いますのよ?」
肉好きのローズらしい発言だ。
どんな肉でも等しく愛せるのだろう。
「そうそう。スケットダラの子のクリームスープはどう? ちょっと彩りが足りなかったけど、味はいいでしょう?」
「ええ、スケットダラの子はクリーム系との相性最強ですわねぇ。ダラマヨと潰した茹でイモジャガを混ぜたものをサンドイッチにたっぷりと挟んで食べてみたいものですわ!」
通称タラモサンド。
私も大好物だ。
次にサンドイッチを作る機会があったら、作ろうと誓う。
私の誓いにローズも大きく頷いた。
皆は相変わらずの食欲で、十種類ほど出されたパンも一通り食べ尽くしたようだ。
全種類網羅がさすがに無理な私は、ライぎむパンの茶と黒の小さめに造ってもらったものをチョイスした。
想像していたとおり、ハンバーグによく合ったので満足だ。
ハンバーグは一人二個。
全員、ケチャップ味と濃い口醤油味を堪能した。
当然の流れで、どちらが美味しいか論争が始まる。
今回はケチャップ味が優勢のようだ。
リリーが食後に出してくれたホット皮モロコシ茶を飲みながら一息つく。
論争が続いているので、ふと気になってしまった、私が異世界に来たわけを知っているのかと、尋ねてみることにした。
「リリー」
「珍しいのね? 真面目なお話なのねー」
いつも通りに名前を呼んだつもりだったが、リリーには違って聞こえたらしい。
「うーん。真面目と言えば真面目なんだけど……リリーはさぁ。私がどうして異世界へ来たかって、知ってる?」
「知ってるのねー。ラノベ的区分だと、神様から選ばれた特別な存在にも拘わらず、別の神様に干渉された結果事故った、召喚型なのねー」
おうふ。
いろいろと突っ込みたい経緯だった。
リリーの説明をお代わりの皮モロコシ茶を飲みながら聞く。
曰く。
地球の神様と友好関係にある、この世界の一番高位な神様が、世界を発展させる重要人物として召喚をするはずだった。
しかもちゃんと説明をして納得してもらえたら、万全のステータスを与えた上で、望む環境に転移させるという、オタク理想の召喚だったという。
けれど、高位な神様に恋着する神様が干渉した結果、何も説明されず、意思も確認されず、強制転移させられたらしい。
困った神様をぎっちぎちに拘束した上で幽閉した高位な神様は、私が目覚める前に万全のステータスを与えて、更にスライムという庇護者をつけてくれたそうだ。
「神様から説明やお詫びがなかったのは、この世界へ落ちてから直に接触してしまうと、教会関係に知られて、祭り上げられる可能性が高そうで控えたからなのねー」
ありがとう神様、ナイス判断。
謝罪と説明がなかったのは責めたいところだが、教会関係者に自由を奪われるよりは、全く以てましだろう。
というか、今の環境は大変好ましい。
教会へ行ったら、一方的な感謝ぐらいはしておきたい。
事故対応としては文句がないものだ。
「私たちが愛に初めて会ったときに、この話ができなかったのは、その時点では知らない方がいいだろうとの判断だったから、そもそも知らされてなかったのねー」
「そうなんだ。私には教えなくても、スライムたちには教えても良かったのにね」
「愛が寝ているときに、神様に説明されたときはびっくりしたけど、納得もしたのねー。
事故とはいえ大変申し訳なかったっていう謝罪と、愛の好きに生きてほしいっていう希望を、伝えてほしいって言われたのねー」
「謝罪は受けるわ。好きに生きてほしいっていう希望も同じく。あ、あと感謝も。事故対応にしては過剰すぎる気もするからさ」
今の生活もオタク活動できない以外に不満はないからね。
生活環境を整えていくのもリアル開拓ゲームと思えば、その不満すら解消されないでもないし。
可愛いスライムたちを庇護者として派遣してくれただけでも、十分すぎると思うのだ。
「それとなく伝えておくのねー」
モンスターが神様に愛されるのは、教会の関知しないところなのだろう。
単純に認めたくないのかもしれない。
スライムたちを通して、やり取りができるのなら、幾つか聞いておきたいことがある。
「リリーたちを通して、神様への質問は可能なの?」
「質問は可能なのねー。誠意を持って答えるって言われているのねー。ただし、あくまでも愛から申し出てきたら答えるだけなのねー」
「……もしかして私が聞かなかったら、異世界に来る顛末も教えてもらえなかったってこと?」
「そういうお約束らしいのねー」
なるほど。
ありがちだ。
神様にだってルールはあるのだろう。
質問に答えてもらえるだけでも、十分に親切な仕様だが。
「向こうの世界での私の存在って、どうなっているの?」
「失踪扱いなのねー」
「うわ……」
失踪と認定されたのなら、後始末は恐らく、私に異様な執着を見せていた彼氏がするだろう。
血縁と疎遠にしているから、僕が全てやりますと、静かに手を挙げるに違いない。
彼氏の性格を考えると、存在そのものをなかったことにされるよりは、いいはずだ。
私としても、多少の情はある。
オタクな友人たちは、どこかで元気にやっているだろうと、乾杯をしてくれている気がするから、強いて言えば心配なのは彼氏だけだ。
会社関係なんて、当然どうでもいい。
親戚縁者も同じようにどうでもいい。
ただ彼氏にだけは、そうやって私の後始末を一人でしながら折り合いを付け、次の飼い主を見つけてほしいと思う。
「……向こうの世界に何か未練があるのなら、神様にお願いするといいのね?」
「いや。やめておく。多少の未練はあるけれど、神様にお願いするほどではないからね」
それに、私には転移魔法がある。
向こうへ戻れるようになったら一度だけ、様子を見に行くつもりだ。
「それに、あまり神様と親しくするのはよろしくないでしょう?」
神とはそういうものだ。
人と深い交わりを持たない方がいい。
「……高位の神様は喜びそうだけど、恋着した神様がねー。愛が生きている間は絶対に出てこられない場所に能力完全封印された上で、幽閉されているみたいだけど、何かこう、しでかしそうな気がするからねー」
うん。
実はそれもある。
神様とお話をしてみたいという欲求も実はあったが、恋着の神様に異常な嫉妬をされて、また変な介入をされたら堪ったものじゃないのだ。
「まぁ、神様お墨付きで、好きに生きていいって言われたからさー。皆と一緒に楽しくやっていくよー」
リリーの頭を撫でれば、他のスライムたちも寄ってきたので、満遍なく撫でておく。
異世界召喚に至った経緯を聞いて、地味に消耗してしまったので、後片付けをトリアとカロリーナに任せた私は、スライムたちと一緒にふかふかのベッドにダイブして、三秒速攻で寝落ちした。
ポークのハンバーグと三種類の付け合わせ
フライドイモジャガ
ジンニンのグラッセ
グリーンビーンのバター炒め
ランクSSS
付け合わせの彩りが目にも嬉しいセットもの。
単品でもそれぞれ高評価。
子供から大人まで大人気になること請け合い。
ソースなしでも美味しい。
神経痛改善効果有。
倦怠感緩和効果有。
疲労回復大の効果有
スカイビーンのカッテージチーズ和え
ランクSSS
カッテージチーズが使われると基本最高ランク。
スカイビーンのゆで加減が秀逸のため驚かれる一品。
ワインのつまみとしても好まれるようだ。
疲労回復効果有。
美肌効果有。
風邪予防効果有。
スケットダラの子のクリームスープ
ランクSS
クックルーの出汁を使っているので高ランク。
一般的にミルクスープはミルクしか入れないので、好みが分かれているようだ。
彩り野菜が入ると最高ランクを狙えるかも。
生クリームが入っているので、舌触りが大変なめらか。
頭痛軽減効果有。
冷え性改善効果有。
パン各種
それぞれ最低A以上の高評価。
喜多愛笑 キタアイ
状態 少々疲れ気味
料理人 LV 4
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV 6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV ∞ 愛専用
命止魔法 LV 3 愛専用
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
毎日だるさマックスでどうしたらいいかわからない今日この頃。
目に見えてストックが減ってきたので、頑張らないといけないのですが。
量を書けたあの頃が懐かしいです、ええ。
次回は、夢の妖精召喚アイテム!(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
次回も引き続き宜しくお願いいたします。