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村を整備しましょう。家造り編 5

 ゴールデンウィークに入っているにも拘わらず、いつもと変わらない気がします。

 外出できないからですかね?

 スーパーに行くついでに、スーパー内の回転寿司を堪能するくらいなら、許されるかしら……。

 ちらっと見たら好物のフェアだったんですよね。

 


 最後に調理場造りだ! と勢い込んで拳を握り締めたものの、ふと考えてしまった。

 私の考えでは、行き過ぎてしまうのではないかと!

 それは専用魔法も物語っているし。

 今更な気がすっごくするけれども。


「調理場……私の簡易キッチンを基準に考えたら、駄目なのぐらいは分かっているわよ?」


 首を傾げた私を見つめる数多の視線は、どれも大変切なかった。

 トリアのつぶらな瞳でジト目は、胸に来た。

 スライムたちのジト目は、鉄板で。

 カロリーナはジト目ができずに、狼狽えていた。


「愛が言う『分かっている!』は、全く以て信用できない今日この頃……」


「じゃあ一切口を出さないので、皆様で御検討いただきたく思いますぅ……」


 拗ねるアヒル口をしながら、図面が広がっているテーブルの上に顎を乗せる。


「拗ねる愛も可愛いけど、機嫌を直してほしいのねー」


「あくまでも獣人たちを、つけあがらせないためなのです!」


「そうそう。村の共同調理場っていたら……水置き場と洗い場と作業場があればいいかな?」


 トリアが調理場の図面に書き込みをしていく。

 指の先が木炭のようになっていて、直接書き込む様子に、大丈夫なのかとトリアの顔と図面を交互に見てしまった。

 彼女の一部が欠損していくように見えてしまうのだ。

 痛みはないのだろうか。


「ん? 自分の意思で体を素材として使う分には、痛みとか感じないから安心してよ。むしろ達成感すら覚えるからね。生きていればどうしたって劣化する部分は出てくるじゃない? 素材提供していいと判断した部分を使っているからさ。心配しないで」


 私の言葉にならなかったもやっとしたものを、きちんと汲み取ったトリアが説明をしてくれた。

 そういうことであれば、安心だ。


「ん! エルダートレントに限らず、自らの意思で素材提供してもいいというモンスターは、少なからず存在するのっ」


「う! 勿論私たちだって提供できるのよ? スライムゼリーとか!」


「おぉ! スライムゼリー!」


 異世界では万能素材と謳われることが多い有名素材だ。


「ふっふ。きっと愛が喜ぶと思ってたくさん用意しているのねー。スライムゼリーは凝固剤として使用されるのが一般的なのねー。料理では使わない認識なのねー。愛にはゼラチンとして使えるって教えると、小躍りすると思うのねー」


 早速ゼリーフラグが回収されたよ!

 向こうのゼラチンを使うことによる希少スキル看破のリスクが少ない上に、貧民でも簡単に入手できるところが大変に高評価だろう。

 

 私は正しく小躍りをしながら喜びを表した。

 一緒にスライムたちも踊ってくれる。

 そうなると必然的にトリアにカロリーナ、トレントたちも踊ってくれた。

 カオスだ!


「スライムゼリーの話は一旦置いておくとして……結局調理場はどんな感じにするの?」


「水瓶を二つ置いて、隣に排水ばっちりの洗い場。食材洗い場と食器や調理器具洗い場で二つ作っておくよ。それから……かまどは四つかな。パン焼き釜も作っておく?」


「ん! 賛成なのっ! ふわふわパンは私たちだけで食べるのっ! 差別化は必要なのっ!」


 ぱんだねだけでも提供したらいいのでは? と思ったけれど。

 スライム牧場で大量に飼育されているが、本来ぱんだねは希少種だった。

 麦系はトレントたちによる完璧な水質管理で、美味しいものが収穫できそうなので、そちらを使って頑張るのが正解なのだろう。

 それでも贅沢なのねーという、リリーの声が聞こえた気がする。


「了解。あとは作業場かな。水捌けのいい木材でテーブルを作れば完璧……だよね?」


「う! まな板とか木製調理器具は一通り用意しておくといいのよ?」


「そうですわねぇ~。木製の器具であれば用意しておいても、大丈夫かもしれませんわ~」


 この調子だと包丁は許可制になりそうだ。

 まぁ、どれだけ力のある獣人たちが、これまたどれほど強い武器を保持したところで、私たちに小さな傷の一つも、つけられるはずないのだが。


「では調理場造り開始! 私たちとカロリーナだけで十分だから、愛はスライムゼリーの使い方について検討するといいよ」


「ははは、ありがとう。そうさせてもらうね」


 モルフォがいつの間に作ったのかと、そろそろ突っ込みを入れるのも疲れてきた巨大な水瓶を二つ、スライム収納から出すのを見守って、簡易キッチンを展開する。


「これがスライムゼリー粉なのですわっ!」


 ローズが小ボウルの中に、こんもりとスライムゼリー粉を入れて出してくれた。


「粉末状にしたら使い易いと思いましたので加工しましたのよ? 一般的に使われているのは、こちらですわ」


 続いて小ボウルに、たっぷりとスライムゼリーを入れて出してくれる。


 スライムゼリー粉は、顆粒のゼラチン。

 スライムゼリーは、色のついていないゼリーだった。


「スライムゼリーは普通、凝固剤として建築に使われますわ。そのまま食べても無害なのですが、味がないのと食感がこの世界では好まれなかったので、食材として認識されておりませんのよ」


「勿体ないと思うけど仕方ないのねー。この世界はおなかが一杯になる食材が求められているのねー。ゼロカロリーとか、無価値扱いなのねー」


 食感が受け入れられないというのが残念だ。

 おなかが膨れなくとも遊び心は重要だと思うのだが、それもまた食生活に不自由したことのない者の、贅沢な感傷なのだろうか。

 食べ物に関しては保守的傾向にあるのかもしれない。

 サバイバル料理の安価レシピが広がれば余裕が出て、少しは変わった食材に手を出す人が出てくるような気もする。

 お偉い方々には、希少食材として出せば今でも喜んで食べそうだ。


「うーん。じゃあ粉でオレンジベリーのゼリー、ゼリーでモー乳のゼリーを作ろうかぁ」


「どちらも美味しそうなのです。オレンジベリーは果汁を搾るのです?」


「うん。お願いできる?」


「簡単なのです」


 サクラが体内にオレンジを取り込む。

 足元にボウルを一つ置いた。

 ボウルの上へ飛び乗って、ぎゅるっんと体を絞ったら、ボウルの中に果汁がたっぷりと滴り落ちた。

 ダイエットに良さそうな、見事な腰の? 捻りだった。

 これがスライム式絞り方らしい。


「ざっと十個ほどやっておくのです?」


「うん、お願い」


「皮はオレンジピールを作ってみたいので、取っておいてほしいのねー。隙を見て教えてほしいのねー」


「はいはーい。日持ちするし、捨てる部分で作るから、これもレシピ提供してもいいかもね」


 オレンジ以外でもできるから汎用性もあるしね。


 モー乳ゼリーは、モー乳と白砂糖にスライムゼリーを入れたら一緒に火にかけて、焦がさないように弱火のままでかき混ぜるだけだ。

 かき混ぜる作業はサイが引き受けてくれたので、私はオレンジベリーゼリーに取りかかる。

 こちらも作業工程はほとんど同じだが、少しだけ手間がかかる。

 まずはオレンジベリーの果汁とスライムゼリーの粉を混ぜ合わせて、十分ほど放置するのだ。

 固まったところで弱火で火にかけて、溶けてきたところでニードルビーの蜜を入れた上でかき混ぜればいい。


 それぞれ仕上がった液体を陶器製の容器に入れて冷やせば、あとは美味しくいただくだけだ。


「はっ!」


 大型冷蔵庫も作らないとなぁと、スライム収納で取り敢えず冷やしてもらおうと考えていると、背後に熱い視線を感じたので振り向く。


 調理場造りを終わらせた皆が、早く食べたい! と目を輝かせて訴えてきたのだ。

 私はすっかり慣れた生温い微笑を浮かべると、専用料理魔法レベル3を発動させて、瞬間冷蔵を施した。

 瞬間冷蔵ー! と対象物に向かって念じるだけである。

 この世界の魔法使いを全員敵に回しそうなお手軽具合だ。


「皆、手は……」


「洗ったよ!」


 トリアが両掌を見せてくる。

 カロリーナも同様。

 トレントたちも枝を出した。

 全員揃って新しいデザートに興味津々のようだ。


「あ! 中に何か入れても良かったなぁ」


 牛乳ゼリーはそのまま食べていたが、オレンジゼリーにはオレンジや蜜柑の身を入れていた。


「それは次の機会にすればいいのです。こっちの世界だと、何か入れると食感的に受け入れられやすい気もするのです」


「だよねー。それじゃあ、次は違う味で中に入れる果物も検討する方向でいくよ」


 私の中ではベースに使った果汁の身を入れるのが鉄板だが、他の果実を入れてもいいだろうし、二層三層にするのもありだろう。


「どっちが食べた……」


「両方ですわ!」


 カロリーナの主張に皆が揃って頷いている。

 スライムたちも頷いていた。


 そうなるだろうと予測して、小さくなってしまったが人数分作っておいて正解だった。

 テーブルの上に並べていけば、きちんと列を作った上で粛々とそれぞれのゼリーを一つずつ取っていく。

 冗談なのだろう、一体のトレントが複数個を取っていこうとしたら、背後のトレントに枝で思い切り小突かれていた。

 しかし、そんな個体でも私が音頭を取るのを大人しく待っているのだ。

 私は皆の期待に応えるために声を張り上げる。


「どうぞお召し上がりください!」


 いただきます! の見事な唱和とともにゼリーが食される。

 

 手早く作業する分、おやつタイムをがっつり取っているよなぁと思いつつも、夕食は何を作るべきか! と主婦のように悩みながら。

 私も美味しく両方のゼリーを堪能した。





 モー乳ゼリー

 ランクSS

モー乳と白砂糖、スライムゼリーで作られている。

 中に何か入れて食感に工夫をすれば更にランクアップ。

スライムゼリーを食材として使用しているという、新たな着目点が評価されて高ランク。

 解毒効果有

 解熱効果有


 オレンジベリーゼリー

 ランクSS

オレンジベリーとニードルビーの蜜、スライムゼリーの粉で作られている。

 中に何か入れて食感に工夫をすれば更にランクアップ。

スライムゼリーを食材として使用しているという、新たな着目点が評価されて高ランク。

 スライムゼリーを粉末状にする点もまた高評価されること請け合い。

 風邪に効果有

 火傷に効果有




 喜多愛笑 キタアイ


 状態 心身ともに良好 


 料理人 LV 4 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV 6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV ∞ 愛専用

     命止魔法 LV 3 愛専用


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)


 

 ダイエットの食事制限を厳しくしてみたのですが、体重は横ばいです。

 増量しないだけましなのか、地味に筋力がついてきているのか、微妙なところ……。

 次の予約検診時に痛みを言われないように頑張らねば。


 次回は、ポークのハンバーグ。前編(仮)になります。


 お読みいただきありがとうございました。

 次回も引き続き宜しくお願いいたします。

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