表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/202

村を整備しましょう。家造り編 4

 基本引きこもり生活に慣れきっていますが、外出制限をされると出かけたくなってしまいますよね。

 行きつけの本屋さんにぐらいならいいかな? と思ったら、しばらく休業と知りました。

 大人しく通販することにします……。

 

 



 村の共同施設は奴隷たちの家に近い所がいいだろう。

 家から程なく近い場所に、集会場、大浴場、調理場を作りたいと相談する。

 モルフォがそれぞれの図面を書いてくれた。

 地図への書き込みもしてくれる。

 完成して差異があれば修正するそうだ。


「集会場っていうと広めの造りがいいかしら?」


 イメージとしては十五~三十人が収容できる、小さめな中会議室あたりの広さだろうか。

 大は小を兼ねるということだし、大会議室にするというのもありだが、さすがに最初から百人超えの集会場というのは大きすぎる気もした。

 近くに他の村があれば、避難所的な意味合いもかねて広くしてもいいのだが、現時点ではどんなに近くとも、この村へ避難してくる人間はいなそうだ。

 何しろ元は盗賊村。

 安全な村になったと認識されるまでは時間もかかるだろう。

 

「僕が知ってる村の集会所だと、二、三十人が収容できる広さだったかな?」


「私の知っている集会所は……群れのトップしか使いませんでしたから、倉庫街の交渉小屋と変わらない広さでしたわ~」


 二人の意見を参考にすると、上限三十人程度の広さが無難そうだ。


「必要な家具は机と椅子くらいだから、トレントの得意な子に頼むとするよ」


 と言いながら、早速頼んでくれたらしい。

 トリアの目線を追えば、頑張るからねーとばかりに、一体のトレントが枝を振って応えてくれた。


「じゃあ僕とカロリーナが中心になって、集会所を作ってしまうから、愛は引き続き図面の練り込みを頼むよ」


「わかったわ」


「任せるのねー」


 力こぶらしきものを作って見せたリリーの頭を撫でたトリアは、集会所を作るべく、どこからともなく取り出した木材を使って組み立てを始めた。

 カロリーナもトリアの指示に従って、巨木を軽々と持ち上げて手伝っている。

 家具作りを受け持ったトレント以外が、揃ってこちらを伺っていた。

 どれだけ働き者なのだろう。

 プリンのためなら! とか、バケツプリンを山ほど食べたい! とリクエストしようか……などといった囁きも聞こえたが、対価として考えても安いものだ。


「次はお風呂なのです。愛の魔法で常時出し続けるのは不許可なのです!」


 サクラに禁じられたので、図面を前にしながら、改めて風呂魔法を検証してみた。

 風呂セットを出し続けるのなら問題だが、時間を決めて出せばそこまで消耗もしない気がしたのだ。

 だがそれはあくまで、自分とスライムたちが一緒に入ることを想定した結果の、一家族が堪能できる広さのバスルームが対象だった。

 その大きさしか設置経験がない。

 維持はさて置き、そもそも銭湯クラスの大きな湯船を果たして設置できるのだろうか……と頭の中で細やかな妄想を練っていたところ。


「……愛の規格外は今に始まったことじゃないのね……」


 リリーの呆れた声に、他のスライムたちも頷く。

 目の前には広めの銭湯クラスの湯船を中心に、村人が一度に全員入っても問題なさそうなバスルームが設置されていた。

 無意識に妄想を具現化してしまったようだ。

 たぶん魔法を発動したのだろう。

 心身ともに疲れを感じないので、MP消費が少なそうで有り難い。

 継続して設置し続けるとなると、さすがにSPあたりを消費しそうだが。

 一日中何時でも入れる贅沢仕様にしなければ、私の風呂魔法で維持するのもありだと思うけれど……。


「んっ。愛の考えていることはお見通しなのっ。でも村長がやり過ぎる村は、村人の離反率が高いという統計が出ているのっ!」


「うっ。甘やかしすぎはよくないのよっ。種族にもよるけれど、獣人はつけあがりやすいと真しやかに囁かれているのよっ!」


 獣人えぇ。

 とか思ってはいけないのだろう。

 スライムたち筆頭に皆が甘やかしてくれるので、私もつい頑張ってしまうが、言われてみればそうだ。

 親切心でやったはずなのに、気がつけば当たり前と受け取られ、それが日常となり、何時しか、どうしてやってくれないんだ、やらない貴様がおかしい! と罵倒される破目に陥る。

 向こうで散々経験したパターンだ。

 特に信頼関係が構築されていない段階でやってしまうと、そうなる傾向は強い。


「了解! 私の魔法は使いません!」


「ええ、それでよろしいですわ。トレントたちの目がやる気に満ちあふれているので、木製風呂にいたしましょう」


「愛のもふもふ好き目線を勘違いしそうな輩がいたら困るから、露天はなしにしないと駄目なのです」


「そうするとねー。風呂小屋、湯船、風呂桶、風呂椅子はトレントたちに作ってもらうといいのねー」


 がってんしょうちのすけ!

 という気合いが聞こえた気がする。

 トレントの中に転生者や転移者がいるのだろうか?

 額に皺を寄せている私を放置して、スライムたちの打ち合わせは続く。

 参考にしたいとのことだったので、魔法はまだ発動中だ。

 モルフォがさらさらと、魔法を見ながら図面を仕上げていく。


「シャワーはどうするのねー?」


「贅沢なのです。必要ないのです」


「んっ。温水があるだけで十分なのっ」


「う。水関係はトレントたちにお任せなのよ? 温水も……出せるのよ?」


「温水というか、温泉だね! 適温調節は当然可能だよ」


 さくさくさくっと集会所の小屋を完成させたトリアが応えてくれた。

 温泉の出るお風呂とは、私の魔法風呂より贅沢なのではなかろうか?

 

「愛の家にも露天風呂を作ろうか?」


「ありがとう、それは嬉しい」

 

 カロリーナのジャングル露天風呂をふと思い出したが、あれはまた別枠と考える。

 自分の家に露天風呂があるという誘惑には抗えなかった。


「ちなみに温泉は、獣人には熱が体内に籠もりすぎてしまうから人気がないんだよね。むしろ温水が贅沢って言われてる。温水も作れるけど、僕の場合は温泉を引っ張ってくる方が楽だね」


「一般的に温水を作るのは魔法か魔石なのねー。愛のシャワーみたく、捻ったらお湯が出るのは驚くほど高性能な贅沢なのねー」


「なるほどねぇ」


 私はモルフォが書いてくれた風呂場の図面を眺める。

 魔法は解除した。

 設置した風呂セットを誰も使用しなかったせいか、消耗は驚くほど少なかった。


えーと?

 入り口入って脱衣所。

 あ。

 脱衣所に籠か棚が必要だね。

 早速どっちがいいか尋ねると、棚一択だった。

 籠だと自分の物にして持ち帰る可能性があるらしい。

 向こうでも、そういう非常識な人は一定数いたので、納得してトレントに棚製作のお願いをする。


 脱衣所を経て風呂場へ。

 洗い場の中央に、水汲み場と温泉汲み場があるようだ。

 そこから桶で汲んで使用する感じらしい。

こちらにはかけ湯の文化がないようなので、説明するのを忘れないようにしたいところだ。


 湯船はぬるめと普通の二浴槽。

 共同風呂場では勝手にお湯の温度を変えるのは禁止されているとのこと。

 熱さに強い種族以外は、比較的ぬるめが好まれる世界で、獣人たちにいたっては水風呂でもいいそうだ。

 トリア曰く、水風呂との変更は簡単なので、入る獣人達の様子を見て、必要なら変更しようと決めた。


 石鹸は勿論、シャンプーやリンスなどは贅沢品なので、慣れてきた時点で販売するかを検討したら? とアドバイスされた。

 獣人たち用に、のみ取りシャンプー的な物を開発してみるのもいいかもしれないと考える。

 アランバルリにでも後日、相談してみよう。


「桶や椅子も各自渡さないとなんだよね?」


「そうだねぇ。愛の世界では風呂場に置かれていたの?」


「自分で持ってくる人もいたけど、風呂場に置かれている物を使う人が多かったかな」


「愛の世界は心に余裕のある人が多いんだねぇ」


 トリアに感心されてしまった。

 平均するとこちらの世界より民度は高いかもしれないが、困ったちゃん率に関してはさして変わらない気もする。


「さて、お風呂はこんな感じでいいかな?」


「いいんじゃないかな? 追加があればその都度作業するし。あ! 水回りに関しては安心してね。汚水は遠方に排出するから」


 風呂の排水ぐらいなら二次利用もできそうだが、水に関してはトリアにおんぶに抱っこが安心だろう。

 お礼もプリン以外を考えたいところだ。


 集会所同様トリアが中心になった建築が始まる。

 ちなみに、桶や椅子といった小物は勿論、湯船も既に完成しているのだから驚きだ。


「お礼のお菓子をプリン以外考えないとなぁ……」


「お菓子の充実は私たちも嬉しいのねー」


「カロリーナが『わがし』を食べてみたいと言っておりましたわ」


 和菓子。

 和菓子といえば餡子の印象が強い。

 最初は大福といきたいところだが、小豆や餅米は存在するのだろうか。

 あ。

 穀物ダンジョンで餅米はあったといってたっけ。

 小豆も穀物ダンジョンで出そうな気もしないでもない。

 これもアランバルリに後日相談だ。

 この調子だと相談一覧を作っておくといいかもしれない。


「材料が手に入ったら考えるね。現時点での新作は洋菓子かなぁ」


 プレーンスコーンからいろいろと派生させるのもいいし、クッキーも日持ちするから推したいところ。

 プリン、ムースと作っているので、ババロアやゼリーに走るのも悪くないだろう。

 あ。

 寒天ならその辺に生えていそうな気がするので、和菓子もいける気がしてきた。


「愛は何か作っているときは、本当に楽しそうだけど、料理しているときが一番幸せそうな顔をしている気がするなぁ」


「同志ですわ~。どこまでもついていきますわ~」


 二人の言葉に生温い微笑を浮かべつつ、寒天が生息しているかどうかを問おうとしたが、まずは調理場までを完成させてしまうのが優先だろうと思い直して口を噤んだ。





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 心身ともに良好 


 料理人 LV 4 


 スキル サバイバル料理 LV 5 

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV∞ 愛専用

     命止魔法 LV3 愛専用


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者

 

 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)



 そして先日。

 友人たちのやりとりで、ほとんどの友人が在宅ワークに切り替わっていることに驚きました。

 仕事内容はかなり違うけど、給与に変化はないと聞き、その点は良かったねぇと思った次第です。


 次回は、村を整備しましょう。家造り編 5(仮)になります。


 お読みいただきありがとうございました。

 次回も引き続き宜しくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ