村を整備しましょう。家造り編 2
旦那様とスライムだと微妙に設定が違うのが、時々ごっちゃになります。
一応気になるところは、それぞれチェック項目を設けてはいるんですけどね。
トレントたちのお蔭で、またしてもスピーディーすぎる仕上がりになってしまった。
気がつけばスライムとカロリーナの手によって大量に作られているプリンが、これでもかと出されてトレントたちが声なき喜びをあらわに、その幹を思い思いに揺らしている。
トリア、カロリーナ、トレントたちにはそのままプリン堪能タイムに突入してもらうことにして、私はスライムたちと一緒に自分の家に手を入れることにした。
現時点では食事は皆仲良く外で食べているし、お風呂はその都度セットしている。
ベッドそのものは簡易な造りだがスライムたちが一緒に寝ているので、ぶっちゃけ最高の寝心地だ。
家は狭いのだが、寝るだけだったので今までは特に問題も感じなかった。
向こうにいた頃も、オタクの心得として収納スペースは広々と取ってあったが、生活スペースはベッドの上から一通り手が届くオタク特化仕様にしてあったのだ。
しかし、今の村人たちだけなら何の問題もないのだが、新たな村人が増えたなら、多少の見栄は必要だろう。
何しろ自分の肩書きは村長なのだから。
「まずは家そのものを大きくするのねー。トリア厳選の木材・ヒノッキーをふんだんに使うのねー」
「ん? 向こうのヒノキと同じ感じ?」
「そうなのねー。出た木くずも燻製用チップとして使えるのねー。この間できあがった燻製機を見て嫉妬したトリアが、品種改良して育てたヒノッキーだからきっと、向こうのヒノキに劣らないのね」
「い、いつの間に育てたの? さすがはエルダートレントと崇めるべきなのかしら? 木に関しては想像の上をいくチートっぷりと推測したわよ!」
既に家作り用に加工された木材の山へ近寄っていく。
香しいヒノキの匂いが鼻を優しく擽った。
「うん。本当に良い匂い。少なくとも匂いに関しては向こうのヒノキに勝るとも劣らないね! あとでお礼を言っておかないと」
「う! 私も解体を手伝ったのよ! 愛が気に入ったのなら、即時増産できる体制が整っているよーって、トリアが言っていたのよっ!」
「取り敢えず私と今いる村人のためだけに使う感じだから、今のところ増産はしない方向かなぁ……」
ヒノキの特性は水に強く狂いが少ない。
また菌や虫にもよく耐えるなどが上げられる。
ここまで香りが良く、建築木材として優秀なものが、この世界にあるだろうか?
エルダートレントを木材と考えるのなら、向こうの世界の木材などあらゆる意味で凌駕するとは思う。
が!
私にエルダートレントやトレントを木材にするなんて絶対にできないから、やっぱり、トリアが育成したヒノッキーは、流通させない方がいいと考えるのだ。
「必要なときに増産すればいいのです。愛が悩む必要はないのです。部屋の間取りはどう考えているのです?」
サクラに言われて目を閉じる。
向こうの世界で夢の間取りといったら、使い易く本に優しい書庫! が一番にきたのだが、この世界の本にはまだ遭遇できていない。
コミックスはあるのだろうか。
ゲームもボードゲームくらいならあるだろうか。
フィギュアはないだろうが、魔法で動くような人形ならあるかもしれない。
この世界にオタクが楽しめる要素がどこまであるかはさて置き、まだ自分の生活基盤がきちんと確立できていないので、オタク活動を求めるにまでいたっていない状況だ。
書庫やオタクグッズを収納しておく倉庫の必要はない。
睡眠は大事にしたいし、日本人の心得としてお風呂には気合いを入れたいので、寝室とバスルームはしっかり作っておいた方がいいだろう。
食事も中でできるようにダイニング&キッチンも必要だ。
トリアとカロリーナは一緒に食べそうなので、これも広めがいい。
村長ともなれば応接室もあった方が良さそうだ。
今は必要性を感じないが完全に一人になれる個室もいる気がする。
スライムたち専用部屋もいるだろうか?
は!
トイレ!
トイレは設置せねば。
「ん! 安心するといいのっ! トイレは忘れていないのっ!」
私の妄想は口に出ていたらしい。
モルフォが図面を描いてくれていた。
住宅サイトでよく見る、わかりやすい間取りだ。
「そうですわ。この村のトイレはトレントたちのおかげで、愛の世界の水洗トイレも真っ青ですのよ」
「愛が望むのなら、洋式便器も作るのねー。木製だけどねー」
「頑張れば、石でもできそうなのです?」
「木製の方がお尻に優しいと思うのねー。木のぬくもりも優秀なのねー」
さすがに温水洗浄便座を求めるのは難しそうだ。
トリアがいる以上、木製便器の方が何かと安心安全な気がする。
「う! 間取りも決まったので、家を造るのよっ!」
「あれ? 改築じゃなかったっけ?」
「せっかくのヒノッキーだから、一から作るのねー。木製便器もヒノッキーで作るのねー」
いいのだろうか。
いいのだろう。
便器以外は総檜のトイレを見たことがあったが、檜の便器は見たことなかったなぁ……。
「間取りは決まったの? あ! 美味しかったよ、プリン」
「カロリーナの腕も随分上がったのねー。毎日作っているせいかもしれないけどねー。美味しかったのなら何よりなのねー。間取りはこれなのねー」
間取りが描かれた図面を手に、リリーがトリアの肩に飛び乗る。
目の前に図面を差し出されたトリアは、一瞬で把握すると大きく頷いた。
「これなら、僕一人でできるよ。あ! トイレは作るの上手な奴がいるから頼むといい。家具も同じくだね。ん? スライム部屋は必要なの?」
「愛が個室を望むなら、私たちも個室を望みますわ! お揃いですものね!」
そういう理由で欲しいようだ。
うん、可愛い。
全員まとめて一つの個室というところもまた萌える。
「ん? 愛が変な顔をしているのっ」
「しー。あれは萌え顔というのですわ。指摘してはいけないものなのですの」
ローズの説明は聞かなかったことにする。
外に出ると、寛いでいるトレントたちにトイレや家具を所望してみた。
皆、喜んで枝を振りながら引き受けてくれる。
「そして結局私のやることがないという……」
トレントたちにお願いしている間に。
それだけの短い時間の中で。
トリアは私の家を完成させてくれた。
「できたよー! 中を確認するかい?」
「は、早すぎだよトリア! またしても私の出番が!」
「適材適所っていうじゃないか。君は僕たちに食べたことない美味しい物を食べさせてくれて、今まで感じたことのない至福を味わわせてくれたんだ。これぐらいむしろさせてもらわないと割に合わないでしょう、愛が」
「いやいや! 家一軒と食事じゃ全然金銭的価値が違うでしょうに!」
「愛は謙遜しすぎなのねー。ここは、ありがとう、トリア! でいいのねー」
「は! そうだね! 何はともあれ、ありがとうトリア! 注文建築とか夢が叶って嬉しいよ!」
「いえいえ、どういたしまして! なかなかよくできていると思うから、中へ入ってみるといいよ」
トリアがドアを開けてくれるので、中へ入る。
新築の匂い。
ヒノッキーのふくよかな香り。
森の中にいるような心地で、入った瞬間にリラックスできてしまう。
絶対の安全領域。
玄関を入って左手が応接間、右手がスライムたちの部屋。
応接間は独立しており、他の部屋へ移動はできない造りとなっている。
スライムたちの部屋のドアを開けると私の個室。
更にそこからドア続きで寝室。
応接間の隣にトイレ、脱衣所、洗面所、バスルームが設置されていた。
その隣にはダイニングとキッチンが広がっている。
「ふおー! 何たる充実の間取り! 贅沢だわぁ」
「愛の寝室にトイレ作った方がいいかなぁ? 愛専用トイレ」
「いやいや、この間取りなら一個で十分でしょう。応接室に出入りする人に使用されても、気にしないよ、私は」
「うーん。その辺りはどんな人間がどの程度訪れるかわかってから、再度考えようね、リリー」
「そうなのねー。当面は応接室以外に愛と私たちとトリア、カロリーナ以外は入れない方向でいくのねー」
私の警戒心は、どうにも低いようだ。
高い方だと思っていたが、スライムやトリアたちがいて安心しているのかもしれない。
「後でできた家具を持って、トレントたちが待っているのです。早く受け取ってあげるのです」
ダイニングで頷いている私たちに、サクラが話しかけてくる。
私たちは慌てて玄関先まで行って、トレントたちが作ってくれた素敵家具を順番に受け取っては設置する作業を繰り返した。
ちなみに何やら拘りがあるらしく、便器はトリアが設置してくれた。
皆の前で座って見せてくれと言われて、躊躇いつつも座れば、何故か皆が歓声を上げる。
トイレの中で、見守られながら歓声を上げられる経験は、さすがに初めてだった。
喜多愛笑 キタアイ
状態 心身ともに良好 new!!
料理人 LV 4
スキル サバイバル料理 LV 5
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV∞ 愛専用
命止魔法 LV3 愛専用
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
近所のスーパーの特売チラシがしばらく中止になりました。
マメにチェックしているので早く復活して欲しいところです。
次回は、村を整備しましょう。家造り編 3(仮)になります。
お読みいただきありがとうございました。
次回も引き続き宜しくお願いいたします。