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サバイバル料理を披露してみよう。後編

 少し前の健康診断時、鼻から入れる内視鏡を初めて経験しました。

 久しぶりに涙腺ぶち切れ系の痛みを感じましたが、その結果。

 危険な診断結果が出てしまいました。

 再検査諸々受けて、現在投薬中。

 皆様も、胃カメラ系の検査を一度は受けておくこと、お勧めします。

 あ、薬で完治する系の病で痛みなども伴わないので、更新状況などに支障はありません。

 


 テールスープを口にしたアランバルリの目が大きく見開かれる。

 隣でそんなアランバルリを見ていたカロリーナも、テールスープを飲んで同じ表情をした。


「お味はいかがですか~?」


「今まで私が食べてきたサバイバル料理とは何だったのでしょう……」


「それは普通のサバイバル料理だったのだと思いますわ~。今召し上がっているのは、アイリーンが作ったサバイバル料理なのですわ~」


「なるほど! 確かに作り手によって料理とは味が変わるものですからね!」


 大きく頷いたアランバルリの空になった器に、カロリーナがかいがいしくお代わりをよそっている。

 アランバルリの食べっぷりと高評価が気に入ったのだろうか。

 

「私もおなかを空かせて、ニッキーズの葉や茎を囓ったことがありますの~。口の中に棘が刺さってしばらく大変でしたのよ~」


「ええ、わかります。何日経っても棘が抜けきっていなくて、ふとした拍子に痛い思いをするのですよね……」


 カロリーナはここに来るまで、肉嫌いのラミアとして大変な苦労をしてきている。

 アランバルリを食に恵まれなかった同志として認識したのかもしれない。

 顔を見合わせて頷き合っている様子を見ると、そんな気がしてきた。


「しかし……モーモーテールから、ここまで濃厚な旨味が出るとは思いませんでした」


「挑戦した人も過去にはいたようだけど、煮詰める時間と臭いが邪魔をして、この味にまではたどり着けなかったみたいなのねー」


 リリーが博識加減を披露する。

 圧力鍋だと臭いは気にならないが、料理鑑定には臭い消しを使うと美味しさが上がると表記されていた。

 ショウガやニンニク、ネギシロ、ネギミドリなどと一緒に煮込むと、臭いに関してはかなり改善されそうだ。

 聞かれたなら答えようと思っていたが、アランバルリの独り言から察するに、臭い消しについては、簡単にたどり着けそうな気配がした。


「茎に残る筋と葉脈の噛み応えもいいですね。物を食べているという実感が強くもてます」


 避けられがちな筋や葉脈だが、アランバルリは歓迎するようだ。

 小さい子供や老人は辟易とするかもしれないが、よく噛むのは基本健康に良いので、私としても特に避けないで使ってほしいと考えている。


「次はこれね」


 噛み応えのある料理の次は、やわらかい食感の料理にしてみる。

 クックルーの内臓とキズナオール草の球根を煮込んだものだ。

 醬油やみりんを使いたいところだが、あくまでも塩に拘っておく。

 向こうの塩モツ煮込みには醤油が入るのだが、まぁ、なくてもいけるだろう。

 キズナオール草の球根は、甘みのある百合根といった味だったので、俗に言う優しい味に仕上がっている。

 さすがにレアだけあって味がいい。

 工夫すればデザートとしても楽しめそうだ。


「……内臓は恐ろしくて手を出したことは一度しかありませんが、安全にいただけるだけで完敗なのに、美味しくいただけるとは……本当にこちらへ伺って良かったです」


「そう言ってもらえると嬉しいですね」


「内臓に紛れて入っている、このほくほくした甘い食材は何でしょうか?」


 キズナオール草の球根のレア度は、想像していたよりも高かった。

 アランバルリがわからないのだから、あくまでも栽培に使うものと考え、食べるまでには至らなかったのだろう。

 

「キズナオール草の球根ですよ」


「毒性はなかったのですね!」


 どうやら毒があるという認識だったようだ。


「ええ、ありませんよ。丁寧に水洗いすれば他の食材と同じように使えます」


「球根は次のキズナオール草を生み出すものという認識でした。なかなか取れないというのもありまして、食べるのは……そう、勿体ないと、この味を知っても思ってしまいますね」


 アランバルリは苦笑している。

 キズナオール草はどこにでも生えている雑草扱いだが、人工栽培となると球根がレアなため難しいのだろう。

 もともと食材というより薬剤の認識が強い植物なので、アランバルリの苦笑はその辺りも考えて思わず出てしまったのかもしれない。


「キズナオール草は、薬剤としても食材としても本当に優秀なんですよ?」


「もしかして、ナオール花茶、球根の煮物に続いて、まだ料理があるということでしょうか?」


「うちには解体の得意な子がいますので、キズナオール草を五種類の部位に解体できるんです」


「ご、五種類ですか!」


 ぴょんぴょんと飛び跳ねて自己主張をするサイを見つめるアランバルリの眼差しには、尊敬の色が多分に含まれている。

 尊敬されるスライムなんて、きっとうちの子たちぐらいだろう。

 うちの子たち自慢をしたくて、むずむずする口をきゅっと噤む。


「ええ、そうです。葉と根から薬が作れ、花と球根と茎からは料理が作れます。その茎で作った料理がこちらですね」


 リリーが黒い微笑を浮かべる、いろいろな意味で美味しい料理をアランバルリの前に出した。


「ナオールの煮物です。塩と水と茎を煮込むだけの簡単料理です」


「……キズナオール草が、ここまで奥深い素材だったとは……勉強になります」


 器を捧げ持つようにして感謝の意を示したアランバルリは、ナオールの煮物を口にして、大きく頷いた。


「……茎にありがちなえぐみがない上に、やわらかい! 煮込み時間はどれぐらいですか?」


「しゃきっとした食感を残したいのなら五分程度。食べやすくしたいなら十分程度ですね。今回は五分仕様ですよ」


「これでも十分やわらかいですが、味が損なわれないままもっとやわらかくできるのなら、病人食などにもできそうですね」


「味が落ちてしまいますが、塩を多く入れると保存食にもなりますし、どんなに熱くても火傷しない。整腸作用がある……なんて効能もついているんですよ!」


「こ、効能付ですか? 誰が作っても?」


 そんなに驚くべきことなのだろうか。


「はい。Aランク料理ですから。サバイバル料理でAランクは、なかなかのできだと思うのですが……」


「ら、ランクえぇ……」


 遠い目をしてしまったアランバルリに村民が揃って首を傾げる。

 

「……料理のランク下からE、D、C、B、A、S、SS、SSSとなっています。サバイバル料理は良くてC。Cは一般的な家庭料理。Bは美味しい家庭料理。Aは高級料理とされていて……。あぁ……先刻いただいたレッドベリーのムース スライスレッドベリーのせはSSSでしたね……驚くところが多くて、あえて指摘いたしませんでしたが……」


「でしたが?」


「SSSの料理なんて、百年生きた有名料理人でも、生涯一度か二度しか作れないと言われています……」


 うん。

 普通に食べてます、ランクSSS。


 一般常識を知るって大切だ。

 この世界に来て初めて出会った真っ当な人間との出会いに、誰に捧げるでもない感謝をする。


「フォルス様の料理は……信用できる方にのみ出された方がよろしいかと愚見いたします……サバイバル料理でランクA……道理で美味しいはずですね」


「まだ数品考えてありますが、またの機会にされますか?」


「商人としては、是非とも今すぐに! と申し上げるのが使命でございますれば……今回は……次回の縁に繫げていただきたく存じ上げます……」


 アランバルリが無欲な商人で良かったと思いつつ、もっと強欲であってもいいのにと思いつつ。

 人に対してそんなふうに考えられる自分に、少しだけ安堵する。


「では料理はこれぐらいにして……商談をいたしましょう」


「はい。どうぞよろしくお願いいたします」


 簡易キッチンセットをしまって、小屋に移動する。

 後片付けは仲良しコンビのルンとピュアが引き受けてくれた。

 二人を可愛がるトレントの何人かも手伝ってくれるようなので、人手は十分だろう。


「さて。村に入るまでにいろいろなものを見たと思いますが、どういった品物を希望されますか? あぁ、レシピなどの情報でも構いませんよ?」


「……大変有り難いお申し出なのですが……正直どんなお取り引きでも、当方に利が有りすぎるものになってしまいそうですので……まず、フォルス様の御希望する品を教えていただけないでしょうか?」


「では穀物ダンジョンで取れるというジャポニカ種の種籾を。可能であれば種籾以外のジャポニカ種と呼ばれるもの全てを希望します」


「穀物ダンジョンは何度か潜った経験がございます。ジャポニカ種は下の階層で出ますね。ドロップするのは種籾ですが、レアドロップで稲が出ます」


「稲っ! 是非稲もお願いしたいです!」


「強く御希望されるのですね。正直に申し上げまして意外なお品物でございました」


「ふふふ。私が住んでいたところでは、毎日主食として食べていたのよ」


「ジャポニカ種を、でございますか?」


「凄く美味しいのよ? 持ってきてくれたら、一緒に食べましょう」


 アランバルリならきっと、私の望むとおりに、お米の美味しさを広げてくれるだろう。

 転移後から切実に欲しがってきたお米の入手が時間の問題になった嬉しさに、満面の笑みを浮かべてしまった。

 




 クックルーの内臓 キズナオール草の球根の煮物

 ランクA

 出されたらほとんどの人が、味と使われている物の高価さに驚く一品。

 新鮮な内臓とキズナオール草の球根は、どちらもレアで扱いが難しいと言われている。

 塩だけでも十分美味しいが、調味料を使うと更に飽きがこない味になる。

 胃腸が強くなる効果有。





 喜多愛笑 キタアイ


 状態 心身共に良好 


 料理人 LV 4 


 スキル サバイバル料理 LV 4

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV∞ 愛専用

     命止魔法 LV3 愛専用


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)



 最近作業用のBGMにθ波潜在能力開発ヒーリング系を使っています。

 流れるコメントに目を奪われさえしなければ、作業効率の良いBGMです。


 次回は『商人からレシピを所望される。(仮)』の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

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