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サバイバル料理を披露してみよう。前編

 サバイバル作品も大好きなんですよね。

 今も校正の合間に黒髪女子高生がサバイバルするアプリで遊んでいます。

 なろうでも幾つか大好きな作品があるのですが、更新が年単位で止まっているものも多くて寂しいです。

 時々年単位止まっていても復活してくださる作者様もいらっしゃるので、気長に待ってはおりますけども。

 


 乾杯のブラウンワインが引き金となって、食事をしたい欲求が頭をもたげる。

 親交を深めるための食事会も悪くないだろう。

 アランバルリなら喜んで参加してくれそうだ。

 美味しい料理のストックは山ほどあるのだが……ここはアランバルリのサバイバル料理10なスキルに敬意を表して、手持ちのサバイバル料理食材を使ってもてなしたい。


「アランバルリさん。このあとお時間あるようでしたら、お食事など御一緒にいかがでしょうか?」


「大変光栄です!」


「私も多少サバイバル料理に心得がありますので、そちらを作りたいと思っているのですが……」


「今後の参考になりますので、大変有り難いです! ナオール花茶があそこまで別物になるのですから、他の食材がどこまで昇華されるのかとても気になります!」


「サバイバル料理スキルのレベルは私の方が低いので、助言などもいただければ有り難いです」


「いただいた料理から察するに、私が助言できる場面はほとんどないと思われますが……希望されるのであれば、喜んで助言いたします」


 アランバルリの鼻息は荒い。

 過酷な旅路の中で、料理が身も心も癒やすのだと、その経験上深く理解しているのだろう。

 冒険者などはその辺を疎かにしそうだが、商人は損得勘定に長けているので、最終的に自分の身を守るのだと知っている者が多そうだ。


「さて……と。サバイバル料理に使える食材を一通り出してもらってもいいかしら?」


 スライムたちが揃って触手で敬礼をする。

 それを見たアランバルリも一緒に敬礼をするのには、思わず笑ってしまった。


「うーんと……まずはこれかな?」


「ゆでるのです? ホワイトロックソルトで食べるのです?」


「うん。お願いしてもいい?」


「はいなのです」


 私は専用料理魔法レベル5を発動させて、簡易キッチンセットを設置させる。

 アランバルリの口が、ぱかーんと大きく開かれた。

 サクラがフライパンを手にすると綺麗な水を一センチほど入れて、強火で沸騰させた。

 続いて丁寧に皮付きのままのモロコシをお湯の中に投入する。

 簡単に甘く茹で上がると、向こうの世界で広く知られていた茹で方だ。

 茹で上がるまで弱火で十分ほどかかる間に、サクラがアランバルリにモロコシの実が美味しいことを語っている。

 アランバルリは、どこに驚いたらいいかわからないのです……というふうな、途方に暮れた表情を浮かべながらもサクラの説明に頷き、質問も忘れなかった。


「美味いです!」


 絶妙の加減でホワイトロックソルトを振りかけたモロコシの実を、横から触手を伸ばしたサイが両端を持って齧りつく。

 サイに倣ったアランバルリが喜びの声を上げた。

 

「農民が食べるものに困って食べるときがあると聞いていましたが……こんなに美味しいとは!」


「全部を食べようとするから駄目なのです。この粒だけをこうやって食べれば美味しいのです」


「なるほど! 農民は勿体ないからと皆さんが食べない部分も食べますからねぇ。しかしどうして粒だけ食べるという発想にならなかったのでしょう?」


「恐らく食材を無駄にしないようにという強迫観念があるのです。例えば子供がそう主張したとしても、親が許さないのです」


「有り得る話ですねぇ。実際全部食べた方が腹は膨れますし、美味しいと食べ過ぎてしまう可能性も否めませんし……」


 サクラの推測に頷くアランバルリ。

 トリアやカロリーナもモロコシを食べながら頷いているところを見ると、サクラの推測はあながち間違ってもいないのだろう。


「ローズ! 川苔のりを炙っといてもらっていい?」


「私に肉以外の食材を料理させるなんて! あい、リーンじゃなければ許しませんことよ!」


 名前を間違えそうになるツンデレも可愛い。


「さぁ! 川苔の香りと食感を堪能しなさい!」


 お嬢様口調もいいが命令口調もまた、ローズにはよく似合う。

 基本お嬢様口調を心がけているようだが、時々こうやって命令口調が覗くのだ。

 

「あ、ありがとうございます! ……川苔は炙るとこんな食欲をそそる香りが出るのですね。ふむ……食感も、ぱりっとした感じが……何とも珍しいです。後を引きます」


 真っ黒い食材に対しても忌避感がないのか、アランバルリは軽く匂いを嗅いだあとで掌サイズの川苔を半分ほどを口に入れて、感想を述べている。


「アイリーンはこの川苔を使ったレシピだけでもお店が開けるほどなのよ!」


 ローズが胸? を張って、アランバルリに自慢をする。

 御飯がなくとも海苔巻きには確かに無限のレシピがある。

 アランバルリの目が輝きを増した。

 尊敬に満ちあふれた眼差しは、どうしたって面映ゆい。


「単品で食べてもいいのですが、野菜や肉などを巻いて食べても美味しいのです」


「巻く、ですか?」


 ああ、その発想がないのか。

 

「こんな感じですね」


 クックルーの皮を塩で炒めた物を、大きめの海苔に載せてくるりと巻く。


「どうぞ。こんな感じで食べてくださいね?」


 恵方巻きを食べるときの食べ方を教える。

 具材に使った炒め物は、皮を塩で炒めただけのシンプルなものだが、塩加減と川苔とは別物のぱりっと感が秀逸だった。


「……これはまた……なんて、美味しいんだ……物を食すときに、食感が大切だと改めて感じさせてくれる一品ですね……」


 ほうと溜め息を吐くアランバルリは満足げだ。

 

「しかも、黒いからと食べる習慣のない川苔と熟練解体師でも綺麗に剥げないからと捨てられるか、肉についたままだったクックルーの皮が、炒めるだけでこんなすばらしい料理に化けるのだとは……サバイバル料理の奥深さを知ることができました!」


「ふふん。そうやって価値を明確に判断できるのは一流商人の証なのね! でもまだまだサバイバル料理は奥が深いのよ! さぁ、アイリーン、次の料理を披露するのです」


「ふふふ。ローズ様のお心のままに……次はニッキーズの茎と葉を使いますね」


「何と! どちらも細かい棘があって捨てられている部位ではありませんか!」


「ええ。この二つは少し下ごしらえが面倒なのですよ……」


 私は色の違う葉をそれぞれ三個ずつ、作業台の上へ並べる。

 左から、緑色、黄緑色、黄色と色が違う。

 それは乾燥の加減を表していた。


「まずは、色が黄緑色になるまで乾燥させます。方法は魔法でも天日でも変わらないですね」


 うちの場合は基本スライムたちによる瞬間乾燥だ。

 私が頑張るとすれば、風呂魔法レベル6のドライヤー機能温風バージョンを使うのが無難だろう。

 そのうち料理魔法でも瞬間乾燥とか覚えそうな気もする。

 世間的にはドライという魔法があるようだが、料理に使うという発想がないらしい。

 勿体ない話だ。

 異世界の発想は結構な確率で、どうしてそこまで思いいたれないのか! という感想を抱くことが多かった。

 今回はモルフォが手早く乾燥させる。

 そろそろスライムたちの規格外加減には、アランバルリも驚かなくなりつつあるようだ。


「で。黄緑色になった状態で叩くと……こんな感じで細かい棘が綺麗に取れます」


「おぉ! この棘の処理が上手くいかなかったのですよ! 火で炙ったら棘どころか葉や茎まで焦げてしまって……」


「ええ。上手く黄緑色に炙れれば大丈夫だと思いますけれど、加減が難しいですからね。だから手間がかかっても乾燥させた方が失敗が少ないのです。乾燥する際も黄色になった状態だと、棘どころか葉や茎までボロボロになってしまうので注意してくださいね」


 言いながら私は棘を処理した黄緑色の葉を置いて、すぐ料理にかかれる状態になった黄色の葉を手にした。


「棘が取れても黄緑色のままだと、きつい苦みが出てしまうので、必ず黄色まで乾燥させてから使ってくださいね」


「この状態のままですと長く保管できそうですね」


「ええ。鑑定結果によると、湿気に強い袋に入れれば一年は保つようですよ」


「おぉ! 何と、保存食に向いた食材でしょう。ですが……乾燥したものですと衝撃には弱そうですね?」


「それが不思議と湿気さえなければ、かなりの硬さなのですよ。乾燥状態ではハンマーなどで砕かないと砕けないのです。ですが、水に数分浸せば手で千切れるほどになるので、驚きですよね」


 サクラが気合いを入れて鑑定してくれたら、そんな処理・保存方法に特性まで出てきたのだ。

 完全鑑定とはいったいどこまで鑑定できるのか。

 異世界もので鑑定最強説が囁かれるのにも納得がいく仕様だ。

 幾つか完全鑑定した結果、どうでもいい情報も少なくないので、これは! と思うもの以外の完全鑑定は控えている。


「今まで捨てていた食材ですからね……ニッキーズは、比較的入手しやすい野菜ですし、天日干でも大丈夫なら、時間をかければ誰でも作れますよね?」


「そうですね。乾燥の見極めさえしっかりすれば、老人や幼子でもできそうです」


 商売にならなくても、食に不自由している人たちにはかなりの朗報だろう。

 アランバルリの伝手を使って上手に広めてほしいものだ。


「これらは煮込みやスープに向きますね」


「む! これは……まさか……テール、でしょうか?」


「はい、そうです。モーモーのテールですね。テールは煮込む時間がかかりますので、寒村など一日中鍋をかけている場所で食べるのにお勧めですね。あとは料理魔法で時間促進ができる人がいると、一気にどこでも簡単にできる安価料理になります。テールの出汁が濃厚なので、あわせる野菜は何でも大丈夫ですから」


 テールスープは既に完成されたものから骨だけを抜き取って、こっそりスライム収納から出してもらった。

 素知らぬ顔をして両手鍋に入っているスープの中に、ニッキーズを入れて軽く沸騰させたスープを饗したのだ。

 圧力鍋の存在は明かさないでおく。

 私はまだ、時間促進がどの程度浸透しているのかを知らない。


「時間促進、ですか。一流料理人で半分。熟練主婦で四分の一と言われていますね。また一流の薬師はもっと促進できると耳にしたことがあります。ですが、その……一瞬で、という話は伝説級です」


 何かを察したらしいアランバルリが常識を教えてくれた。

 圧力鍋は一流薬師レベルのアイテムといってよさそうだ。

 やはり存在は明かさない方がいいだろう。

 勿論、私の料理専用魔法やスライムたちの特殊技についても、本当に信頼できると思った相手以外には、隠し通す方向で間違いなさそうだ。





 茹でモロコシ ホワイトロックソルトがけ

 ランク A

 レシピが公表されたら貧乏家庭料理の毎日の一品になること間違いなし。

 手軽さと味の良さ、飼料扱いだった物が食卓に並ぶ料理となったことで、サバイバル料理とは思えない高評価。

 塩玉を使うとランクも味も下がるが、その状態でも食べた者は等しく満足できるだろう。

 胃を強くする効果有。


 クックルー皮炒めの川苔巻き

 ランク A

 塩玉やホワイトロックソルトをちょっと加えると味がより調う。

 レシピが公表されたら黒い食材の評価がひっくり返ることが期待される。

 また、この料理により食材を巻くという発想が生まれた。

 見事なまでの汎用性に高評価。

 熟練解体師たちは仕事殺到で嬉しい悲鳴をあげることになるだろう。

 髪が艶やかになる効果有。


 モーモーテールとニッキーズ葉&茎のスープ

 ランクA

 時間さえかければ、今まで捨てられていた食材が美味しい料理になると知ることができる一品。

 組み合わせをサバイバル料理の食材に拘らなければ、もっと高いランクも狙える。

 ニッキーズの葉と茎は、初級冒険者必須の乾燥野菜とまで言われるようになる予感大。

 臭い消し的な食材を入れると美味しさが上昇する。

 保温効果有。





 

 喜多愛笑 キタアイ


 状態 心身共に良好 


 料理人 LV 4 


 スキル サバイバル料理 LV 4

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV∞ 愛専用

     命止魔法 LV3 愛専用


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)



 一般的には食べない食材って、食べようとすると基本的に下処理に手間がかかる料理が多いですよね。

 検索するといろいろと出てくるので時間を忘れて見入ってしまいます。

 そろそろスパイス調合で食べるカレーとかにも挑戦したいんですけどね。

 それより先にカヌレかなぁ……。


 次回は『サバイバル料理を披露する。後編(仮)』の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

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