ふわふわパンのサンドイッチをトリアと。後編
四角サンドの方が切るのが簡単なので、自分で作ると四角一択ですね。
食べるだけなら、三角でも四角でもキャラ物でも、美味しくいただきます。
冷たい野菜サンドは既にトリア&サクラ組が作っている。
サクラ指導の下で、トメトとウリキューの輪切りと斜め薄切りにも果敢に挑戦したトリアだったが、結果は惨敗だった模様。
誰もがカロリーナのように優秀な生徒ではない。
トリアには是非とも定期的に場数を踏んで頑張ってほしいところだが、無理はしてほしくなかった。
サクラも同じように考えたらしく、今度は卵サンドの指示を始めたようだ。
キャノベツとジンニンを千切りで切り、ネギタマをスライスして、薄くオリーブオイルを引いてから塩コショウで炒める。
同人仲間がこの野菜炒めをコッペパンに挟んで、更にソーセージをその上に載せて作ってくれたホットドッグも美味しかった。
機会があったら作ってみるのもいいだろう。
何て妄想していると手が空いているスライムたちの誰かが、ソーセージ作りを始めそうだ。
具材が出揃ってきたので挟むのが追いつかないらしい。
モルフォも揚げ物の準備を整えてから、そちらに加わった。
早速温かい野菜サンドが量産されていくので、私はフルーツサンドの具材に取りかかる。
フルーツサンドといえば、ストロベリー&生クリームサンドが鉄板だろう。
生クリームはまだなかった……よね?
『んっ! リリーから、バターを教わったときに、生クリームもきっと必要になると思うのねー、と言われていたから、できているのっ! ほいっぷくりーむもあるのっ!』
心の声に念話で返事をされる。
もしかしたらチーズもできているのかしら?
『んっ! かってーじちーずとりこったちーずはできているのっ! 他は試行錯誤中なのっ!』
ふぉ!
チーズもあったし!
カッテージチーズがあるなら、リンゴとカッテージチーズのサンドイッチも作っちゃおうかな!
『んっ! 種類が増えるのは大歓迎なのっ! 食べるの楽しみなのっ!』
ジャンプしながら喜ばれたら、これはもう作るしかないだろう。
最初の予定より多く作ることになるのは、今に始まったことじゃないが、スライムたちが喜んでくれるなら、いつだって率先して作りたい。
「それじゃあ、ちゃっちゃと見本を作っちゃうね」
「ん! よろしくなのっ!」
私はレッドベリーとレッドアップルを水に放してから、まずレッドベリーを水切りしてスライスする。
ボウルに山盛られた生クリームに苦笑しながら、パンにたっぷりと塗って、レッドベリーを並べる。
パンの切り方によってストロベリーの並べ方も変えるのは、当たり前じゃないの! と、味よりもSNSに画像を投稿するのが好きだった同僚が、私の作ったサンドイッチに文句をつけながら熱く語っていた。
そんな見栄えばかりを気にする彼女は自分がメシマズの自覚を持っていなかったが、結婚後どんな人生を歩んだのだろう。
旦那となった人は、女性が高いお金を支払う系の結婚相談所で捕まえたハイスペックな男性だったようだが。
「まぁ、余計なお世話だよね」
不幸になれとまでは思わないが、幸せになってほしいとも思えない程度には迷惑もかけられた。
異世界で思い出して口を尖らせるぐらいは許してくれてもいいはずだ。
三角切りもいいけど、やはり長方形が好ましい。
三角切りじゃないなんて、あり得ない! という幻聴がしたので、まるっと無視をして長方形に切った。
レッドベリーの見え方も悪くない、満足の仕上がりだ。
味見がしたくてうずっとするが、種類があるので味見をしてしまったら、全種類制覇できないだろうと欲望を抑え込む。
「続いてレッドアップルサンドは……っと」
レッドアップルは櫛形に切ってから薄くスライスする。
皮は剥かない方が綺麗だ。
パンに生クリーム同様たっぷりとカッテージチーズを塗ってから、レッドアップルを並べる。
その上には適量のニードルビーの蜜も塗っておいた。
これで完成だ。
「そっちはどう?」
「んっ! あとはトリアとサクラに任せて、揚げ物をするのっ!」
「まだまだ、頑張るよー」
「トリアも随分上手になったのです。残りは一人でも大丈夫なのです」
「了解! じゃあ、私たちは盛り付けとテーブルセッティングにかかりましょう!」
モルフォがイモジャガとスケットダラを揚げる横で、私がサンドイッチを切り分けて皿に盛り、サクラはスープをカップに入れてカトラリーをセットして回る。
最終的にランチは下記の通りとなった。
ジシメとネギタマのミルクスープ
ランクS
クックルーの出汁を使っているので高ランク。
一般的にミルクスープはミルクしか入れないので、好みが分かれているようだ。
クックルーの肉などが入ると更にランクアップ。
ミルクの優しい味とクックルーの出汁が絶妙なバランスで、子供に人気の一品。
子供に食べさせると特に骨が丈夫に育成される。
大人が食べると骨が多少丈夫になる。
老人も大人同様。
フライドイモジャガ
ランクSSS
フライ物は基本最高ランク。
ホワイトロックソルトをしっかり利かせてある。
お酒のつまみにも最適。
鍛錬の効果を短時間倍増させる。
まれに毒物耐性が付く。
クックルーの卵サンド
ランクSSS
マヨネーズが使われていると高いランクになることが多い。
半熟卵に塩コショウとマヨネーズが万人受けする分量で配合されている。
どちらかといえば子供向きの優しい味。
二日酔い軽減効果有。
記憶力増進効果有。
モーモーのリブロースサンド
ランクSSS
リリー特製の肉専用だれに漬け込んだ。
リリー特製だれが使われると基本最高ランク。
大変香ばしく焼き上がっている。
単品で食べても十分すぎる高級料理に分類されるので、人前で食べるときは要注意。
疲労回復効果大。
免疫力を高める効果有。
スケットダラのフライサンド
ランクSSS
タルタルソースが秀逸のため最高ランク。
スケットダラのフライもさくさくできつね色仕上がりのため、更にランクをあげたいほど。
小骨が丁寧に取り抜かれているので、子供でも安心して食べられるが、子供には勿体ないといわれそうな一品。
貧血防止効果有。
皮膚疾患改善効果有。
ターレス、ウリキュー、トメトの冷たい野菜サンド
ランクS
マヨネーズを野菜の間に少量入れると更にランクアップ。
野菜のしゃきっとした食感が楽しめるサンドイッチ。
今回のレシピの中では、からしバターの美味しさを一番堪能できる。
便秘改善効果有。
キャノベツ、ネギタマ、ジンニン炒めの温かい野菜サンド
ランクS
野菜の種類を増やすか肉もしくは魚を入れると更にランクアップ。
野菜の甘みが身に染み入る味。
具材が余った場合、そのまま一品として提供できるお得な仕様。
乾燥肌改善効果有。
レッドベリーと生クリームのフルーツサンド
ランクSSS
生クリームが使われると基本最高ランク。
レッドベリーの赤さと生クリームの白さが目にしみる鮮やかさ。
王族の中でも特に女性が喜びそうな高級サンドとして販売可能。
味もさることながら見た目が大変麗しい。
口内炎改善効果有。
目の充血改善効果有。
レッドアップルとカッテージチーズのフルーツサンド
ランクSSS
カッテージチーズが使われると基本最高ランク。
意外にも成人男性に好まれる高級サンドイッチとして販売可能。
フルーツサンドだがチーズをたっぷり使っているので、男性が食べても恥ずかしくないようだ。
甘い物好きの男性垂涎。
難病予防に効果有。
ストレス緩和効果有。
これまた凄まじい効能の数々だ。
健康レストランとか開いたら長蛇の列ができそうな予感。
忙しさとトラブルに見舞われそうな予感しかしないので、やはり料理の販売は屋台で、期間限定販売が無難な気がする。
「皆お待たせー! 存分に食べてね!」
トレントたちが喜びに全身を震わせるので、村全体が揺れんばかりの振動だった。
「自分で作ったサンドイッチの味はどう?」
トリアがどれから食べようか迷って、ターレス、ウリキュー、トメトの冷たい野菜サンドイッチを食べている横に並んで尋ねる。
私が手にしたのは、フルーツサンドイッチ。
普通はデザート代わりに、終盤で食べるべきだろう? と大きい声で怒鳴った会社先輩の発言を鼻で笑ったときと同じ、レッドベリー生クリームのサンドイッチだ。
「うん。最高だよ! まだ包丁はうまく使えないけど、また料理をしてもいいかなって思ったしね」
「おぉー! すばらしいねぇ。何かあったとき、料理ができるって結構強みだからねぇ」
「特に女の子は? 結婚とか狙っちゃうとか? 胃袋掴んじゃう系?」
「ぶっ!」
冗談とわかる口調で言っているし、トリアなら許容できるので、笑いながら返す。
「いやいや、最近は男の子の強みにもなってるみたいだよ? 妊娠したとき安心とか、むしろ私が稼いでくるから、料理は任せた! みたいな?」
「へぇ。向こうではそんな考えもあるんだねぇ」
「まだまだ女性が家事育児をやって、男性が稼いでくる。男性が稼ぎきれないときは、女性が稼ぎながら家事も頑張るっていう風潮は強いけどね」
「それって女性ばっかり大変なんじゃぁ?」
「甘んじて受け入れちゃう人が多いんだよねー。周囲の目が怖いっていうのもあるみたい」
理不尽に慣れていた私は、それなりに抵抗はしてみたけれど、周囲の目は理不尽よりも私の方を疎んだものだ。
私が男性だったらその対応は少し違ったのではないかと、考えたこともあったほどに。
「こちらもまぁ、女性は子供を多く産めば産むほどすばらしい! みたいな風潮は強いかな。特に上の方たちはね?」
「王族は当然一夫多妻制なんだよね? ん! 卵サンドうまー」
「あー、美味しいねぇ。このまろやかなコクは最高だよ。僕もまよらー? になってしまうかもね」
「マヨネーズは至高だけど、何事も取り過ぎはよくないよ? バランス良く食べないと!」
私はフライドイモジャガとミルクスープをトリアに手渡す。
「ありがとう。そうそう、王族に限らずこの世界は、一夫多妻制で一妻多夫制なんだ」
「げ!」
嫌な予感しかしない。
自分が時々、どうしようもなく人を惹き付けてしまうことを知っている。
その数は少ないが、その分執着が凄まじい。
向こうのハイスペックな彼氏は、私を独占するために、かなりの無茶なバトルを私にはそうとわからないようにしていたようだ。
「どっちも勘弁してほしいなぁ。どうしてもというなら一夫一妻でお願いしたい」
複数人数を平等に扱える自信はないので、一妻多夫は当然却下。
ハーレムは二次に限る! なので、一夫多妻も却下。
どろどろハーレムは、関係ない立場だから楽しめるのであって、当事者になったら苦痛なだけだ。
「自らフラグを立ててどうするのねー」
フライドイモジャガと何故かオレンジベリージュースが差し出される。
「……サンドイッチにはオレンジベリージュースが一番合うという統計が、向こうの世界であったのね?」
そうなんだ。
知らなかった。
私は無糖の紅茶派だ。
「ありがとう……あ! 本当に合うね」
想像していたよりは美味しい。
柑橘系のジュースは、甘さ控えめのものなら口の中がさっぱりするものが多いせいだろう。
「無人島で暮らす頃には、きっと愛はたくさんの男を侍らせて酒池肉林しているのねー」
「ひぃ! 何て恐ろしいことを!」
「人間は駄目でも獣人なら、きっと大丈夫なのねー」
リリーの目が輝いている。
トリアの目も輝いていた。
うん、知ってる。
人の恋愛話って、楽しいよね?
「まぁ、もふもふには憧れるけどね……」
人外萌え属性はあるが、それは飽くまで二次限定。
我が身に起きてしまったらと考えても、想像が追いつかない。
ただバッドエンドだけは回避したいと思う。
「憧れているうちが花だと思うんだよねー。私は色気より食い気派だからさー」
ぶーぶーと仲良くブーイングを繰り返す二人の口へ、モーモーのリブロースサンドを突っ込みながら、私も同じ物を食べる。
リリーの特製肉だれにつけたリブサンドは、大変美味しゅうございました。
*今回ステータスの変動はありません。
喜多愛笑 キタアイ
料理人 LV 4
スキル サバイバル料理 LV 4
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV∞ 愛専用
命止魔法 LV3 愛専用
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
チーズとリンゴのサンドイッチが食べたくなりました。
フルーツサンドは美味しいけど、普通のサンドイッチよりなんとなく敷居が高い気がします。
次回は『マジックバッグ作り。』の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。