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ふわふわパンのサンドイッチをトリアと。前編

 一気に涼しくなりましたね。

 綿毛布を出した三日後には、綿毛布を撤去して羽毛布団をかけました。

 タオルケット、羽布団、薄手の毛布の重ねがけが冬の最強装備です。

 あ、綿毛布は寒くなるとシーツの下に敷きます。

 温かいのです。



 トリアにまず何をやってもらおうかと思案した結果。

 からしバターをパンに塗ってもらえばいいんじゃない? という結論に達した。


「からしって、あるかなぁ?」


「ヨウガラシッシとワガラシッシがあるのです」


 ヨウガラシッシ 

 ヨウガラシーナの種子を乾燥させ、粉末にしたものをお湯で溶いたからし。

 酢や砂糖などを混ぜて、好みの味付けにして使う。

 エルフ族が好んで使う調味料で、一般流通はしていない。

 リリーの指示で愛の好みに調合済み。

 

 ワガラシッシ

 ワガラシーナの種子を乾燥させ、粉末にしたものをお湯で溶いたからし。

 そのままで使われることが多い。

 ヨウガラシッシより辛さが強い。

 ドワーフ族が好んで使う調味料で、一般流通はしていない。


 おぉ、両方あるとは驚きです。

 しかもヨウガラシッシが調合済みなのは有り難い。

 リリーは肉だけでなく辛みにも拘りがあるのだろうか?

 味見用にとスプーンに取ってくれたので、極々少量のヨウガラシッシを舌に載せる。


「ん! 効くぅ!」


 独特の辛さは、それでも記憶にあるヨウガラシよりマイルドに感じた。


「僕も味見をしていいかな?」


「あ!」


 トリアはヨウガラシッシではなく、ワガラシッシを食べた。

 味見の量ではない。

 スープ用の大きいスプーンに山盛り一杯だ。

 止める間もなかった。


 数度瞬きをしたトリアはぴょんと跳び上がったと思ったら、脱兎のごとく溜め池に駆けていった。


「……こっちのワガラシッシって?」


「愛の想像通りなのです」


 そもそも説明通りヨウガラシッシより辛いのは確定。

 更にヨウガラシッシはヨウガラシよりマイルドだった。

 ワガラシッシはその逆。

 より辛さが増しているのだ。


「こ、こんなに辛いとは思わなかったよ」


 辛さにぴりぴりする唇を激しく擦ってしまったらしい。

 たらこ唇になっていた。

 整った可愛らしい面立ちが台無しだ。

 サクラが無言でポーションを差し出している。

 ありがとう! と受け取って飲めば、間を置かずにふるんとした唇に戻ったので安心した。


「量が多すぎだよ。味見の量じゃなかったでしょう?」


「う、う……確かに……」


 がっくりと肩を落とすトリアの目の前でからしバターを作る。

 使ったのはヨウガラシッシ。

 量はティースプーンに小盛り一杯。

 ちなみにバターは、ヨウガラシッシの五倍を入れた。


「そ、そっか。そんなに少なくていいんだね?」


「そうよ? 基本的にからしは隠し味とかアクセント程度にしか使わないわ。大体この手の調味料は味が強いから少なめがいいのよ。物足りなかったら後から足せばいいんだしね」


「なるほどねぇ」


「さ。トリアはパンにこのからしバターを塗ってくれるかしら……こんな感じで」


 きっちりと正方形に焼き上がったふわふわパンの耳を落として薄くスライスしたものに、からしバターを隅まで丁寧に塗りつけたものを見本として見せる。

 バターナイフは作っていなかったが、サンドイッチを作ると決めた段階でスライムの誰かが加工してくれていたらしい。

 握りやすいバターナイフをトリアに渡せば、おそるおそる作業に取り組んだ。

 トリアの肩に乗ったサクラがアドバイスをしてくれるようなので、私はモルフォと作業を分担する。


「フライドイモジャガって……お任せにして大丈夫?」


「んっ! 温度管理もバッチリなのっ! 美味しいきつね色に揚げてみせるのっ!」


 早速イモジャガを切って手早く水にさらしたモルフォは、たっぷりの油を入れた鍋をコンロの上に置いた。

 

「じゃあ、私はスープを……」


「んっ! 待つの、愛。イモジャガフライは揚げたてがベストだから、スープも私が作るのっ! 味見はしてほしいのっ!」


「そっか。それもそうだね。ジシメとネギタマのミルクスープなんでよろしくー」


「んっ! 了解なのっ!」


 ジシメは触手でちぎり、ネギタマは千切りにしたようだ。


「じゃあ私はサンドイッチの具材なんぞを作りましょうかね。えーと? まずは卵系からいこうかなぁ……」


 私はクックルーのゆで卵を作るべく、水を張った鍋の中に産みたてクックルーの卵を入れて火にかけるとタイマーをセットした。

 モルフォが見てくれているなら安心なのだが、念には念を入れておく。

 今回はクラッシュな半熟卵にマヨネーズと塩コショウを和えたいのだ。


「続いて肉系……BLTサンドを作りたいけど、ベーコンは燻製機を作らないと駄目かぁ……マジックバッグの前に作っておこうかしら」


 モルフォとサクラをチラ見すると揃って首を振られる。

 負担が大きいので今は作っちゃ駄目っぽい。


「そうしたらモーモーのリブロースサンドにしようかな? 味はシンプルに塩コショウを……」


 す、とモルフォが出してきたのは、リリー特製肉用調合だれ。

 これを使ってほしいようだ。

 受け取って、軽く筋切りをしたリブロースをひたひたのたれに漬け込んでおく。


「付け合わせは……肉オンリーですか、そうですか」


 またしてもモルフォとサクラに揃って首を振られた。

 ローズからリクエストが飛んだのだろうか。

 まぁ、野菜特化のサンドイッチも作るからいいだろう。


「魚はやっぱりスケットダラのフライを挟んで、ターレスとそういえば……キュウリって使ったっけ?」


「ウリキューのことならまだ使ってないのです。こんな感じなのです」


 ウリキュー

 キュウリ。

 味も色も形もキュウリ。

 放置しておくと巨大化して、大味になってしまうので栽培の際には注意が必要。

 

 野生ウリキューの実

 料理の材料になる。

 生でも食べられる。

 +味噌


 野生ウリキューの葉

 熱を下げる効果がある。

 水に浸しておくと更に効能アップ。

 地方の一部で民間治療法として知られているようだ。


 野生ウリキューの茎

 サバイバル料理の材料になる。

 処理に失敗すると不味い。

 この世界では使い物にならない素材として捨てられている。

 +何かの出汁、野菜各種


 野生ウリキューの花 

 爪のつやを出す効果がある。

 毛髪の老化防止の効果がある。

 どちらも薬師にも知られていない超希少レシピ。

 +綺麗な水、粉末パール、デンプン

 +綺麗な水、オリーブオイル


 野生ウリキューの種

 栽培できる。

 +綺麗な水

 

「ああ、普通のキュウリなのね。だったら入れよう。うーんと、フィッシュフライならタルタルソースも必要だよね」


「ん? タルタルソース?」


「これも初めてだっけか。レシピはねぇ……こんな感じ?」


 記憶を掘り起こしてタルタルソースのレシピを伝える。

 私はお酢もレモン汁も入れる派だ。

 あ!

 ウリキューは挟む方じゃなくて、刻んでタルタルソースに混ぜ込む方でいこう!


「んっ! 美味しそうなソースなのっ! ストックも任せてなのっ! あとイモジャガフライと一緒に揚げるから、スケットダラの下ごしらえもお任せなのっ!」


「モルフォさんやー。そろそろ私のやることがなくなると思うのですがねぇ?」


「んっ。野菜サンドとフルーツサンドは丸投げするのっ!」


「野菜サンドかぁ。温かい方にしようか冷たい方にしようか、迷うよねー」


「両方作ればいいんじゃないかな?」


 トリアはまだサンドイッチにからしバターを塗っている。

 サクラの丁寧な説明があるからか、遅くとも綺麗な仕上がりになっていた。

 これなら具材を挟むのを任せても大丈夫そうだ。


「両方か……そしたら冷たい方はターレス、ウリキュー、トメトの三点セットだね。温かい方はキャノベツとネギタマとジンニンを塩コショウで炒めるのがいいかな?」


 私はまず冷たい方の三点セットを水で洗う。

 呟くそばからサクラが触手を伸ばして、食材を並べてくれる至れり尽くせり状態なのだ。


「トリア! 今度は挟むのに挑戦してみなよ!」


「う、うん。頑張るよ。どれを挟むんだい?」


「ターレス、トメト、ウリキューの順番で重ねてくださいませ。なるべくパンからはみ出ない感じで」


 トメトとウリキューは適当な大きさに切った。

 ちなみにトメトは輪切り、ウリキューは斜め薄切りだ。

 ターレスだけ、そのまま水を切ってざるにあげてある。


「ターレスが大きすぎたら、ちぎるといいのです」


「あ! そっか」


 トリアはサクラの助言に頷きながら、野菜を重ねる。

 楽しそうで何よりだ。


「んっ! 卵も混ぜたから、載せすぎないようによろしく頼むのっ!」


「ふぉ! 次から次へと責任重大だね!」


 大げさに驚いて見せるも楽しそうな様子は変わらない。


「まだまだあるから、焦らず丁寧によろしくねー」


 私は絶妙に混ぜ合わされた、クラッシュなクックルーの卵を、モルフォが差し出してくれたスプーンで味見をしながら、笑顔でトリアにお願いをした。

 私が考えた通りの味付けになっていた卵サンドの具材が嬉しくて、笑顔もそのままでモルフォの全身を高速で揉みまくった。





 *今回ステータスの変動はありません。


 喜多愛笑 キタアイ


 料理人 LV 4 


 スキル サバイバル料理 LV 4

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV∞ 愛専用

     命止魔法 LV3 愛専用


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)




 涼しくなったら作業がさくさく進むはず! と思ったんですが、凄く眠いんですけども……。

 異様な眠気が早く収まるといいなぁ。

 

 次回は『ふわふわパンのサンドイッチをトリアと。後編』の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

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