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インディカ種の籾蒔き。

 田植えの話を書こうと思っていたのですが、色々と難しかったので籾蒔きになりました。

 それすらもふわっとしたものなので、ちょっとタイトルを考え直そうと思いましたが、他に思いつかなかったので一部変更だけになっています。

 農業経験のある友人からあれこれ教えてもらったことは、いつかどこかで生かしたい所存です。

 一部に虫描写があります。

 そこまで具体的な描写ではないですが、苦手な方はご注意ください。




 ふわふわパン論争は、とにかく他の食べ方も味見してからじゃないと始まらない! といった流れになり、それぞれが主張する食べ方に挑戦しまくったところ……自分の主張が最高なのは譲れないが、皆が主張する食べ方もやっぱり最高であると納得できたようだ。

 それだけ美味しかったらしい。

 ただ、カロリーナのワイン浸しパンの評価に対しては少々辛かったようだ。

 曰く、邪道らしい。

 カロリーナが珍しく否定されても、ふわふわパンの食べ方の最高はワイン浸しなのですわ~! と熱く語っていた。

 そんなカロリーナには、是非ともフレンチトーストを食べさせたい。

 プリン大好きな彼女が、似た系列の味とワイン浸し、どちらに転ぶのかが楽しみだ。


「そうそう。私は今日アイテムバッグ作りに集中しようかと思うんだけど……」


 論争が無事着地点を決めたあたりで、そう告げたところ……。


「えぇ! せっかくだから少しは皆と作業したらどうなの? リリーなんか愛の熱烈な要望にお応えして、水田作りを頑張っていますのよ?」


 ローズがおこだった。

 器用に怒りマークまで、その身に浮かび上がらせている。

 背後にはぷんぷんという文字まで浮かびそうだった。


「そうだねぇ。ローズは君の喜ぶ顔が見たいからと、それはもう一生懸命にキノコ小屋を作ってくれたからねぇ。一通り見て回ってから作業すればいいんじゃないかな?」


「余計なことを言わないでくださいませ、トリア!」


 赤いローズの体全体が一層赤くなる。

 照れているのだろう。

 大丈夫。

 二次じゃなくても、ローズのツンデレなら美味しくいただける。

 大歓迎だ。

 しかし、しゃべり口調が益々お嬢様めいてきた。

 是非ともお嬢様口調を極めてほしい。


「ごめんごめん。つい、一人で作業する癖が身についてるからさぁ。あとは、ほら。私がアイテムバッグを持てば、スライム収納を使うために、いちいち皆を召喚しなくていいじゃない?」


「召喚は嬉しいのです。マジックバッグが完成しても、スライム収納は使ってほしいし、最低でも私たちのうち誰か一人はそばに置くようにしてほしいのです」


「トリアやカロリーナたちが良い人たちだったから、つい一緒にいたけどねー。私たちの最優先は常に愛なのねー」


「ん! そこは譲れないの」


「う! 当番表も作ったの! 一日交替制なのよっ!」


 知らぬところで話が進んでいたのにもかかわらず、鬱陶しくない。

 むしろ嬉しい。

 こういうサプライズなら、これまた大歓迎だ!


「ありがとう! 私は本当に幸せ者だわ! じゃあ、今日の担当は誰なの?」


「ん! 私なの! パンも作り終わったから、一日ずっと一緒なの! マジックバックも一緒に作るの!」


「了解。よろしくねー」


「ん! 任せるのっ!」


「作業の進行状態的に、インディカ種の籾蒔き、キノコ専用樹木小屋作り、倉庫作りの順番で回るといいのねー」


 皆が作業に戻りたい雰囲気を醸し出しているので、私とモルフォが後片付けを引き受けた。



「じゃあ、行こうかー」


「ん! どれだけ作業が進んでいるのか見るのが楽しみなの!」


 モルフォにせがまれてアニソンを歌いながら、楽しく片付けを終了する。

 ぴょんと肩の上に乗ったモルフォを撫でながら、畑並みに広がる水田に呆然とした。


「わぁー……凄いやぁ……」


「ん! トレントたちが楽しそうなのっ」

 

 なみなみと水が張られた水田の中で、トレントたちがダンスめいたものをしている。

 恐らく根っこで土壌を耕すというか整えるというか、米が育ちやすい環境を作っているのだろう。

 細いが強靱な数多くの根っこで丁寧にかき混ぜられた土の中で、偏っていた栄養分がまんべんなく行き渡るのだ。


「せっかくだから愛が最初に種籾を蒔くといいのねー」


 見れば水田の中に立つトレントたちが、わくわくとこちらを見守っている。

 私はリリーに手渡された掌いっぱいの種籾を水田に蒔いた。

 土を混ぜた余韻で水が動いているので、種籾も適当に散らばっていった。


「ある程度の発芽が見込めたら、トレントたちがいい感じに攪拌してくれるのねー。そうすることで苗植えに負けない収穫が見込めるのねー」


「ん? 害虫とかどうなの?」


「トレントたちが定期的に周回してくれるのねー。私たちも一緒に見回るのねー。愛も一緒に見回るといいのねー」


「こっちの害虫も向こうと同じ感じなのかな?」


「発芽したばかりのやわらかな葉を食べる『ヤワゾウムッシ』、しっかり張った根っこを食べる『ネゾウムッシ』、成長した葉を食べる『ハゾウムッシ』、実った穂や茎を食べる『ホクキゾウムッシ』がシリーズで厄介なのねー」


 し、シリーズと来ましたよ。

 ゾウムシ系はあっちでも厄介者だったから似た感じなのかな?


「まずヤワゾウが根が張り出す頃に、ネゾウを呼ぶのねー。で、葉が生長し出すとネゾウがハゾウを呼ぶのねー」


「あー、たしかにシリーズ扱いしたくなるね。そして鬱陶しい」


 最終的にはホクキゾウムッシまでを召喚して食べ尽くそうとするのだろう。


「まぁ、トレントたちが頑張ってるから全滅の憂き目にはあわないのねー。ただ時々空気読めないゾウムッシはいると思うのねー。突然変異種の中には人に噛みつくムッシもいるから注意は必要なのねー」


「ひぃ!」


「見回りのとき、愛はローズと一緒に行動した方がいいかもねー」


 おぉ!

 ローズがいれば絶対防御で弾いてもらえるか。

 ちゃんとお願いしておこう。


「それ以外にも害虫はいるけど天敵が頑張ってくれるから、特に注意が必要なのはゾウムッシシリーズぐらいなのねー」


「了解でーす」


 ひとまず今日の作業は終了したのか、トレントたちが楽しそうに溜め池へ向かっている。

 汚れたので水浴びをする感じなのだろうか?

 飲み水もかねている溜め池なので、水浴び専用溜め池を作った方がいいのかもしれない。


「ねぇ。溜め池って用途別に作った方がいいかな?」


「ん? トレントたちは一つあれば十分だって言ってたのっ!」


「溜め池の水は優秀なのねー。自浄作用が強いから常に清浄な状態を保てるのねー」


 順番待ちをしながら仲良く溜め池で水浴びをしているトレントたちを見つめる。

 泥だらけの根っこで水の中に入っていくのだが、水が濁った様子は全くないようだった。


「おー。たくさん収納しておいて良かったよ。良質で汎用性が高いとか非の打ち所がないよね」


 向こうでも水はかなり区分され、管理もされていた。

 最初の宿に決めた洞窟内の、小さな泉を満たしていた良質な水に出会えたのは僥倖だったのかもしれない。


「お米には美味しいお水が必要なのねー。最高級のお水で作られるお米はきっと、最高に美味しいお米になるのねー」


「ジャポニカ種もいつか見つけたいわ!」


「……穀物ダンジョンは、ゾウムッシの巨大バージョンがシリーズで出るから覚悟が必要なのね?」


「……」


 無言で青ざめてしまった。

 モルフォがびろーんと伸びておでこを冷やしてくれる。


「んっ! 商人! 商人ルートを希望するのっ! 愛の呼び寄せ能力なら、きっと良い商人を呼び寄せることができるのっ!」


 呼び寄せ能力?

 聞いたことがないスキルだ。

 

「呼び寄せ能力って?」


「スキル表示されない本人の資質からなる力を『能力』と呼ぶのね。恐らく愛は向こうでも呼び寄せ能力を持っていたのね」


「本当?」


「多分なのね? 呼び寄せ能力は良いものも悪いものも等しく呼び寄せるのね? ただし! 気の持ちようらしくて、思考が前向きだと良いものを後ろ向きだと悪いものを呼び込むらしいのねー」


 説明されて納得する。

 向こうでは基本が後ろ向き思考だったので、嫌だと感じるものばかりを呼び寄せていたのだろう。

 無理矢理誘われて訪れた先で、数々の占い師たちが妙に口を濁していたのが思い出された。


「じゃあ、取り敢えず……ジャポニカ種の良質な種籾を持った性質の良い商人がなるべく早く村を訪れてくれますように!」


 料理器具を作るときのように口にも出して祈っておく。

 

「んっ! ここまで愛が思い入れる日本のお米を早く食べてみたいのっ!」


「確かにねー。美味しい物をたくさん食べさせてくれる愛が熱望するお米に早く出会えるように、私も祈っておくのね-」


「ん! 祈るのっ」


 スライム二人もお祈りポーズを取った。

 うん、今日もスライムたちは揺るぎなく可愛い。


「田植えをというか、籾蒔き作業は完了したので、私たちはこれで他の作業を手伝うのねー」


「その前に一休憩したら?」


「ありがとうなのねー。じゃあ、その辺の木陰でティーブレイクするのねー」


 リリーは飛び跳ねながら水浴びを終えてすっきりしたトレントの一体を呼び止めて、木陰になってもらうようにオネダリを始めた。

 快く了解したらしいトレントがしっかりと地面に根を張ると、リリーはその根元に腰を下ろしてスライム収納からカップを取り出している。

 当然のようにもう一つのカップを取り出してトレントに差し出す。

 トレントが枝を伸ばして器用にカップを傾けるのをモルフォと二人、微笑ましく伺ってから、キノコ専用樹木小屋作りに勤しむローズとトリアの元へ向かった。





※今回ステータスの変動はありません。


 喜多愛笑 キタアイ


 料理人 LV 4 


 スキル サバイバル料理 LV 4

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV∞ 愛専用

     命止魔法 LV3 愛専用


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)

 



 ショウガとニンニクは表記ミスではないのか? といったメッセージをいただきましたが、この二つは調味料と食材の二面性を持つのであえてこの表記にしています。

 ワサビもこのカテゴリに入るのかな?

 間違いではなく、思案の末の表記です。

 同時進行中の旦那様と混同しないように、以降も気をつけます。


 次回は、キノコ専用樹木小屋作り。(仮)予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

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