ふわふわパンの食べ方戦争勃発!
トーストしたパンも大好きですが、していないパンも好物です。
体重がごそっと減れば、心置きなく毎朝パン食べるんですけどね……。
でもパンの特売日にはつい、サンドイッチを作ってしまいます。
フルーツティー各種が出揃ったところで、リリーが全員を召喚した。
『朝食ができたのねー。たーんと食べるのねー』
あちこちから喜びの声が上がる。
トレントたちは地響きをさせながら集まってきた。
そういえばトレントたちは総勢何人いるのだろう?
個別認識ができないせいかいまだ正確な数が把握できていなかった。
「ねえ、トレントたちって、合計何人いるの?」
「五十人なのねー。基本的には交代制で、常に動いている子は十人なのねー」
「想像以上にたくさんいらっしゃいました!」
「トリアみたく全員知性に満ち溢れているわけじゃないし、荒ぶったりもしちゃうから、
朝にトリアが選出しているのねー。全員一度は愛の御飯を食べているから、どんなに荒ぶっても愛を害することはないから安心してほしいのねー」
また一つ明らかになるトレントの生態。
もしかしたらこの世界で、人間に限定したら私が一番トレントの生態に詳しいのではなかろうか。
光栄だ!
「ちなみに、動いていないときは瞑想して自分を制御しているのねー。でも敵がやってきたらさくっと戦闘モードに入る完璧な体制が整っているのねー。トリアの統制に無駄はないのねー。時々羽目を外すトレントがいても、村が崩壊するようなことには絶対にならないのねー」
トリア筆頭にトレントたちは、一度失っているから慎重になっているのだろう。
守ってもらえるのは有り難いが、私もかなり戦えるし、スライムたちに至っては最強クラスだ。
トレントたちにはむしろ後方で控えていてもらい、戦闘後の後始末などをお願いしたいところ……。
一人頷きながらセッティングをしているうちに、みんなが食べ物へ手を伸ばせる位置についた。
今のところ、大皿に盛って各自が取り分けるスタイルになっている。
「はい! 朝からお仕事お疲れ様でした! 好きなものを好きなだけ食べてください。なくなったものでお代わり希望の人は遠慮なく言ってねー。それじゃあ、いただきます!」
いただきます! の唱和があって、それぞれが皿や器に自分の食べたいものを取り分ける。
最終的な朝食はこんな感じとなった。
クックルーの目玉焼き
ランクS
半熟、固焼き、ターンオーバーの三種で焼き上げている。
熟練の腕前的な仕上がりで高評価。
何かをかけると評価が上がるかも?
記憶量上昇効果有。
クックルー出汁の野菜スープ
ランクSS
キャノベツ、イモジャガ、ネギタマ、スーナ、ジンニンを使用。
屑野菜でもなく、ここまでの種類野菜を入れるのは珍しい。
クックルーの肉が入れば評価が上がるかも?
毎日飲んでも飽きがこない飲みやすい味。
体温上昇効果有。
体温保持効果有。
ふわふわパン 丸形
ランクSSS
ぱんだね焼き機で焼き上げた、至高のやわらかいパン。
王族も毎日購入必須を熱望すること請け合い。
形を変えてもふわふわ度は衰えない。
食パンタイプを作りサンドイッチを作ったら革命が起きそうな勢い。
疲労回復効果有。
便秘改善効果有。
リラックス効果有。
異世界食材素敵サラダ ジンニンドレッシングがけ
ランクSS
ひよ豆、ゆらゆら、歌謡いを使ったサラダ。
どれも新鮮なので子供でも楽しく美味しく食べられるらしい。
特にジンニン嫌いのお子様にはオススメしたい一品。
味覚改善効果有。
皮膚病改善効果有。
各種フルーツティー&モロコシ茶
私は大皿が置かれた大テーブルから少し離れた場所にある、小テーブルに自分が取り分けた料理を置く。
クックルーの目玉焼きはホワイトロックソルトでいただくので、半熟を。
スープはカップにたっぷりと。
サラダはスルーして、皮モロコシのお茶を並べる。
ふわふわパンは、こちらの一般的なパンと同じで丸形。
味を確認してから食パン型も提案してみようと思う。
「まずは、パンからね」
半分にちぎると、ほわりと微かに湯気が出る。
まさしく焼きたてだ。
「わー! すばらしくふわっふわっ!」
見た目丸形白パンは、外も中もふわふわだった。
「このままでも十分美味だけど……バターかなぁ?」
ジャムと迷ってバターをたっぷりと塗る。
パンの熱でバターがみるみる溶けてパンに染み込んでいった。
「んー! 美味しいっ!」
あっという間に一個を食べてしまった。
最初にサラダをたっぷり食べてから、最後に炭水化物を……とダイエットを気にしていたのが遠い昔のようだ。
「このままじゃあ、パンしか食べない勢いだわ……」
二個目に手を伸ばしかけて、スープカップを手にする。
クックルーの出汁に野菜の出汁が相俟って、グルメリポーターが得意な『何とも優しい味ですねぇ』という味に仕上がっていた。
疲れた体に染み渡る癖のない味は、周囲を見回しても好評のようだ。
「半熟目玉焼きにはホワイトロックソルトを……」
ぱらっとかけて、フォークを突き刺す。
とろりと黄身が溢れるのを掬い取りながら、白身と一緒に口に入れた。
「一個五百円の高級卵の味がする……卵かけご飯食べたひ……」
卵は濃厚で口の中にねっとりとした食感を与える。
塩加減が絶妙だったので、これもまた二個目に手を出したくなる食べやすさだった。
「でもどうせ食べるなら、ターンオーバーでパンに挟んで食べたいかしら?」
皮モロコシ茶で口の中をさっぱりさせてから、ターンオーバーの目玉焼きを取りに腰を上げたのをリリーが制した。
「……異世界食材満載のサラダ、まだ食べていないのね?」
すっと差し出されたサラダからは歌謡いの声が聞こえる。
ゆらゆらはやっぱり揺れていて、ひよ豆はドレッシングを全身に纏うべく転がり回っていた。
「あ、あとで食べようと思っていたのですよ? 本当で! んがっ!」
全身にジンニンドレッシングを纏ったひよ豆が、口の中に飛び込んできた。
三個連続だった。
(飛び込みは禁止ですよ!)
とひよ豆を睨む。
咀嚼したひよ豆は、確かにひよこ豆の味がしてジンニンドレッシングとの相性も抜群だった。
だが、口の中に飛び込もうとして助走をつけたり、ジャンプの高さをチェックしている様子はいただけない。
歌謡いの歌も、いけいけ頑張れ力押しでどうにかなるぜ! 的な内容のラブソングになっている。
実はこの食材たち。
意思が通じ合えるんじゃないだろうか?
じっと見つめれば、ゆらゆらは時々硬直し、歌謡いの声は大きくなり、ひよ豆は鼻先に飛んできて、ジンニンドレッシングを飛び散らせた。
「……食べ物で遊んではいけないのね?」
「遊ばされているのですが、何か?」
ヤケクソになった私は、小さな器に盛られた異世界野菜たちを一気に口の中へ流し込んだ。
一緒に食べると食感が秀逸だ。
歌も静かになり、口の中で蠢かないのに安堵しながら、食感と味を十分に堪能する。
「ふ、ふわふわパンは大好評なのねー。愛はどんな食べ方が好きなのね?」
座った目の私が怖かったのだろうか。
震える声でリリーが話題を提供してくる。
「……私は、今のところバターをたっぷり塗るのが好き」
「リリーはレッドベリージャムをつけるのが一番なのねー」
「私はオレンジベリーのジャムが良いのです」
「ん! 半熟クックルーの目玉焼きを挟むのがベストなのっ!」
「るっ!」
ルンはホワイトロックソルトを軽くまぶすのが最強らしい。
塩パンとかあるしね。
私も好き。
「みっ!」
ピュアはバターとレッドベリーを同量塗るのが最高のようだ。
分かる。
甘い物の次は塩っぱい物。
その無限ループがパン一個で完結できるって凄いよね!
というか、ふわふわパンがよほど気に入ったらしい。
好き嫌いなく何でも美味しそうに食べるルンとピュアの、珍しい自己主張だった。
「ローズとサイはどうなの?」
「私はオリーブオイルがいいわね」
「う? ニードルビーの蜜をたっぷり塗るのがいいいのよっ!」
ローズはなかなか渋い。
私的にはオリーブオイルをパンにつけるなら、アンチョビオリーブオイルが萌える。
アンチョビの塩辛さが萌なので、こっちにもあるといいのだが。
ニードルビーの蜜はトーストしてから塗っても美味なんじゃないかと思う。
「これはまた、見事に好みが分かれたねぇ」
「カロリーナなんか、ワインに浸すとワインをたっぷり吸って最高です! とか邪道なこと言ってたわよ! トリアやトレントたちは何もつけないのがベストなんだってさ!」
さすがはカロリーナ。
生粋の酒好き称号を授与したい。
トリアたちは何となくらしい気がする。
「まぁ、いいんじゃない? それぞれ好みがあっても。見事に全員違うんだし」
「愛はことなかれー主義なのねー」
「そうよ! 人には譲れぬ戦いがあるのよ!」
「……それでは主張し合うといいよ。私は最強はバター一択だけど、それ以外の食べ方だってしたいからね」
ことなかれ主義の何が悪いというのか。
譲れない戦いは受け攻め論争だけで十分だ。
私は新しいパンにターンオーバーな目玉焼きを取ると、トリアのもとに移動した。
追いかけてはこなかったスライムたちは、熱くふわふわパンの食べ方論争を続けている。
「……これで目玉焼きに何をつけるか論争もあるんだよ! って燃料投下したら落ち着くかしらね」
「可愛い論争じゃない? やらせておきなよ。殴る蹴るとかになったらさすがに止めるけどさ。論争が息抜きになるときもあるしね」
「そういう村人でもいたの?」
「特に男性に多かったかな? 何をくだらない! ってだけは、言ったら駄目なんだって学んだよ」
「あー、本人たちは真剣だからねぇ。その一言で、今度はこっちが一方的に責められるがわになるから、たまったもんじゃないよ」
朝食後は、アイテムバッグ作りに勤しむからねー、と新しく決めた予定を言えないままに、私は冷たいアイスティーを飲んで、やれやれと肩を竦めた。
※今回ステータスの変動はありません。
喜多愛笑 キタアイ
料理人 LV 4
スキル サバイバル料理 LV 4
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV∞ 愛専用
命止魔法 LV3 愛専用
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
そういえば先日特売でナッツ入り蜂蜜を購入してしまいました。
やっぱりパンに載せて食べるのがいいのかなぁ……。
次回は、インディカ種の田植え。(仮)予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。