モロコシ茶はアイスも美味。
ふ。
ダイエット&基礎体力をあげるために、ヨガのDVDを購入してしまった……。
暑さに負けて消耗しすぎなので、少しでも体力をつけたいのです。
だ、ダイエットも当然したいですが。
サラダを盛り付けるのはぎりぎりにしようと、サクラに食材を出してもらう。
……大変騒がしい。
特に歌謡いがご機嫌すぎる。
「新鮮なのね?」
「それはもう! 愛のために私たちが用意する食材は常に新鮮なのです」
胸? を張るサクラに、いやいや元気良すぎて困るよ! とは、まさか言えない。
「盛り付けだけすませて、上からかぶせ物をしておくと少し静かになるのです。ドレッシングは直前にかけるといいのです」
サクラのアドバイスは私の心境を素敵に理解してくれていた。
私はサクラを丹念に撫でてから、気合いを入れて陶器の皿にサラダを盛り付ける。
そろそろガラス系の器も欲しい。
まずは、良い声で謳う歌謡いを並べる。
ハート型で可愛らしい。
伝統的な愛の歌詞はしかし、なかなかにおどろおどろしく無駄に現実的で、生温い微笑が浮かんでしまった。
好んでこの野菜を使う料理人は、恋愛が苦手になるだろう。
男性向け、女性向け、その他向けと満遍なく謳われるので、同士は少なくないから、と絶望しなくてすむのは幸いだが。
愛は儚く美しいもの
故に
請うてやまぬもの
繰り返しの果て
真実の愛に辿り着けし者は
果たして本当に幸福か?
参考までに一番印象に残った歌詞がこれだった。
リズムは耳に心地よく、聞き流せてしまうのに、歌詞だけが頭の中に残る。
その点も怖いのだ。
続いてゆらゆらの根っこを落として並べれば、ゆったりと揺れている。
なぜか一曲だけ歌謡いが子守歌を謳った。
見守っているサクラ曰く、鮮度が長持ちするのだそうだ。
解せぬ。
基本的にはラブソングしか謳わないのだが、時々空気を読んで違う歌を謳ったりするらしい。
アニソンを教えたら謳ってくれるだろうか。
そして謳ってくれるのだとしたら、どんな効果をもたらすのか気になるところだ。
最後は中央のくぼみにひよ豆をたっぷり入れた。
ぴょんぴょんと元気良く跳ねて、一粒などは私の鼻先にぶつかる程だった。
是非とも少し落ち着いていただきたい。
盛り付け完了した皿の上に、そっと大きめなシルコットンの布巾をかぶせる。
歌謡いの声はぴたりと止まり、ひよ豆がシルコットンにぶつかることもなかった。
サラダを盛り付けるだけなのに異様な消耗をしてしまったのが痛い。
「異世界食材は衝撃すぎたのです? とっても美味しいから扱いに慣れるといいのです」
「……頑張るよ」
頬肉をもちもちと触手の手で揉まれて癒やされていると、サイに呼ばれてしまったサクラは、美味しい朝食を楽しみにしているのです! と言い残して行ってしまった。
「さぁ……次は普通の作業だから……うん、大丈夫」
自分を鼓舞してスープに取りかかる。
ちらりと布巾をかぶせた器を見てしまうのはご愛敬だ。
クックルーの出汁はたっぷりとってストックがあるので、昨日のうちから鍋に入れてもらっている。
食べる人数が増えたのでスープは寸胴鍋で作っているのだ。
「野菜は……キャノベツ、イモジャガ、ネギタマ、スーナ……ジンニンも入れちゃっていいよね?」
まな板に食材を置いて手早く切っていく。
煮詰まったスープもまた大変美味しいですわ~! という、カロリーナの主張により、具材は大きめが基本だ。
沸騰させて五分。
あとは弱い火でことこと煮る。
最後に好みの加減で時間促進をかければ完了だ。
「クックルーの目玉焼きは幾つ焼けばいいかなぁ?」
好みが分からないので、ターンオーバー十個、半熟十個、固焼き十個を作っておくことにする。
まずは時間がかかるターンオーバー。
私的には、パンに載せる&挟む場合はターンオーバー。
ケチャップで食べる時は固焼き。
何もつけない、もしくはケチャップ以外をつける時は半熟にしている。
時間促進のお陰であっという間に焼き上がった目玉焼きは、各種類ごとに五個ずつ合計六皿に載せた。
「パンはトーストしないで焼きたてを食べてもらうから、バターと各種ジャム、ニードルビーの蜜をお願いしよう。飲み物は、モロコシ皮のお茶、レッド&グリーンアップルティー、パープル&グリーンベリーティー……そういえば、紅茶の茶葉ってどんな種類があるのかしら? 今まで飲んだフルーツティーから察するに癖のないプレーンな味の茶葉だと思うんだけど……」
ロイヤルミルクティーニードルビーの蜜入りとかも作りたい。
今回はフルーツティーと考えていたので、またの機会にするけれど。
「うぅうう……リリーさぁん!」
聞きたいことが山盛りになった時に召喚するのは、このお方だ。
「私たちのうち、誰か一人は常に置いておいたほうがいい、と自覚できたのね?」
見透かされているのは仕様なので今更気にしても仕方ない。
鼻で笑われたような物言いにも腹が立たないのだから、我ながら驚きだ。
「私がアイテムバッグ的なものを持てば大丈夫な気もするよ?」
「素材は沢山あるから挑戦してみるといいのね? 愛ならいわゆるテンプレ的なアイテムバッグができると思うのね。この村の人たちは信用できるし安全だけど、外部から誰か来た時は、絶対に私たちの誰かをそばにおくのね?」
「はーい」
スライムたちの誰かと常に一緒だったので気にならなかったが、無限収納アイテムバッグといえば異世界転移で欲しい鉄板スキルもしくは装備の一つだ。
今日の作業はアイテムバッグ製作に変更したいと朝食で報告しよう。
「それで、愛。何が必要なのね?」
「うん。紅茶の茶葉って、種類はあるの? あと、フルーツティーを作りたいから、レッド&グリーンアップルとパープル&グリーンベリー、モロコシ皮が欲しいの」
「紅茶の茶葉は一種類しかないのね。向こうのダージリンが近い風味なのね。愛の知識があれば違う茶葉もできるのね? モロコシはフルーツじゃないと思うのね? ホットティーもいいけど、大量の汗をかいたからアイスもあるといいのね。モロコシのひげも出しておくのねー」
なるほど、ダージリン。
どおりで飲みやすいはずだ。
「アイスティーも各種作ったほうがいい?」
「今出した新作だけでいいと思うのねー」
「それでも五種類か……十分だね!」
「みんな喜ぶのねー」
「ハーブティーも作ろうかと思ったけど、またの機会にするわ」
「……スープがいい匂いなのねー。そろそろ仕上がるのね?」
「うん。あとは飲み物だけだよ」
だから、後は任せて!
と、言う前に。
「アイスティーは私が作るのねー。愛はホットに集中するのねー」
と、宣言されてしまった。
みんなが働き過ぎて水分不足なのだろうか?
水は沢山飲んでもらっているはずだが、さすがに水ばかりでは飽きがきたのかもしれない。
「色々考えすぎなのねー。単純に一人で朝ご飯作りは大変だから、手伝いたいスライム心なのねー」
また心が読まれてしまった。
照れが八割、喜びが二割といったところだ。
感情のままに、リリーを全身も揉みくちゃにする。
「朝から刺激的なのねー」
私からの歪んだ愛情表現もどこ吹く風と、リリーは紅茶が冷やしてあるらしいティーポットを取り出して、フルーツから絞った果汁をたっぷり淹れている。
「味見するのねー」
そしてエスプレッソサイズの小さなカップの中に、各種フルーツティーを注いでくれる。
ちなみに私はホットティー用のティーポットに茶葉を入れて、その中に入れるフルーツを水洗いしようとしていたところだった。
「あー! どれも果汁たっぷりで美味しいわぁ……染み渡るね!」
「料理中にも水分はとらないと駄目なのね? モロコシアイスティーはどうなのね?」
「凄く香ばしいね! イメージ的にホットのほうが美味しいかなぁと思ったけど、アイスもいいなぁ。日本茶とか麦茶と一緒でごくごく飲めちゃう! 和食のお供にも良さそうだね」
向こうで飲んだトウモロコシ茶は、ダイエット用に買った会社の同僚が飲めきれなかったと押しつけて寄越したものだったので、味が今一つだったのだ。
しかし今飲んだモロコシ茶なら、ナオール花茶同様に一日最低一杯飲んでも飽きがこないだろう。
「モロコシ茶は美容に良いのねー。販売計画も考えないとねー」
「そ、その辺りはお手柔らかにお願いしますよ……」
味見用のアイスティーを堪能するうちに、結局ホットティーの準備もリリーがすませてくれた。
最後にグリーンベリーティーの中に浮いていたベリーをちゅるんと飲み込むと、リリーをねぎらいながら朝食のセッティングにかかった。
皮モロコシ茶
ランクS
軽く炒めると評価が上がるかも?
香ばしさが上がるのでホットをオススメ。
毎日飲むといつの間にか肌つやが良くなる効果有。
ひげモロコシ茶
ランクS
軽く炒めると評価が上がるかも?
香ばしさが上がるのでアイスをオススメ。
毎日飲むとお通じが良くなる効果有。
レッドアップルティー
ランクA
茶葉とアップルの皮・芯を入れて抽出された紅茶。
レッドアップルのスライス入り。
ドライアップルのスライスを入れても美味しい。
オススメはホットだがアイスでもいける。
消化不良に効果有。
グリーンアップルティー
ランクA
茶葉とアップルの皮・芯を入れて抽出された紅茶。
グリーンアップルのスライス入り。
ドライアップルのスライスを入れても美味しい。
オススメはホットだがアイスでもいける。
消化不良に効果有。
パープルベリーティー
ランクA
抽出した紅茶にパープルベリーの果汁をたっぷりいれたもの。
カップには生の果実も皮ごと入れていただく。
オススメはアイスだがホットでもいける。
眼精疲労に効果有。
グリーンベリーティー
ランクA
抽出した紅茶にグリーンベリーの果汁をたっぷりいれたもの。
カップには生の果実も皮ごと入れていただく。
オススメはホットだがアイスでもいける。
眼精疲労に効果有。
*今回ステータスの変動はありません。
喜多愛笑 キタアイ
料理人 LV 4
スキル サバイバル料理 LV 4
完全調合 LV10
裁縫師範 LV10
細工師範 LV10
危険察知 LV6
生活魔法 LV 5
洗濯魔法 LV10
風呂魔法 LV10
料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用
掃除魔法 LV10
偽装魔法 LV10
隠蔽魔法 LV10
転移魔法 LV∞ 愛専用
命止魔法 LV3 愛専用
人外による精神汚染
ユニークスキル 庇護されし者
庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化 解体超特化
称号 シルコットンマスター(サイ)
冷たい物ばかり飲んでしまうこの季節。
ホットも飲まないとね! とか言いつつ、今回のタイトルはアイスオススメでした。
実はトウモロコシ茶は飲んだことがないのです。
飲みやすいらしいんですけどね。
夏の飲み物は、ホットコーヒーをブラックで、味なしの炭酸水、砂糖とミルクたっぷりのホットカフェオレを左から順番に飲んでます。
次回は、ふわふわパンの食べ方戦争勃発!(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。