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衝撃の異世界食材を知る。

異世界食材。

考えるの楽しかったです。

もっと出したいのですが、管理が大変なので迷います……。



 「むっ! ふ~ん!」


 一人だけきちんとした家で寝起きする申し訳なさを、払拭するように大きく伸びをする。


「……あれ?」


 愛に潰されるのも、また乙なのです! と将来に不安を感じてしまうコメントをするサクラ他スライムたちが全員いない。


「日々やる気に満ち溢れていらっしゃるからなぁ……」


 ふと向こうの世界の新人を思い出す。

 仕事に慣れだした頃から、特に自分の周りには、なぜか仕事に対する真摯な姿勢を忘れていく者が多かった。

 できない仕事をそのままにしておけば誰かがやってくれると知って、どんどん仕事をしなくなる者たちのフォローなどしなければよかったのだろうか? と頭を振る。

 スライムや他の者たちが自分に優しければ優しいほど、向こうの酷さを思い出してしまうのだ。


「さっさと笑い話にしたいんだけどねぇ」


 自業自得の面もあるが、向こうの世界は私に厳しい場所だった。

 簡単には忘れられないのだ、とそろそろ納得してもいいのだが、まだそれも難しい。


「う~ん。朝からダークな思考に囚われるとか、駄目じゃん?」


 どこかにやる気スイッチはないものか……とがっくり肩を落としたところで、寝室のドアが開かれる。


「ん! モーニングイエローベリーティーなのよ!」


 入ってきたのはモルフォだった。

 しかもすっきりさっぱりできるイエローベリーティーを持ってきてくれたらしい。

 モーニングティーを堪能できるなんて、朝から幸せだ。

 時間に余裕があるのも、誰かが自分のために淹れてくれるのも、どちらも得がたい至福だった。


「ありがとー。みんなもう作業に入っているの?」


「んっ。そうなのよ。楽しくて仕方ないのよ?」


「じゃあ、おなかが空いちゃってるかな?」


「んっ! 愛が言っていた、ふわふわパンが焼き上がっているのよっ! カロリーナと味見をしたけど、びっくりするほどふわっふわだったのよっ!」


 なんとも嬉しいことに朝食に間に合わせてくれたらしい。

 そうすると、トーストしないで生のままふわふわ食感を堪能してもらったほうがいいかもしれない。

 私も焼きたてふわふわパンにバターとジャムを塗って食べるのが大好きだ。


「ありがとう! 朝食から食べられるとかすっごく嬉しいわ」


「んっ! 既に全員が五個以上食べても大丈夫な数は確保したのよ! これからストックの製作に入るのよっ!」


「素晴らしい! 引き続き無理はしない感じで、任務遂行してくれたまえ!」


「んっ! かしこまりましたなのよっ!」


 喜びのあまり大仰な口調になってしまった私のノリを理解してくれたモルフォは、びしっと決まった敬礼をしてから寝室を出て行った。


「私には五個はさすがに多いと思うけど……みなさんなかなかに大食漢だから、普通に完食するんだろうなぁ」


 そして、贅肉にならないのだろう。

 世の中の悩める乙女にうらやましがられそうな体質だ。

 私も大変うらやましい。


「けど私も食べている量の割には太らないよね?」


 スキルや魔法を使うと熱量を消費するのだろうか?

 何にせよ、好きなものを好きなだけ食べても太らないのは大変ありがたい。


「うん。ダークな思考も薄れてきたね。モーニングティーとモルフォのお陰だわ!」


 頭の片隅にしつこくこびりついていた澱んだ思考も消えたようだ。

 私はカップをサイドテーブルの上へ載せると、パジャマ代わりのワンピースから、誰かが用意してくれていたポーク皮の長ズボン、シルクコットンの長袖シャツ、ポークの皮靴に着替えた。

 

 家から出ると、あちらこちらから、おはよー! と挨拶の声がかけられる。

 どうやら私が一番寝坊していたらしい。

 というか、みんな早すぎたろう!

 既に一仕事終えた風合いで、額の汗を拭っているトレントが楽しそうにくつろいでいるサイと談笑しているのが見えた。

 他のみんなも明るい声がけをしながら絶賛作業中だ。


「……ふぅ、私も気合いを入れて作らないとね!」


 すっかり定番になった空きスペースにキッチンセットを設置する。

 野菜系ドレッシングはサクラが作っているので在庫確認をした。


『サクラさんやー。ジンニンドレッシングのストックはあるかねー』


『当然なのです。今の人数であれば毎日一年食べ続けても問題ないのです』


 いつの間にかストックが山のように作られている。

 スライムたちにはストック癖があるのだろうか。

 私が欲しがるものを、いつでも欲しがるだけ出そうとしての結果なのだろう、と申し訳なさとありがたさがごちゃ混ぜになりながらも、こっそりと感謝は忘れない。


『ありがとー! 今日のサラダに使いたいからよろしくねー』


『了解なのです。摺り下ろしジンニンのたっぷり入ったドレッシングをみんなが喜んでくれたら嬉しいのです』


『みんなは当然喜ぶとして、市販されたらきっと野菜嫌いの子でも気に入ると思うよ!』


 スライムたちの料理センスは抜群だ。

 カロリーナのセンスもかなりいいが、スライムたちにはまだ及ばない。


『倉庫作りも順調なので安心するのです。愛お手製朝食を楽しみに頑張るのです!』


『う! 楽しみなのっ!』


 サイも期待を込めた言葉をよこした。


『そっちも無理しない程度に頑張ってねー』


 はーい! と良い子の返事をした二人は再び作業に戻ったようだ。


「さて、サラダの野菜はどういう組み合わせでいこうかなぁ」


 自分で作ったことのあるにんじんドレッシングが合うサラダは、レタス、トマト、水煮豆缶、カッテージチーズのサラダ、ゆでたてブロッコリーとアスパラガスの温かいサラダ、大根と大葉とミニトマトを使ったサラダの三種類だ。


「温野菜はなんとな~く、昼夜向けの気がするから次の機会にまわすとして、うん。微妙に食材が揃ってないわ」


 大根、豆、大葉、カッテージチーズは、確認していない。

 ブロッコリーとアスパラガスもだ。


「それじゃあ、てきとーに今ある食材で作ろうかしら?」


「呼ばれてないけど、来てみたのです!」


「ふおう!」


 突然肩が重くなったと思ったら、サクラが現れた。


「どんな野菜が欲しいのです? 愛が未確認の野菜は山ほどあるのです!」


「うーんとねぇ? ジンニンドレッシングにあうサラダを考えていたんだけど……サクラ的オススメって、ある?」


「キャノベツの千切りにたっぷりかけるのが一番、ドレッシングの味を堪能できると思うのです!」


「あー、あうよね、確かに。シンプルイズベスト」


「でもそれだと物足りないと思われるかもしれないのです……いっそ、異世界情緒豊かなレシピにするのです?」


「おぉ! 待ってました」


 異世界特有の食材は美味しいものが多い。

 サクラなら使い方の説明もしっかりしてくれるだろうと期待しつつ、サクラがスライム収納から取り出した食材を見つめる。

 ……凝視した。


「さ、サクラさんや?」


「驚くと思ったのです! でもどれも美味しいのですよ?」


 見せてくれた鑑定結果は、確かに美味しそうではあった。


 野生のひよ豆

 味はひよこ豆。

 ひよこの形をしている。

 ひよひよと鳴く。

 生きがいいと動く。

 水辺に生息しているが泳げない。

 家畜用飼料を餌にして増える。

 生きがよければ生食可能。

 火を通しても美味。


 野生のゆらゆら

 味はかいわれ大根。

 形はかいわれ大根が、三倍程度太くなった感じ。

 根っこがついた状態だと、ゆらゆら揺れている。

 根っこを落としても、しばらく揺れている。

 きれいな水に入れておくと爆発的に増えるので要注意。

 火にかけると蒸発するので、生食で食べるべし。


 野生の歌謡うたうた

 味は何枚か重ねて食べるレタス。

 形はハート型のとげがないサボテン。

 伝統的なラブソングを歌う。

 食べると低確率で音痴が治る。

 上手な歌を聴かせると増える。

 下手な歌を聴かせると逃げ出すので要注意。

 火にかけると絶叫するので、生食で食べるべし。

 

 しかし、異世界情緒が満載過ぎた。

 ひよこ型で動く豆、揺れる太めなかいわれ大根。

 そして、歌を謳うとげのないサボテン型レタス……。


 ガラス器にぐるっと歌謡いを敷き詰めて、同じようにゆらゆらを敷き詰めて、その中央にたっぷりのひよ豆。

 ひよ豆の上にジンニンドレッシングをかけたら、逃げ惑うのだろうか……。


座った目をした私の頬に体をすり寄せたサクラが教えてくれる。


「ドレッシングを浴びたひよ豆は、ドレッシングをまんべんなく全身につけようとして転がりまくるのです!」


 どこまでも食べられる気満々のひよ豆に、ここは異世界! ひよ豆は美味しく食べられるために存在するのです! と自己暗示をかけながら、サクラのサラダ案を採用することにした。


 



*今回ステータスの変動はありません。


 喜多愛笑 キタアイ


 料理人 LV 4 


 スキル サバイバル料理 LV 4

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV∞ 愛専用

     命止魔法 LV3 愛専用


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)


 



暑くて消耗が激しくなってきました。

ストックがなかなか増えません。

早く涼しくならないかなぁ。


次回は、モロコシ茶はアイスも美味。(仮)の予定です。


お読みいただきありがとうございました。

引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

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