表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/198

モーモースネ肉のレッドワイン煮

洗っていたらコンタクトがぱっきりと割れて大変驚きました。

まだ使えると思っていたのですが、致し方ないので買いに走りましたとさ。

ちなみに使い始めてから、ずっとハードコンタクトを使用しています。




 ポーションが体を回復させていく感覚を椅子に座ってしみじみ実感していると、モロコシが茹で上がったようだ。

 ザルに上げて冷ますのに、カロリーナが口でふうふうと息を吹きかけるのをサクラが笑う。

 自らの体を扇のような形へ変形させて、カロリーナに持たせると扇がせ始めた。

 スライムってこんなに色々できる種族ですのね~! と感動しているが、カロリーナさん。

 それは違う。

 うちの子たちが極めて優秀なだけだ。

 モンスターとして出会ったスライムたちは、初心者向けモンスターに相応しい感じだった。

 最初はスライムテイマーに、俺はなる! といった鉄板の展開かと思っていたので肩を落としたものだ。

 私は今でもスライムたちに遭遇すると攻撃を躊躇ってしまうが、皆は容赦ない。

 自分たちと同じ種族だが、そこはそれと割り切れているようだ。

 ユニーク個体はやはり特別なのだろう。

 テイマーがテイムしたモンスターとも違う気がする。

 攻撃してこないモンスターとは友好的にやっていきたいので、そのうち普通のスライムが村の一員になる日がやってくるかもしれない。


 冷め切ってないモロコシを、熱い熱いと叫んで持て余し気味になりながらもほぐしていく二人を眺めているうちに、体に残っていた気怠さが払拭されたので伸びをしながら立ち上がった。


「無理をしちゃ駄目なのです! もう、大丈夫なのです?」


「そうですわ~。指示さえいただけましたら、サクラさんと私で頑張りますわよ~」


 途端に、集中して料理に勤しんでいたはずの二人が近寄ってくる。

 心配性だ。


「そこまで消耗してないから大丈夫。ポーションも特製ポーションだしね」


「そういえば愛はポーションも作るのでしたわね~。何でも素晴らしく上手にこなせて羨ましい限りですわ~」


 尊敬しておりますのよ~、と副音声が聞こえそうな敬意の籠もった声音に照れる。

 

「カロリーナだって、今まで料理なんてしたことなかったとは思えないほど習得が早いじゃない? 私を超える日も遠くはないかもよ!」


 肩を抱いて夕日を指差す熱血青年を演じてみる。

 

「愛を超えるのは難しいと思いますけど、日々精進致しますわ~」


 言葉を素直に受け止められると次の瞬間どうしていいか解らなくなる癖も、優しい仲間たちと一緒に過ごせば幾らかマシになるだろうか。

 赤くなってしまっただろう頬もどうにかしたい。


「じゃあ、私はメインにかかるから、他の料理はよろしくね! サクラ、何か不明点があったら聞いてね」


「勿論なのです。でも今回のメニューは大丈夫そうなのです!」


 蒸し器は初めて使うはずだが、異世界情報の収集を怠らずがっちり掌握しているリリーと共有しているサクラに死角はなさそうだった。

 他の子たちも共有はしているはずなのだが、特にこの二人のシンクロ率は高いのだ。


「よし! がんばるぞっと!」


 軽く頬を叩いて気合いを入れる。

 頭の中で眠っているワイン煮込みのレシピを引っ張り出した。


「うーんと……ネギタマをくし切りにして、あぁローリエもあるんだっけ。スネ肉は大量投入で、レッドワインは……カップ二杯ってとこかな?」


 ネギタマは六個。

 モーモーのスネ肉はざっと二キロ程度。

 大変肉肉しい、増量レシピだ。

 ローリエは二枚。

 いつも作っていた量の倍なので、圧力をかける時間を迷う。 


「いつもだと高圧で二十分だから今回は……三十分? や、そこまで筋っぽくないから二十分のままでいっか。レシピ通りにやると大体やわらかめで仕上がるから、たぶん問題もないでしょうとも!」


 蓋が閉まるカチッという音を確認してから火にかける。

 本当かどうかはわからないが、圧力鍋の爆発話をネットで読んでから、火にかけるまでの準備が慎重になった。


「高圧になるまでは……」


 他のメニューに手を出そうとするも、サクラに首を振られてしまった。


「やる気に満ち溢れていらっしゃる……じゃあ、食器のセッティングでもしようかしら?」


 レッドワイン煮を入れる器、グラス、ナイフ……は必要ないか。

 フォークとスプーン。

 アヒージョと蒸し野菜の取り皿にモロコシスープを入れる器。


「あ! クルトンどうしよう……」


 ストックにまだクルトン向きのパンはない。

 天然酵母は寝かせ中。

 残念だが今回は諦めるしかなかった。

 

「またの機会だね……」


 向こうでは自家製クルトンだったが、クルトンを作るとついパンの耳揚げ砂糖まぶしを作りたくなったものだ。


「作りたい料理が山ほどあって困るわ-」


 今は目についたレシピを片っ端から作って、コンプリートです、ひゃっは! という気持ちよりも、皆に食べさせて喜んでもらいたいという気持ちのほうが強い。


 ひゅんひゅんと蒸気が出る音がしたので、弱火に落としてタイマーをセットする。

 タイマーはなぜだかリリーが作ってくれた。

 本人曰く、これぐらいだったら楽勝なのねー、とのことだ。

 スライムの形をしており、目の部分に数字が表示される仕様で可愛い。

 音はよくある、ぴぴっ、ぴぴっという電子音。

 どう考えてもあっちの世界仕様ですとしか思えないのだが、怖くて聞けないでいる。

 異世界っぽいところは、どんなものにでも貼り付けられるという点だろうか。

 ちなみにこの利点、あまり生かされてはいない。

 どこで鳴っているのかわからなくなるので、タイマーはいつも決まった場所に置くことにしているからだ。


 牛肉のいい匂いが広がったのかカロリーナが鼻をすんすんしている。

 勿論きちんと手は動いており、野菜を蒸し器の中へと丁寧に並べていた。


「あ! アヒージョは唐辛子控えめでお願いします」


「ん? 愛は辛いの苦手だったのです?」


「レシピどおりだと辛いんだよねー。胡椒以外の辛さは控えめがお好みかなぁ?」


「了解なのです。カロリーナは辛いほうが好みなのです?」


「うーん? 実はまだ自分でもよくわかりませんのよ? ただ、辛すぎるものを数え切れないくらい無理矢理食べさせられた経験から、控えめなほうが好みなのだと思いますわ~。痛くない辛いものなら美味しくいただけるのではないかしら~」


「私たちは辛すぎでも甘すぎでも楽しめるから、愛たちの口に合わせるのです」


 スライムたちが向こうで流行っていた辛いもの選手権に出場したら文句なしの優勝だろう。

 瞬殺もできるので、テレビ出演時以外は出入り禁止になりそうだ。


 少したまった洗い物を片付けている最中に、タイマーが鳴る。

 自然放置が十分ほど必要なので再度セットしておいた。


「愛~アヒージョの味見をお願いしたいのです」


「はーい」


 サクラが小皿に取り分けて手渡してきた。

 カロリーナが不安げな様子で見守っている。

 律儀にもルマッシュ、リンギエ、ジシメが一欠片づつ入っていた。


「あ、ホワイトワインがふわっとくるね」


「メインがレッドワイン煮なので、控えめにしたのです。辛さはどうなのです?」


「いい感じ! ワインのふわっと感とトウガラシのぴりっと感と、キノコたちの食感が最高!」


「やっぱりキノコは食感を残す料理がベストだと思うのです。良かったです? カロリーナ」


「嬉しいですわ~! ほとんど私一人で作りましたのよ~」


「基本がしっかりできている感じだね。あとは数をこなせばいいんじゃないかなぁ? 優秀な料理人が増えて嬉しい限り!」


「ありがとうございますぅ~」


 喜びに半泣きのカロリーナを宥めながらサクラは、蒸し器の蒸し具合を確認している。

 私もタイマーが鳴ったので、蓋を開けてスジ肉の仕上がりを見た。

 筋部分に菜箸を入れると、小気味良く突き抜ける。

 想像以上にやわらかく仕上がったようだ。


「うん! メインもいい感じだね。味付けしてことこと煮込めば完成!」


 二ードルビーの蜜、ホワイトソルト、黒コショウ、刻みニンニクを入れる。

 かなりワイン強めのレシピだが、お酒好きが多そうなので大丈夫だろう。

 へらで肉を崩さないように軽く掻き混ぜて放置。

 火加減はとろ火に近い弱火に落としてある。


「そっちはどう?」


「蒸し野菜も仕上がりましたわ~。ほとんどできておりますのよ~」


「それじゃあ、皆にそろそろ準備できたコールをお願い」


「私が行くのです。二人には盛り付けをお願いするのです」


「了解。私はアヒージョを盛るから、カロリーナはそのまま蒸し野菜をよろしくね」


「は~い!」


 器にアヒージョを盛りながら、無地ではない食器を増やしてもいいかと思案する。

 スライムたちの持つ謎知識と技術で食器を作ってもらっているが、専門職が作った食器も使ってみたい。

 そういえば詐欺師が出してくれたティーカップは、なかなかに素敵だった。

 食器を作るのに向いている種族がいるのなら是非とも迎え入れたいものだ。


 三皿に分けて蒸し野菜を盛りきったカロリーナはモロコシスープを器へ入れている。

 皆を呼びに行ったサクラが速攻で戻ってきて、私の肩に乗った。


「モーモースネ肉のレッドワイン煮、味見をしたいのです!」


「……そうだね、もうひと煮込みしてもいい気がしないでもないけど、どうぞー」


 小皿にスネ肉とネギタマとワインを零れない程度に入れてサクラに渡す。

 小皿ごと口に入れたサクラは、小皿を出しながら満足そうに息を吐いた。


「……すごぉおおく、美味しいのです! お酒をこんなにも沢山使う料理って、どんな味なんだろうと思っていたのですが、想像以上に濃厚で奥深い感じなのです」


 味の分析をするように頷くサクラを羨ましそうに見ながら、カロリーナは無造作に積まれていたパンをカゴに盛り直して準備を続けている。


「そうそう。夕食のメニューはこんな感じなのです」


 モーモースネ肉のレッドワイン煮

 ランクSSS

 お酒をここまで使って美味しく仕上がる料理はないので、評価が高い。

 また本来捨てられる部分が食べられるようになった点も高評価。

 酒道楽なお貴族様ですら無言で食す一品。

 商人が食べると、今までスネ肉を捨てていたことに、もったいなさで絶望するようだ。

 健康長寿効果有。

 薄毛予防効果有。


 キノコのアヒージョ(ルマッシュ、リンギエ、ジシメ)

 ランクS

 キノコの種類を増やせば評価が上がるかも?

 パンに付けて食べるのもオススメ。

 肌荒れ緩和効果有。

 髪を艶やかにする効果有。


 モロコシスープ

 ランクS

 +生クリーム&クルトン、もしくは舌触りをなめらかにすると評価が上がるかも?

 モロコシの味をじっくり堪能できるスープ。

 モロコシは基本飼料扱いなので、驚かれること請け合い。

 農家の人が泣いて喜ぶ美味しさです。

 腸内環境改善効果有。

 美肌効果有。


 蒸し野菜(トメト、スーナ、ニッキーズ)

 ランクS

 +何かしらのソース、もしくは野菜の種類を増やすことで評価が上がるかも?

 蒸し器で良い加減に蒸し上がっている。

 他の調理法より野菜の味が引き立っている。

 ダイエット効果有。


 ライぎむパン各種

 黒、茶、白

 ワイン煮を浸して食べると味が変わるので、ぜひ試していただきたい!

 ただし、カロリーが気になる貴女は食べすぎに要注意。

 

 ……気がつけば女性が喜ぶ系のメニューになってしまった。

 だが、食べるのは女性? ばかりなのでむしろ歓迎されるメニューだろう。

 パンの食べすぎには注意せねばなるまい……。

 さぁ、皆の喜ぶ顔を見るのが楽しみだ!





*今回ステータスの変動はありません。


 喜多愛笑 キタアイ


 料理人 LV 4 


 スキル サバイバル料理 LV 4

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV∞ 愛専用

     命止魔法 LV3 愛専用


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)

 


暑さで消耗する割には全く痩せない悪夢。

同じ悪夢を見ている方はきっと多いはず……。


次回は、キノコ専用育成樹木。の予定です。


お読みいただきありがとうございました。

引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ