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モーモーの……凄いよ、サイ!

なかなかワイン煮まで辿り着けなくてびっくり。

牛タン焼きもテールスープも好物ですが、異世界では食べられない設定になっていることが多いですよね。

どちらも塊で売られているのを見ると、ひぃ! となるので、解体スキル(動じずに上手に解体できる!)が欲しいなぁと思います。




 今回はカロリーナとサクラと私。

 三人での夕食作りとなりそうだ。

 二人とも優秀なので、人数的にも十分だろう。


「二人には、コーンスープじゃなかった、モロコシスープをお願いしようかなー」


「どんな料理ですの~?」


「モー乳とモロコシをたっぷり使ったなめらかで濃厚なスープだよー」


「えーと? まずはモロコシを茹でるところから始めるのです?」


「そうだね。茹で上がったら粒状にしたものをモー乳と一緒にミキサーへ投入。仕上がったら鍋に入れて、調味料も投入して煮る感じで」


「全部入れないでツブツブ感を残すといいのです?」


「あー、クリーミーさを楽しんで貰おうかと思ったけど、そっちのほうがいいかなぁ? カロリーナはどっちが食べたい?」


 個人的にはどちらも甲乙付けがたいのだ。


「えぇとぉ~? よく解らないですけれど、色々な食感を楽しんでみたいですの~」


「了解! じゃあサクラ案採用ということでお願いします」


「解ったのです。ミキサーの使い方も教えるのです」

 

 隙を見て、専用料理魔法レベル10で作れるキッチンアイテムはないかと思案した結果。

 ミキサーと蒸し器だけ作っておいた。

 比較的体力気力を消耗しないと思ったのだ。

 蒸し器は簡単だったが、ミキサーは想像していたより色々と持っていかれた。

 それでもオーブンまで消耗はしなかったので、スライムたちには怒られはしなかった。

 心配は存分にされてしまったが。

 解っていてもつい家電を使った料理で喜ぶスライムたちを想像するとやり過ぎてしまうのだ。

 心配させないようにと反省はしつつも、後悔していない。

 それだけスライムたちが心底嬉しそうに喜んでくれるからだ。

 同じようにトリアもカロリーナもトレントたちですら、心配しつつも喜んでくれるのだろうとも思ってしまうからだ。


 ……そういえば今更なのだが、家電と表現しているが……電気で動くわけじゃないから、魔力的な何かで動いているのだとその辺りは適当に考えている……機材と表現を変えた方がいいのだろうか?

 皆に聞いても、愛の好きにすればいいと思うよ! という返事があると思うので、聞くに聞けないまま迷い続けている……。

 いっそ家魔かまとか新しい言葉を作った方がいいのかもしれない。

 ……などとどうでもいいことを結構真剣に考えながら、二人に指示を出す。


「茹で上がるまでは、キノコのアヒージョに使うルマッシュ、リンギエ、ジシメ、蒸し野菜に使うトメト、スーナ、ニッキーズを食べやすいサイズに切っておいてもらえるかな。キノコたちは小さめ、野菜たちは大きめでお願い」


「……モロコシスープ、キノコのアヒージョ、蒸し野菜……メインはどんな料理なんですの~?」


「モーモー肉のレッドワイン煮」


「お、お酒でお肉を煮るんですの~?」


 驚きに縦長の目がさらに細くなった。

 実に蛇らしい瞳だ。


「うん、そうだよ。臭みがなくなるからカロリーナの口にもあうと思うんだよね。あ! もしかしてお酒が飲めないとか?」


「いえいえ! むしろ大好きなんですけど、あまり飲ませてもらえなかったものですから~。その~。料理に使うのは勿体ない、むしろそのままがぶ飲みしたい! と思ってしまったんですの~。ごめんなさいませ~」


「謝ることはないのです」


「だね。がぶ飲みはさて置き、ワインのストックはホワイト、レッド、ピンク、ブラウンと各種取り揃えているから、飲み比べればいいと思うよ」


「そ、そんな天国がありますのね~。私、幸せ者ですわ~」


 やはりラミア種はうわばみのようだ。

 制限されていたラミアが解放されたらどれほど飲むのか、興味津々だ。


「じゃあ、私はワイン煮の仕込みに入るよ」


「こっちは任せるのです」


「頑張りますわ~」


「と、その前に。ワイン煮に向いている部位を出して欲しいんだけど……」


「どこがいいのです? ちなみにサイのお陰でモーモーはこんな感じに解体済みなのです」


 モーモー レア

 牛。

 肉も乳も美味しい野生種。

 ホルスタイン的な見た目。

 黒モーモー(肉が美味しい)、白モーモー(乳が美味しい)の良いとこ取りをしたレア種。


 モーモーの皮

 綺麗に剝ぐと高額で売れる。

 防具他が作れる。

 裁縫師のみ作れる。


 モーモーの尻尾

 解体が上手になる道具が作れる。

 細工師のみ作れる。

 レア種で作ると高性能になる。


 モーモーの角

 属性付の道具が作れる。

 細工師のみ作れる。


 モーモーの爪

 獣系魔物に襲われにくくなる道具が作れる。

 細工師のみ作れる。

 レア種で作ると高性能になる。


 モーモーの骨

 装飾品が作れる。

 細工師のみ作れる。


 モーモーの血液

 栄養剤が作れる。

 +綺麗な水、ガンバレ草の種


 モーモーの心臓

 寿命が延びる薬が作れる。

 +綺麗な水、ミノタウロスの心臓、カトブレパスの心臓、バイコーン&シシュヴァーシュの心臓、綺麗な水


 モーモーの乳(通称・モー乳)

 料理他の材料になる。

 サイのお蔭で生飲も可能。

 +カボッチャン、小麦粉、塩玉、胡椒、バター


 モーモーのサーロイン レア

 料理の材料になる。

 火を通すべし。

 サイのお蔭でロースを緻密解体。

 +ホワイトロックソルト、胡椒


 モーモーのリブロース レア

 料理の材料になる。

 火を通すべし。

 サイのお蔭でロースを緻密解体。

 +リリー調合肉のタレ


 モーモーの肩ロース レア

 料理の材料になる。

 火を通すべし。

 サイのお蔭でロースを緻密解体。

 +オリーブオイル、ニードルビーの蜜、醤油、ニンニク、レッドワイン、ホワイトロックソルト、胡椒


 モーモーのタン 

 サバイバル料理の材料になる。 

 この世界では使い物にならない素材として捨てられている。

 火を通すべし。

 +ニンニク、ネギシロ、イエローベリー、塩玉、胡椒、クックルー骨の出汁


 モーモーのテール

 サバイバル料理の材料になる。

 この世界では使い物にならない素材として捨てられている。

 火を通すべし。

 +ネギタマ、ジンニン、イモジャガ、レッドワイン、ローレル、綺麗な水


 モーモーのスネ

 サバイバル料理の材料になる。

 この世界では使い物にならない素材として捨てられている。

 火を通すべし。

 +ニンニク、ショウガ、茶砂糖、酒、醤油


 モーモーのヒレ

 料理の材料になる。

 火を通すべし。

 +ローズ調合肉スパイス


 モーモーのバラ

 料理の材料になる。

 火を通すべし。

 +イモジャガ、ホワイトワイン、塩玉、胡椒、オリーブオイル、小麦粉


 凄いよ、モーモー。

 凄いよ、サイ。

 本当、サイがいなかったら随分と食べられないものが多かっただろうなぁ。

 しみじみありがたいよ。

 ちょっと拝んでおこう。


 遠くで作業するサイに向き直ると柏手を打って拝んでおいた。


「うーん。今回はスネをもらおうかなぁ。こっちでは捨てちゃうとか、勿体ないよねー」


「同感なのです。サイの解体は素晴らしいのです」


「タンも美味しいんだけどね。そっちはシチューにしてもいいし」


「また他の部位でも作ってみるといいのです。サクラ的勘ですが、ワイン煮は皆が大好きなメニューの一つになると思うのです」


「鉄板に辿り着くのは難しいからねぇ。私が作ったものからアレンジを加えていくよ」


「サクラさーん。切り方はこんな感じでよろしいですの~」


 カロリーナの声に呼ばれたサクラが頬ずりをしてから去って行く。

 愛情表現がいちいち可愛い。

 これはスライムだから、私を大切に思ってくれるから可愛いのだ。

 ふと、黒い何かが頭を擡げかけ、首を振って料理に集中する。


 まずは肉を切る。

 一口サイズではなく、向こうでは贅沢だった豚の角煮サイズにした。

 どんなに筋張っていても万能包丁のおかげでストレスなく切れるのだ。

 しかも研ぎいらず。

 こっちの包丁は全てそうなのかと思ったら、向こうと同じくプロは毎日研いでいるらしい。

 万能包丁を人前で使う時は細心の注意を払った方がいいだろう。


「さて。時間促進かけてもいいけど……やっぱり作りたいよね、圧力鍋を!」


 スネ肉は普通に何時間も煮るからねぇ。

 時間促進だと一瞬だけどさー。

 私がいない時はあったほうが絶対に便利だから!

 圧力鍋は使ってみると便利さが解る調理器具だよね。


「あー。フォンドヴォーも作っておきたいなぁ……次から次へと作りたい物が出てきて困るね!」


 今まで味が濃すぎてしまうので、ワイン煮にはフォンドヴォーを入れない派だった。

 入れないワイン煮は、ワイン煮じゃない! とか宣った知人の悪影響も強い。

 だがスライムたちが喜ぶのなら挑戦してみるのもいいいだろう。

 幾度となく作らせられたのでレシピは把握している。

 今回はワインを生かすレシピにしようと決めているが。


「圧力鍋ー! 誰にでも使える、安全設計の圧力鍋ー。私が使っていた某国メーカーの圧力鍋が軽くなっていれば最高です!」


 時短に好みの食感にと、大いに役立ってくれた圧力鍋はしかし、とても重かった。

 急いでいて片手で持ってしまい何度も腕を痛めたのだ。

 その重さだけが唯一の不満点だったので、気合いを入れて強請っておく。


 ぽーん! 

 小気味の良い音と共に現れたのは、まさしく私が使っていた圧力鍋と瓜二つのもの。

 違う点といえば、スライムマークが入っているのと。


「ありがとうございます! 凄く軽いです! 最高です!」


 軽さだった。

 望み通り、片手で容赦ない連続移動をさせても、腕を痛めることない超軽量仕様になっていた。

 今までの経験上、性能に全く問題はないだろう。

 圧力鍋の良さは重さに比例するという概念を覆してくれる異世界。


 私は、飽きもせずにこの世界に来て良かったと、繰り返して思った。

 

「あ~い~!」


「ひぃいいい!」


 圧力鍋を高々と持ち上げてその場で踊っていると背後からおどろおどろしい声が聞こえる。

 壊れたゼンマイ仕掛け人形のように首を背後へねじ曲げれば、ローズがスタンバっていた。


「また、無茶をしたわね! さ! 休憩になさい!」


「でも、せっかく圧力鍋作ったのに……」


「口の中へ半分に切ったイエローベリーを突っ込まれて飛び上がるのと、大人しく椅子に座ってポーション飲むのと、どっちがいいの!」


「ポーションを所望致しますぅ……」


「最初から素直に言うことを聞けばいいのよっ!」


 ぶつぶつとまだお小言が足りないふうなローズだったが、キズナオール傷薬オリジナル瓶入り飲み薬タイプをわざわざカップに入れ直して渡してくれる。

 口に含めば飲みやすい温度に冷やされていた。

 スライム収納は温度調節も完璧なのだ。

 

「私は戻るから、時間をかけて飲むのよ! ちょっぱやで飲んだら、今度はベッドへ追い立てるからね!」


「了解しました、ローズさん」


 びしっと敬礼をすると肩? を竦めたローズは、元いた作業場へと戻っていった。

 目の届く場所は既に種まきがすんでいるようだ。

 ところどころ緑の芽が見えた気がして、思わず遠い目になってしまった。





*今回ステータスの変動はありません。


 喜多愛笑 キタアイ


 料理人 LV 4 


 スキル サバイバル料理 LV 4

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV∞ 愛専用

     命止魔法 LV3 愛専用


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)

モーモーの部位をどう使うか考えるのが楽しかったです。

いつか、作って使う場面とかも書きたいですね。


次回は、モーモースネ肉のレッドワイン煮 の予定です。


お読みいただきありがとうございました。

引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

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