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天然酵母を作ろうか。

やっとステータスが出せました。

そそっと挿入したので、当初の予定より長くなってしまいましたが、素材名やステータス表示が多かったせいなので、それもありかと。

これから忘れずに掲載していく所存です。

……また忘れていたら、そっと囁いて貰えると嬉しいです。



「呼ばれて飛び出て、じゃかじゃかじゃーんっ!」


 今時そんな掛け声と共に現れる人はいないだろう。

 スライムだからいいのかもしれないが。

 異世界だからいっそ斬新なのかもしれないが。

 

「……反応がないのね?」


「あまりのベタさ加減に茫然自失ですよ?」


「そこまでなのね?」


「今の世の中、お笑い芸人ですらその登場の仕方はないかな、うん」


「むう。異世界、奥が深いのねー」


 だが、負けない!

 そんな変な方向に気合いの入ったリリーを生温い目で見詰めながら、落ち着くのを待つ。

 私の目線に気が付いたのか、リリーがそっとオレンジジュースを差し出す。

 情報共有がきちんとなされているので、ニードルビーの蜜がたっぷりと溶け込んでいるだろう。


「お代わりは如何なのね?」


「ありがたくいただくわ……でね? 夕食のメニューを考えていたのですよ」


「どんな食材が入り用なのね?」


 喉が渇いていたらしいリリーも同じ物を飲んでいる。

 打てば響く返事には、自然と眦が撓み、疲れも抜けた。


「畑完了記念にお酒を使ったメニューを考えたのよ。モーモーのレッドワイン煮をメインに、キノコのアヒージョ、コーンスープ、野菜の蒸し焼きを考えているの」


「美味しそうなメニューなのねー。異世界料理はどれだけ種類があるのか気が遠くなりそうなのねー」


 この世界にも色々な料理がありそうではあるが、元王族ですら取り乱す異世界料理だ。

 全体的なレベルはあちらの方が上だろう。

 是非、これこそが魅惑の異世界料理!

 しかも美味しい!

 な、料理に出会ってみたいものだ。

 異世界にしかない食材にも期待したい。


「あとね。せっかくパンに関連する機械を作ったから、ふわっふわのパンも作ってみたいのよ。天然酵母を使えばいけると思うのね」


 天然酵母について、こんな感じー、と頭の中でイメージをする。


「……グリーンベリーとパープルベリーのレーズンは作ってあるのねー。林檎は、こっちのレッドアップルとグリーンアップルなのねー」


 抜かりない。

 というか、先回りして私の欲しい物が作られている気がする。

 予知能力でもあるんだろうか?


「あ。林檎もあるんだ。生食できるの?」


「サクラに鑑定を頼むのね?」


「あ、後でいいよ! 他に欲しい食材がトウモロコシとズッキーニにマッシュルームなんだけど……」


 同じくイメージを伝える。


「全部あるのねー。キノコ類はトリアにキノコ育成専用樹木を見極めて貰えば、どんなキノコでも好きなだけ増やせるのね-」


「そうか! 木のプロフェッショナルだもんね。あとでお願いしよう!」


「私もこのまま料理のサポートに入るのねー。皆に美味しい物を食べさせるのねー」


「カロリーナも呼んでくる?」


「私が行ってくるのねー」


 リリーがカロリーナを呼びに行ったタイミングでサクラが戻ってきた。

 スライム的念話効果だろうか。


「何の食材鑑定が必要なのです?」


「トウモロコシ、マッシュルーム、ズッキーニ。あ! 後はレッドアップルも……うーん。ベリーのレーズンもお願い」


「了解なのです」


 肩の上に乗ってきたサクラが教えてくれた鑑定結果を眺める。


 モロコシ

 トウモロコシ。

 甘味種、爆裂種、硬実種の特性を都合良く持っている異世界仕様。

 こちらでは動物の飼料扱いなので、食べる習慣は貧困農家ぐらいしかない。

 美味く栽培できれば生で食べられるかも?

  

 野生モロコシの実

 サバイバル料理の材料になる。

 火を通すべし。

 +ホワイトロックソルト(茹でた時にオススメ)

 飼料にもなる。

 乾燥させるべし。


 野生モロコシの皮

 お茶になる。

 乾燥すべし。

 ホット向き。

 

 野生モロコシのひげ

 お茶になる。

 乾燥すべし。

 アイス向き。


 野生モロコシの種

 料理の材料にもなる。

 +ホワイトロックソルト(ポップコーンに!)

 栽培もできる。

 +綺麗な水



 ニッキーズ

 ズッキーニ。

 味はズッキーニだが、色は黄色で丸い。

 掌サイズが美味。


 野生ニッキーズの実

 料理の材料になる。

 生でも食べられる。

 +オリーブオイル、イエローベリー、塩玉


 野生ニッキーズの葉

 サバイバル料理の材料になる。

 処理に失敗すると不味い。

 この世界では使い物にならない素材として捨てられている。

 +クックルー肉、トメト、スーナ、ネギタマ


 野生ニッキーズ茎

 サバイバル料理の材料になる。

 処理に失敗すると不味い。

 この世界では使い物にならない素材として捨てられている。

 +オリーブオイル、ニンニク


 野生ニッキーズの花 

 顔パックの材料となる。

 肌がつやつやになる。

 薬師にも知られていない超希少レシピ。

 +綺麗な水、ラベンダーオイル


 野生ニッキーズの種

 栽培できる。

 +綺麗な水



 ルマッシュ

 マッシュルーム。

 所謂ブラウンマッシュルーム。

 ルマッシュ レアとして白い物が存在するようだ。


 野生のルマッシュ

 料理の材料になる。

 火を通すべし。

 


 レッドアップル

 赤い林檎。

 生食OK!

 虫がつきやすいので、綺麗な物は高額取引される。

 放置すると人の顔ほども大きくなるが、味は掌サイズが最高に美味。

 天然酵母にすると、優しいフルーティーな香りがする。

 ベリー系より少しだけ発酵が難しい。


 野生レッドアップルの実

 料理の材料となる。

 生でも食べられる。

 甘い味付けをしたい時用の調味料として使われることが多い。

砂糖煮は贅沢品。

 +バター、ニードルビーの蜜


 野生レッドアップルの皮

 お茶になる。

 乾燥すべし。

 ホット向き。


 野生レッドアップルの種 レア

 栽培できる。

 +綺麗な水

 

 

 グリーンアップル。

 鮮やかな緑色の林檎。

 レッドに比べて傷みやすいので、ジュースにされることが多い。

 綺麗な物はレッドより更に高額取引される。

 天然酵母にすると、優しいフルーティーな香りがする。

 ベリー系より少しだけ発酵が難しい。


 野生グリーンアップルの実

 料理の材料となる。

 生でも食べられる。

 ドライフルーツ素材として有名。

 +バター、白砂糖、小麦粉、クックルーの卵


 野生グリーンアップルの皮

 お茶になる。

 乾燥すべし。

 ホット向き。


 野生グリーンアップルの種 レア

 栽培できる。

 +綺麗な水

 

 

 パープルベリーのレーズン

 ドライフルーツとして広く楽しまれている。

 発酵力が強いので、初心者でも作りやすい酵母。

 どんなパンとも相性が良い。

 

 グリーンベリーのレーズン

 ドライフルーツとして広く楽しまれている。

 発酵力が強いので、初心者でも作りやすい酵母。

 また、パープルより甘さ控えめのさっぱりした風味に仕上がる。


「相変わらずサクラの鑑定は凄いね! 新発見が山盛り過ぎるよ!」


「光栄の極みなのです。愛の役に立てて嬉しいのです!」


「さて、と。何から始めようかなぁ。天然酵母からいこうか」


「レッド&グリーンアップル、パープル&グリーンレーズンの四種類全部いっちゃうのです?」


「時間促進があるからねー。仕込みさえしちゃえば待たずに済むのが良いよねん。サクラさん。四つの入れ物を熱湯消毒して貰える?」


 スライム製陶器のうち密閉容器が程なく熱湯消毒される。

 私は綺麗な水と砂糖を用意した。

 容器をひっくり返して自然乾燥させている間に、食材他今日の夕食作りに必要な食材を用意して貰う。


 ついでに思い出したので、ステータスの確認もお願いする。

 

 喜多愛笑 キタアイ


 料理人 LV4  new!!


 スキル サバイバル料理 LV4  new!!

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV6

     生活魔法 LV5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV∞ 愛専用

     命止魔法 LV3 愛専用


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)


 作る量が増えたからか、職業レベルが上がっていた。

 サバイバル料理も上がって嬉しい。

 しかし、普通の料理……家庭料理というスキルは存在しないのだろうか。

 料理魔法に含まれているとか?

 今の所欲しいスキルや魔法は出揃っているし、スライム達が優秀だから新しいものを覚える隙がない気もする。


「……もう、乾いたのです」


 容器をチェックしたサクラが並べてくれたので、そちらへ集中した。

 レッドアップル、グリーンアップル、パープルレーズン、グリーンレーズンを入れたそれぞれの容器へ水と砂糖を追加投入する。

 アップルは皮や芯のみを使う。

 実はサクラと二人で美味しく頂きました。

 しゃりっとした食感が最高です。

 美味しい果物は生食もしたい。

 グリーンアップルの方も、そつないスライム達故に、当然虫食い&傷みのない完品だ。

 レッドよりも若干やわらかくて甘みが強いのがグリーンといったところか。

 

「うん。これで25~28度を維持しつつ一日二~三回よく振って……あ!」


「どうしたのです?」


「時間促進はできるけど、温度維持はできなかったわ。後は冷蔵庫に寝かせる時間があるから今日の夕食には無理……ん? 待てよ。アップルとレーズンだと発酵のさせ方が違ったような……」


 目を閉じて記憶を揺り起こす。

 パン作りに嵌まった時、ストレス発散もかねて天然酵母からのパン作りにも挑戦したのだ。


「あ! アップルは駄目だけど、レーズンはいける! ……はず?」


「おぉ! 嬉しいのです!」


 アップルは放置してレーズンの方を仕上げてしまおう。

 一日目作業は密閉状態で二十四時間促進させてっと。

 二日目作業から、振って外気に触れさせなくてはならない。

 一日二~三回振るってことは……八時間促進させて振るのを三回繰り返せば十分だよね?

 まずは八時間促進させて……よく振ったら、外気に触れさせるっと。

 

「振るのと外気に触れさせる作業は私がやるのです! 仲良く分担作業するのです! 温度維持も私ならできるのです」


「そ、それもそうだった。ではお言葉に甘えて……」


 パープルレーズンに続いて、グリーンレーズンで同じ作業を繰り返す。

 二日目分の作業を終えたら、レーズンが水気を吸って膨らんだ。

 三日目分の作業を終えたら、水の色が濁ってきてレーズンの一部が浮き上がってきた。 気泡もわずかに出始めたようだ。

 四日目分の作業を終えたら、パープルはレーズン全体が浮かんで泡もばっちり出始めた。

 グリーンはイマヒトツ泡の出が悪い。

 五日目分の作業を終えたら、パープルは泡の勢いが素晴らしい。

 これで完成だろう。

 グリーンは同じ作業をもう一ターン繰り返さねばならないようだ。

 ……いや、ちょっと待って!

 オリが出てないじゃん!

 オリがなきゃ酵母液とは言えないよね?

 オリを出すのには冷蔵庫で寝かせないと……。


「あ! やっぱり駄目だった! ごめん! サクラ!」


「ん? まだ完了じゃないのです?」


「最後に一日冷蔵庫で寝かせないと駄目だったぁあああ!」


 散々期待させておいて申し訳ない。

 ちなみにアップルの方は四日目に皮などが浮き上がった状態で冷蔵庫に入れるのだ。

 冷蔵庫に入れるまで作業をもう一日繰り返すので、レーズンに遅れること二日間で酵母液が取れる。


「せ、折角頑張って貰ったのに。待たせてごめんね……」


「大丈夫です。明日の夜には食べられるのです」


「前向きに捉えて貰ってありがたいわぁ……」


「アップルの方も頑張れるのです?」


「うん。ここで挫けてちゃあ、いかんのですよ」


 サクラの前向きさ加減に励まされながら、私はレーズンとほぼ同様の手順を繰り返してレッドアップルとグリーンアップルの天然酵母作りを、冷蔵庫で寝かせられる段階まで時間促進を使って仕上げた。

 

「天然酵母作りは終わってしまいましたの~?」


 カロリーナが一人で現れた。

 リリーは作業に残ったようだ。

 料理より優先すべき事でもできたのだろう。

 こちらにはサクラもいることだし、人手は十分と判断したのかもしれない。


「あ、ごめん。久しぶりすぎて手順が随分おかしくなっちゃったから、カロリーナがいなくて良かったよ。サクラを思いっきり振り回しちゃったんだよね……」


「この程度で振り回されたなんて、思わないのです。次に作る機会があった時はカロリーナも一緒にやればいいのです」


「そうだね。その時は時間促進なしでやろう」


「愛がいなくても一通り美味しい料理を作れるようになるのが最終目標ですのよ~? 宜しくお願い致しますの~」


 一通りがどこまでを示すのか解らない。

 天然酵母の手作りが、パン作りの工程に含まれるのだとしたら、結構マメというか拘りの強い料理人な気がする。

 手は足りていることだし、拘りは大切にしたいので、今の所教育方針を変えるつもりはなかった。


「じゃあ、酵母が仕上がったらぱんだねに混ぜて、パンを焼くのもやって貰う方向で」


「はい、喜んで!」


 誰に仕込まれたのか。

 どこぞの居酒屋のような返事があった。

 カロリーナには似合わなかったと、付け加えておく。


天然酵母の作り方はネットで見かけたサイトを参考に書きました。

リアルでケーキ系はよく作りますが、パンはシュートレン(これはパンとは言えないかな?)ぐらいです。


次回は、モーモーの……凄いよ、サイ! の予定です。


お読みいただきありがとうございました。

引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

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