表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/198

村を整備しましょう。畑作り編。

 家庭菜園に少々心引かれるのですが、ガーデニングで既に虫の襲来が限界値に達しているので、難しい気配です。

 虫寄せ体質なので、他の方達より虫遭遇率が高いのですよ……。

 ちょうど目の高さの位置でクマンバチがホバリング? していて、じっくりもふもふ観察できたのは嬉しかったですけどね……。

 ちなみに今はマルカメムシが洗濯物にくっついていないか確認する日々です。



 全員で食後のナオール花茶を堪能して重い腰を上げる。

 次は畑作りだ。

 一日の作業量としてはブラック企業も真っ青のスケジュールだが、私以外のメンバーが有能すぎて全く苦にならない。

 ランチを楽しみながら、皆の負担や私ばっかり楽をしている心情を吐露したところ、大笑いされてしまった。

 心配されるほどの作業量ではないし、愛は愛にしかできない仕事をしているので、むしろもっと任せて欲しい! と言われる始末だ。

 特に料理の美味しさを喜んでくれている。

 胃袋を掴む! は、人間関係だけではなく魔物関係でも大いに有効のようだ。

 私としては作るのも好きだし、皆が喜んでくれるのも嬉しいので、やる事なす事が楽しくて仕方ないという、大変恵まれた状況だった。

 過去の自分に、仕事を頑張った結果。

 こんなにも満ち足りた気分になれるのだと、教えてあげたいところだ。


「えーと……まずは畑の位置を決めて、土を掘り起こして貰う感じかな?」


「位置さえ決めてくれれば僕達が、うねまで作るよ。そういえば、肥料とかある? 気持ちに余裕がなかったから腐葉土とか貯め込んでおけなかったんだよね……」


「畑の肥料かぁ……あっ! 野生ネギタマの皮があったんじゃない?」


「それなりにあるのねー。たださすがに全畑に蒔ける量はないのねー。当然完全乾燥済なのねー」


 うちの子が優秀なのは仕様です、ええ。

 完全乾燥したネギタマの皮は、害虫避けの効果がある。

 畑仕事と昆虫は切っても切れない関係だ。

 少しでも虫遭遇率が下がるのであれば大変ありがたい。

 個人的には、むのつくあいつが一番憎いです。

 どうして足の数が多いだけで、あそこまで不気味なんだろうね……。


「……ん? ちょっと待ってね。腐葉土、貯め込んではいなかったけど、放置していたのがそれなりにあるみたい……土壌整備はきちんとしておくように言ったのを守っていなかったって事だから、褒めるわけにはいかないんだけど……今回に関しては! 良かったのかなぁ?」


 数人のトレントがモジモジしている。

 怒られると解っていて申告してくれたのは申し訳なくも嬉しい。

 

「や! 凄く有り難いよ? こういうのを巡り合わせって言うんでしょ!」


 私の言葉に該当するトレント達が飛び上がって喜んだ。

 根っこからばささっと土が飛び散る勢いだった。


「解ったから、落ち着こうか? でも今度からはきちんと整備するんだよ?」


 ぺこりと頭が下げられる。

 他のトレント達が、枝で慰めたり小突いたりしていた。


「それじゃあ…場所決めを宜しく」


「了解! 気になる所があったら教えてねー。えーと! 溜め池の近くだから……あ、ローズそこでストップ。うーんと! リリーはあの辺りでストップ。うん、その辺。モルフォは……ああ、ありがとう。まさしくそこだわ!」


 スライム達に指示を出して移動して貰う。

 四隅に鎮座したスライム達の位置をトリアと共に確認して、大まかな場所を決めた。

 私はそれで十分だと思っていたのだが、残っていたリリーとトリアが何やら話し合ったところ……一度目の収穫で村の食糧一年分確保できるんじゃないの? というレベルの畑が作られてしまうらしい。

 位置決めの意味はあったのかという疑問は横に置き、本来村があった敷地から激しく逸脱しているが問題なかろうか?

 リリーと迷って、経験からして詳しそうなトリアに問うてみる。


「この村は捨てられた村だからねぇ。無問題だよ。というか、文句なんか言わせない。エルダートレントが畑に関与していると解っていて、難癖つけてくる輩が万が一いるのだとしたら、畑の肥料にするから!」


 つぶらな瞳をきらめかせて爽やかに言われた。

 何人かのトレントが枝で素早く何かを突き刺す動作をしていた。

 何時からトレント達は戦闘種族になったのだろうか。

 怖い。


「それじゃあ僕達は早速畑作りに頑張るから、種の選定宜しく! 色々あるんでしょ?」


「あるのです。かなりの種類があるのです。野生種の特性をそのまま生かす素晴らしい野菜を作り倒すのですよ!」


 リリーが触手拳を振り上げる横で、他の子達も倣った。

 カロリーナも倣った。


 トリア達に疲れた時は溜め池の美味しい水をたっぷり飲んで癒やされて欲しいと告げて、外ご飯を楽しんでいる巨大テーブルの近くに集まった。


「さ。これで全種類なのねー」


 リリーが今までストックした種を種類別にテーブルへ出してくれた。


「スーナの花苗は受粉が得意な虫が必要なので、今回は植えないのねー」


「茄子好きとしては、植えておきたいなぁ」


「ストックは売るほどあるので安心するのねー。トリアと相談して良い虫と交渉するのねー」


 受粉が得意な虫というと蜂ぐらいしか思い浮かばないのだが、ここは異世界。

 もっと適した虫が存在するのだろう。

 どんな虫か気になる。

 ……できれば苦手なタイプじゃないといい。


「続いてライぎむの種籾。栄養価が高い土がネックだったけど、トリア達に任せればこれまた安心なのねー。美味しいパンを食べるためにも多めに作りたいところなのねー」


 ぱんだねだけじゃパンにならないんだよね。

 イースト菌的な立ち位置なのかしら?

 そういえば、ぱんだねは育成機に入れておかないと増えないんだった!


「リリーさんやー! ぱんだね育成機を作らないとだね」


「……やっと気が付いたのね? 実は忘れていたのね? とか突っ込みは入れないでおいてあげるのねー」


 その優しさが辛い。

 がっくりと肩を落とせばサクラとカロリーナが肩を叩いて慰撫してくれた。


「愛の負担が大きいから、何とか増やせないかと、リリーは研究していたのよ! 落ち込む前に褒めなさいな!」


 ローズのフォローが入った。

 リリーにツン要素有りとは!


 内緒にしておいて欲しかったのねーと、恥ずかしそうに囁くリリーを高速で撫ぜておく。

 種蒔きは皆で分担をお願いするとして……私は即座にぱんだね育成機を作るとしよう。


「こほんなのねー。あとはレア種と油を使うオリーブを多めに作る感じで良いと思うのねー」


 するっていうと……。

 レア種が、キズナオール草、トメト、イモジャガ、シモヤ、ボウゴ、レッドベリー、イエローベリー、オレンジベリー、ネギタマ、キャノベツ、マツナー。

 オリーブは別枠で。

 通常種がターレス、ショウガ、ジンニン、ネギシロ、ネギミドリ、コンレン……になるのかな。


「球根とか葉っぱとか種とかあるけど、基本土植えで大丈夫なの?」


「普通は植え方が色々あるのです。葉っぱは水栽培の方が向くとも言われているのです。でもトリア達に耕して貰った畑ならそっちの方が100%良いと思うのです」


「本当にありがたいわぁ」


「大まかな流れを説明してきたので、どんな野菜を植えるのか教えて貰ってもいい?」


 感謝感激していたところへ、トリアが滑るように現れた。

 目線を投げればトレント達があちらこちらに散らばって土を耕している。

 既に腐葉土と完全乾燥ネギタマの皮を混ぜ合わせているトレントまでいた。

 競い合って仕事をしているらしく、作業進行状況は素晴らしくスムーズのようだ。

 切羽詰まった感じはせず揃って楽しそうに動いているから、見ている方も罪悪感を抱かなくてすむ。


「こんな感じなのねー。ライぎむの種籾は栄養価が高い土が必要なのねー。オリーブは油を取りたいので多めにお願いしたいのねー。レア種も多めに、他はそれなりに作りたいのねー」


「ライぎむ作りができるとか凄いね! 脱穀作業と選別作業が鬼畜だったはずだよ?」


「サイが頑張ってくれなかったら無理だったと思うわ」


「ここまで解体でできるんだ! 本当に素晴らしいよ!」


 胸? を張るサイの頭をトリアと二人で撫ぜ褒める。


「じゃあ、ライぎむは特に栄養価が高い畑に植える手配を整えるよ。ベリー系とオリーブは木に実るから、他の野菜と別にまとめよう。後は種、葉種はだね、球根でも分けた方がいいかなぁ?」


「その辺はお任せ致したい所存です……何卒宜しくお願い致します!」


「了解!」


「どうするのね? 愛は一緒に種植えするのね? それともぱんだね育成機を作るのね?」


「うーん……少しは種蒔きも……」


 ぱんだね育成機を作る気満々だったが、いざ尋ねられるとやはり種蒔きも気になってしまう。

 迷っていたところ。


「愛には、ぱんだね育成機の製作をお願いしたいですの! 種蒔きなら私が愛の分も頑張りますわ~」


 カロリーナに力説されてしまった。

 彼女的にはパンがない生活が耐えられないのかもしれない。

 ぱんだね育成機は私しか作れないことだし、ここは初心通り一つ頑張ることにしようかな。

 別に種蒔きは何時でもできるのだし。

 ぱんだね育成機の製作が完了してから手伝ってもいいのだし。


「解ったわ。頑張って作るよ!」


 しかしぱんだね育成機ってどんな感じなのかしらん?

 数を作れた方が良いけど、そうすると巨大な機械になりそうだし。

 ぱんだねが増えたら自動的に保管庫へ入るようにもしたいよね。

 育成機の保管はモルフォに頼むとして……って、モルフォの収納ってば他の子達と比べて沢山入り過ぎてない?

 うーん、違う子にお願いするべきかしら……。


「愛ー、大丈夫?」


 トリアに正面から抱き締められて背中をとんとんされる。

 新緑の優しい香りに包まれて、自分が思考の迷宮に囚われていたのを知った。

 

「ご、ごめんね! どんな育成機にしようかとか考え始めたら止まらなくなっちゃっただけだから!」


「そう? それならいいんだけどね。思考に沈む前に一言貰えると嬉しいかなぁ」


「うう、気をつけます。皆も心配かけてごめんね。私は育成機作りに勤しむので、皆は種蒔きを宜しくお願いします!」


「任せてくださいですの~。気合いを入れて頑張りますわ~」


 カロリーナが力こぶを作って見せてくれる。

 さすがラミア種! と、賞賛に値する見事な力こぶだった。

 任せてー! の声を上げた他の皆もカロリーナの力こぶに感動して、力こぶを作りまくっていたけれど、カロリーナのように立派な力こぶにはならなかったようだ。



 ぱんだね育成機を作る、にしましたが、造る、と迷いました。

 小型機械でしかもお手製だから、作るでいいかなぁという流れです。


 次回は、ぱんだね育成機製作秘話? (仮) の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ