生きの良いばーそもどき。
麺物が好物です。
細い麺が好きなので、蕎麦&スパゲッティーのカッペリーニが萌えます。
今回から誤字報告機能を使うことにしました。
過去に書いた話にも徐々につけていく方向ですが、お時間いただきたい感じです。
連載中のこの作品と旦那様は手配しました。
まず、ばーそもどきと戦おうかと思ってモルフォに取り出して貰う。
「えぇえええ?」
びっちんばっちんと凄まじい音を発して暴れ回る生きの良過ぎるばーそもどきを、取り落としそうになるモルフォに向かって手を差し出す私の横で、カロリーナが大声を上げた。
「ど、どうして、ばーそもどきの生きがそこまで良いのですのぉ?」
「う、うん。そんなに生きの良い食材だとは、僕も知らなかったよ! もしかして、モルフォが養殖したとか?」
トリアもカロリーナに賛同する。
以前のどうんもどきも激しくのたうち回ってくれたが、今押さえ込んでいるばーそもどきは、私一人だったら逃げられたかもしれない機敏な動きをしていた。
「ん! 養殖はしてないけど、環境が良いのか、勝手に増殖しているのっ!」
どうやらモルフォ内には、ばーそもどき牧場が存在するらしい。
想像するに、どうんもどき牧場、ちゅばーそもどき牧場、ぱすたもどき? 牧場もあるに違いない。
完璧に管理された餌となるらしい草の上で、びっちびっちと元気よく跳ね回るばーそもどき達を想像してしまった。
「あら? そんなに増えたのね?」
「ん! 普通は滅多な事では増殖しないらしいの。でもモルフォの中では、商売にしても大丈夫なくらい数は確保できているの」
「品質などはどうなのです? 育ったばーそはあまり美味しくないらしいのです」
「ん! 品質は常に最高を維持できているの!」
「……サクラさんやー。鑑定をお願いできますかね」
「あ! それが良いのです」
ばーそもどき
希少種 亜種
最高の環境で分裂増殖したので、最高品質のまま生息する亜種となった。
所謂十割蕎麦。
専用包丁を使うと、ばーそになる。
茹でるのが一般的。
焼いても美味。
そばがきもいける。
+そばつゆ、ネギシロ、川苔
「あー分裂で増えるんだー。でもって十割蕎麦なんだ」
向こうの十割だとちょっとぼそぼそするので二八割が好みなのだが、こちらの十割蕎麦はどうだろう?
まずは味を確認したい。
きっと美味しい。
「無茶苦茶だよ! っていうか、そもそも麺もどきはどれも希少だから、めったに食べられないんだよね。僕は食べたことあるけど三回ぐらいだよ?」
「私は当然初めてですわ~。バーベキューで頂いたちゅばーそも凄く美味しかったので、とっても楽しみですわ~」
カロリーナが満面の笑みで、ばーそもどきを押さえつけてくれるので、私は思い切り専用包丁を入れる。
経験上もどきの半分以上に包丁を入れると動かなくなる感じだ。
今回のばーそもどきは生きが良かったのか、全部切り終わるまでびちびちのままだった。
切りにくいのは頂けなかった分、味の方に期待したい。
「あ! 誰か、ネギシロとネギミドリを刻んでおいてくれる? 薬味に使いたいの。 後は……お米についてトリアに説明もお願いしたいな。それと! 天ぷらの下拵えをカロリーナに教えてくれる子も欲しいわねぇ。煮浸しは私がやるから、食材の取り出しだけ頼める?」
「う! ネギシロとネギミドリは私が刻むのよ!」
サクラが取り出したネギシロを掴んだサイは、私が作ったサイの専用包丁を握り締めている。
他の子達は包丁にそこまでの拘りがないようだが、サイは自分の包丁を私以外に貸そうとはしない。
ちなみに一応人数分用意してあるが、他の子達は特に気にせず手に取った物を使っていた。
「お米の説明は私がするのねー。ついでに海の場所も詳しく聞いておくのねー」
説明上手のサクラが担当してくれるかと思ったら、リリーが挑むようだ。
海の場所=美味しい魚介その他諸々の素材価値が気になるといったところか。
黒リリーさんが発現しそうな気がして仕方ない。
「カロリーナへの説明は私がするのです。ばーその薬味には川苔も必須です? 川苔はローズに狩ってきて貰うのです」
「任せなさい! あれだけ綺麗な川なら絶対にいるはずよ!」
……何故に海苔が川に生息しているのだろう。
水草のようにゆらゆらと揺れている状態を想像し、続いて魚のように泳いでいる様子を妄想した。
「んっ! 生きの良いのを期待しているのっ! 私は愛の補助をするのっ!」
モルフォがぽーんと肩に乗ってきた。
スライム達は基本的に保管している食材の取り扱いが上手な傾向にあるらしい。
モルフォにはばーそを茹で上げて貰うとしよう。
ぜひとも麺茹深鍋を使い倒して頂きたい。
「それじゃあ、皆、宜しくね-」
多種多様な返事を貰った私は、目の前のザルに入れられたマツナーを取り出した。
まずは根っこを切り落とす。
葉っぱと同じくらいの太さがあるから驚きだ。
半分にしてから、四分の一に切った。
オリーブオイルを薄く引いて温めておいたフライパンに入れて、先に炒めておく。
モルフォが様子を見てくれるというので任せた。
葉っぱの方はざく切りにして、茎と分けてからそれぞれをよくよく水で洗う。
ザルに上げて水をしっかりと切ってからフライパンを覗くと、根っこに火が通ったようだ。
茎を入れて一分、続いて葉っぱを入れて根っこと茎に絡める程度に炒めてから、白瓶入り・さぬーき風白出汁をマツナーが隠れるくらいたっぷりと注ぐ。
薄口醤油を回し入れて、弱火で葉っぱがくったりとしてきたら完成だ。
ちなみに私は味がしみしみの冷えた煮浸しも大好きだったりする。
「取ってきたわよ!」
ローズが持ってきたのは、向こうで食べる真っ黒い海苔。
ただし生きているらしく波打っていた。
「うぉふ! 生きが良い! 海苔? じゃないか。川にいるから川苔……でいいんだよね?」
サクラが鑑定結果を教えてくれた。
川苔
向こうの世界の海苔。
川で泳いでいるのが普通の海苔で、海で泳いでいるのが味付け海苔。
どちらも向こうでの最高級ランク海苔で美味しい。
掌サイズからA4判サイズまで幅広く生息。
大きさで味は変わらない。
水に放しておけば生きが良いまま保存できる。
蕎麦に使うなら火で炙ってから刻む。
味噌汁やご飯には生もお薦め。
色が気味悪いと、こちらの世界では食べる習慣がない。
+キャノベツ、塩玉
「色々と色々と突っ込みたい! まぁ、海苔が気味悪いってのは日本以外では結構言われているみたいだったから解るけどね。美味しいのに勿体ないわー」
ちらっとリリーに目線を投げるも、何やらトリアと熱く語り合っている。
トリアがリリーに毒されないといいのだが。
そしてお米の話はきちんとしているのだろうか。
海の素材で如何にして儲けるか、なんて話に終始していないだろうか。
少しばかり心配だ。
「天ぷらの下拵えが整いましたの~」
「せっかくだから揚げてみるのです?」
サクラとカロリーナのコンビには問題ないようだ。
スムーズな手配が整ったらしい。
「あ! 天ぷら鍋作っておく?」
初心者には専門の道具がいいだろうと提案してみたが。
「今回はフライパンでいいのです。でも揚げ物の頻度が上がるとか、お店をやるとかなら作った方がいいかもなのです」
別の機会を提示された。
天ぷら鍋一つ作ったところでそこまで消耗しないだろうが、昼食後も力仕事的な作業が待っているので、体力気力共に温存した方がいい気もする。
「了解! じゃ、今回はフライパンでお願いしましょう! 油はオリーブオイルだから、低温で揚げようねー」
オリ-ブオイルの天ぷら。
一般的ではないが、駄目レシピではない。
油が切れた時に、封すら切らずに眠っていたオリーブオイルでおそるおそる揚げたら、意外に美味しかったのは懐かしい想い出だ。
サイのお陰で脱穀いらずのぎむを存分に挽いて貰ってできた小ぎむ粉にクックルーの卵を入れて溶いた物に、具材をつけて静かにフライパンの中へと投入してもらう。
「ひゃう!」
油が跳ねてしまったようだ。
どうしたって揚げ物では避けようがない。
肩の上で見守っていたサクラが患部を診るが、跳ねた油は極々少量だったらしく水で冷やすまでもなかったようで何よりだ。
ぷるぷると腕を伸ばして、そっと具材を中に入れるカロリーナを見守りながら、テーブルの上を見やれば、茹で上がったばーそ、適度に炙って刻まれた川苔、こちらも刻まれたネギシロ、ネギミドリが置かれている。
そばつゆはどうやらモルフォが調合してくれたようだ。
鰹節の良い香りが漂っている。
以前にさぬーき風の出汁を作っていた時に、そばつゆについて語っていたのを覚えていたらしい。
素晴らしい記憶力だ。
「ん! 味見するの!」
鼻をふんふんさせていたら、モルフォがスプーンにそばつゆを入れてくれた。
「あー好みの味! そばつゆは今後もこの配合でお願いしたいわ!」
鰹出汁たっぷりのそばつゆは何とも絶妙で私好みの味だった。
「ん! 気に入って貰えて良かったのっ! ストックも作ったから何時でも食べられるの!」
ストックまで考えて作るうちの子は、本当に抜かりがないのです!
誰彼構わず自慢したいが、自慢する相手がいない。
トリアもカロリーナも、トレント達だって既に身内だ。
何時か存分に誰かに自慢するとしよう。
それが盗賊でないことを祈る。
次回も料理回です。
さくっと一話に纏めたいんですが、美味しく食べる所まで書こうとすると数話に割れてしまいます。
仕様と思ってゆるーく読んで頂けると嬉しいです。
次回は、ばーそと天ぷら各種にマツナーの煮付け。(仮)の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。