村を整備しましょう。水回り編 後編
ダブル更新予告した途端、体調が不良となる不思議。
懐かしいマーフィーの法則ですね。
そう言えば、今、マーフィーの法則的な事を何と表現するのかしら?
お約束とかテンプレに近い感じがしますが。
溜め池が見渡せる位置に立ち、満足気に見下ろしていると、トリアとトレント達が戻ってくる。
「川を引いてきたよ。思ったより水生生物が多くて、環境も良好だった」
「あ。それは僥倖だわ。川魚料理にも挑戦したいよね」
「楽しみですの~。川魚は泥臭い物しか食べたことがありませんけど、きっと愛の手にかかればうっとりするほどの高級料理に変わるのでしょうねぇ~」
トリアの報告に一安心して、カロリーナの身悶えには苦笑する。
「おぉ! 素敵な溜め池だねぇ。川にも繋げておくかい?」
「うん。お願いしていいかな? 魚とか入っても大丈夫なものだよね、溜め池って」
「問題ないのです。でも、愛。私達は洞窟で収納しておいた、綺麗な湧き水を入れるのが良いと思うのです。恐らく作物がより良質に育つ気がするのです」
「へぇ。そんなのあるんだ? ちょっと見せて貰ってもいいかな? あまりにも綺麗すぎると問題がある場合もあるからさー」
「はいなのねー」
リリーが水瓶っぽい物を出した。
中には水がなみなみと入っている。
「どれどれ……」
トリアが水瓶の中に手を入れた。
水に触れた瞬間、人の手に見えていたものが枝に変わるのが面白い。
「うん。これは随分と珍しい水だねぇ。ここまで都合が良い水はなかなかないよ?」
「何か問題あったとか?」
サクラに再鑑定して貰う。
綺麗な湧き水
飲んで良し、料理に使って良し、傷口消毒用にも良し。
気分をすっきりする効果有。
畑用の水にすれば、作物が良質に育つ。
更に虫害から守られる。
「おぉー! 前に鑑定して貰った時より効果が増えてるよ! こういうことってあるの?」
「普通はないのです。でも愛とエルダートレントが関わったのなら十分に有り得ることなのです」
「僕はそこまで水に関して干渉できないはずなんだけどなぁ……でも、愛効果は間違いなくあると思うよ」
「お約束なセリフをありがとうございます。皆にとっても良い結果なら私がどう関わっていようと気にしないわ!」
「じゃあ、綺麗な湧き水を入れるのは問題なし、むしろ推奨されるってことなのね! さぁ、皆! 思いっきり注ぐわよ!」
「「「「おー!」」」」
ローズの掛け声に続いたスライム達が、全員大口を開ける。
どれくらい大口かというと、スライムの全身が口になった、としか言い様がない大口だ。
こんな時は、イラスト参照してね! と言いたくなる。
「凄いですわ~! あっという間に溜まりましたのよ~!」
「川の水も美味だったけど、こちらの水もまた美味しいねぇ」
水瓶の中は何時の間にか空っぽになっていた。
どうやらエルダートレントも大満足な水らしい。
他のトレント達も飲みたいらしく、ざわついている。
「皆ー! トレント達が飲みたいみたいだから、引き続き出し続けて貰える?」
スライム達が触手で○を作ってくれた。
トレント達がどどどっと地鳴りを起こす勢いで溜め池に走り寄る。
「しかし凄い収納量だねぇ」
「無限収納らしいのよね。珍しい?」
「初めて見るかなぁ……ちなみに、ここまで品質が維持できるっていう点も、あり得ないからね?」
「ふー。秘匿事項が多くて困るわぁ」
「ふふふ。そんな秘匿情報を公開して下さって嬉しいですぅ~」
カロリーナが嬉しそうに身をくねらせた。
トリアも賛同するように目を細める。
「じゃあ、井戸の水を湧かせて貰って、川の様子を見に行こうか」
「そうだね……全く、あの子達と来た日には、どれだけ美味しいんだろうねぇ」
スライム達が怒濤の勢いで放水しているにも関わらず、溜め池から水が溢れ出ることはない。
それだけトレント達が美味しく吸い上げているのだろう。
「さて……と、うん。綺麗に石が積まれているね。これなら水抜けはなさそうだ」
私とトリアとカロリーナの三人で井戸の前に立つ。
スライム達の超絶技巧によって作り直された井戸は均一の石が円形に並んでおり、隙間も丁寧に埋められていた。
滑車と桶は木製だ。
桶はさておき、滑車などいつ準備したのだろう。
スライム達の収納には、既に無数のアイテムが詰まっていそうだ。
よく綯われた縄は滑り止めの効果でもあるのか、実に握りやすかった。
「それじゃあ、いくよー」
トリアの掛け声に、私とカロリーナは井戸の中を覗き込む。
ごん! と大きな音がした次の瞬間、井戸の底から水が滲み出した。
乾き切っていた地面にみるみる水が染み渡っていく。
「うん。この水質と水量なら明日から普通に使えるようになるよ」
「さすがは、トリア。水関係は最強だねぇ」
「本当に素晴らしい御業ですわー」
「褒めても何も出ないよ? じゃあ、川の方も見に行こうか」
「楽しみ-」
「美味しい魚~」
カロリーナがすっかりご飯好きっ子になっている。
今までの生活を考えれば無理もない話だし、食べ物に力が入ってしまうのは日本人の性……美味飯好きの同志として、これからも仲良くやっていきたい。
「川というか用水路?」
溜め池と真逆の方向に流れる川幅は一メートル程度で深さも膝丈ぐらいしかないが、長さは計り知れない。
「大きさ的には、そんな感じだね。でも長さはあるし、質は文句なしだから」
トリアの声を理解したかのように一匹の魚が水中から躍り上がった。
金色の鱗がきらきらと輝いて目に眩しい。
「あ、あれはゴールデンマックスですわ! 母が独り占めしていましたのよ! タイ? に似た美味しい白身魚だそうです」
見た目はでっぷりと太った鯉。
可食部分が多そうで嬉しい。
鱗の鮮やかさは高額で取引されそうな予感がする。
「ご飯があれば鯛飯を作るのになぁ……」
「あぁ、母もよく食べたいと申しておりましたわ~」
「ご飯? そんなに食べたいの? 後で詳しく教えてくれる? もしかしたら知っているかもしれないから」
「そうね。ちょっと日本人のソウルフードなんで、できれば食べたいと思った時に食べたいなぁ」
川魚とはいえ、魚が楽に食べられるようになったので余計にそう思う。
刺身には白米でしょう!
醤油は無事確保できていることだし。
「そういえば、ここから海って遠いの?」
「遠いですわ~」
「遠いね。でも……うーん。この川を引いてきた本流の方は海に繋がっていた気がするから、もしかしたら誘導できるかも? こっちは僕よりスライム達に頼んでみるといいんじゃないかな。あの子達なら、生け簀とか作りそうだよね」
カロリーナも頷いている。
まぁ、一度足を運んでしまえば転移魔法があるから、毎日食べられると思うけどね。
村がある程度整ったら、米と海探しの旅には出たいかも。
留守番なら、トリアとカロリーナがいるしね。
私の方は最悪、攻撃と防御を兼ね備えたローズと鑑定のサクラがいれば大丈夫だろうし。
「水回りがあっという間にできちゃったから、次は地均しあたり?」
「後は解体した資材の選別も必要かな」
「その前に! お昼ご飯をいただきたいですわ~」
主張と同時にカロリーナはお腹を鳴らしている。
人と同じ音だった。
「できれば、パン以外の物を食べてみたいですわー」
「どうんね!」
トレント達を満足させたらしいローズが、カロリーナの肩に乗る。
「ぱすた? が食べてみたいのです」
「ちゅばーそが美味しかったので、ばーそが気になるのねー」
スライム達は麺推しのようだ。
現時点では、パンか麺類しかないので仕方ないだろう。
あぁ、米、米、ご飯が食べたい。
「うーん。ばーそとゴールデンマックスの天ぷらをメインに、プラス野菜の天ぷらと何かの煮浸しでどう?」
「ん! 煮浸しはマツナーが良いのっ」
「う! 野菜の天ぷらはボウゴとジンニンとネギタマのかき揚げ、リンギエ、コンレン、スーナが、良いのよっ」
モルフォとサイが畳みかけてきました。
そういえば、和食をもっと知りたいと言っていたっけ。
「じゃあ、それでいきましょう。はっ! 何時の間に?」
簡易キッチンをセットしている横で、気が付けば、何処の新婚さんですか! と突っ込みを入れたくなるようなフリル満載なエプロンをしたカロリーナが、どや顔でスタンバっていた。
野生マツナー
……小松菜。
色も形状も向こうと変わらない仕様。
ただし根っこがボリューミー。
茎部分と変わらない太さ、長さは半分程度。
野生マツナーの葉
料理の材料になる。
一般的には火を通すべし。
スライム収納であれば、生食可能。
+出汁&醤油
野菜マツナーの根
料理の材料になる。
一般的には火を通すべし。
スライム収納であれば、生食可能。
+ポーク&みりん、醤油、酒、砂糖
野生マツナーの種 レア
栽培できる。
+綺麗な水
ビルダーズの開拓島で、この村を作ろうか結構長く迷っています。
課金すると川に魚放せるとか、もうなんてタイムリーなのか! と悶えました。
でもゲームは基本無課金を貫いているので、無課金内でできることをやるのは揺るぎないんですけどね。
課金して間もなくゲームが終了したトラウマから、無課金組となった次第です……。
次回は、生きの良さに驚かれた、結果、の予定です。
お読みいただきありがとうございました。
引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。