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村を整備しましょう。水回り編 前編

 ~編 前編・中編・後編 とか表記するのも間抜けでしょうか。

 ただ、前・中・後とした方が良いのかしらん。




 トレント達にもプリン作りから完食までを楽しんでもらったので、そろそろ就寝! と決定した。

 以前私達に与えられた家は盗賊達が放った魔法で損壊してしまったので、逃げた女性達が使っていた部屋を改造する。

 ベッドは資材に分解して家の外へ積んでおく。

 部屋の中はルンがやる気に満ち溢れていたが、時間の関係で掃除魔法のレベル10を発動させておいた。

 スライム達が収納していた家具を出して素早く設置。

 かかった時間を考えれば驚くほど住み心地が良さそうな部屋になった。

 中を覗き込んだトリアとカロリーナが感動している。

 トレント達も二人に遠慮しながらも覗いては、幹を揺らしていた。

 葉を揺らすより感動度が高い気がする。


「カロリーナの部屋もこんな感じにしようかと思っているんだけど、どう?」


「凄く素敵ですわー! でもビクトリア様を優先して頂きたいですの~」


「え! トリアも人型になれるの?」


「うん、なれるよ?」


 ぽん! と小気味良い音がして現れたのは……。


 身長は私より少し低いので150センチ程度。

 髪の毛はショートボブで瞳と同じ緑色。

 地面すれすれの長さの緑色をしたワンピースを着ていた。


「ふぉおおおー。素晴らしく萌ゆるトレント仕様!」


「愛ー。よくわからないけど、落ち着くのね-」


「あ! ごめん、トリア! 理想のトレント過ぎて取り乱したよ!」


 顔立ちは言うまでもない愛らしい系の美形だ。

 

「気に入って貰えたなら良かったよ」


 微苦笑するトリアは、その場でくるっと一回転してワンピースの裾を踊らせる。

 チラ見えする足は人のそれとは違い、木の根っこに類似しており一本しかない。


「一応男性設定なのにワンピースなのは、足を隠すためなの?」


「そうだよ。人の足を模倣もできるんだけどね。この方が楽だから村ではいいかなって」


「ビクトリア様は村の守護者様的存在であらせられるのではないのですか~?」


「できれば、皆と対等な関係でありたいかなぁ。だからカロリーナにも、ぜひトリアと呼んで欲しいんだけど?」


「それはさすがに! 恐れ多いので~。トリア様と呼ばせて頂ければ……」


「うーん。じゃあ、慣れるまでは、それで仕方ないかな。 あ! スライム達! 村の整備優先で、私とカロリーナの家は後回しでいいよ!」


 スライム達が早速家造りにかかろうとするのをトリアに制止される。


「そうですわ~。しかも今日はほら~。色々ありましたもの~。愛も疲れていると思いますのよ~」


 カロリーナの言葉に頷き合ったスライム達は、私の背中をぽよんぽよんと順番に飛び上がって押してくれた。

 マッサージのつもりなのだろうか。

 意外に気持ち良い。

 今度は触手マッサージもお願いしてみたい……あっち方面じゃなくてね?

 そっち方面は二次なら見て楽しいけど、自分が経験するとなると腰が引けるのですよ。

 えぇ、その辺りは極めて普通の感覚と自負しているのです。


「二人とも外で平気なの?」


「僕達はトレントだよ? むしろ快適なくらいさ。カロリーナは僕達の根本ねもとで保護するから安心するといい」


「ありがとうございますぅ~。森において、トレント達の庇護下にあるなら、まず間違いなく安全ですわ~」


 言われてみればトレント達は木なのだから外のほうが楽だった。

 つい人に近しい姿をしていると、自分と同じように扱ってしまう。

 二人は寛容だが、他では慎重になった方がよさそうだ。


「それじゃあ、明日は……井戸整備かな?」


「だね。他にも水回りについて考えよう。おやすみ、愛」


「おやすみなさいませ~」


「おやすみー」


 二人とトレント達に手を振って部屋へ入る。

 ベッドの上で早く寝なさいとばかりに、毛布を持ち上げたスライム達にありがとうを言う間もなく寝落ちしてしまった。

 想像以上に疲れていたようだった。


 

 「……知らない天井だ」


 異世界お約束のセリフを使いたくなってしまうのは、気持ちが落ち着いた証拠なのだろうか。

 異世界初覚醒時にも同じセリフを呟こうとして失敗したのが悔しかったかもしれない。

 何にせよ、悪い傾向ではない……たぶん。


「……おはよー」


「おはようなのです。朝食はどうするのです?」


 サクラがエプロンを着けていた。

 何時の間に作ったのだろう。

 堪らなく可愛い。

 ちなみに身体の色に合わせていて、ポケットには桜の花びらが刺繍されている。


「あれ? 他の子達は?」


「やる気に満ち溢れて、外でトリアさん達と打ち合わせをしているのです」


「じゃあ……昨日のバーベキューがちょっと残ってる感じだから、さっぱりする飲み物が欲しいかな?」


「ナオール花茶の冷たいのでどうなのです?」


「おぉ! そういえば温かいのしか飲んでないね」


 カップを手渡されたので、程良く冷やされたナオール花茶を頂く。

 ニードルビーの蜜が綺麗に溶けて、甘さが脳に染みた。


「朝から頭脳労働できそうな染み具合だわー」


 ほーと息を吐けば満足げに頷いたサクラが肩に乗るので、大きく伸びをしてから着替えを済ませて家の外へ出た。


「おはよう。早かったね」


「ごめんね? 随分待たせちゃったかなぁ」


 家の前にはテーブルが置かれており、トリアとカロリーナが椅子に座っている。

 スライム達はテーブルの上だ。


「もっとゆっくりされていても大丈夫でしたのに~」


 カロリーナが椅子を引いてくれた。

 紳士なラミア。

 これは萌え滾る。

 視界の端で、ローズがにやりと笑った気がした。

 薔薇だけでなく百合も許容範囲なのかしら。


「朝食は食べたのかな? 人はしっかり三食食べないと身体に良くないと聞くよ?」


「ありがとう。軽く食べたから大丈夫! お昼は皆で美味しい物を食べましょうね」


「凄く楽しみです~。あ! 私はクックルーのムネ肉サンドをいただきましたわ~。茶色のライぎむパンに挟まれたクックルーの甘塩っぱさと、しゃっきしゃきのターレスが最高でしたわ~」


 トリアは特に食べなかったようだが、カロリーナは堪能したようで何よりだ。

 ラミア種としてはやはり肉を食べた方が良い気がするんだよねー。

 その辺りもスライム達は熟考してくれたらしい。


「んっ。打ち合わせは完了しているのよ!」


「うっ。井戸の整備をカロリーナと私達でやるのよ!」


「外側修理が済んだら水については僕が手配するよ……他のトレント達には、使える資材と使えない資材の分別をやって貰う予定なんだ」


「おー」


「後は簡単に村の周辺地図を書いてみたんで、水回りをどうするかの検討がしたいんだけど、いいかい?」


 テーブルの上には大きめの紙が広げられている。

 トリアの手には細い木炭のような物が握られていた。

 手が汚れないように薄い紙っぽい物が巻き付けられている。


「じゃあ、私はトリアと打ち合わせをするんで、皆はそれぞれ作業に取りかかって貰っていいかな?」


 元気な返事と葉が擦れる返事があって、皆が競うように作業へ走って行った。


「や、やる気に満ち溢れているわね……」


「ふふふ。楽しそうだしね。何よりだと思うよ」


 そうやって微笑んでいるトリアも十分楽しそうに見える。


「さて……と。僕としてはため池と川が欲しいんだよね」


 ため池は農業用にあると楽だろう。

 川は食糧確保用といったところか。


「近くに結構大きい川があるから、そこから引っ張ってきて、村の端っこに流す感じで。君が好きそうな魚が沢山いるよ」


「こっちの川魚は泥臭くないの?」


「いや。そっちの方が多いけどね。近くの川は比較的綺麗な川なんだ。後はほら、僕達が根っこ濾過する感じ?」


 それは最強だ。

 当然飲み水としても美味しいだろう。

 水害の恐れがあったとしても水源は多く確保できた方が良い。

 魚が捕れるならば言うことなしだ。


 二人で額を突きつけるようにして、ため池の位置や川を何処に流すかなどを話し合う。

 そうこうしているうちに、井戸が新品同様の造りになって、資材が山積みにされたとの報告があったので、トリアは井戸の水を湧かせるために、私は廃材と資材の確認へとそれぞれ足を伸ばした。


 

 続いて川を通す組とため池を作る組に分かれる。

 トリアはトレント達を連れて川を通しに、私達はため池造りに挑んだ。


「愛~。土は何処に置きますの~?」


 大きさはこれぐらいでーと、腰をかがめながらため池にしたい部分を木炭で印をつけて回った。

 よっこらせっと腰を叩きながら身体を起こせば、既にスライム達が綺麗な円状に土をくり抜いてくれている。

 後は深さを考えるだけだ。


「そうだねー。うーん。誰か纏めて保管しておいてくれる?」


 五箇所に盛られた土の小山を眺めてお願いをする。

 

「私が保管しておくのねー。少し使っても良いのね?」


「全部使っても問題ないと思うよ? 何か作りたい物でもあるの?」


「内緒なのね-」


 リリーらしい返答だ。

 深さを出すためにスライム達が頑張ってくれる。

 ラミアは綺麗な形にできるようにと、細かい修正作業を請け負ってくれた。

 ドジっ子属性の気配を感じたが、どうやらお嬢様タイプの天然仕様で間違いなさそうだ。

 周囲にはいなかったタイプなので対応に迷うが、トリアやスライム達の反応を見るのに問題はないようで何よりだった。


「こんな感じでどうなのねー! 後はトリアに水を引いて貰うのねー!」


 リリーが胸を張るのも無理はない。

 そこには実に立派な、水の入っていないため池が仕上がっていた。




 ターレス

 向こうの世界におけるレタス。

 形はロメインレタス風で横に長いタイプ。

 やわらかくしゃきしゃきの食感。


 野生ターレスの葉

 料理の材料になる。

 生食でも大丈夫だが、よく洗うべし。

 +ポーク挽肉、味噌、みりん、醤油、酒

 

 野生ターレスの根 レア

 料理の材料になる。

 火を通すべし。

 +シモヤ、クックルーの卵、塩玉、マヨ


 野生ターレスの種 

 栽培できる。

 +綺麗な水




 旦那様のダンジョン編が楽しくてストックが貯まってきましたが、文章が走ってしまい修正箇所が多いのが困りものです。


 次回は、村を整備しましょう。水回り編 後編 の予定です。


 お読みいただきありがとうございました。

 引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

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