表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/198

やっぱりですか、そうですか。

 盗賊村の整備は何から始めたらいいだろうかと考えていると、ふと今やっているゲームがそんなゲームだったと思い至ってしまいました。

 ストックができたら、ゲームやって村の開拓メモを作るんだ……。



 トレントとスライムによって、わんこ蕎麦的なバーベキュー状態にされたラミアの腹はぽっこりと膨れていた。

 まだ胸の方が格段に大きい点に関しては気にしないようにする。

 うっとりとした顔で腹を摩っている様子から察するに、実に久しぶりの……もしかしたら初めてかもしれない……満腹感を味わっているのだろう。


 だがしかし!

 デザートは別腹だ。


 私は頭の中で今まで作ったデザート類を思い浮かべる。

 これを機に新しい物を作るのも良いかもしれない。


「そろそろデザートタイムだと思うんだけど、何がいいかなぁ?」


 一番近くにいたサクラを撫でながら問う。


「デザート! それはもしかして、お母様が言っていらした、くっきーとか、あいすくりーむとか言った物なのでしょうか!」


 あ。

 語尾に~がついていない。

 余程興奮しているのだろう。


「あーどっちも作れるけど、まだ作ったことないなぁ。今手持ちであるのは……リリー宜しく!」


「はいなのねー」


 リリーはレッドベリーのムースに、レッドベリーのプレザーブとスライスレッドベリーを載せた物をラミアの前に差し出す。


「こ、これはレッドベリー! 一度だけ食べたことがあるのよ~。凄く美味しかったのよ~。 んんっ! こ、このやわらかい物はなんですの? すーっと口の中でとけていきますのよ~!」


 予想通り……否、以上の喜びだった。

 やはり自分が作った物を喜んで貰えるのは単純に嬉しい。

 勿論、スライムやトレント、トリアに喜んで貰うのも嬉しいに決まっているが、日本人から転生したらしい母親の表現をそのまま受け継いだのだろうラミアの喜び具合は、何とも懐かしさを思い起こさせる様子なのだ。

 しかも向こうでの数少ない嬉しい記憶に直結するので気分が良かった。


「ムースというデザートなのよ。プリンとかババロアの親戚?」


「ばばろあは知りませんが、ぷりんは聞いたことがありますわ~。ぷりんは美味しい! ぷりりん、ぷりりん、ぷりぷりりんと、母親が時々歌っていましたの~」


「日本では有名なデザートだったからねぇ、納得」


「ぷりん、作れますの~?」


 私はプリンのレシピを頭の中で整理する。

 クックルーの卵、モー乳、白砂糖があれば大丈夫なはずだ。

 バニラビーンスと生クリームがあれば完璧だが。

 あれ?

 生クリームってあったっけ?

 レシピには出てきたけど、作れていない気がする。

 

「そ、そんなに悩むのなら、無理して欲しくありませんの~」


「や。この子達が優秀でね。どこまで食材を揃えてあったか把握できていないだけだから、悩んでいる訳じゃないのよ」


「何が欲しいのです? 私に聞いて欲しいのです!」


「それもそうか。生クリームって、できていたっけ?」


「はいです。リリーと私で作ったのです。ホイップクリームもあるのですよ?」


「おぉ! 相変わらずうちの子達が優秀過ぎだ!」


 それならば、本格的なケーキも作れそうだ。

 やる気に満ち溢れているラミアなら良い料理人になってくれる気もした。


「結論。プリンは作れます!」


「う、嬉しいですの~! 私にも作り方を教えて頂きたいのですぅ~」


「うん、良いよ。ラミアには料理人になって貰うのもいいかもね」


「料理人! なんて素敵なお仕事! 私、頑張りますわ!」


 食べ尽くされてプレザーブの残滓すら見当たらない皿を、両手でしっかりと握り締めたラミアが熱く叫ぶ。

 鉄は熱いうちに打てという格言もあることだし、トレント達にも食べて欲しいし。

 早速プリンを作ろうか、そう、言いかけた時。


「いやあああああ! ラミア! ラミアがいるぅ!」


「トレント? エルダートレント? どっちにしろ、惑わす者! に、逃げるわよ!」


「ええ! 行きましょう! あ、あの女の子は?」


「馬鹿ね! 肩にスライム乗せて、トレントとラミアに囲まれて笑ってる人間は人間じゃないわ。気狂いか、テイマーか、モンスターに魅入られた化け物よ!」


 その三つを同じに並べる神経が凄い。

 テイマーが聞いたら激怒するだろう。

 特にモンスターを支配したと思い込んでいるテイマーは、モンスターを下に見る者が多い。

 魅入られたなどと言ったら、言った人物の命が脅かされるに違いない。

 混乱しているのだろうが、無神経にも程がある発言だった。


 何にせよ、まぁ。

 自分を助けた人間を、気狂い&化け物扱いする人間こそ化け物なので、モンスターを支配下に置くテイマーより関わりたくない存在だ。


「で、でもおかしくない? あいつらが何処にもいなくて、この人達が楽しそうにしてるって事は……」


「あんたって、本当に馬鹿ね! 心の底から馬鹿ね! 奴等を! 盗賊達を殺し尽くせる化け物なんだよ、こいつらはっ!」


「けどさぁ! 私達は助けてくれたじゃん! よくわからないけど、身体、すごく調子良いし!」


「ふん! 売る気なんでしょ! 盗賊達を満足させていた私達を高級娼婦として売りさばくつもりなのよ! 私は御免よ! 逃げて、逃げて、真っ当な生活を送るんだからっ!」


 女性の一人が私達を睨み付けながら、全速力で走って行く。

 随分と回復したらしい。

 何よりだ。

 それなら、下級娼婦にはなれる気がしないでもない。


「え、え! ちょ! 待って! 待ってよぅ!」


 もう一人の女性は私達と逃げた女性を何度か交互に見た後で、逃げた女性を追って走り出した。

 体力の回復が追いついていないのか、速度は遅い。

 先に逃げた女性に追いつけるか微妙な速度だ。

 最寄りの村まで距離がある。

 そもそもその場所を知っているのか。

 何の準備もせずに、完治したわけでもない身体で、モンスターから逃げおおせ、無事に村へと辿り着けるのだろうか。


 まず無理だろう。


 先に逃げた女性も恐らく精神高揚が肉体の疲労を凌駕している今の状態は、そう長く続かないはずだ。


「やっぱこうなるかぁ……私って本当、人間と縁が遠いよなぁ……」


「わ、私のせいですのね~。申し訳ありませんわ~。頑張って追いましょうか~?」


「ラミアさんのせいじゃないし、追わなくていいよ。人としてやるべき事はやったからね。もう彼女達とは関わらない。縁がなかったということで、すっぱり忘れるから、ラミアさんにもそうして欲しいわ」


「何か事情がおありですの~?」


「うーん。皆、説明お願いしてもいい?」


「解ったのねー。残念だったけど、あまり気落ちしないで欲しいのねー」


 スライム達が順番に私へ頬ずりをしてから、ラミアの元へ説明をしに向かう。


「ちょ!」


 つぶらな瞳をやわらかく細めたエルダートレントが、不意に私を枝で優しく持ち上げて自分の根っこに座らせた。

 

「人でもモンスターでも、恩知らずはいるからさ。取り敢えず僕に寄りかかって気持ちを落ち着けるといいよ」


 細い枝が瞼を擽るので目を閉じる。

 そしてエルダートレントの言うように、気持ちを落ち着けるべく、大きく深呼吸をした。

 新緑の爽やかな香りにささくれ立った心は徐々に癒やされていく。

 どこまでも耳に優しい葉音も同じように心を和ませた。


「……彼女達、助かると思う?」


「知りたいんだ? 恩知らずな人間は死んでも当然だと思うけどね?」


「でも、ほら。混乱してたじゃない?」


「それでも、君達が自分を助けた事は理解できていたみたいだよ。最低限、お礼は言うべきだろう」


「そうよね……」


 そうたった一言でいい。

 どちらか一人でもよかった。

 ただ、ありがとうと。

 助けてくれてありがとうと言ってくれたなら、私の心はここまで乱れないですんだのだ。


「ちなみに、彼女達は死なずに人がいる村へ辿り着けるよ?」


「本当!」


 かなりの強運だ。

 それだけこの村での悲劇が酷かったのかもしれない。

 正直、神様とかそういった人外で、人より遙か上の者の意思があったとしか思えないレベルの僥倖だろう。

 それだけ、難しい逃亡だった。


「ただまぁ……幸せになったかと言えば、微妙だけどねぇ」


「未来予知とか、できるの?」


「確定事項の一部だけだけどね。彼女達が君に恩知らずな真似をした因果は、きっちりと巡ったようだよ。死ぬばかりが不幸でもないだろう?」


「ええ、そうね」


 盗賊村での出来事は、彼女達にとって死んだ方がましと思える出来事だったのではないかと思う。

 それだけ酷い怪我をしていた。


「せっかく悪縁から逃れられそうだったのにね」


「それも彼女達の選んだ道だ。致し方ない事だよ」


 先に逃げた女性はさておき。

 後から追った女性に一言でも声をかけていたら、無残な結末を迎えなかった気がしないでもないけれど。


「致し方ない事ね……」


 肩に慣れた感触がして目を開く。

 心配そうに私を覗き込むスライムとラミアとトレント達に、私は彼女達の末路を吹っ切った笑みを浮かべた。

 逃げた彼女達よりも、私を心配するスライム達の方が比べようもないほどに大切なのだ。


「プリン、作りましょうか。甘い物で癒やされたいわ」


 そう言えば皆が喜んで、ラミアが私の手を取る。


「遅くなりましたが、私。カロリーナともうしますの~。これからも末永く宜しくお願いいたしますわ~」


 カロリーナと言えば、スペイン人に多い名前だったような気がする。

 スペイン人の恋人でもいたのだろうか?

 まさか彼女の母は私と同じオタクだったのか!

 などと愚にも付かない事を考えつつ、私も同じようにカロリーナに己の名前を告げた。





 *今回ステータスの変動はありません。



 喜多愛笑 キタアイ


 料理人 LV 3


 スキル サバイバル料理 LV 4

     完全調合 LV10

     裁縫師範 LV10

     細工師範 LV10

     危険察知 LV6

     生活魔法 LV 5

     洗濯魔法 LV10

     風呂魔法 LV10

     料理魔法 LV13 上限突破中 愛専用

     掃除魔法 LV10

     偽装魔法 LV10

     隠蔽魔法 LV10

     転移魔法 LV∞ 愛専用

     命止魔法 LV3 愛専用


     人外による精神汚染


 ユニークスキル 庇護されし者


 庇護スキル 言語超特化 極情報収集 鑑定超特化 絶対完全防御 地形把握超特化  解体超特化


 称号 シルコットンマスター(サイ)



 この先のタイトルと大まかな内容を10個ほど考えました。

 げ、ゲームするまでもなかった……。

 ですが毎回、それ以上になることはあってもそれ以下になることはありません。

 そこまで辿り着くのは何時になるのだろう……。

 頑張ります。


 次回は、村を整備しましょう。水回り編(仮)の予定です。


 お読みいただいてありがとうございました。

 引き続き宜しくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ