サバイバル料理開始!
料理描写が楽しくて困ります。
食材の名前とか完全に捻ると大変なことになりそうなので、ちょっとだけ弄ってます。
今の段階では完全オリジナル名は薬材ぐらいかな?
傷薬→傷が治る→キズナオール草な簡単連想でつけているので、他の方とかぶっていたらすみません。
着いた洞窟は想像していたより快適だった。
怪しい虫もいない。
「たぶん、強い生物が住んでいたのねー。で。その臭いが残っているから、避けているんだと思うのねー。石をめくれば小虫はいるのねー」
「めくらないでください! お願いだからっ!」
何故全員が、によによと笑って石をひっくりひっくり返そうとするのかと!
「虫は! 困った時のご飯です! 今は困っていないので、見る必要はありません!」
「確かにねー。ホワーンラビットが三匹も入手出来ればいらないよねー」
「私のお蔭ね! 褒めなさいっ!」
ローズが胸を張る。
スライムのどこが胸なの? とか思うかもしれないが、それらしい格好をしているので、そうと判断しているだけだから、突っ込みはしない方向で勘弁願いたいのです。
「ありがとう、ローズ様! お蔭で索敵していなくても美味肉に高価毛皮が入手できました」
「牙と爪もなのよ! レアなのよ!」
「サイ様にもありがとうございます! 鑑定して下さったサクラ様にも、道を正しく先導して下さったモルフォ様にも、ありがとうございました!」
大袈裟に土下座をしながら、伸ばした掌でスライム達を存分に揉む。
感謝は忘れてはいけないだろう。
何事も初めが肝心だ。
継続も肝心だ。
「リリー様にも感謝の極みっ!」
「その辺でいいのねー。さくっとご飯準備するのねー」
「ははっ!」
大仰に敬礼をして、洞窟の奥に湧き出ている水を鑑定して貰う。
綺麗な湧き水
飲んで良し、料理に使って良し、傷口消毒用にも良し。
気分をすっきりする効果有。
「あ。何か良い効果あるね。誰かそれなりの量保管しておいてくれる?」
「う!」
サイが引き受けてくれた。
「キズナオール草の名にふさわしく傷薬系を作りたいところですが……腹が空いたので、そっちを優先しますとも!」
ちなみに、洞窟へ至るまでに入手できたアイテムはなかなかに豊富だった。
ホワーンラビットの肉
料理の材料になる。
焼き料理がオススメ。
ホワーンラビットの骨
出汁が取れる。
+普通の水
ホワーンラビットの毛皮
高額で売れる。
防具が作れる。
裁縫師のみ作れる。
ホワーンラビットの牙 レア
属性付の装飾品になる。
細工師のみ作れる。
ホワーンラビットの爪 レア
属性付の装飾品になる。
細工師のみ作れる。
……三匹揃って特攻してきたのをローズが能力発動で瞬殺。
十匹に囲まれると初心者ではまずいらしい。
炎系魔法で簡単に倒せるので、綺麗な毛皮は多くない。
今回は全身打撲による即死なので、毛皮に傷はなかった。
代わりに骨が砕けたが、出汁に使うので無問題。
細工師と裁縫師は取れるスキルなら取りたいものだ。
野生トメトの実
料理の材料になる。
火を通すべし。
野生トメトの茎
燃料になる。
乾燥させるべし。
野生トメトの種 レア
栽培できる。
+綺麗な水
……一本だけひょろっと伸びていたので採取。
向こうで言う所のトマト。
茎が燃料になるのは意外だった。
拠点を構えたら、畑もやってみたい。
奴隷制度があるのなら、農奴を雇うのもありかもしれないが、スライムが分裂したり、レベル
アップしたりして、農業特化の子を待った方が早い気もする。
野生イモジャガの実
料理の材料になる。
火を通すべし。
野生イモジャガの葉
虫よけができる。
+綺麗な水
野生イモジャガの茎
燃料になる。
乾燥させるべし。
野生イモジャガの種イモ レア
栽培できる。
+綺麗な水
……三本固まって生えていたので根こそぎ採取。
向こうで言う所のジャガイモ。
野菜系は名前が似ているのはありがたい。
どうやら野生の野菜は火を入れた方が良いようだ。
そして種がことごとくレア。
野生から育てると市販のより美味になったりするのかもしれない。
塩玉 小
調味料になる。
×100で小さじ一杯分
……道端に落ちているが人の目では拾うのは難しいレベルのサイズ。
また、ゴミと紛れており仕分けが面倒なせいもあって、普通は無視されるアイテム。
サイのお蔭でゴミが瞬時分別されるので、入手簡単な調味料の一つ。
そして、キズナオール草で全部。
米系が欲しい所だが贅沢は言うまい。
肉と野菜が取れるだけでも御の字だ。
「とりあえずー。リリーは綺麗な水でお湯たくさん沸かしてくれる? サイはホワーンラビットの肉を更に解体して欲しいな。サクラは茎の乾燥手配をお願いします。ローズとモルフォは大丈夫だと思うけど警戒をよろしくー」
「「「「「ねー!」」」」」
お決まりの返事を貰ったので、キズナオール草の茎とイモジャガとトマトの実の皮を剥き一口サイズに切り揃える。
サクラが目ざとく見つけてくれた石包丁は使いにくいが、切れ味は悪くなかった。
時間をかけて丁寧に剥いてゆく。
「お湯ができたのねー」
「あ! じゃあ、骨を入れておいてくれるかな? 出汁取りたい。 明日には良い出汁が出てると思うんだ。ナオール花茶は蜂蜜ないから、無理かなぁ?」
「……苦いお茶になる予感なのねー。でもすっきり効果は残る気もするのねー」
「んーせめて甘い物系を見つけてからにしようか。じゃあ、ナオール煮物を宜しく! 塩とお湯で煮るだけでどんなのができるのかね?」
「楽しみなのねー」
リリーが戻って行くのと入れ違いで、サイとサクラが飛び跳ねてきた。
「お肉の解体ができたのよ!」
「解体結果はこちらです!」
ホワーンラビットのもも
食べごたえのある部分。
生食不可。
ホワーンラビットのレバー
毒抜きが必要な部分。
生食可能。
ホワーンラビットの肉
ももとレバーを除いた肉部分。
生食不可。
ホワーンラビットの血液
栄養剤が作れる。
+綺麗な水、ガンバレ草の種
「レバーも食べたいけど、毒抜きが必要なら、今は無理だね」
「毒消薬ならたぶんすぐ作れるのねー」
「毒消しのスキルがつく時もあるのです」
「料理優先なので、その辺はまた今度挑戦するよ。今回はどの道保管かなぁー。んーでも、レバー美味しいもんね。一応焼いてみようか?」
サイが作ってくれた焼き串にレバーを刺して焼くことしばし。
「どう?」
サクラに鑑定して貰えば
焼いたホワーンラビットのレバー
ランクC
生食に比べて味は落ちているが、毒性は消えている。
+塩、ブラウンワイン、ホワイトワイン、ネギタマ、モー乳でペースト状にすると、保存食になる。
「ほぅ、それはいいね! アイテム揃ったら保存食も作ろうっと」
ぱくっと口にする、若干苦味を感じるが安価な居酒屋で食べる焼き鳥のレバーに近い。
「意外にいけるし」
スライム達に与えてみれば、グルメなローズ以外は気にせず食べられるレベルのようだった。
レシピ以外に、思いついたら色々挑戦するのも良さそうだ。
……失敗が少し心配だが、最悪皆が止めてくれるだろう。
「ももは塩振って焼いてー、その他の肉は使い捨て鍋にぶち込んでートメトとイモジャガも投入っと」
「ナオール煮物ができたのねー」
リリーが味見用に持って来てくれた。
「……おお! フキの煮物だね。フキより渋みがなくて食べやすいかも」
ナオールの煮物
ランク A
レシピが公表されたら貧乏家庭料理の毎日の一品になること間違いなし。
塩を多く入れると保存食にもなるが、戻した時に味は落ちてしまう。
どんなに熱くても火傷しない。
整腸作用がある。
どんなに熱くても火傷しない、あたりにキズナオール草本来の働きが生きているようだ。
素晴らしい。
「レシピ……良い人がいたら売っても良いかも」
「孤児院とかいいかもねー」
「あー寄付代わりにね。善良なシスターが居る所を捜そう」
「……美味しくないレバーだけじゃ、満足できませんわ!」
見張りに飽きたのか、モルフォを放置してローズが跳ねてきた。
「スープがあとちょっとでできると完成なので、今少しお待ちくださいませ」
掌に乗せてぷにぽにと突く。
入れ代わり立ち代わり掌に乗ってくるので、更に突く。
モルフォもやってきたので、存分に突く。
「もう、良いと思いますわ!」
鍋の前でスタンバっているローズが可愛い。
食い意地がはっているお嬢様とか萌えるね。
サイとサクラで作ってくれた葉っぱの器にスープを入れる。
漏れないし、熱くないのが素晴らしい。
ちなみにお玉は石製、モルフォが探してきてくれた。
持ち手が短く、掬う部分が浅く小さいが役目は果たせるのでありがたい。
塩焼きしたホワーンラビットのもも肉とナオール茎の煮物を葉っぱの大皿に盛りつければ完成だ。
異世界トリップ初の食事としては豪華な品々に違いない。
「それではいただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
あ。
また揃い声のバリエーションが増えたわ。
何の条件で増えるのか解らないが、可愛いから無問題だ。
「シンプルだけど悪くないわ!」
そんなに大きく開くんだ! という大口でもも肉を口にしたローズは満足気。
「肉の風味がいっぱいです」
サクラはスープの肉味にうっとり。
「野菜の味も負けていないのっ」
モルフォはスープの野菜味にうっとり。
「ナオールの煮物は飽きない味なのよ」
サイはナオールの煮物をしみじみと噛み締め。
「安価なダイエット料理として売り出すと言う手もあるのねー」
リリーは違う意味で噛み締めている。
スライム達に好評でなによりだ。
ホワーンラビットのもも肉塩焼き
ランク S
焼き加減が絶妙。塩加減も絶妙。
外はぱりぱり、中は肉汁溢れ出るジューシーさ。
美味しく仕上がっているので、HP・MP・SP共に10%回復する。
イメージしていた兎より一回り大きいもも肉は食べごたえがあった。
塩味は偉大だ。
香ばしさがますます食欲をそそる。
ホワーンラビットのミネストローネ。
ランク B
肉の旨味がスープに程良くとけだしている。
味は中の上。
野菜の種類が少ないため、SPのみ10%回復する。
改良の余地あり。
スープも肉と野菜の風味が良いバランスで出ていた。
野菜の種類が少ないと低めの評価だが、これはこれでありだろう。
身体もほっこりと温まる。
明日の骨で取った出汁も良い味に違いない。
雑炊で食べたいところだが、米はきっとなかなか遭遇できないと思う。
テンプレ的に。
ナオールの煮物は副菜にぴったりだろう。
しゃきっとした食感だが、噛み切りやすい。
老人にも良いかもしれない。
介護食!
また販路が広がりそうだ。
「食べてすぐ寝ると牛になるって言うけど……眠い」
「精神的にも肉体的にも疲れているから、早く寝るといいのねー」
「警戒は交代でするから、愛は安心して寝なさい!」
「ちょっと夜の探索にも出たいのっ」
「一緒に行けば問題ないと思うのよ?」
「その辺は、私達で上手くやりましょうねー。では、愛」
「「「「「おやすみー」」」」」
「おやすみぃ……」
きちんとした挨拶が嬉しくて伸ばした指先は届かずに寝落ちしてしまった。
ああ、充実した一日だった……。
次回は、お薬系を作ります。になります。
お読みいただきありがとうございました。
引き続きお付き合頂ければ嬉しいです。